2023年9月9日土曜日

IPO分析(ジェイ・イー・ティ)

 【事業内容】

​ 当社は、リーマン・ショック後の半導体不況時に破産手続きを開始したエス・イー・エス株式会社を前身としております。当時のエス・イー・エス株式会社が開発した半導体洗浄装置は、バッチ式洗浄装置において、顧客の要求仕様に合わせて洗浄槽の構成や設置数の変更といったカスタマイズが可能でありました。半導体の集積度の向上により、顧客のニーズは、より高粘度・高比重の薬液への対応を求められており、その顧客ニーズに対応する洗浄槽では処理時間が長くなります。エス・イー・エス株式会社が開発した洗浄装置では、装置前面に搬入機器、装置後面に搬出機器を配置することでシリコンウエハ(以下、「ウエハ」といいます。)の流れ方向を1方向にすること等により、処理時間の長い洗浄槽を並列して複数配置することができ、単位時間あたりのウエハ処理枚数を増加させることが可能でありました。また、エス・イー・エス株式会社はバッチ式洗浄装置では10%強の世界市場シェアと優良顧客を持っていたため、当社はエス・イー・エス株式会社の半導体事業を引き継ぎました。

 半導体製造工程においてはウエハに回路を形成するまでの「前工程」と、回路が形成されたウエハを半導体チップに切り出して製品化する「後工程」とに分かれております。「前工程」では、成膜・レジスト塗布・露光・現像・エッチング・不純物注入・レジスト剥離といったプロセスが繰り返し行われており、各プロセスの間にはウエハに付着した微細な汚れやゴミを取り除くため洗浄工程が必要となります。 「後工程」では、回路形成済みのウエハからチップ切り出し・ダイシング・パッケージング・検査といったプロセスが一連の流れとして行われており、各プロセスにて比較的大きな汚れやゴミを取り除くため洗浄工程が必要となります。当社はより洗浄能力を求められる前工程の各プロセスでの処理前後において実施される洗浄工程における装置の開発、製造、販売を行っております。なお、洗浄工程は各プロセスで実施されるため、半導体製造の前工程の30~40%が洗浄工程となり、前工程における重要な役割を担っております。

 半導体洗浄装置については、多数(25~50枚)のウエハを同時に各処理槽にて処理を行う「バッチ式洗浄装置」と、ウエハを1枚ずつチャンバー(処理槽)内で処理する「枚葉式洗浄装置」があります。一般的にバッチ式洗浄装置の長所は生産性が高いこと、短所はウエハの塵を拾いやすいことが挙げられます。また枚葉式洗浄装置の長所はウエハを1枚ずつ精密に制御して洗浄が可能なこと、短所はバッチ式洗浄装置に比べて生産性が低いことが挙げられます。また、半導体洗浄装置市場においては、一時期、バッチ式洗浄装置から枚葉式洗浄装置への置き換わりが進んでおりましたが、近年では半導体製造技術の進歩につれて、より微細化や高積層化が進み、長時間かつ高温を要する洗浄プロセスが増えており、生産性の優位性やその特徴からバッチ式洗浄装置は2022年度においても世界の洗浄装置市場全体の約24%程度の構成比を堅持しております。

 当社グループの半導体洗浄装置は、バッチ式洗浄装置(BW3700、BW3000、BW2000)においては、標準的な装置前面に搬入搬出機器を配置したタイプ(I-Type)と当社独自の装置前面に搬入機器、装置後面に搬出機器を配置したタイプ(F-Type)の2種のタイプがあります。ともに顧客の要求仕様に合わせたカスタマイズ性を有しておりますが、特に当社独自のタイプ(F-Type)では、洗浄槽の設置数を変更することにより時間当たりのウエハ処理枚数を最適化する等、より顧客ニーズに沿ったカスタマイズが可能であります。枚葉式洗浄装置(HTS-300)においては、赤外線ランプにてウエハ上の薬液を高温にするといった特殊な機能を搭載することにより、処理性能及び処理能力の向上、使用薬液の削減といった顧客のメリットに繋がる機能を有しております。半導体洗浄装置は、主に韓国、中国、台湾の半導体メーカーへ販売しております。また、半導体洗浄装置に関連するフィールドサービスとして、装置の改造、部品の販売、顧客の工場における保守サービス等の対応を行っております。

 

(半導体事業)

 半導体洗浄装置の開発・設計、製造、販売については、当社にて行っております。なお、装置の一部につきまして、顧客への販売支援業務や顧客工場での装置立上業務等を連結子会社のJ.E.T. Semi-Con. International Taiwan, Inc.(協裕国際科技股份有限公司)とOribright Shanghai Co., Ltd. (欧利白科技(上海)有限公司)の2社及び当社の親会社でありますZEUS Co., Ltd.に業務委託しております。また、ZEUS Co., Ltd.に対しては、枚葉式洗浄装置(HTS-300)の韓国顧客への販売ライセンス供与を開始しております。部品販売及び保守サービスにつきましては、当社でも行っておりますが、上記連結子会社2社及び親会社でも部品販売及び保守サービスを行っております。また、部品の一部について、ZEUS Co., Ltd.経由で韓国のメーカーから仕入れを行っております。

 なお、2019年7月に発表された日本政府による韓国向け輸出管理強化の影響から、半導体製造装置の国産化比率の向上を図る韓国政府の政策に対応するため韓国の顧客より韓国国内での装置製造の要請があり、顧客との関係強化を目的として、2020年9月にJ.E.T. Korea Co., Ltd.を韓国に設立し、装置製造を開始しております。

 その他、電池素子に電圧を印加して、その電流のピーク回数、ピーク電流値、電流のピーク発生時間、電流容量、抵抗値の5項目による良否判定を行うという独自のアルゴリズムで注液前の電池素子を検査する「内部短絡/開放イベント検査器(ISOEC-J1000)」、密閉後の電池ケースや外装材のピンホール等による電解液の漏れを検出する「電解液リーク検査装置(ELC-J1000)」、多層箔やフィルム等に対しても材料の熱変性や変形が少なく信頼性の高い超音波接合を可能にする「超音波接合システム(UWS-J1000)」などのリチウムイオン電池に関連する検査・製造装置を開発し、主として国内顧客に対して販売を行っております。


(その他の事業)

 株式会社OSMICがFC展開するオスミック農産物生産事業を採用した、農産物の生産・販売等を行っております。

 なお、アグリ事業において、独立した法人として個別採算管理を徹底すること、責任の明確化を図ることとともに、農地所有適格法人としての農地所有や各種制度融資などのメリットを活かし、本事業の収益力及び競争力を向上させるため、2021年10月に株式会社ジェイ・イー・ティ・アグリを設立いたしました。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/12 連結中間実績 11,724 1,039 944 646

2023/12 連結予想 26,536 2,759 2,581 1,747

2022/12 連結実績 23,114 2,078 1,896 1,197

2021/12 連結実績 19,102 1,852 1,703 1,167


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/12 連結予想 444.46 - 76.00

上場時発行済株数 4,490,000株

公開株数 1,610,000株(公募600,000株、売り出し800,000株、オーバーアロットメント210,000株)

調達資金使途 設備投資


売出しを行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


PER:10.4

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:75億

公募時時価:208億

​   

【株主構成】 

ZEUS CO.,LTD. 親会社 3,700,000 98.14% 180日

房野正幸 代表取締役社長 18,000 0.48% 180日・1.5倍

平井洋行 専務取締役 13,600 0.36% 180日・1.5倍

増田隆 常務取締役 11,000 0.29% 180日・1.5倍

HiCAP3号投組 投資業(ファンド) 10,000 0.27% 180日・1.5倍

問田宗寿 取締役 9,000 0.24% 180日・1.5倍

小野保 取締役 5,000 0.13% 180日・1.5倍

今井志郎 監査役 3,400 0.09% 180日・1.5倍


(1)TOKYO PRO Marketにおける当社普通株式の取引(気配表記を含む。)がブックビルディング方式による発行価格及び売出価格の決定に影響を及ぼすおそれを可及的に排除する観点から、本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人であるZEUS Co., Ltd.並びに当社株主である房野正幸、平井洋行、増田隆、問田宗寿、小野保、今井志郎及びHiCAP3号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、本書提出日から当社普通株式に係るTOKYO PRO Marketからの上場廃止予定日である2023年9月24日までの期間中は、本書提出日現在に自己の計算で保有する当社普通株式の売却等又はこれらに係る注文を行わない旨を約束しております。

(2)本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人であるZEUS Co., Ltd.並びに当社株主である房野正幸、平井洋行、増田隆、問田宗寿、小野保及び今井志郎は、主幹事会社に対し、東京証券取引所スタンダード市場への上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2024年3月22日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等は除く。)は行わない旨合意しております。

また、当社株主であるHiCAP3号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、東京証券取引所スタンダード市場への上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2023年12月23日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、その売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)は行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 房野 正幸(上場時65歳2カ月)/1958年生

本店所在地 岡山県浅口郡里庄町新庄

設立年 2009年

従業員数 167人 (2023/07/31現在)(平均43.11歳、年収720.7万円)、連結293人

事業内容 半導体洗浄装置の開発・設計、製造、販売およびこれらに付帯する保守・サービスなど

URL https://www.globaljet.jp/

株主数 9人 (目論見書より)

資本金 571,000,000円 (2023/08/21現在)

代表者略歴

1981年04月 株式会社ボーノ入社

1992年01月 有限会社興和設計入社

1995年04月 エス・イー・エス株式会社(旧株式会社スガイ)入社

2004年06月 同社執行役員

2009年04月 当社設立、当社取締役

2012年03月 当社常務取締役

2013年03月 当社代表取締役社長(現任)

2021年10月 株式会社ジェイ・イー・ティ・アグリ代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SBI - -

引受証券 大和 - -

引受証券 ひろぎん - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 松井 - -

引受証券 むさし - -


【参考類似企業】今期予想PER(8/25)

6254 野村マイクロ 9.9倍 (連結予想)

6266 タツモ 18.3倍 (連結予想)

6368 オルガノ 16.5倍 (連結予想)

6370 栗田工 22.9倍 (連結予想)

6387 サムコ 36.5倍 (単独見込)

6590 芝浦メカ 57.7倍 (連結予想)

7735 スクリン 22.9倍 (連結予想)

79370 韓ゼアースコ 11.4倍 (連結実績)

8155 三益半 10.2倍 (連結予想)


【私見】

 半導体洗浄装置の製造販売で、前身は破綻していますが、韓国のサムスンや中国向けを中心に技術料も高く、業種評価はできます。半導体なので世界景気の影響を受け波はあるのですが、直近では伸びていて、PERからも割高感はありません。大半を占める韓国の筆頭株主にもロックは付されているので売り要素はなく安心感はあります。韓国資本でSBI主幹事ということが気になりますが、物としては悪くない銘柄でセカンダリー銘柄になるかもしれません。


想定価額:4630円

仮条件上限:4630円

初値予想:5000円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立~やや強気

総合評価:3.5

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