2023年9月8日金曜日

IPO分析(ファーストアカウンティング)

 【事業内容】

 当社のサービスは、AI-OCR関連及び会計仕訳のアルゴリズムをサービス化したRobotaシリーズとリモートワークでも経理業務を遂行できるように開発したRemotaというプラットフォームを中心に構成されております。SaaS型のクラウドサービスであり、課金体系は、原則として1年以上の月額課金(MRR:Monthly Recurring Revenue)と読み取った帳票枚数に応じて変動する従量課金で構成されております。契約期間の長期化による収益の継続性を実現しており、2022年12月末における顧客の平均契約締結期間は約28か月、LTVは78百万円となっております。

 当社は、販売の主要なターゲットを売上高500億円以上のエンタープライズ(大企業)としております。販売ルートとしては、当社の営業担当が直接潜在顧客にアプローチする手法に加え、販売チャネルを増やして受注を拡大させるため、販売パートナーが主体となってアプローチする手法も採用しております。サービスの提供方法はいずれの場合も顧客の基幹システム等に当社サービスが提供されることになります。一方、中小企業への販売ルートとしては、当社サービスを広範に利用いただくため、会計ソフトウエアベンダー等が提供するサービスの機能としており、サービスの提供方法はOEMが基本となっております。2022年12月末現在におけるエンタープライズ(大企業)及びOEMパートナーへの当社サービスの導入社数は83社となっております。


2.DX(Digital transformation、デジタル変革)とは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。


3.OCR(Optical Character Recognition/Reader、光学的文字認識)とは、印刷された文字や手書き文字に光を当てて読み取り、デジタルの文字コードに変換する技術やソフトウエアです。


4.LTV(Life Time Value)とは、ある顧客がその取引期間を通じて当社にもたらす利益を意味しており、ARPA(Average Revenue per Account、1アカウント当たりの売上高)に売上総利益率を乗じた値をグロスチャーンレートで除して算出しております。


(1)Robotaシリーズ

 定型フォーマットの書類だけでなく非定型フォーマットや手書きの書類に対しても高い読取精度を実現しております。また、読み取った文字や数値を入力するだけでなく、証憑画像を振り分けたり、台紙に複数枚貼られた証憑を切り取ったりする機能や、読み取った内容が合っているかチェックする機能を有しているため、経費精算や請求書支払の突合業務についても利用することができます。経理業務の自動化のニーズに合わせ、必要な機能を選択し、組み合わせて利用できます。


(2)Remota

 経理業務の効率化・リモート化を実現することができるプラットフォームとしてRemotaを提供しており、上述の各Robotaを組み合わせることで一体として機能し、顧客のニーズに合わせた提案が可能となっております。Remotaは、メールにより請求書PDFファイルを受け取ると、下記のSTEPで自動で処理を行います。また、紙の請求書を郵送で受け取った場合は、請求書を複合機などでスキャンして、ストレージにアップロードするとPDFファイルと同じように処理されます。郵送とメールの両方の方法で二重に受け取った場合でもRemotaは二重申請を検知することができるので、二重支払のミスを未然に防ぐことができます。


(3)Peppolアクセスポイント

 デジタルインボイスの送受信に必要なPeppolアクセスポイントのサービスを提供しております。日本におけるデジタルインボイスの標準規格としてPeppolが採用され、Peppolを用いた電子取引はアクセスポイントを経由します。Peppol Authorityであるデジタル庁が、日本の各種法令や商習慣に対応した日本標準仕様を策定し、国内におけるPeppolの管理・運用等を行っております。当社は、2022年8月にデジタル庁からPeppolサービスプロバイダーとして認定を受けております。

 これにより、送信側企業より当社アクセスポイントにデジタルインボイスデータが送信され、当社はPeppolネットワークに接続することで受信側企業に同データを送信することが可能となりました。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/12 単独中間実績 559 56 54 54

2023/12 単独会社予想 1,217 101 93 109

2022/12 単独実績 785 -82 -77 -78

2021/12 単独実績 460 -358 -360 -360


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/12 単独会社予想 22.52 145.78 -


上場時発行済株数 5,209,600株(別に潜在株式710,000株)

公開株数 663,000株(公募473,600株、売り出し103,000株、オーバーアロットメント86,400株)

調達資金使途 設備投資、採用費、新サービス開発に係る費用


PER:58.6

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:8.7億

公募時時価:69億

【株主構成】 以下180日・1.5倍

森啓太郎 代表取締役社長 1,482,000 27.21%  

(株)Space Investment 役員らが議決権の過半数所有 1,200,000 22.03%

BEENEXT2 Pte. LTD. 投資業(ファンド) 341,000 6.26%

ALL STAR SAAS FUND Pte. LTD. 投資業(ファンド) 340,000 6.24%

信託SO(受託者:安田信彦) 新株予約権信託の受託者 270,000 4.96%

(株)マイナビ 特別利害関係者など 250,000 4.59%

津村陽介 取締役CFO 210,000 3.86%

Scrum Ventures Fund III L.P. 投資業(ファンド) 168,000 3.08%

KDDI新規事業育成3号投組 投資業(ファンド) 168,000 3.08%

小嶋勇志 元取締役 120,000 2.20%

ライドオン・エースタート2号投組 投資業(ファンド) 114,000 2.09%


本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である森啓太郎並びに当社の株主である、株式会社Space Investment、BEENEXT2 Pte. Ltd.、ALL STAR SAAS FUND Pte. Ltd.、株式会社マイナビ、津村陽介、Scrum Ventures Fund III L.P.、KDDI新規事業育成3号投資事業有限責任組合、小嶋勇志、ライドオン・エースタート2号投資事業有限責任組合、DEEPCORE TOKYO1号投資事業有限責任組合、葛鴻鵬、中薗直幸、株式会社エースタート、株式会社オービックビジネスコンサルタント、株式会社ミロク情報サービス、スーパーストリーム株式会社及びピー・シー・エー株式会社は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2024年3月19日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること及び売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う株式会社東京証券取引所取引での売却等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 また、当社の新株予約権を保有する津村陽介、葛鴻鵬、松田顕、藤武将人、宮越一貴、赤松直樹、佐藤暢、菅野健一、安田信彦、小俣智、髙塚佳秀、安達健二、LUONG ANH DUY、松村典裕、川崎悦道、大濱正裕、安本隆晴、竹内友亮、冨田理美及び横道崇は、主幹事会社に対し、ロックアップ期間中は、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却等(ただし、売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う株式会社東京証券取引所取引での売却等を除く。)を行わない旨を合意しております。

【代表者】

代表者名 森 啓太郎(上場時49歳3カ月)/1974年生

本店所在地 東京都港区浜松町

設立年 2016年

従業員数 47人 (2023/07/31現在)(平均36.4歳、年収534万円)

事業内容 会計分野に特化したAI(人工知能)ソリューション事業(経理AI事業)

URL https://www.fastaccounting.jp/

株主数 18人 (目論見書より)

資本金 60,000,000円 (2023/08/18現在)

代表者生年月日 1974年06月03日生まれ

代表者略歴

2000年04月 ソフトバンク・コマース株式会社 (現SB C&S株式会社)入社

2001年07月 アカマイ・テクノロジーズ合同会社 営業本部長

2011年03月 ホワイト・コンタクト株式会社設立  代表取締役

2012年04月 ホワイトフード株式会社 代表取締役

2016年06月 当社設立、代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 丸三 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 東洋 - -

引受証券 あかつき - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 松井 - -

引受証券 極東 - -


【参考類似企業】今期予想PER(8/24)

3923 ラクス 243.7倍 (連結予想)

3925 ダブスタ 10.5倍 (連結予想)

3984 ユーザローカル 32.1倍 (単独予想)

4052 フィーチャ 354.7倍 (連結予想)

4058 トヨクモ 35.3倍 (単独予想)

4488 AIinside 1,824.2倍 (単独予想)

7325 アイリック 41.2倍 (連結予想)


【私見】

 請求書関係のOCRベンダーで、電子化に伴い追い風となり業種妙味は非常にあります。大手との取引もあり魅力ではありますが、11月に11%を占めるラクスとの取引が終了することは懸念材料です。今期黒字予想で、PERなどは気にするほどではありませんが、成長性がどこまであるかどうか。一番の懸念材料は1.5倍でロックが外れることで、VCも多く、売る気は非常にありそうで上値は重たくなることが予想されます。


想定価額:1040円

仮条件上限:1320円

初値予想:2500円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

0 件のコメント:

コメントを投稿