【事業内容】
(SOSEI事業)
高度経済成長期に造られた多くの工場のスレート屋根は、老朽化に加え近年の大型台風や線状降水帯の発生、ゲリラ豪雨など相次ぐ異常気象により製造に直結する大きな被害が出ており、含有アスベスト飛散による健康被害も懸念されていることから、今後これらの改修ニーズが拡大する事が見込まれます。
2006年に当社が独自に開発したSOSEI工法は、これらを解決できる工法として、2024年12月までに累計152万㎡の施工実績に達し、主として自動車や電機メーカーの工場を修繕してきました。SOSEI事業は、塗装業が出自である当社が自社工事に限定して行ってきました。工法だけ自社で開発し、施工は他社に任せて収入を得るのではなく、工事会社として、現場の作業者の目線で、作業者が使いやすい道具や工法の開発を行い、自社で責任をもって施工する「責任施工」にこだわって事業を展開してきました。屋根上工事は危険が伴うため、安全基準の整備などに強いこだわりを持ち、企業経営を行ってきました。
SOSEI工法は、瞬間硬化する特殊な樹脂を老朽化した屋根上に吹き付け補強する工法です。2層目(SOSEIコート)まで吹き付ける事で、作業員がスレート屋根上に乗っても踏み抜けない強度が生まれるため、この範囲に作業員が乗り、転落事故を防ぎながら新たな範囲を施工する工法の特許を取得しております(特許第7332142号、第6815548号)。
また、1層目に断熱効果のあるウレタンフォームを吹く事で、夏場の屋根裏温度が最大20℃程度低下するため、空調の効率化を通じて電気代やCO2排出量が削減し、脱炭素化の時代に向けても相応しい工法となっております。
SOSEI事業は、発注者である施工対象の工場や建物の所有者(メーカーや流通業者など)から、当社が元請ないし、他の建設会社などが元請として、さらに協力施工会社に吹き付け作業を外注する事で、工事の役務を提供しております。当社の施工管理者1名を現場に常駐させる責任施工により、作業品質の向上や、徹底した安全対策の実施を行っております。この責任施工の実施が発注者から評価され、リピート発注にも繋がっているものと考えております。
(CoolLaser事業)
高出力サビ取りレーザー施工装置CoolLaser(クーレーザー、以下、「CoolLaser」という。)は、これまで工場内部で切断工程や溶接工程に使われていた高出力レーザーをクリーニング用途に応用し、橋梁や鉄塔などの分厚いサビ・塗膜除去を行う事ができる技術です。屋外で高出力レーザーを使用する事例が一般的では無かった2008年に基礎研究を開始し、2018年に初めて外部資本調達を行って以来、開発を加速させてきました。2019年には当社が主導で一般社団法人レーザー施工研究会を立ち上げ、労働安全衛生総合研究所の研究員や各大学教授、レーザーメーカーや大手ゼネコンなど業界各社104社(2024年12月末時点)に加盟頂き、屋外で高出力レーザーを利用するための安全ガイドラインを制定する他、経済産業省とのJIS規格制定、国土交通省の土木研究機関である国立研究開発法人土木研究所との共同研究など、国の各機関と二人三脚で、社会実装に向けたルール整備も行って参りました。当社は、①橋梁分野(道路・鉄道)、②鉄塔分野(通信・送電)、③海事(海運・ドック)、④その他(プラント・保管)という4つの重点分野を掲げており、これらに関連する企業・団体などを想定顧客としております(図2)。橋梁のうち、道路については日本の場合は国・地方自治体が道路橋全体の約9割を保有し維持管理していますが、これ以外の分野については基本的には民間企業が顧客となります。
現在、米国やイタリア、台湾など世界各国で橋が落橋し、多くの人が巻き込まれ亡くなる死亡事故が発生しております。橋梁の維持管理は、人命に直結する重要なテーマであり、我が国でも建設後50年を経過する橋梁が年々増加しております。この橋梁の維持管理において、現状主流である事後保全(設備に不具合が生じてから交換等を行うこと)から予防保全(設備に不具合が生じる前に修繕等を行うこと)にシフトしていく事の必要性が国土交通省にて提言されています。
しかし、予防保全として行われている橋梁塗替工事(サビや旧塗膜を除去し、新塗膜により鋼材の腐食を防ぐ工事)は3K仕事(キツい、汚い、危険)であります。特に「危険」の部分において、塗替工事に用いられる剥離剤では、過去に剝離剤中毒事故や引火性による火災事故、ウォータージェットで手足の切断事故が起きるなど、事故が発生しており、若い作業者を確保する事が年々困難となっており、高齢化が進んでおります。また、ブラスト工法で用いられる研削材は、大量の産業廃棄物となり、地球環境への負荷も大きいと考えております。これらの課題を解決し、重要なインフラ構造物を地球環境や作業員への負荷が少ない手法で、次世代に安全・安心に受け継ぐための新たな工法の確立が必要であると考えております。
鋼橋のメンテナンスにおいては、腐食因子である塩分が含まれる進行するサビ等に対して、塩分を除去することの重要性が叫ばれております(注7)。既存工法であるブラスト工法は、鋼材表面に付着した塩分を研削材により鋼材の奥に押し込めてしまい、塩分が残ったまま新塗膜が塗られる事で、塗替工事の数年後にサビが再発する再劣化の問題もはらんでおりました。CoolLaserは、既存工法に無い価値の一つとして、塩分除去効果があげられます。レーザー光が、塩分を蒸発プロセスにより除去する事で、再劣化を防ぎ塗替工事の周期を長期化させ、橋梁のライフサイクルコストを低減させる事が期待されています。人口減少社会において、これまでのように再劣化に伴い塗替工事を繰り返す人的余裕は無くなってくると考えられます。以下の価値を兼ね備えたCoolLaserは、まさに次世代のインフラメンテナンス手法として貢献できると考えております。
1.産業廃棄物を大幅に削減することが期待されます(光を用いる事で、ブラスト工法の研削材や、ウォータージェットの汚水、剝離剤の廃液の様な、二次産業廃棄物が一切発生しません)。
2.サビや塩分の高品質な除去が可能で、塗替工事の頻度を低減させ、ライフサイクルコストを削減させることが期待されています。
3.ブラスト工法やウォータージェット工法の様な反力が無いため、作業負荷が軽くなります。また、生じる粉塵も即座に自社開発した特殊な集塵機で吸引する事で、作業環境がクリーンに保たれるため作業者に優しいと考えられます。クリエイティブな新技術を導入する事で、若い担い手などをインフラメンテナンス現場の労働力として確保することに繋がる事も期待されます。
4.反力が無い事で制御がしやすいため、省人化・高効率化に向けたロボット化が容易になります。
プロダクト・技術の強みとして、当社は、「レーザー光の円形照射による対象物(サビ・塗膜)の除去」を日米で権利化しており、競争優位性を築いております(特許第5574354号、US-9868179 図4)。
塗替工事における下地処理等のメンテナンスには、これまで塗膜除去(剥離剤など)、素地調整(ブラストなど)、塩分除去(ウォータージェットなど)と、各工程に異なる装置を用いる必要がありましたが、CoolLaserであればこれら3つの工程を一気通貫で完結させる事も可能となります。また、現在橋梁の素地調整に用いられるブラスト工法では、研削材が大量に産業廃棄物として生まれ、鉛やPCBが含まれる塗料を除去する場合には、産業廃棄物の処理コストも高額となりますが、CoolLaserは研削材等の産業廃棄物が生じないため、産廃処理コストを大幅に削減する事が出来ます。CoolLaserは、ドイツや米国、中国などにおける他のレーザークリーニング装置と比較して、以下の優位性(強み)があります(図5)。
・一般的には100W~1kWのレーザー出力が主流である一方で、5.4kWの高出力化を実現できます。
・レーザー光の長距離伝送は難しい技術ですが、当社は屋外工事用途にフォーカスし、開発を進めてきた結果、屋外土木工事に対応できる最大100mの光ファイバーケーブルを通じたレーザー光の長距離伝送により、施工範囲を実現できます。
・高出力のレーザー光が一点に照射され続けると、溶接や切断に使われる様な溶融現象が起き、鋼材にダメージを与えてしまうため、レーザー光を高速でスキャン(走査)する必要があります。当社の円形照射の特許技術は高速スキャンの方法として、同一方向に100%の運動エネルギーを利用できる円運動であるため、高出力レーザーの熱影響回避の技術として他のスキャン方法に比べ優位性があります。
CoolLaserはこれらの特許技術を活かす事で、5.4kWの高出力を実現出来ており、表面処理の品質や施工スピードの速さの観点から、この工法のフロントランナーとして確固たる優位性を築いております。
=装置売上=
「CoolLaser G19-6000」シリーズを製造し、CoolLaserを用いてメンテナンス工事を受注・提供していきたい建機レンタル会社や工事会社、及び自社のインフラをメンテナンスしたいインフラオーナー等のユーザーに対して、1億円程度で装置の販売を行います。なお、組み立てについて、レーザーヘッド部分については当社にて組み立てを行い、それ以外の部分は製造委託先工場にて組み立てを行います。出荷前に当社でこれらを結合し、性能評価を行ったのち、出荷を行います。
また、CoolLaserは工事に用いられる事でいくつかの消耗品が発生します。例えば、レーザーヘッド先端部で粉塵からヘッド内の光学系を守る保護レンズや集塵機のフィルター、作業者の目を守るためレーザー光の波長を減衰させる保護メガネなどの保護具を、当社から装置所有者に対して販売を行います。
=保守売上=
CoolLaserはシステムやレーザーヘッドについて定期的なメンテナンスを行う必要があります。これについては、当社は装置所有者と保守契約を締結し、役務の提供を行います。
=施工売上=
主に装置の研究開発や市場分野開発を目的とした試験施工を中心とし、依頼内容によっては本施工も行っております。すなわち、CoolLaserの導入の検討や、CoolLaserによるサビや塗膜除去などの工事を依頼したい発注者(施工対象のインフラ構造物の所有者であり、道路や橋は国・地方自治体が主体、鉄道橋や鉄塔、プラントは民間企業が主体)から、当社が元請ないし下請となり、工事の役務を提供しております。なお、当社はCoolLaser工法を当社に限定せず、全国のインフラオーナーや工事会社に活用頂き、日本のインフラメンテナンスに共に取り組んで頂きたいと考える事から、施工売上を積極的に伸ばす事をせずに、先述の装置売上及び装置提供後の保守契約や、消耗品の販売などの継続収益により企業成長して参りたいと考えております。
【業績等】
決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益
2025/03 単独3Q累計実績 1,538 264 247 268
2025/03 単独会社予想 1,891 184 165 161
2024/03 単独実績 1,095 -189 -157 -158
2023/03 連結実績 1,119 -212 -117 -119
決算期 種別 EPS BPS 配当
2025/03 単独会社予想 13.60 140.79 0.00
上場時発行済株数 13,026,600株(別に潜在株式1,167,000株)
公開株数 4,255,000株(公募1,000,000株、売り出し2,700,000株、オーバーアロットメント555,000株)
調達資金使途 CoolLaser事業における応用開発、CoolLaser事業における新規拠点の設備投資、借入金返済
欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)
PER:53.6
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:30.8億
公募時時価:95億
【株主構成】
豊沢一晃 代表取締役CEO 5,083,025 38.53% 売出250,000株 180日
豊沢弘康 元代表取締役 1,135,000 8.60% 売出535,000 180日
白井元 取締役CFO 984,410 7.46% 売出250,000 180日
建装工業(株) 資本業務提携先 500,000 3.79%
(株)トヨコー従業員持株会 特別利害関係者など 464,850 3.52% 180日
大和ハウスグループ共創共生1号投組 投資業(ファンド) 428,500 3.25%
鈴与建設(株) 資本業務提携先 425,500 3.23% 180日
鈴木紀行 取締役COO 390,000 2.96% 売出210,000 180日
匿名 従業員 312,685 2.37%
前田建設工業(株) 資本業務提携先 300,000 売出300,000 2.27%
第一カッター興業(株) 資本業務提携先 300,000 2.27%
太平電業(株) 資本業務提携先 300,000 2.27%
その他売出し
合同会社M&H400,000株
株式会社ikplanning200,000株
第一カッター興業株式会社150,000株
NCBベンチャー投資事業有限責任組合125,000株
日本郵船株式会社105,000株
臼木 和臣100,000株
静岡キャピタル9号投資事業有限責任組合75,000株
本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、貸株人かつ売出人である株式会社ikplanning、売出人である豊澤一晃、白井元、豊澤弘康、合同会社M&H、鈴与建設株式会社、臼木和臣及び第一カッター興業株式会社並びに当社株主である株式会社トヨコー従業員持株会、株式会社エヌエスティー、株式会社グリンティー、デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社、株式会社フォウス、佐々木輝、藤田和久、山本光学株式会社、阿部洋、茂見憲治郎及びその他1名は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2025年9月23日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。
当社株主である鈴木紀行は、主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2025年9月23日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式及び株式会社日本政策金融公庫から買取る予定の第2回新株予約権並びに当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。
売出人である静岡キャピタル9号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2025年6月25日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等(ただし、その売却価格が募集における発行価格又は売出しにおける売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う売却等は除く。)を行わない旨を約束しております。
【代表者】
代表者名 豊沢 一晃(上場時48歳6カ月)/1976年生
本店所在地 静岡県富士市青島町
設立年 1996年
従業員数 39人 (2025/01/31現在)(平均43.4歳、年収628.1万円)
事業内容 3層の樹脂をスプレーコーティングして強靱な屋根によみがえらせる「SOSEI」の施工および老朽化したインフラのサビや塗膜などをレーザーで除去する「CoolLaser」の製造・販売
URL https://www.toyokoh.com/
株主数 33人 (目論見書より)
資本金 20,000,000円 (2025/02/25現在)
代表者生年月日 1976年09月03日生まれ
代表者略歴
1996年04月 株式会社ジャパンアートプランニングセンター 入社
1999年01月 個人事業主としてデザイン業を開始
2003年07月 当社 入社、当社 取締役 就任
2014年05月 当社 代表取締役CEO 就任(現任)
2017年06月 株式会社ikplanning 代表取締役 就任 (現任)
【幹事団】
主幹事証券 SMBC日興 - -
引受証券 大和 - -
引受証券 みずほ - -
引受証券 SBI - -
引受証券 松井 - -
引受証券 マネックス - -
【参考類似企業】今期予想PER(3/7)
1433 ベステラ 17.8倍 (連結予想)
1450 田中建設 8.7倍 (単独予想)
1716 第一カッター 8.8倍 (連結予想)
1972 三晃金 8.5倍 (単独予想)
5451 淀川鋼 13.6倍 (連結予想)
5699 イボキン 7.5倍 (連結予想)
5935 元旦 6.5倍 (単独予想)
【私見】
SOSEI工法という独自の技術で、以前のベステラのようなイメージはあり業種妙味のある銘柄です。赤字が続いていましたが、今期黒字予想で中期では伸びていきそうであります。ですが、建設業でPER50超と割安感はないので、高い成長力は求められるのでしょう。吸収金額はそこそこあり、ロックなしのVCもいるので、初値段階では大きく上がらなそうですが、時価総額はそこまで大きくはないので中期では注目したい銘柄です。
想定価額:700円
仮条件上限:730円
初値予想:850円
ブック申し込み度・・・やや強気
セカンダリー期待度・・・中立
総合評価:3.5
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