2018年3月1日木曜日

IPO分析(神戸天然物化学)

【事業内容】
 有機化学品の研究・開発・生産ソリューション事業を主たる業務としております。具体的には、顧客が製品開発及び製造販売のために行う研究、開発及び生産活動において必要なサンプルや製品を供給するとともに、製造方法の検討を実施しております。製品の研究から量産に至る過程では種々の課題が発生しますが、当社は顧客と協力しながら製造方法等の課題を解決して、顧客の求めるサンプルや製品を供給しております。
 対象としている有機化学品は、主に医薬分野、情報電子分野で用いる機能性を持った化学品及びその中間体であり、一般的な化学品を原料として製造致します。
 化学品の研究開発は、目的の機能を持つ化合物の化学構造を考え、それを合成し、その機能を評価し、目標の機能が得られなければ再度化学構造を考えるというサイクルを繰り返します。機能評価は、医薬、農薬、染料等の製品により独自の評価技術が必要ですが、化合物の合成は、製品の機能に関わらず有機合成化学の技術で合成できます。従って、製品開発をする会社は機能性を持つ化学品の構造式を提示し、当社は提示された化合物を合成するという分業が可能となります。
 化合物の合成自体も研究要素があり、提示された化合物の合成方法を考え、合成して、その化合物の純度や収率を評価し、収率や純度が目標以下であれば再度合成方法を考えます。(純度は、目的の物質の含有量を意味します。収率は、理論的に予想される目的物質の量に対して実際に得られた量の割合を意味します。)
 製品を開発する場合、開発する会社が製品機能評価も化合物合成も全て自社で行っていた研究開発のうち、合成の部分を当社が請け負うことによって、製品開発会社は機能評価研究に経営資源を集中できます。当社で担当した化合物合成については、単に合成するだけではなく、化合物合成研究の結果を併せて報告致します。なお、期待される化合物合成が困難な場合は、得られた科学的知見の提供及び改善策の提案等を致します。製品開発会社と当社が協力した結果、研究開発期間が短縮され、全体の研究開発の効率が上がります。
 当社では、研究・開発から量産ステージまで、化合物合成に関する顧客のデザインや改良要求を具体化して研究開発用製品として供給すると共に量産へ向けて製造方法の課題・対策を提案するというソリューションを提供致します。
 当社は、顧客のステージが研究・開発から量産へと上がるのに伴い、ステージに応じたソリューションを提供して取引を継続し、成長を牽引するモデル(ステージアップ・グロース)を目指しております。
 顧客が化合物選択あるいは製品開発の初期のステージの場合、当社は未知の新規化合物の合成、既知だが合成困難な化合物の合成、複雑な合成方法の改良、研究開発のための参考化合物の合成及び検討報告書を提供致します。
 顧客の開発候補化合物が決定し評価用に多量のサンプルを用いる場合や量産するための製造方法を検討するステージの場合、当社は開発用のサンプルやその合成中間体の供給、工場で製造するための操業条件の検討、工場で製造した製品の品質確認等を行います。
 顧客が量産ステージの場合、当社は販売用の製品やその合成中間体を製造致します。
当社は、研究設備、中規模生産設備、工場設備等、研究ステージから量産ステージまで対応できる設備を保有しておりま。化学品の取扱いは種々の法令で規制されておりますが、市販品製造では、一般的な化学品への法規制に加えて、各産業分野特有の法規制や業界基準があります。このため、当社の設備は、対象分野を明確にして医薬医療分野及び情報電子分野における法令基準や業界基準を満たした構造設備としております。
 ステージ別の売上比率の推移は以下のとおりであります。次の世代の開発、量産テーマの育成としても、研究ステージは優先順位をつけて一定率を確保しつつ、開発ステージ、量産ステージは徐々に売上額が拡大しており、「ステージアップ・グロース」システムは着実に進展しております。
 有機化学の技術は、基本的には有機化合物を合成する合成技術、精製して純度の高い製品を得る精製技術及び品質を確認するための分析技術によって構成されております。
 化合物の合成は、通常2種類以上の原料を反応させますが、反応物は通常多くの副生成物を含んでいるため、目標品質の化合物を得るための精製が必要であり、また確認のための分析が必要となります。化合物が複雑になれば、種々の原料を用いて合成反応・精製・分析の工程を繰り返して最終目的化合物を製品として取得致します。
 これまでに世界で合成された有機化合物は何千万種類もあるといわれており、用いられた合成反応は何百種類もある上に、反応条件や反応助剤の組み合わせを考えると合成反応は無限大ともいえます。このような理由から、目的の化合物を合成するためには、多種多様な反応から最適の反応を選択できること、必要に応じて新しい反応を開発できること及び反応を行う実務技術が高いことが求められます。
 当社は、合成化学の専門家を多数擁して合成反応についての顧客ニーズに応えると共にバイオテクノロジーを用いた合成技術を用いて有機合成化学だけでは対応できない複雑な化合物を合成することが可能であります。
 合成反応、精製、分析技術はそれぞれ独立して重要でありますが、相互に関係しております。例えば、選択的な合成反応ができれば精製の負荷が軽くなります。作業環境がクリーンに保てれば異物の除去工程が不要になります。精製で特定不純物を確実に除去できれば分析を省略することも可能になります。このため、製造(合成反応と精製)と分析を総合的に管理する品質保証システムが顧客満足のひとつの重要な要素となります。
 当社は、化合物の合成に特化した事業展開を行ってきたため、最終製品の機能に関わらず顧客が要望する化合物の合成を行うことが可能ですが、医薬医療分野及び情報電子産業で必要とされる化合物合成への需要が特に多かったため、これら先端産業に関する化合物合成の事業に絞り込んだ事業展開を行ってまいりました。
 また、事業の基盤となる技術について、創業時における化学技術は有機合成化学を指しておりましたが、先端産業の顧客ニーズに応えるためには常に最新技術の習得が必要であることに鑑み、次世代化学技術としてバイオテクノロジーを用いた化合物合成の検討を開始致しました。当該技術についても実験室で合成できる程度の比較的小規模の事業を開始し、その後量産設備の設置へと展開致しました。
 当社では有機化学、バイオテクノロジー、分析の技術を保有し、専門家を多数擁しており、設備は、研究・開発・量産の各ステージの顧客要望に対応した研究設備、中規模実験設備、生産工場を保有しております。技術、人材、設備に支えられた有機化学品の研究・開発・生産ソリューションを提供してきた結果、顧客の信頼を得てパートナーの地位を占めることができていると考えております。
 パートナーになるための信頼関係は短期間のうちに醸成できるものではありません。当社は、多様な技術に対応できるため過去12年間に約590社と取引を実施しておりますが、うち34社と10年以上取引を継続しております。
 当社の主要顧客(売上高の上位50社)は、国内の大手化学会社や製薬会社であり、売上の95.3%を占めます(化学会社と製薬会社の占める割合はそれぞれ55.9%、39.4%でありました)。(平成29年3月期)
 顧客の信頼を得てパートナーの地位を占めることができると取引継続年数が長くなります。平成29年3月期の顧客のうち、10年以上取引を継続している会社は全顧客数の20.3%でしたが、売上高は73.9%を占めております。 東レ・東和薬品などが主な取引先である。
                     
【業績等】
(百万円)売上高 営業利益 経常利益 純利益
(連結実績)2016.3 4,612 297 288 391 
(単独実績)2017.3 4,768 708 740 484
(単独予想)2018.3 5,817 1,031 1,010 714
(単独3Q累計実績)2018.3 4,641 1,071 1,085 717
1株当たりの数値(円)EPS BPS 配当
(単独予想 )2018.3 117.82 - 19.3 
上場時発行済み株数 7,380,000株
公開株数 2,608,200株(公募1,380,000株、売り出し888,000株、オーバーアロットメント340,200株)
PER:19.9
PBR:
配当利回り:0.8%
公募時吸い上げ資金:61億
公募時時価:172億
参考類似企業
【類似業種】
4124  大阪油化 21.4倍(単独予想 )
4187  大有機 14.1倍(連結予想 )
4577  ダイト 14.7倍(連結予想 )
【株主構成】
広瀬 克利 代表取締役社長 1,842,000 30.70  180日
KNC興産(株) 代表取締役社長の親族が保有する資産管理会社 1,512,000 25.20   180日
宮内 仁志 専務取締役 1,062,000 17.70  180日
岩本 定義 特別利害関係者など 240,000 4.00  180日
広瀬 正幸 特別利害関係者など 240,000 4.00  180日
松長 紀義 特別利害関係者など 240,000 4.00  180日
純正化学(株) 特別利害関係者など 240,000 4.00  180日
吉田 忠嗣 特別利害関係者など 180,000 3.00  180日
吉田 正博 特別利害関係者など 156,000 2.60  180日
乾 由月 特別利害関係者など 120,000 2.00  180日
ロックアップについて
 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、貸株人かつ売出人である広瀬克利、売出人である宮内仁志、岩本定義、広瀬正幸、吉田忠嗣、吉田正博、乾由月、田中孝一、髙木良博、当社株主であるKNC興産株式会社、松長紀義、純正化学株式会社、中野公介及び中野亜希子は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」といいます。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の平成30年9月10日までの期間(以下「ロックアップ期間」といいます。)中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式の売却等を行わない旨を約束しております。
 また、当社は、主幹事会社に対し、ロックアップ期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利あるいは義務を有する有価証券の発行又は売却(本第三者割当増資に係る新株式発行並びに株式分割による新株式発行等及びストック・オプションに係る新株予約権の発行を除く。)を行わないことに合意しております。
【代表者】
代表者生年月日 1941年12月20日生まれ
代表者略歴
1967年04月 日本テルペン化学(株) 入社
1985年01月 当社設立 当社 代表取締役社長
2003年04月 大地化成(株) 取締役  10月:大神医薬化工(太倉)有限公司 執行董事
2005年03月 大地化成(株) 代表取締役
2009年02月 KNC興産(株) 代表取締役(現任)
2009年04月 当社 代表取締役社長 兼 バイオ事業部長
2016年10月 当社 代表取締役社長 兼 バイオ事業部長 兼 開発本部長
2017年03月 当社 代表取締役社長(現任)
【幹事団】
幹事証券 SMBC日興 2,086,700 92.01
引受証券 野村 113,400 5.00
引受証券 SBI 45,300 2.00
引受証券 エース 22,600 1.00

【私見】
 東レなど大手企業の研究開発において信頼があるようで、安定感はある銘柄です。急成長するような会社ではないと思いますが、今期大幅な増収増益でPERからも割高感はなく、若干の上値はあると思います。需給からは、ロックされているので売り要素は心配ありません。規模がやや大きいことから初値が低い場合や落ち着いてからであれば緩やかに上がる銘柄ではあると思います。
想定価額:2340円
仮条件上限:2340円
初値予想:2800円
ブック申し込み度・・・やや強気
セカンダリー期待度・・・中立
総合評価3.5

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