2019年12月4日水曜日

IPO分析(フリー)

【事業内容】
(1) サービス概要
 スモールビジネスのバックオフィスの生産性向上に寄与するSaaSサービスを開発・提供してまいりました。具体的には、2013年3月に「クラウド会計ソフトfreee」を、2014年10月に「クラウド給与計算ソフトfreee」をリリースしました。その後も、2015年6月に「会社設立freee」を、2016年10月に「開業freee」及び「申告freee」をリリースし、サービスの拡充に努めてまいりました。なお、「クラウド給与計算ソフトfreee」は2017年8月に「人事労務freee」にリブランドしております。
また、当社は、金融サービスの展開に向けて、2018年10月にフリーファイナンスラボ株式会社を設立し、2019年6月には「資金繰り改善ナビ」をリリースしております。

(2) 統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフトを提供する「freee」が選ばれる理由
当社グループが提供するサービスは、資本、人材に限りのあるスモールビジネスにおける利用を前提に設計・提供しており、独自性の高い統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフトとして、下記の特長がユーザー企業に支持されています。

① カンタン、自動化
一般的な会計ソフトは、すべての取引を複式簿記形式の仕訳として手動で入力する必要があり、多くの手間を要するという課題があります。「クラウド会計ソフトfreee」においては、例えばクレジットカードや銀行の口座との同期を行うことで、金融機関のトランザクションデータを自動的にサービス上に取り込み、AIにより自動で仕訳を行うことができます。これにより、ユーザー企業は手作業や手入力にかけてきた時間と工数を削減し、生産性を向上させることが可能です。

また、「クラウド会計ソフトfreee」は、簿記の知識がない人でも直感的に使用可能なユーザー・インターフェイスを提供しており、専門人材の確保が容易でないスモールビジネスが自社で財務会計や管理会計までを実施することも可能にしております。
さらに当社グループでは、会計ソフト業界において早期よりモバイル対応の開発を行ってまいりました。「クラウド会計ソフトfreee」のモバイルアプリは、直感的に操作しやすいユーザー・インターフェイスを有し、簡単かつ効率的に業務を行うことができます。その結果、このモバイルアプリは、2万件以上のユーザー評価をいただき、5段階評価で平均4.4の高評価を獲得するなど、多くのユーザーから支持を集めております。
また、スモールビジネスにおいて、会計業務に次ぐ大きな負担となっていると当社グループが考えているのが、給与計算及び給与計算に関連する人事労務業務です。例えば、社会保険や源泉所得税などの専門的知識が要求される上に、勤怠情報や従業員の扶養状況などの詳細な把握が求められ、さらに、申告や様々な届け出が必要となります。
「人事労務freee」では、従業員が必要な情報を登録し、勤怠をつけるだけで、会社の給与計算やそれに付随する申告書類の作成などを自動化することができるため、専門的知識がなくても利用可能です。
② バックオフィスオートメーション
一般的な単機能型会計ソフトが担う領域は経理業務全体の一部である記帳処理に留まり、上流工程である業務は別のソフトウェアやソリューションを使用する必要があります。例えば、販売業務に関連する請求書発行や入金消込、仕入業務に関連する購買申請や支払業務は、それぞれ会計ソフトとは異なるソフトウェアや、紙と印鑑などを使用したオペレーションが用いられていたため、各業務が分断され、非効率な業務構造となっています。加えて、同一の取引に係る情報について、会計ソフトへの転記作業を要し、さらに手入力ミスを防止するための確認作業を要するという課題があります。
「クラウド会計ソフトfreee」は、スモールビジネス向け統合型会計ソフトであり、請求書機能やワークフロー機能を同一のソフトウェア上で提供しているユニークな設計を特長としており、経理業務の枠を超えたバックオフィス全体の効率化にも寄与します。例えば、「クラウド会計ソフトfreee」上にて作成した請求書の情報は、売掛金として自動で帳簿に登録され、かつ債権管理台帳にも登録されます。その債権情報と、銀行のオンライン口座の入金情報との連携により、自動的に債権の消込が行われます。一方、仕入取引又は経費支払の場合も、受領した請求書をスキャンして取り込むと、買掛金や未払金として自動で会計帳簿及び債務管理台帳に登録されます。加えて、登録された債務は「クラウド会計ソフトfreee」の中から一括で振込指示を行うことができ、債務の消込も自動的に行われます。
このように、統合型会計ソフトである「クラウド会計ソフトfreee」のソフトウェア上で上流工程にあたる業務を行うことで自動的に会計帳簿が作成されるため、経理業務自体も大幅に効率化されます。
同様に、人事労務の領域においても、従来は、従業員基礎情報、勤怠管理、給与計算、保険・行政手続、マイナンバー等の人事関連の定型業務に係る情報のマスタが別個のソフトウェアに散逸し、マスタ間の転記及び整合性担保に手間とコストが生じているケースが見られました。
「人事労務freee」も統合型人事労務ソフトとしての性質を持ち、従業員基礎情報の構築から給与計算及び行政手続等に至るまでのデータを一元管理することで、人事労務に係る定型業務を単一のソフトウェア上で完結し、人事労務担当者の負荷を軽減するとともに、従来の転記に伴うミスを避けることが可能となります。これにより、人事労務に係る定型業務の大幅な効率化につながります。

(3) サービスラインナップ
①「クラウド会計ソフトfreee」
個人事業主及び法人向けに提供している統合型クラウド会計ソフトです。
銀行口座やクレジットカード等との連携、請求書発行から入金管理、各種稟議や支払依頼など日々行われる経理の上流工程業務との統合により、手入力によるミスを防ぎ、経理作業にかかる時間を大幅に削減することが可能となります。同時に、上流工程業務まで含めた日々のデータを活かして、リアルタイムでの経営指標のモニタリングや詳細かつ打ち手に繋がる経営分析を可能としております。
さらに、従業員に個別アカウントを付与し、ワークフロー機能を利用することで、更なる業務の効率化と内部統制の整備にも寄与します。なお、ワークフロー機能は、承認プロセスの証跡を有していることから、上場企業に求められる内部統制報告制度に対応しており、上場準備企業及び上場企業における利用も非常に効果的です。
また、個人事業主向けプランにおいては、所得税の確定申告までを完結することが可能です。

②「人事労務freee」
法人向けの統合型クラウド人事労務ソフトです。
人事労務業務は、給与計算、勤怠管理、保険・行政手続、マイナンバー管理等と多岐にわたり、かつ従来は業務毎で使用するツールが異なるなど、複雑に分断されているという課題がありました。

従業員一人一人が、「人事労務freee」の従業員用アカウントを用いて、個人情報や勤怠情報を入力することにより、給与計算や年末調整の自動化に加えて、労務の諸手続の自動化や従業員マスタとなるデータベースの構築を可能とします。
また「クラウド会計ソフトfreee」と「人事労務freee」を連携することで、給与情報を「クラウド会計ソフトfreee」に自動で転記できるほか、「クラウド会計ソフトfreee」にて申請した経費精算について「人事労務freee」にて計算した給与と一緒に支払うことが可能です。さらに、従業員マスタにおける役職や組織構造を反映したワークフローを、「クラウド会計ソフトfreee」において自動で運用することが可能です。

③「会社設立freee」「開業freee」
「会社設立freee」は会社設立時に、「開業freee」は個人事業主としての開業時に提出を求められる書類の作成を効率化できる無料のサービスです。
会社を設立したり、個人事業主として開業したりするには、各種書類の作成から、関係者の捺印、役所への提出手続など、手続が多岐にわたる上、同じ情報を複数の書類に記載する必要があるなど、多くの課題がありました。
「会社設立freee」及び「開業freee」は、会社設立や開業に係る知識がない場合でも、Q&A形式で必要な情報を入力していくことで、必要な情報を各種書類に転記し、必要なすべての書類を自動で作成することが可能です。

④「申告freee」
「申告freee」は、主に会計事務所向けに提供している、「クラウド会計ソフトfreee」とシームレスに連携したクラウド型税務申告ソフトです。従来の税務申告ソフトは、会計ソフトとは分断されていたことから、会計ソフトから出力したデータを税務申告ソフトに入力する必要があるなど、多大な労力や時間がかかるという課題がありました。
「申告freee」の利用により、これまでプロセスごとに分断されていた会計と申告の業務がシームレスに連携し、「クラウド会計ソフトfreee」に入力された財務情報をもとに税務申告書を自動的に作成することができ、更に、作成した申告書を電子申告することができます。
また、会計事務所は、顧問先とともに「クラウド会計ソフトfreee」を利用し、更に「申告freee」を利用することで、会計事務所における記帳業務、顧問先の決算、申告書類作成等の多岐にわたる業務について、ワンストップでクラウド上で効率的に管理することが可能となります。

⑤金融サービス
スモールビジネスの資金繰り改善を企図した金融サービスとして、当社が「freeeカード」、フリーファイナンスラボが「オファー型融資」、「請求書ファイナンス」等を提供しております。
「freeeカード」は、従来クレジットカードを作成することが容易でなかった個人事業主や中小企業に特化した事業用クレジットカードです。経費精算や仕入れなどの現金取引のキャッシュレス化によりバックオフィス業務の効率化を、またクレジットカード明細を自動で「クラウド会計ソフトfreee」と同期することにより経営状況の可視化を実現します。なお、「freeeカード」は、当社との提携に基づきクレジットカード会社が発行しております。
「オファー型融資」は、フリーファイナンスラボと金融機関が連携して提供する融資サービスであり、融資を受けられる可能性の高い「クラウド会計ソフトfreee」のユーザー企業に対して、借入可能額や金利などの借入条件をフリーファイナンスラボが試算し、提示します。従来の金融サービスは、申込み後に審査に落ちてしまうリスクがあり、ユーザー企業にとって、金融機関に融資を申込むことへの精神的なハードルが存在していました。「オファー型融資」は、各金融機関と提携し、フリーファイナンスラボが事前に借入可否と条件を試算して提示することにより、ユーザー企業の融資申し込みへの精神的なハードルの解消を実現しております。
「請求書ファイナンス」は、クラウドファクタリング企業と連携して提供する請求書買い取りサービスであり、「クラウド会計ソフトfreee」に登録されている売掛債権を、オンラインで現金化することができるサービスです。

【業績等】
業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益
(単独実績)2018.6 2,414 -3,401 -3,399 -3,405
(連結実績)2019.6 4,516 -2,830 -2,850 -2,778
(連結予想)2020.6 6,941 - -3,127 -3,135
(連結1Q実績)2020.6 1,491 -486 -488 -490

1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当
(連結予想)2020.6 -76.10 126.56 0
調達資金使途 広告宣伝・販売促進、人件費、研究開発
上場時発行済み株数 46,639,891株 (別に潜在株式6,144,900株)
公開株数 18,566,000株(公募5,435,200株、売り出し12,041,100株、オーバーアロットメント1,089,700株)

PER:
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:371億
公募時時価:932億
    
【株主構成】
佐々木大輔 代表取締役CEO 11,790,000 24.90  360
DCM VI, L.P. ベンチャーキャピタル(ファンド) 5,520,087 11.66  360
A-Fund, L.P. ベンチャーキャピタル(ファンド) 3,239,712 6.84 360
IVP Fund II A, L.P. ベンチャーキャピタル(ファンド) 2,388,000 5.04  180
(株)リクルート 特別利害関係者など 2,277,267 4.81  360
横路隆 従業員 2,250,000 4.75  360
LINE(株) 特別利害関係者など 2,093,022 4.42
Palace Investments Pte. Ltd. ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,760,796 3.72 180
(株)SMBC信託銀行(特定運用金外信託口) ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,500,000 3.17 180
東後澄人 取締役CFO 1,488,000 3.14 180
IVP Fund II B, L.P. ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,260,000 2.66 180
グローバル・オファリングに関連して、売出人かつ貸株人である佐々木大輔、売出人であるDCM VI, L.P.、A-Fund, L.P.及び横路隆、当社株主である株式会社リクルートについては、元引受契約締結日から上場日(当日を含む。)後360日目(2020年12月10日)までの期間(以下、「ロックアップ期間①」という。)、売出人であるIVP Fund II A, L.P.、Palace Investments Pte. Ltd.、株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託口 契約番号12100440)、IVP Fund II B, L.P.、FinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合、ジャパン・コインベスト投資事業有限責任組合、SBIベンチャー企業成長支援3号投資事業有限責任組合、SBIベンチャー企業成長支援4号投資事業有限責任組合、SBIベンチャー企業成長支援2号投資事業有限責任組合、SBIアドバンスト・テクノロジー1号投資事業有限責任組合、SBIベンチャー企業成長支援投資事業有限責任組合、東後澄人、SBIベンチャー投資促進税制投資事業有限責任組合、野澤俊通、平栗遵宜及び武地健太、売出人である株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託口 契約番号12100440)の委託者である未来創生投資事業有限責任組合及び株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託口 契約番号12100440)の指図権者兼未来創生投資事業有限責任組合に係る投資一任業者であるスパークス・アセット・マネジメント株式会社、当社株主であるLINE株式会社、Greyhound Capital Partners Ⅰ L.P、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社AMG、ライフカード株式会社、Salesforce Ventures、T. Rowe Price Japan Fund、日本生命保険相互会社及び嶋田庄吾並びに上記に含まれない当社の新株予約権者である尾形将行、若原祥正、鈴木一也、川西康之、関口聡介、浅羽義之、原昌大、和久田龍及びその他352名については、元引受契約締結日から上場日(当日を含む。)後180日目(2020年6月13日)までの期間(以下、「ロックアップ期間②」といい、ロックアップ期間①と併せて以下、「ロックアップ期間」という。)、ジョイント・グローバル・コーディネーターの事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(但し、引受人の買取引受による国内売出し、海外売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等の一定の事由は除く。)を行わない旨を約束する書面をジョイント・グローバル・コーディネーターに対して差し入れる予定であります。
 
【代表者】
代表者生年月日 1980年09月18日生まれ
代表者略歴
2004年04月 (株)博報堂入社
2006年07月 CLSAキャピタルパートナーズジャパン(株) 入社
2007年05月 (株)ALBERT 入社
2008年05月 Google(株)(現 Google(同)) 入社
2012年07月 当社設立 代表取締役就任(現任)

【幹事団】
主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -
主幹事証券 大和 - -
主幹事証券 メリルリンチ日本 - -
引受証券 SBI - -
引受証券 野村 - -
引受証券 みずほ - -
引受証券 岩井コスモ - -
引受証券 東洋 - -
引受証券 楽天 - -
引受証券 いちよし - -
引受証券 エース - -
引受証券 ちばぎん - -
引受証券 東海東京 - -
引受証券 松井 - -
引受証券 丸三 - -
引受証券 水戸 - -

【参考類似企業】今期予想PER 11/18
3983  オロ 70.6倍(連結予想 )
3986  ビーブレイク 20.3倍(単独予想 )
3994  マネフォ -倍(連結予想 )
8591  オリックス 7.4倍(連結予想 )
 時価総額 12/2
メルカリ 3643憶
ラクス 1850憶
Sansan 1720憶
マネーフォワード 1073憶
チャットワーク 430憶

【私見】
 以前から噂されていた上場で、知名度もあり将来性もありそうで業種としては悪くないです。問題は業績で、赤字幅も大きく黒字化には時間がかかりそうで、次回の6月決算を待つには先が長いです。規模的にはマネーフォワードと同等なので適度で、VCにはロックがかかっているので問題はありません。将来的には悪くないと思いますが、現段階で参戦するにはリスクが高いかと思います。


想定価額:1800円
仮条件上限:2000円
初値予想:2000円
ブック申し込み度・・・中立
セカンダリー期待度・・・中立
総合評価3

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