2019年3月12日火曜日

IPO分析(日本ホスピスHD)

【事業内容】
 当社グループは、当社、連結子会社であるナースコール株式会社及びカイロス・アンド・カンパニー株式会社で構成されており、「在宅ホスピスの研究と普及」をミッションとして掲げ、「看取り」へ対応するケア(=ターミナルケア)を、末期がん患者と難病患者を対象として提供しております。これは、家で自由に過ごしたいという希望、痛み苦しみを和らげて欲しいという希望の両方を叶えるためのケアサービスです。 
 「看取り」は、超高齢社会における重要課題の一つであり、年々増え続ける日本の死亡者数は、2039年には約167万人に達すると予測され、これは2017年の死亡者数と比較して約33万人も多く、この方々の「最期を迎える場所」が不足していることが大きな課題となっています。 
  
[ 連携で利用者を支えるホスピス住宅 ] 
ホスピス住宅の提供は、看護師・リハビリ療法士・介護士がチームを組んで施設ごとにケアサービスを行うことであり、在宅ホスピスサービスの提供は、訪問看護、看護小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援事業所、訪問介護、通所介護、24時間定期巡回・随時対応型訪問看護介護等を組み合わせる形で行っており、いずれも「地域包括ケアシステム※」の一翼としてケアサービスを行うことであります。 

[ 人生の仕上げを支えるホスピス住宅 ] 
当社グループのターミナルケアは、「死」を意識する状況にあって、人生の仕上げ期をどう過ごすかを一緒に考えるところから関わっております。命を救うことを目的とする病院、介護サービスの提供を目的とする介護施設とは、関わり方や目的が異なり、当社グループでは、「死」は人生のゴールであり、悲しみは伴うものの忌み嫌うべきものではないと考え、各々が各々の人生の最終段階を迎えられるよう、「死」と向き合い、「死」を恐れず、人生の仕上げを実現できる社会の実現に貢献したいと考えております。 

[ 末期がん・難病患者を取り巻く環境 ] 
高度な医療・急性期医療を担う医療機関の多くは、入院患者を在宅生活に復帰誘導する使命を課せられている一方で、病院における入院生活では、患者は少なからず制約を受けるため、自由度の高い自宅へと戻ることは多くの入院患者の望みでもあります。しかしながら、現実には医療機能が脆弱で介護力の無い自宅では家族の負担が大きく、また、痛みや苦しみを和らげてくれる緩和ケアも必要となります。従って、退院後も医療ケアを必要とする多くの患者には、24時間365日対応してくれる訪問看護が不可欠となっております。 
特に、末期がん又は難病等の患者は頻回なケアを必要としており、広域事業者の連携だけでは退院直後に必要となるケアの量が確保出来ず、また退院後の病状の進行に伴って自宅療養が限界となることが少なくありません。 

[ 多様なニーズに対応可能なホスピス住宅 ] 
当社グループでは、厚生労働省の医療政策を背景として入院日数の短縮を迫られている医療機関、自宅に戻り自由度の高い生活を過ごしたい患者、これら双方のニーズを満たすことを目的として、24時間365日対応が可能な訪問看護、訪問介護及びホスピス住宅を組み合わせて在宅ホスピスを展開しております。また、当社グループの在宅ホスピスは、医療・介護保険、福祉制度に基づいており、具体的には、訪問看護・訪問介護・ホスピス住宅をベースに、地域の状況に応じて居宅介護支援事業所によるケアプランニングやその他の在宅ケアを組み合わせたサービスとなっております。 

[ 当社グループの収入について ] 
当社グループは、在宅ホスピスを提供することにより、訪問看護料、訪問介護料及びホスピス住宅に係る家賃収入等を得ております。訪問看護料は、国民健康保険団体連合会、社会保険診療報酬支払基金より支払われる診療報酬及び利用者からの自己負担金で構成されており、訪問介護料は、国民健康保険団体連合会から支払われる介護保険料と利用者からの自己負担金で構成されております。ホスピス住宅に係る家賃収入は、ホスピス住宅の入居に際して、入居者との間で賃貸借契約を締結しており、これに基づいて毎月の家賃等を収入として得ております。 
なお、当社グループの主な収入は、医療保険、介護保険等による保険収入であります。 

当社グループの提供する「在宅ホスピス」は、(1)ホスピス住宅の提供と、(2)在宅ホスピスサービスの提供の形で展開しておりますが、それぞれについては次のとおりです。

(1) ホスピス住宅の提供 
当社グループの運営するホスピス住宅は、入居者を末期がん患者や難病患者等に限定した賃貸住宅(=ホスピス住宅)です。具体的には、サービス付き高齢者向け住宅又は住宅型有料老人ホームの指定を受けた住宅であり、訪問看護と訪問介護事業所を併設又は近設し、ケアサービスを提供しております。 
ホスピス住宅のメリットは、緩和ケアを行う看護師が24時間365日傍にいてくれることであります。痛みや苦しみの症状をコントロールすることは簡単ではありませんが、看護師が人生観、死生観を伺い、人生の終盤の過ごし方、やりたいこと等を盛り込んで個人ごとに必要なケアをプランニングしていきます。入居者の静かに過ごしたい、音楽を聴きたい、人に会いたい等の個々人の生活をサポートし、お花見、お墓参り、お寿司を食べに行く、孫の結婚式に出る、家族と温泉に行く等の希望を叶えながら、人生の総仕上げのお手伝いをする場所としてサービスを提供しております。 

① ホスピス住宅
ホスピス住宅は、入居者にとっても、家族にとっても最良であることを願って作ったものであります。末期がん患者や難病患者の人生の最終段階には、痛みや苦しみを取るというケアが必要となります。積極的治療の選択肢がなくなった最終段階では、患者は「おうちに帰り自由に過ごしたい」と願いますが、それを実現するには家族の協力、相当な負担を負うという覚悟が必要となります。この医療面の安心感、おうちで暮らす環境の両方の実現を目指し、当社グループではホスピス住宅を提供しております。 
ホスピス住宅では、複数の看護師を配置していることから、末期がん患者への緩和ケアサービスの提供が可能であり、入居者が入浴すること、自由に外出することも出来るという特徴があります。また、難病患者も入居する事が可能で、食事を楽しみ、家族が自由に出入りできることで家族との関わりを大事に出来るという特徴があり、そのためにもホスピス住宅には、24時間体制でスタッフが常駐し、相談業務、緊急対応を行う等の生活支援サービスを提供しております。 
また、当社グループのホスピス住宅の特徴の一つとしては、食事サービスを提供していることが挙げられます。食べることは栄養を摂ることだけではなく、人の命、人生と深く関わっていると考えており、大好きなものを食べれば元気が出たり、想い出の食事に思いを馳せたりすることもあります。口から食べられる喜びは、たとえ一口でも感じることができ、当社グループではこのことをとても大事な要素と考えております。 
なお、食事サービスは、施設によって委託方式と自社運営方式があり、委託方式の場合には、専門業者に食事サービスを委託しており、自社運営方式の住宅には調理スタッフを配置しておりますが、いずれの場合も末期がん患者や難病患者のニーズに応え食事を提供しております。 
当社グループのホスピス住宅の展開に関しては、土地オーナーに対して土地活用の一環としての提案をしておりますが、居室数が平均して30室前後であるために広い土地を必要とせず、建物投資額(土地オーナーの負担)を低く抑える事が出来ると考えております。そのため、立地条件の制約が少なく、ホスピス住宅の候補地をシビアに選ぶ必要がないため、新規施設の展開が比較的容易であるという点が特徴であります。 

② 訪問看護・介護サービス 
ホスピス住宅に併設又は近設する訪問看護及び訪問介護事業所は、24時間必要なケアサービスを提供できる体制を整えております。訪問看護や訪問介護に従事する社員にとって、ホスピス住宅を一つのチームとして、組織として、24時間365日対応の在宅医療を実現することで、安心して働ける職場環境を整えております。特に難病患者の人生の最終段階においては、24時間の介護サービスが必要となることから、介護士にも、深い理解やスキルが要求されます。 

(2) 在宅ホスピスサービスの提供 
住み慣れた自宅での療養生活の継続を目的として、訪問看護を中心に、看護小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援事業所、訪問介護、通所介護、24時間定期巡回・随時対応型訪問看護介護などを組み合せた在宅ホスピスサービスを提供しております。 

① 訪問看護
訪問看護サービスの対象者は医療的ケアを必要とする方であり、医師から指示書を受け取った看護師は看護計画を作成し、医療保険と介護保険による訪問看護サービスを提供しております。在宅支援診療所の医師と連携しますが、在宅療養のベースを作るのは看護師であり、ホスピス住宅と連携することで、組織的な働き方を可能としております。訪問看護事業所には、看護師の他、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士らリハビリ専門スタッフが所属しております。 

② 看護小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護は、地域包括ケアシステムの中で普及の期待が高いサービスとして、在宅看取り率を上げるために平成24年に厚生労働省が新たに創設した「複合型サービス」であり、平成27年に「看護小規模多機能型居宅介護」に名称変更された介護保険サービスであります。 
当社グループにおける本サービスの利用者の多くは、人生の最終段階や重篤な疾病を抱えている方であり、ホスピス住宅との連携が欠かせません。本サービスは、訪問看護に併設して運営することで医療的ケアに対応し、「通い」「泊り」「訪問」の3つのサービスを組み合せた包括的なケアを特長とするサービスであり、ホスピス住宅との親和性が高いサービスと考えております。また、「泊り」サービスを利用しながらの看取りにも対応しております。 

③ 居宅介護支援事業所 
居宅介護支援事業所ではケアマネージャーを配置しケアプランの作成を行っております。当社グループの利用者は、医療保険サービスと介護保険サービスの併用者が多く、難病患者においては障害者総合支援サービスまで利用している方も多く、非常に複雑なケアプランを作成する必要があります。 
当社グループの在宅ホスピスサービスの実現には、ケアマネージャーが医療保険や介護保険、障害者総合支援を深く理解する必要があるため、当社グループではケアマネージャーの育成も行っております。その他、当社グループ外のケアマネージャーにケアプランの作成をお願いすることもあり、地域と連携して事業を行っております。 

④ その他の介護保険サービス 
上記以外の介護保険サービスとして、前述した訪問看護と親和性が高く、利用者に相乗的メリットを提供できる、訪問介護、通所介護、24時間定期巡回・随時対応型訪問看護介護を提供しております。 
当社グループの訪問看護は、医療ニーズの高い利用者、末期がん患者、難病患者等であることから、利用者のニーズを考慮して、訪問介護や通所介護を、訪問看護と併設すること等によって、複数の介護サービスを組み合わせた一つのチームとしてケアサービスを提供しております。 


【業績等】
業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益 
(連結実績)2016.12 997 -158 -208 -197 
(連結実績)2017.12 1,895 49 -40 -60 
(連結見込)2018.12 3,015 242 133 149 
(連結予想)2019.12 4,251 - 407 312 

1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当 
(連結予想)2019.12 42.44 - - 
調達資金使途 採用活動費、人件費、賃借料、その他諸経費 

上場時発行済み株数 7,444,000株 (別に潜在株式1,150,000株) 
公開株数 2,185,000株(公募350,000株、売り出し1,550,000株、オーバーアロットメント285,000株)シンジケート 公開株数1,900,000株 (別に285,000株)

PER:23.6
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:21.9億
公募時時価:74億
    

【株主構成】 以下全て90日  
J-STAR二号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 4,008,000 48.62 
MIDWEST MINATO ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,497,000 18.16 
Pacific Minato II ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,389,000 16.85 
高橋 正 代表取締役社長 500,000 6.07 
加藤 晋一郎 常務取締役 300,000 3.64 
稲津 隆夫 取締役 160,000 1.94 
笹本 哲 子会社の取締役 160,000 1.94 
宮地 宗男 子会社の取締役 120,000 1.46 
関 洋晃 従業員 50,000 0.61 
小笠原 利枝 子会社の従業員 40,000 0.49 

本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人及び貸株人であるJ-STAR二号投資事業有限責任組合、MIDWEST MINATO, L.P.及びPacific Minato Ⅱ, L.P.は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の平成31年6月25日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等は除く。)は行わない旨合意しております。
 当社の株主である高橋正、当社の新株予約権者である加藤晋一郎、稲津隆夫、笹本哲、宮地宗男、関洋晃、小笠原利枝及び本田凛太郎は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の平成31年6月25日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等を行わない旨合意しております。
 また、当社は主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の平成31年9月23日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の発行、当社株式に転換若しくは交換される有価証券の発行または当社株式を取得若しくは受領する権利を付与された有価証券の発行等(ただし、本募集、株式分割及びストックオプションとしての新株予約権の発行等を除く。)を行わない旨合意しております。


【代表者】
代表者生年月日
1962年01月21日生まれ 

代表者略歴
1984年04月 三宿工房入所 
1987年08月 坂倉建築研究所入所 
1991年05月 マニフィールド(株) 取締役就任 8月:(株)丸山工務所 入社 
1996年10月 (株)ラウンズ 取締役就任 
2008年08月 (株)ユーミーケア 代表取締役就任 
2011年12月 オン・アンド・オン(株)(現・カイロス・アンド・カンパニー(株)) 代表取締役就任 
2014年08月 ナースコール(株) 代表取締役就任 
2017年01月 当社代表取締役社長就任(現任) 


【幹事団】
主幹事証券 野村 1,710,000 90.00 
引受証券 SBI  38,000 2.00
引受証券 岡三 38,000 2.00
引受証券 静銀ティーエム  19,000 1.00 
引受証券 岩井コスモ 19,000 1.00  
引受証券 エース  19,000 1.00 
引受証券 いちよし  19,000 1.00 
引受証券 松井  19,000 1.00 
引受証券 マネックス  19,000 1.00 


【参考類似企業】今期予想PER(3/1)
2137  Hヴェラス 9.3倍(単独予想 )
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【私見】
 完全な初物業種で高齢化に向かって時流にも乗っていて業種的には抜群に良いです。
業績も悪くなく、PERでは測れない業種かと思います。需給としては、筆頭株主がVCで売出をメインとしたIPOではありますが、規模的にはそこまで大きくなく、VCのロックも90日かかっており問題ありません。90日限定ですが、セカンダリーも気になる銘柄です。


想定価額:780円
仮条件上限:1000円
初値予想:1800円
ブック申し込み度・・・強気
セカンダリー期待度・・・中立~やや強気
総合評価3.5


4 件のコメント:

  1. IPO参加者の評価も微妙な銘柄なので、こたさんの評価通りならBBもセカンダリーも狙い目ですね!

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  2. 同時上場なので初値はもう少し低いかもしれませんが、私は評価してます。

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  3. お見事です。ただ、全力で取りに行きましたが、初値一致点に指値をしてしまったばかりに、一部しか約定しないまま上へいってしまいました。残念です。こたさんのこの銘柄のターゲットプライスはおいくらぐらいでしょうか?NATTY SWANKYも安く寄ったので買いました。他社比較で割安なので、我慢していれば上がりそうですね。

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  4. 初日ストップ高で失速する銘柄は多いので明日次第です。
    ナッティーが安かったので購入しましたが、ここまで下がるのは意外です。

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