2025年3月16日日曜日

IPO分析(プログレス・テクノロジーズ グループ)

 【事業内容】

​ (1)当社グループ概要

 当社グループはメーカーがフォーカスすべき独自の製品開発技術領域を「コア技術」と定義し、それらの進化に必要となるデジタル特化技術である「ニアコア技術」に注力する形で、メーカーに様々なソリューションやサービスを提供しています。日本の製造業がグローバルマーケットでのプレゼンスを高め、競争力を強化していく上で、製品開発プロセスのデジタル化は避けて通ることは出来ず、当社のニアコア技術の重要性は今後一層高まっていくものと認識をしております。

 特定の技術領域への注力に加え、サービス提供を行う工程についても、特定の領域に特化する形で価値提供を行っています。当社グループは製品開発プロセスの上流工程である設計開発領域に特化し、様々なソリューションやサービスを提供しています。設計開発領域はモノづくりの頭脳に相当する最上流工程であり、製造業界のデジタル化や提供価値の向上を実現していくためには、当該分野での変革が必要であると考えています。また、製品開発プロセスの下流工程に行くほど、業界や製品特有の知識・ノウハウが必要となりますが、上流工程においては業界が異なったとしても、ロジックや設計言語は共通する部分が多く、水平展開することが可能であります。

 製品開発プロセスの上流工程に特化し、高水準のデジタル技術を活用し、メーカーがコア技術に注力することが出来るニアコア技術を提供していくことで、QCD(品質・コスト・納期)の改善とイノベーションの創出を実現しています。


(2)グループ各社の概要

 プログレス・テクノロジーズ株式会社は、当社グループの主力事業会社であり、メーカーの設計開発現場の課題の把握からデジタルプロセスの検証、デジタル特化技術やツール・システムの選定、プロセスの整理・標準化、運用の定着支援まで、一連のソリューションをワンストップで提供しています。メーカー側は、設計開発部門、プロセス改革部門、IT部門が連携してデジタル化や業務プロセスの改革が行われることを期待していますが、多くのケースにおいて、単一部署におけるピンポイントソリューションで部分最適化を行うに留まっています。当社グループはメーカーの課題解決に真に必要となるソリューションを部門横断かつワンストップで提供している点で高い評価を受けていると考えております。

 S&VL株式会社は、9軸アクチュエータを搭載した可動域・加速度・応答性の観点で高性能なドライビングシミュレータを活用したバーチャルテストの実施や物理現象を正確にシミュレートできる高度なモデル開発を用いたコンサルティング等のサービスを提供しています。当社グループの強みであるシミュレーション技術を活用し、仮想空間で試作や走行実験を行うことで、実機を用いた従来型の設計・開発・試作・テストのプロセスと比較し、開発リードタイムの短縮やコストの削減を実現しています。群馬県太田市に設立した技術研究所の立ち上げ以降、自動車OEMやTier1サプライヤーから多くの引き合いをいただいております。

・ソリューション事業

 お客様の設計開発のプロセスそのものを設計するコンサルティングサービス、最先端のデジタルツールの導入から定着支援までを行うデジタルエンジニアリングサービス、製品開発をプロジェクト単位で引き受けるプロジェクトサービスなど、様々なサービス形態でお客様の設計開発現場の課題解決を行う事業。

・デジタルツイン事業

 最先端のデジタル技術を活用し、お客様の課題解決を行う事業。9軸アクチュエータを搭載した可動域・加速度・応答性の観点で高性能なドライビングシミュレータを用いたバーチャルテストの実施や物理現象を正確にシミュレートできる高度なモデル開発を用いたコンサルティング等のサービスを提供。

・エンジニアリング事業

 設計開発領域に特化し、お客様の開発リソースの不足や技術課題の解決を実現するサービス。メカ・エレキ・ソフトの各分野において、お客様のプロジェクトの一員として設計開発業務の支援を実行。


(3)各事業のサービス形態別内容等について

①ソリューション事業

 コンサルティングサービス、デジタルエンジニアリングサービス、プロジェクトサービスの3つのサービスに大別されます。

(a)コンサルティングサービス

 顧客の「設計のやり方を設計」するサービスであります。PT DBS(Progress Technologies Design Basis Solution)という独自の方法論を用い、熟練コンサルタントの頭の中にある設計手順や知見をデータ化・システム化することで、顧客メーカーの設計力を強化しています。

 グローバル競争の激化や製品要求の多様化・高度化が進む中で、メーカーは、高品質・高付加価値な製品を早いサイクルで開発することが求められています。この流れに対応するために3DCADやCAE、データ管理システムなどのツールを導入するだけでは不十分であり、あるべき姿のグランドデザインを描き、優先順位をつけて仕組み化・システム化を進めることが重要となります。当社グループのコンサルティングサービスは、設計開発のあるべき姿の策定から仕組みの構築・運用定着までを顧客と共に推進するというアプローチで顧客からの高い評価を得られていると考えております。


(b)デジタルエンジニアリングサービス

 最先端のツール導入から定着支援までを行うサービスであります。最先端の設計ツールを熟知したコンサルタント・エンジニアが顧客の課題に合わせて適切なツールを導入し、定着化を図ることで設計開発のデジタル化を推進しています。メーカーでは慢性的な開発リソース不足といった課題を抱えており、多様なバリエーションの製品をより多く・より早く世に出していくために、従来のものづくりの方法を大きく変革する必要性が高まっていることから、当社のデジタルエンジニアリングサービスに多くのニーズが寄せられています。


(c)プロジェクトサービス

 製品開発をプロジェクトチームとして引き受け、「技術課題」「リソース課題」の両側面から製品開発を支援するものであります。豊富な業務経験・キャリアをもつコンサルタント・エンジニアが1つのチームとして動き、お客様の求める成果物を提供しています。エンジニアリングだけ、コンサルティングだけを担うのではなく、上記の様々なサービス形態の元、設計開発領域をコンサルティング~デジタルソリューション~製品開発支援までをワンストップで支援できる点が当社グループの特徴となっております。

 また、顧客との共同研究や共同開発、最先端の技術を活用した受託開発・設計開発といったR&D案件についても、プロジェクトサービスとして提供しております。


②デジタルツイン事業

 最先端のデジタル技術を用いて、お客様の課題解決を行う事業であります。現時点においてはグループ会社であるS&VL株式会社において、最先端の高性能ドライビングシミュレータを活用し、バーチャルテスト環境の提供からプラントモデルの開発・評価、開発プロセスの改革の提案までの一連のソリューションをワンストップで提供しています。

 市場のニーズが多様化、複雑化している中、フロントローディング(注1)による開発のリードタイム短縮の重要性が高まっております。従前の製造プロセスにおいては、製品の検証中や製造中に不具合が生じると、その場で修正を行っており、その都度製造ラインをストップしたり、金型の調整や設備の確認に時間がかかったりすることで、開発工数が増え、コストも大きくなるという問題がありました。3Dモデルや最新のテクノロジーを駆使し、開発の初期段階に検証やテストを実施することで、リードタイムを短縮するだけでなく、走行テストのための試作車数を削減することによる大幅なコスト削減が可能となります。

 特に自動車業界においては、「100年に一度の大変革期(注2)」とも言われ、開発に係る業務工数や難易度、複雑度が大幅に増加しています。上記の考え方に基づき、走行試験の一部をバーチャルで行うことによる効率的な開発がヨーロッパを中心に広がっており(注3)、国内においてもこの流れが加速しています。


③エンジニアリング事業

 設計開発の領域に特化して、開発リソースの提供と技術課題の解決を実現するものです。メーカーの設計開発の現場では技術の高度化・多様化が加速しています。それに伴って開発ボリュームが増大し、設計者不足が深刻な課題になっています。

 当社グループのエンジニアリングサービスは、メカ・エレキ・ソフトの各設計分野において、お客様のプロジェクトの一員として設計・開発業務の支援をしています。技術力と人間力を兼ね備えた技術者集団が、メーカー顧客のハイエンド領域の設計・開発支援を行っています。


(4)当社グループの事業の収益モデル

 製品開発プロセスの上流工程である設計開発プロセスに特化し、メーカーの課題解決に真に必要となるソリューションを部署横断的にワンストップで提供しております。技術のトレンドやお客様からのニーズを踏まえた高品質なソリューションの提供することで、お客様からの支持を得て、継続的な売上収益の成長を実現しております。

 特にソリューション事業は、設計開発に特化した良質なDXコンサルティングやソリューションをお客様に伴走しながら提供することで、プロジェクトを継続的に受注できております。製造業のDX支援において、ツールの選定や業務フローの構築などのコンサルティングサービスを提供するだけでなく、その後の実務支援までをワンストップで行える企業は限られており、市場ニーズが旺盛である中、各メーカーからの案件引き合いを多くいただいています。

 また、2024年2月期より開始したデジタルツイン事業は、シミュレーション&バーチャルテスティングサービスとして性能開発のプロセス構築から実車相当の車両モデル開発、車両OEM品質の実走行実験までのワンストップソリューションを展開することで、メーカーに対し高い価値を提供しています。現時点において、同事業の連結業績に占める売上・利益の割合は僅少ですが、当社グループにおける新たな成長の柱として成長させていく方針です。


 【業績等】

決算期 種別 売上収益 営業利益 税引き前利益 純利益

2026/02 連結会社予想 6,388 1,580 1,518 1,050

2025/02 連結会社予想 5,625 854 799 576

2024/02 連結実績 5,116 1,150 996 696

2023/02 連結実績 4,780 1,190 1,071 730


決算期 種別 EPS BPS 配当

2026/02 連結会社予想 135.95 - -


上場時発行済株数 7,779,400株(別に潜在株式369,980株)

公開株数 4,378,200株(公募707,200株、売り出し3,100,000株、オーバーアロットメント571,000株)

調達資金使途 採用費・人件費などの運転資金、借入金返済


ウィンボンド・エレクトロニクス株式会社・・・取得金額1,000百万円を上限として要請を行う予定であります。

丸紅I-DIGIOホールディングス株式会社・・・取得金額850百万円を上限として要請を行う予定であります。

ヌヴォトン テクノロジージャパン株式会社・・・取得金額500百万円を上限として要請を行う予定であります。

ミラクシア エッジテクノロジー株式会社・・・取得金額500百万円を上限として要請を行う予定であります。


PER:13.9

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:72億(親受け28.5億)

公募時時価:147億

​   

【株主構成】 以下90日

ジャフコSV6投組 投資業(ファンド) 5,657,800 売出2,480,000 76.02%

ジャフコSV6-S投組 投資業(ファンド) 1,414,400 売出620,000 19.01%

中山岳人 代表取締役 250,580 3.37%

沢井大輔 取締役 37,940 0.51%

長友一郎 取締役 16,120 0.22%

匿名1 子会社の従業員 7,000 0.09%

匿名2 子会社の従業員 5,020 0.07%

村松英行 子会社の代表取締役 4,000 0.05%

匿名3 子会社の従業員 4,000 0.05%

匿名4 子会社の従業員 2,500 0.03%


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人であるジャフコSV6投資事業有限責任組合及びジャフコSV6-S投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2025年6月25日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨合意しております。

 加えて、当社新株予約権者である中山岳人、澤井大輔、長友一郎及び村松英行は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2025年6月25日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等を行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 中山 岳人(上場時52歳1カ月)/1973年生

本店所在地 東京都江東区青海

設立年 2020年

従業員数 23人 (2025/01/31現在)(平均36.5歳、年収527.9万円)、連結561人

事業内容 大手製造業向けデジタルソリューション・デジタルエンジニアリングサービスの提供

URL https://progresstech-group.jp/

株主数 2人 (目論見書より)

資本金 10,000,000円 (2025/02/21現在)

代表者生年月日 1973年02月25日生まれ

代表者略歴

1995年04月 株式会社大塚商会入社

2000年01月 PTCジャパン株式会社入社

2003年06月 アセンシャル・ソフトウェア株式会社(現日本IBM株式会社)入社

2005年08月 プログレス・テクノロジーズ株式会社 入社・取締役就任

2007年09月 プログレス・テクノロジーズ株式会社 代表取締役就任(2018年7月退任)

2020年09月 プログレス・テクノロジーズ株式会社 代表取締役就任(現任)

2023年03月 当社代表取締役就任(現任)

2023年03月 S&VL株式会社取締役就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 野村 - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 SBI - -

引受証券 大和 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 アイザワ - -

引受証券 東海東京 - -

引受証券 松井 - -

引受証券 あかつき - -


【参考類似企業】今期予想PER(3/6)

2136 ヒップ 12.2倍 (単独予想)

2163 アルトナー 16.1倍 (単独予想)

2359 コア 11.4倍 (連結予想)

2479 ジェイテック 9.8倍 (連結予想)

3771 システムリサ 12.5倍 (連結予想)

4371 CCT 11.5倍 (連結予想)

4641 アルプス技 13.7倍 (連結予想)

9739 NSW 10.2倍 (連結予想)


​【私見】

 製造業向けデジタルソリューション事業ということで、業種としては悪くないですが、ジャフコの売出し案件で投資妙味は薄れます。訴訟の関係で、前年は大幅減益となりましたが、増収率も高く、PERからは成長性を考慮すると割高感はありません。吸収金額が大きいのですが、台湾の会社の親受けの規模が大きく、それを除いても規模はそこそこ大きく吸収できるのか不安はあります。ジャフコのロックが90日ということを考えると、セカンダリーに妙味はなく、初値段階で上がるかどうかの判断になるでしょう。


想定価額:1890円

仮条件上限:1950円

初値予想:2050円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3

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