2018年6月12日火曜日

IPO分析(アイピーエス)

【事業内容】
 「海外通信事業」、「国内通信事業」、「在留フィリピン人関連事業」、「医療・美容事業」の4つのセグメントに分類されます。このうち「在留フィリピン人関連事業」は、介護施設などに在留フィリピン人を派遣紹介する人材関連事業と、在留フィリピン人向けに主として携帯電話等の販売支援等を行う顧客開拓・利用促進事業業から構成されます。
  
(1) 海外通信事業
 海外通信事業ではフィリピンを主たる事業地域として、主に同国のケーブルテレビ事業者(以下CATV事業者)に海底ケーブルを用いた国際データ通信回線を提供しております。
 フィリピンのCATV事業者を巡る環境は、スマートフォンやOTTが普及し、フィリピンのCATV事業者の有料視聴者数が伸び悩んでいます。このため、同国のCATV事業者には、日本と同様に、インターネットサービスプロバイダー(ISP)事業を収益の柱としている事業者も多くなっております。一方でフィリピンにおける通信環境は、通信事業者の統合が進み、事実上大手2事業者によるマーケットの寡占状態となっており(出典:総務省「世界情報通信事情:フィリピン編(平成28年)」)、国内回線・国際回線とも通信速度や通信料金が諸外国と比べて高い劣悪な環境にあり、CATV事業者も競争力あるサービスの提供に苦慮している状況となっています。
 こうした状況の中で、当社は、創業以来携わってきた国際電話サービスにおいて、フィリピンの通信事業者との広く取引関係があったことから、同国におけるインターネット回線の質的な向上も企図して、同国でのデータ通信事業への参入を行うこととしました。

(2) 国内通信事業
 国内電話事業では、日本国内で、電話サービスを中心とした通信サービスを提供するとともに、電話サービスの大口ユーザーでもあるコールセンター事業者向けに、コールセンターシステムを提供しております。
 当社は設立してまもなく、電気通信事業の自由化の中で、国際電話事業を展開する国際デジタル通信株式会社(現ソフトバンク株式会社)の国際電話サービスの代理店となり、主として在留外国人を対象にして国際電話サービスの提供に向けた代理店活動を行ってまいりました。
 1990年代後半になり、市場において、個人向け国際電話サービスがプリペイドカードを通じて提供されるようになると、国内外の電気通信事業者の電話サービスを再販目的で仕入れて、プリペイドカードを発行して国際電話サービスを提供いたしました。
 しかし、再販では、需要が拡大してきた携帯電話発信の国際電話サービスについて、業界慣行により、携帯電話会社と相互接続している大手国際電話会社に比べて、仕入れにかかるコストが料金に数倍の差があるため、当社でも同一の条件で仕入れることができるように国内通信事業者との相互接続を模索いたしました。そうした中で、平成14年に旧カナダ国営電話会社テレグローブ社が経営破綻し、その日本法人であった株式会社テレグローブ・ジャパン(旧第1種電気通信事業者)が日本での事業を撤退することになったので当社はこれを買収し(平成14年株式会社アドベントに改称、17年当社に吸収)、第1種通信事業者としての事業を展開することが可能となりました。そして同社を通じて東日本電信電話株式会社や株式会社NTTドコモなどの国内の固定・携帯電話事業者と相互接続することで、他の大手電話事業者と同様の条件で、国内・国際電話サービスを提供できるようになりました。現在当社は、電気通信事業法により登録電気通信事業者として位置付けられ、株式会社テレグローブ・ジャパンが整備したネットワークを発展させた自社ネットワークを利用した国内・国際電話サービスを提供するほか、他の電気通信事業者のサービスを再販する形でもサービスを提供しております。
(3) 在留フィリピン人関連事業
 在留フィリピン人関連事業では、本邦における在留許可を有するフィリピン人を中心とした外国人向けに、フリーペーパーの発行等を通じた情報提供を行うほか、人材派遣・紹介等を行う人材関連事業、及び顧客開拓・利用促進事業を行っております。
① 人材関連事業
 人材関連事業では、在留フィリピン人を中心に、人材の派遣・紹介を行っております。
事業開始当初は、当社が設立した訪問介護員2級講座「Tokyo Caregiver Academy」(現在は休講)の過程を終了した在留フィリピン人等を介護事業者に派遣・紹介する事業を中心に行っております。介護人材不足の慢性化、および世界中でフィリピン人の人材が看護・介護分野にて活躍していることに着目いたしました。在留フィリピン人の方を中心に、既に5,000名以上の方が修了され、多くの介護施設で働いております。また近年は、介護関連業界に止まらず、フィリピン人のホスピタリティを活かして、ホテルや保育所といった介護以外の業種への派遣・紹介も行っております。
 人材の派遣・紹介においては、フィリピンの連結子会社であるKEYSQUARE, INC.に対して、コールセンターより電話で本邦の在留外国人等に人材登録を促し、仕事の情報を提供する業務を委託しております。こうした業務を通じて、企業と求職者を効率よくマッチングさせております。
 当社では、そのほかにも在留フィリピン人向けフリーペーパー(Pinoy Gaette)の発行、情報Webサイト(Pinoy Life)の運営、フィリピンの地上波放送局と提携したインターネットを利用した放送コンテンツ配信サービスなど、多様な在留フィリピン人向け情報媒体を有しており、当該情報媒体への広告掲載収入等を得ております。人材派遣・紹介事業は、東京・神奈川・千葉・埼玉の一都三県に限られますが、これらの情報媒体を利用して、それ以外の地域での企業の求人需要に応えております。

② 顧客開拓・利用促進事業
 当社では、国際電話会社の代理店として、在留フィリピン人向け営業活動を行って以来、国際電話だけでなく自社ブランド化粧品など様々な商品・サービスを取り扱ってまいりました。当社のもつ経験などを活かして、他の事業者の商品・サービスの顧客開拓・利用促進を受託するサービスも提供しております。現在までに海外送金事業者への顧客獲得、利用促進や、携帯電話の購入時の支援・紹介等を行っております。

(4) 医療・美容事業
 医療・美容事業は、平成22年当時当社が日本国内で通信販売を行っていたフィリピン人マーケット向け化粧品の販売をフィリピンでも展開することを企図し事業を開始したものです。事業開始にあたっては、化粧品の販売拠点として現地に美容クリニックを設立することとして、本邦の品川美容外科クリニックと共同で事業を行うこととし、同クリニックと関連を有するシンガポール法人”I SUPPORT PTE. LTD.”と合弁で、”Shinagawa Lasik & Aesthetics Center”をフィリピンに設立しました。同社は、現在美容外科・皮膚科、近視矯正手術に特化したクリニックを、マニラ首都圏地域に2院運営しております。SLACがこのクリニックの経営を担当し、I SUPPORT PTE. LTD.が医療技術の提供や医師のトレーニングを担当するという分担になっています。
 現在運営しているクリニックでは、近視矯正手術として 機器を用いたLasikによる施術を中心に運営しており、全身麻酔を必要とするような大掛かりな美容整形施術等は行っておりません。施術は自由診療によるものであり、施術の機器が本邦と比較して相対的に高額であること等から、平均単価は本邦よりも高い水準で推移しております。

【業績等】
業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益
(連結実績)2016.3 3,590 331 217 84
(連結実績)2017.3 4,160 513 520 289
(連結見込)2018.3 5,327 902 819 480
(連結予想)2019.3 6,107 921 906 555
1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当
(連結予想 )2019.3 247.52 - - 
調達資金使途 フィリピンでのインターネット接続に向けた光ケーブル敷設資金など
上場時発行済み株数 2,318,000株 (別に潜在株式210,000株)
公開株数 368,000株(公募320,000株、売り出し0株、オーバーアロットメント48,000株) シンジケート 公開株数320,000株(別に48,000株)
PER:15.7
PBR:
配当利回り:
公募時吸い上げ資金:14.3億
公募時時価:90億
    
【株主構成】
宮下 幸治 代表取締役社長 1,153,000 52.22
日本テクノロジーベンチャーパートナーズアイ5号 ベンチャーキャピタル(ファンド) 107,000 4.85
江連 三芳 特別利害関係者など 100,000 4.53
鍬田 敏夫 特別利害関係者など 91,200 4.13
HerbertUy.Dy 特別利害関係者など 80,800 3.66
日本テクノロジーベンチャーパートナーズi-S2号 ベンチャーキャピタル(ファンド) 71,000 3.22
上森 雅子 取締役 64,000 2.90
上田 達也 特別利害関係者など 50,000 2.26
前田 知之 従業員 32,800 1.49
投資事業組合オリックス9号 ベンチャーキャピタル(ファンド) 30,000 1.36
鍬田 豊男 特別利害関係者など 30,000 1.36
長戸 大幸 特別利害関係者など 30,000 1.36
加藤 恵一 特別利害関係者など 30,000 1.36
日本テクノロジーベンチャーパートナーズアイ7号 ベンチャーキャピタル(ファンド) 30,000 1.36
 本募集に関連して、貸株人である宮下 幸治並びに当社株主である日本テクノロジーベンチャーパートナーズアイ五号投資事業有限責任組合、株式会社ハウスメイトパートナーズ、鍬田 敏夫、Herbert Uy. Dy、日本テクノロジーベンチャーパートナーズi-S2号投資事業有限責任組合、上森 雅子、前田 知之、鍬田 豊男、長戸 大幸、加藤 恵一、日本テクノロジーベンチャーパートナーズアイ七号投資事業有限責任組合、大平 秀行、日本テクノロジーベンチャーパートナーズi-S1号投資事業組合、幸田 昌則、鹿田 要、日本テクノロジーベンチャーパートナーズアイ六号投資事業有限責任組合、土井 由美子、SBIインキュベーション株式会社 、高際 将美、日本テクノロジーベンチャーパートナーズi-S3号投資事業有限責任組合、西園寺 誠、村上 実及び三好 昭久は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後90日目の平成30年9月24日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、東京証券取引所における初値が形成された後に主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)は行わない旨合意しております。

【代表者】
代表者生年月日 1965年02月03日生まれ
代表者略歴
1985年05月 (株)リクルート入社
1991年10月 当社代表取締役(現任)
2003年04月 Pilipinas International Marketing Services,Inc.(現KEYSQUARE, INC.)President
2010年03月 同社Director
2016年06月 Shinagawa Lasik & Aesthetics Center Corporation Director(現任)
2016年10月 InfiniVAN, Inc. Director(現任)

【幹事団】
主幹事証券 みずほ - -
引受証券 SBI - -
引受証券 SMBC日興 - -
引受証券 マネックス - -
引受証券 岡三 - -
引受証券 むさし - -

【私見】
 フィリピンにおける通信、眼科といった先にも後にも同業種がでないであろうことは評価できます。特に介護関連の人材不足の中、フィリピンに特化していることは今後の成長性においても評価が高いのではないかと思います。PERからは判断が難しいのですが、高くはないので上値はあり、吸収金額も大きくないので初値段階で人気になる可能性は高いと思います。セカンダリーも気になるのですが、1.5倍でロックが切れるVCが多いので様子見が良いかもしれません。

想定価額:3730円
仮条件上限:3900円
初値予想:9000円
ブック申し込み度・・・強気
セカンダリー期待度・・・中立〜やや強気
総合評価3.5

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