2023年3月10日金曜日

IPO分析(カバー)

 【事業内容】

​ (1) サービス概要

当社はモーション・キャプチャー技術とアニメルック・アバターを用いて活動するバーチャル・エンターテイナー「VTuber」のキャラクターIP開発、及びVTuberプロダクション「hololive production(以下、「ホロライブプロダクション」という)」の運営を行っております。

 当社のVTuberは当社が開発した配信アプリケーションとアニメルック・アバターを用いて、YouTubeを中心とした動画配信プラットフォームでゲーム実況や歌唱等のライブ配信を主とした活動を行います。ライブ配信においては、ユーザーのメンバーシップ加入やSuper Chatが主な収益源となります。

  キャラクターIPの開発は国内の主要なクリエイターとの協働により行っており、クオリティの高いキャラクター・アバターモデルが多くのファンからの支持を得ています。VTuberによるアバターを用いたライブ配信は、視聴者にクリエイターの創作に対する強い親近感を与え、これまでのアニメ等では見られなかった新しいエンターテインメント体験をもたらします。

 所属VTuberのキャラクターIP権利は当社に帰属しており、IPに基づいたマーチャンダイジングやライセンスビジネス等の多様なコマース展開を可能としています。VTuber IPの影響力の拡大に伴って、コマース展開の規模も拡大しており、2022年3月期時点では在籍VTuberあたりの収益は年間約2億円まで成長しております。

  2022年12月末時点でホロライブプロダクションのVTuber在籍数は71名(言語地域別で日本が48名、インドネシアが9名、英語圏が14名)となっており、そのうち31名はYouTubeのチャンネル登録数が100万登録を超える等幅広く支持を得ていると認識しております。また、ホロライブプロダクションの所属VTuberのYouTubeチャンネル登録総数は7,200万登録を超えており、日本、北米、東南アジア地域における登録数トップのVTuberをはじめ、登録数ランキング上位のVTuberが多く所属しております。

 ホロライブプロダクションの所属VTuberによるライブ配信コンテンツは、月間で1,500以上もの本数がYouTubeをはじめとする動画配信プラットフォームに提供されており、それらのアーカイブ(Archive:保存記録による配信)を含む動画コンテンツの累計投稿件数は2022年12月末時点で6.3万本に上ります。視聴者はライブ配信内でVTuberに向けたコメント等を通して双方向性と没入感のあるライブエンターテインメントを楽しむことができます。

  VTuber IPは立上げに長い期間と多額のコストが必要なTVアニメやゲーム等のコンテンツのキャラクターIPと比較して、相対的に低コストで継続的に視聴者との接点を持つことができる優位性を持っていると考えられます。

 また、VTuberとのコミュニケーションの一環で、日常的に数多くのファンアートや多言語翻訳コンテンツが視聴者によって作成されており、そうしたUser Generated Contents(UGC)コミュニティの存在がVTuberコンテンツに深みをもたせています。当社コンテンツの視聴者による切り抜きコンテンツのYouTube上での再生回数は65億回を超えており、新規の視聴者の拡大にも寄与していると考えられる他、Twitterでの2022年3月期年間の当社コンテンツ関連投稿数は約1.2億件となっており、ファンコミュニティでは日々活発なやり取りが確認されております。

 こうした高頻度かつ双方向のコミュニケーションを背景とした当社のVTuber IPコンテンツのファンエンゲージメントの高さは従来のアニメコンテンツ等と比較した際の当社コンテンツの独自性となっております。

  エンターテインメント・コンテンツ業界において、自社によるIPの開発機能を有さない企業は、コンテンツ供給のために他社のIPライセンスを借り入れる必要があり、関連する商業展開の自由度もIP所有元の意向に制限されるため、迅速な成長とマージンの確保が難しい傾向にあります。また、IPを自社開発する企業においても、ゲームやアニメといったコンテンツのみを媒体とする場合は、コンテンツ供給のために大きな資金、人員、期間を要する傾向にあります。

 それらの企業と比較して、当社は自社によるIP創出体制を整備すると共に、双方向性コンテンツ運用を行っており、これらを背景とした独自の強みを有していると考えております。


 (3) 当社の事業分野別の内容

 事業分野別では、①配信/コンテンツサービスと②ライブ/イベントサービスを通じて、ホロライブ等のグループ及び所属VTuberそれぞれの認知度の向上、ファンの獲得及びコミュニティの熱量上昇を図っており、その結果として醸成されたグループや個々のVTuber IPのブランドを基盤として、③マーチャンダイジングサービスと④ライセンス/タイアップサービスを展開しています。


事業分野別の詳細は以下のとおりです。

 ① 配信/コンテンツ

 YouTubeを中心とした動画配信プラットフォームや各種SNS等を通じて、VTuberによるライブ配信を主とした動画コンテンツを提供している他、音楽ストリーミングサービスでの楽曲コンテンツの提供も行っております。

  主な収益項目は視聴者からのメンバーシップ加入、Super Chat、動画配信プラットフォーム上での広告収益、及び音楽ストリーミングサービス上での楽曲コンテンツの販売収益等となっており、主なコスト項目はプラットフォーム手数料及びVTuberとしてアバターを用いて活動するコンテンツ・クリエイター(演者)への収益分配等となっております。

  VTuberのキャラクターIPは当社によって企画・制作されており、それぞれのVTuberの活動は当社から演者に対して貸与されるモーション・キャプチャーハードウェア/ソフトウエア、キャラクターアバター、及びYouTubeやTwitter等の配信プラットフォーム/SNSアカウントを用いて提供されています。

 当社はホロライブプロダクションのブランドとコミュニティを拡大させながら、オーディションにより選抜された演者、影響力の大きい外部クリエイター等との共創を通して、付加価値の高いIPを継続的に生み出す仕組みを構築しており、その結果として新規のVTuberでもデビュー時から大規模な集客を行うことが可能となっております。

 当社のVTuber IPは海外でも浸透が進んでおり、2022年12月時点で当社のVTuberのYouTube配信における月間の海外再生数比率は41%となっております。字幕等を通したVTuberコンテンツのローカライズやSNSを通したコミュニティ運営等により、グローバルにUGCコミュニティの拡大を推進しつつローカル言語でのVTuberをデビューさせることにより、着実な海外展開を実施しております。

 また、当社では多様かつ安定的なサービスの提供とコミュニティの健全な拡大のために、各種ガイドラインの整備、外部エンターテインメント企業とのアライアンスの拡充、及び関連する業界団体への参画等を行っております。

 

② ライブ/イベント

 所属VTuberのライブコンサート及びファンミーティング並びに当社IPの国内外出展等のイベントをオフライン又はオンラインで提供しております。

 主な収益項目はオフライン、オンラインでのチケット販売収益、イベントに際した物販収益及びイベントの様子を収録した映像ソフトウエアの販売収益等となっており、主なコスト項目はイベント制作費及び演者出演費等となっております。

  当社ではイベントの企画、制作を行っており、各イベントは外部制作会社、イベント会場運営会社、オンライン配信プラットフォーム等との協働によって提供されています。ライブコンサートやファンミーティングといったイベントの実施にあたっては、大規模なモーション・キャプチャー及び配信が可能なスタジオ設備、並びにAR技術等を用いることにより、ファンが当社VTuberをより身近に感じることができるユニークな体験の提供を実現しております。

  過去に実施したライブコンサートイベントの多くは、映像設備を導入したコンサート会場に観客を動員して実施するオフラインでの実施と、インターネット上で配信プラットフォームを通してコンサートの様子をライブ配信するオンラインでの実施を同時に行っており、現地を訪れることのできない遠方のファンもオンライン配信を通してイベントに参加することが可能となっております。イベントを通じたファン同士の交流は、ファンにとってもコミュニティ規模の成長を実感できる大きな機会となっております。

 また、イベントは国内だけでなく、海外でも多数実施しており、2022年においては「hololive Meet」と題して、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア等、世界各地での出展やファンミーティングイベントを開催しております。


 ③ マーチャンダイジング

 当社VTuber IPをベースにしたキャラクターグッズ及びデジタルコンテンツの販売を行っております。

 主な収益項目はECでの商品販売収益となっており、主なコスト項目は材料費等の製造費用、演者収益分配及びEC販売・決済手数料等となっております。

 従来の芸能人等と比較した際のVTuberの独自性の一つとして、アニメのキャラクターのようにIPとしての多様なコマース展開を行いやすいことが挙げられます。これにより、当社EC上でも1つのキャラクターIPについて多種多様なグッズやデジタルコンテンツの企画販売が可能となっております。

 当社では商品の企画・デザイン、販売、プロモーション等を行っております。商品販売は自社EC「hololive production OFFICIAL SHOP」からの受注又は在庫販売が主となっており、当該ECから国内及び海外の顧客に向けた販売を行っております。加えて、自社ECからの発送や現地独自決済手段の導入が未対応の一部海外地域への販売等を目的とした外部ECサイトからの販売も行っております。

 マーチャンダイジングの売上構成は現状、VTuberのアニバーサリー等に際した特別受注生産・販売前提の商品の構成が大きくなっておりますが、プロダクションとしてのブランド力やIP商品の企画・販売体制の拡充に伴い、より幅広い消費者層に向けて常時販売可能な収益性の高い商品の開発も進んでおります。


④ ライセンス/タイアップ

 外部商品又はコンテンツのメーカー等に対する当社保有IPの使用権利の提供(以下、「ライセンスアウト」という)又はタイアップ広告を通じた当社所属VTuberによる他社企業のプロモーションやメディア出演を提供しております。

 主な収益項目はライセンスアウトの対価としてのロイヤリティ収益及び広告出稿企業やメディアからのプロモーション料・出演料収益となっており、主なコスト項目は個別の案件実施に係る一部制作費負担や演者への出演料分配となっております。

 当社では具体的なライセンスアウト案件に係る制作監修、又はVTuberによる出演・プロモーション協力等を提供しております。

 VTuberはライブ配信等で活動するインフルエンサーであることに加えてキャラクターIPとしての性質を有しているため、当社IPが他社のゲーム等のコンテンツ内でキャラクターとして活用されるような事例もあり、そうした事例は規模の大きさから案件あたりの収益性も高くなっております。

 また、タイアップ広告でもVTuberの直接の稼働無しに商品パッケージやポスター等で活用される事例があり、そうした事例は直接の演者稼働を伴う一般的なインフルエンサー広告の事例よりも効率性の観点から収益性が高くなるケースが多くなっております。

 前述のようにVTuberのライセンス/タイアップビジネスは演者の稼働制約に縛られずに案件数を増加させられる事例もあるため、プロダクションや各VTuberの影響力と集客力の高まりに伴って本ライセンス/タイアップの収益規模も堅調に成長してきております。


 【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/03 単独3Q累計実績 12,802 1,734 1,727 1,281

2023/03 単独会社予想 18,056 2,169 2,136 1,427

2022/03 単独実績 13,663 1,855 1,853 1,244

2021/03 単独実績 5,724 1,698 1,705 1,220


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/03 単独会社予想 23.93 95.47 0.00


上場時発行済株数 61,124,200株(別に潜在株式5,968,900株)

公開株数 14,291,500株(公募1,500,000株、売り出し10,927,400株、オーバーアロットメント1,864,100株)

調達資金使途 配信用機材の設備資金、運転資金

オーバーアロットメントによる売出し:1,864,100株 

 ■売出株式数内訳(国内売出し:6,018,500株/海外売出し:4,908,900株)※3月15日決定



売出しを行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)

 

PER:31.3

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:107億

公募時時価:458億

​   

【株主構成】 

谷郷元昭 代表取締役社長 22,800,000 34.76% 180日

AT-II投組 投資業(ファンド) 10,338,500 15.76% 180日・1.5倍

若山理子 新株予約権信託の受託者 5,968,900 9.10% 180日

バレー(株) 役員らが議決権の過半数所有 3,300,000 5.03% 180日

福田一行 取締役CTO 3,000,000 4.57% 180日

みずほ成長支援第2号投組 投資業(ファンド) 2,129,900 3.25% 180日・1.5倍

i-nest1号投組 投資業(ファンド) 2,032,000 3.10% 180日・1.5倍

HAKUHODO DY FUTURE D.F.投組 投資業(ファンド) 2,032,000 3.10% 180日・1.5倍

千葉道場2号投組 投資業(ファンド) 1,625,000 2.48% 180日・1.5倍

OLM1号投組 投資業(ファンド) 1,535,900 2.34% 180日・1.5倍


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である谷郷元昭、売出人である福田一行、須田仁之並びに当社株主(新株予約権者を含む。)である若山理子及びバレー株式会社は、共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2023年9月22日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式をみずほ証券株式会社が取得すること等を除く。)等を行わない旨合意しております。

 また、売出人であるAT-Ⅱ投資事業有限責任組合、みずほ成長支援第2号投資事業有限責任組合、i-nest1号投資事業有限責任組合、HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND投資事業有限責任組合、千葉道場2号投資事業有限責任組合、OLM1号投資事業有限責任組合、伊藤将雄、Tokyo XR Startups株式会社、林隆弘、DIMENSION投資事業有限責任組合、有限会社セコイア、SMBCベンチャーキャピタル5号投資事業有限責任組合、千葉道場1号投資事業有限責任組合、國光宏尚、古川健介、HTC Vivenvestment (BVI) Corp.、みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合、TLM1号投資事業有限責任組合及びブレイクポイント株式会社は、共同主幹事会社に対し、ロックアップ期間中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、東京証券取引所における初値が形成された後にみずほ証券株式会社を通して行う東京証券取引所での売却等を除く。)を行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 谷郷 元昭(上場時49歳3カ月)/1973年生

本店所在地 東京都港区芝

設立年 2016年

従業員数 401人 (2023/01/31現在)(平均31.6歳、年収511.8万円)

事業内容 VTuberのキャラクターIP開発およびVTuberプロダクション「hololive production」の運営事業

URL https://cover-corp.com/

株主数 23人 (目論見書より)

資本金 452,808,000円 (2023/02/17現在)

代表者生年月日 1973年12月10日生まれ

代表者略歴

1997年04月 イマジニア株式会社入社

2003年06月 株式会社アイスタイル入社

2005年06月 株式会社インタースパイア入社

2008年04月 株式会社サンゼロミニッツ設立代表取締役

2016年06月 当社設立代表取締役社長執行役員CEO就任(現任)

2020年10月 バレー株式会社設立代表取締役



【幹事団】

主幹事証券 みずほ - -

主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 SBI - -

引受証券 大和 - -

引受証券 野村 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 楽天 - -


【参考類似企業】今期予想PER(2/24)

3990 UUUM 23.5倍 (連結予想)

4301 アミューズ 18.5倍 (連結予想)

5031 モイ - (連結予想)

5032 ANYCOLOR 25.1倍 (単独予想) 売上225憶 経常77憶 純利53憶 時価1360憶→3/16増額修正 売上250憶 経常92憶 純利64憶 時価2100憶 PER32

5244 jig.jp 18.1倍 (連結予想)

7860 エイベックス 22.1倍 (連結予想)


【私見】

 業種・業績は文句なしの注目銘柄で、Vチューバーということで株価が大人気となったエニカラとの比較になります。売上・利益などはエニカラの1/4の規模で、次回の決算予測で、1/3ほどになるとの見方から、時価総額も1/3と仮条件は適正と判断できます。次の決算でどれだけの上澄みがあるかが焦点で、ロックも1.5倍で外れるVCも多いので、このあたりがラインと思われます。IPOプレミアムはあると思いますので高くなければセカンダリーも考えられますが、高い位置ではエニカラとの比較からもリスクは高いかと思われます。


想定価額:710円

仮条件上限:750円

初値予想:1100円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:4

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