2019年12月5日木曜日

IPO分析(SREホールディングス)

【事業内容】
 当社グループの事業の歴史としましては、「不動産事業」、「ITプラットフォーム事業」、「AIソリューション事業」の順で発展してまいりました。実業である「不動産事業」、ITの高度なテクノロジーとAI技術を基盤とした「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」の3つの事業を有機的に結合させた『AI×リアル』ソリューション事業を展開しております。
(1)不動産事業
当社グループは、不動産仲介サービス、IoTを活用したスマートホームサービスを展開しております。
① 不動産仲介サービス
不動産仲介サービスにおいては、専門性の高い不動産仲介エージェントが、大量の不動産取引データをAI技術によって処理する「不動産価格推定エンジン」を活用し、コンサルティングサービスを提供しております。
 当社グループの不動産仲介サービスにおいては、売主、買主の双方を担当せずにどちらか一方のみを担当し、担当する売主又は買主の利益のみを徹底追及する「エージェント制」を採用しております。当社グループの「エージェント制」においては、当社グループの担当社員は売主及び買主のどちらか一方のお客様しか担当せず、当社グループが売主及び買主の両方を担当する場合においては売主と買主にそれぞれ異なる担当社員をエージェントとしてつけるため、各エージェントにおいては、お客様の意思決定に必要となる情報をすべて開示し、お客様の自由な意思決定による不動産売却又は購入を支援しております。
一般の不動産仲介業務においては、1人の営業担当者が売主及び買主の双方を担当し、売主及び買主の双方から不動産売買仲介手数料をいただく仕組みとなっており、より物件を高く売りたい売主、より物件を安く買いたい買主の双方が満足できない取引になる可能性は否めませんが、当社グループの「エージェント制」はどちらか一方のみの立場にたち、お客様を支援することで顧客満足度の高いコンサルティングサービスを提供しております。
不動産仲介サービスは、第1期からの祖業として当社グループの安定的な収益基盤であるとともに、「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」に対して、不動産実業の知見及び不動産取引オペレーションデータを継続的に提供する重要なサービスであると位置づけております。
 
② スマートホームサービス
 スマートホームサービスにおいては、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が提供するIoTサービス「MANOMA」を搭載した、主にファンドや法人に販売する収益型不動産「AIFLAT(アイフラット)」の施工・販売を行っております。
「AIFLAT(アイフラット)」では、本来の「MANOMA」に加えて、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が提供するIoT機器「マルチファンクションライト」や超高速インターネット回線「NURO 光」も標準装備し、ホームセキュリティ機能、家電の遠隔コントロール機能、宅内における音声コントロール及びスマートロックの利用などが可能となっており、「AIFLAT(アイフラット)」のテーマであるIoTスマートホームを具現化しております。
スマートホームサービスは、当社グループの高収益なサービスであるとともに、IoT機器の利用頻度などの情報を利活用する上で重要なサービスであると位置づけております。
 
(2)ITプラットフォーム事業
 マンションの所有者が「不動産価格推定エンジン」の提示する推定成約価格などを参考に不動産仲介業者を通さずに自らインターネット上で直接マンションの売出しを行うことができるセルフ売却機能と、物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集め、問合せがあった売主に対して「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格を盛り込んだ査定書を提示し、不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上で広告し買主を募集するといった一連の不動産仲介業務を一気通貫で支援する不動産仲介業務支援機能を備えた不動産売買プラットフォームである「おうちダイレクト」をヤフー株式会社と共同で提供しております。

[おうちダイレクトの2つのビジネスモデル]
 不動産仲介業務支援機能として、①物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集める集客機能、②問合せがあった売主に対して、「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格のみならず周辺の物件の成約情報など売主の意思決定にあたって必要な情報も盛り込んだ査定書を作成する機能、③不動産仲介業者が不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上に掲載して買主を募集する広告機能及び④AI技術による優良顧客特定機能の4つの機能を提供しております。
 従来、大手不動産ポータルサイトのビジネスモデルは、不動産を購入することをSearch(検索・検討)しているユーザー向けに、不動産の広告情報を掲載する広告ビジネスであり、その後のTransaction(内見→申込→交渉→契約)プロセス全般に対して、AI技術やITによるサービスを提供しておりませんでした。これに対して、当社グループは、物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集め、問合せがあった売主に対して「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格を盛り込んだ査定書を提示し、不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上で広告し買主を募集するといった一連の不動産仲介業務を一気通貫で支援する不動産仲介業務支援機能を提供しております。その結果、複数の不動産仲介会社に不動産仲介業務支援機能をご利用頂き、不動産仲介会社を通じて得たデータ及び知見をAI技術やITにフィードバックし、AI技術の精度やITの利便性をさらに向上させております。
 
(3)AIソリューション事業
 SRE AI Partners株式会社を通じて各種業界向けにAI技術を用いたソリューションサービスを提供しております。「AIソリューション事業」としては、AIクラウドサービス及びAIコンサルティングサービスの2つのサービスを展開しております。2018年10月に事業を開始しているため、事業活動期間としては短く、事業規模としては3つの事業の中では相対的に小さい状態であります。
 
 AIクラウドサービス
AIクラウドサービスは、ディープラーニング(深層学習)技術を核とし、当社グループが持つ不動産査定のノウハウや不動産取引特有の知識を導入し開発した「不動産価格推定エンジン」など以下に記載するパッケージ化されたAIサービスを、クラウドを通じて提供するサービスであります。
「不動産価格推定エンジン」は、様々なパートナー企業と連携したデータとソニーグループのAI技術を融合し、高水準の推定精度を達成しております。また、毎週、最新のデータに基づいた機械学習モデルの更新を行うことにより、常に最新の推定価格の取得が可能となっており、不動産会社向けのAI不動産査定書サービスや、当社グループとヤフー株式会社との共同事業である「おうちダイレクト」などに活用されております。
「不動産賃料推定エンジン」は、物件の所在地、立地、築年数、所在階、間取り、広さ等の様々な情報を基に月額賃料を推定できます。
「類似物件検索エンジン」は、物件情報から類似する情報の多さや類似度合いを総合的に判断して、類似物件を検索することができます。
「物件探索マップ」は、地図上に中古マンション物件の情報をマッピングしたソリューションとなっております。

② AIコンサルティングサービス
 AIコンサルティングサービスは、マーケティング業務の効率化、営業活動の業務効率化、人事業務の効率化、需要供給予測による在庫最適化といった、顧客企業の様々な顕在的、潜在的な経営課題を「AIによる将来予測ツール」を用いて解決するコンサルティングサービスであります。
顧客企業の各業務における過去の実績データを表形式に整理したうえで、将来予測をAI技術により行うソフトウエアに入力すると、自動的に機械学習が実行され、顧客企業の経営課題を解決するための「AIによる将来予測ツール」が生成されます。顧客企業は「AIによる将来予測ツール」を業務に活用して将来予測を行うことで、業務の効率化を実現できるようになります。「AIによる将来予測ツール」は、予測精度や、予測に寄与したパラメータを、専門用語を排除してわかりやすく表示しており、直観的に操作できるユーザーインターフェイスを備えており、AI技術の高度な専門性がなくとも利用可能な、導入ハードルの低い、汎用性の高いツールとなっております。
一般的に、AI技術の導入にあたっては、「PoC」、「サーバー構築、モデル作成」、「システム化(顧客サービスへのインテグレーション)」を行い、その後実運用に進むのが通常のフローであります。そのため、導入にあたっての高いコストが導入障壁になっておりますが、当社グループでは、簡易的にAI技術を導入することで経営課題を解決することを希望される顧客には汎用的な「AIによる将来予測ツール」のみを比較的低コストで提供し、AI技術のシステムインテグレーションを希望する顧客には「システム化(顧客サービスへのインテグレーション)」まで提供するなど、顧客の要望に応じた柔軟なAI技術の提供が可能であり、大手企業から中小企業までのそれぞれのニーズにあわせた導入メニューを提供しております。
 
【業績等】
業績動向(百万円)売上高 営業利益 経常利益 純利益
(単独実績)2018.3 2,597 197 196 300
(連結実績)2019.3 2,896 426 435 259
(連結予想)2020.3 3,813 629 586 385
(連結中間実績)2020.3 1,389 260 263 168

1株当たりの数値(円) EPS BPS 配当
(連結予想)2020.3 27.27 487.56 0
調達資金使途 研究開発、販売用ソフトウエア開発、人件費及び人材採用研修費、広告宣伝、借入金の返済、営業用不動産の取得、システム開発

上場時発行済み株数 15,128,000株 (別に潜在株式849,300株)
公開株数 5,157,200株(公募1,400,000株、売り出し3,084,600株、オーバーアロットメント672,600株)

PER:97.2
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:137億
公募時時価:401億
    
【株主構成】
ソニー(株) 親会社、資本的関係会社 7,727,400 53.01 180
Zホールディングス(株) 資本的関係会社 6,000,000 41.16 180
西山和良 代表取締役社長、子会社の代表取締役社長、資本的関係会社の取締役 380,100 2.61 180
角田智弘 取締役、子会社の取締役 63,000 0.43 180
河合通恵 取締役 51,000 0.35 
青木和大 従業員、子会社の取締役 42,000 0.29 180
喜志武弘 取締役 32,100 0.22 180
清水卓 取締役 30,000 0.21 180
上出昇 外部協力者 30,000 0.21 180
久々湊暁夫 従業員、子会社の監査役 18,000 0.12 180
本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、売出人かつ貸株人であるソニー株式会社及びZホールディングス株式会社、当社株主かつ当社代表取締役社長である西山和良、並びに当社新株予約権者である角田智弘、青木和大、喜志武弘、清水卓、小野三郎、上出昇及び吉村正直は、SMBC日興証券株式会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しにかかる元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2020年6月15日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中は、SMBC日興証券株式会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

【代表者】
代表者生年月日
1975年04月09日生まれ
代表者略歴
2003年07月 ソニー(株)入社
2007年04月 同社ケミカル&エナジー事業本部・事業戦略室長
2012年04月 同社コーポレート企画推進部門・担当部長
2014年02月 同社SRE事業準備室長
2014年04月 当社代表取締役社長就任(現任)
2018年03月 (株)マネジメント・シェルパ・ソリューション取締役就任(現任)
2018年10月 SRE AI Partners(株)代表取締役社長就任(現任)

【幹事団】
主幹事証券 SMBC日興 - -
主幹事証券 大和 - -
引受証券 SBI - -
引受証券 野村 - -
引受証券 マネックス - -
引受証券 楽天 -

【参考類似企業】今期予想PER 11/22
3275  ハウスコム 12.9倍(連結予想 )
3457  ハウスドゥ 14.1倍(連結予想 )
3491  GATECH 52.4倍(連結見込 )
3796  いい生活 185.5倍(連結予想 )
4437  GDH 23.9倍(連結予想 )
8850  スターツ 9.2倍(連結予想 )
8889  APAMAN 34.9倍(連結予想 )
8898  センチュリー21 15.3倍(単独予想 )

【私見】
 不動産テックということで少し前は人気でしたが、類似業種も多く飽きられてきました。優位性としては、ソニー・ヤフー連合で母体はしっかりしていることでしょう。問題は、業績の成長率を加味してもPERは割高で、仮条件を下げても割高感は目立ちます。ロックはしっかりしているのは良いですが、吸収金額はやや大きめなので初値段階で人気になることは考えにくいと思います。

想定価額:2975円
仮条件上限:2650円
初値予想:2650円
ブック申し込み度・・・中立
セカンダリー期待度・・・中立
総合評価3

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