2023年3月13日月曜日

IPO分析(モンスターラボホールディングス)

 【事業内容】

(1)事業セグメント

 メイン事業として主に大企業や自治体に対して、事業課題や新規事業のニーズに合わせてデジタルトランスフォーメーションを支援する「デジタルコンサルティング事業」を展開しております。また、「その他事業」として、RPAツール、音楽配信事業等のプロダクト事業を展開しております。デジタルコンサルティング事業はクライアント毎にカスタマイズされたサービスですが、市場の共通課題に対しては、「プロダクト事業」として複数のSaaS型サービスを提供しており、「その他事業」の大半を占めております。

① デジタルコンサルティング事業

 クライアントのデジタル戦略立案から始まり、デザイン、システム開発、さらにデータ解析、プロセス最適化までワンストップでクライアントのデジタルトランスフォーメーションの包括的なサポートを行っております。

 これらの活動を通して、多数のクライアントに対し、AIやAR等の先端技術を駆使しながら、新規事業、ビジネス変革、業務改善などクライアントの経営課題解決及びビジネスに大きなインパクトのあるデジタルトランスフォーメーションの実現を目指しております。

 売上は、大多数は準委任契約(クライアントにサービスを提供する人材の時間あたり単価と稼働時間をベースに請求)となっており、プロダクトリリース後も継続的に改善や新規機能の開発を行うことが多いため、継続性の高い事業になっております。

 世界20の国と地域、33都市で事業を展開しており、クライアントの所在地である日本やアメリカ、イギリス、UAEなどはレベニューセンターとして営業やコンサルティング、デザインなど上流工程の人材を配置し、一方でエンジニア人口が多く、コスト水準が低い国にデリバリーセンターとして多くのエンジニアを配置することで、コスト競争力を持ちながらスケーラブルにエンジニアの採用、教育及び開発を行っております。デリバリーセンターは各レベニューセンターの時差に対応できるようベトナム、フィリピン、チェコ、ウクライナ、コロンビアなど各地域に分散して構えております。


② その他事業

 個々のクライアントと伴走するパートナーとしてデジタルトランスフォーメーションを推進しておりますが、その他事業の大半を占めるプロダクト事業では、当社グループが事業主体として、市場の共通課題を解決する複数のSaaS型サービスを展開しております。プロダクトとしては、店舗向けBGMサービスの「モンスター・チャンネル」、中小企業・自治体向けRPAソフトウェアの「RAX」などを展開しております。

 「モンスター・チャンネル」は、パソコン・スマートフォン・タブレットで簡単に始められる店舗向けBGMサービスです。チャンネル数は1,000以上あり、音楽のジャンルや店舗の業態からお店に合ったBGMを探すことができ、また面倒な著作権処理も不要で、従来の有線放送の半額以下の料金で利用できることが強みとなっております。累計アカウント数は50,000以上で、飲食店・美容室・小売店・医療施設を中心に導入が進んでいます。

 「RAX」は主に大規模なシステム導入のハードルが高い中小企業を対象とした、自社開発のRPAソフトウェアです。労働力が不足しがちな小規模企業及び個人事業者に対して、ソフトウェアの提供に加えて、専門のコンサルタントによる業務の見える化や業務効率改善といった包括的なサービスを、導入しやすい価格帯で提供しております。2022年12月末時点の累計アカウント数は、100以上となっております。

 予算を確保できる大企業向けオーダーメイド型であるのに対して、プロダクト事業はコンサルティング事業の経験を元に、市場の共通課題に対して市場規模や競争環境から成功可能性が高いと判断したものをSaaSプロダクト化しております。その結果、大企業だけでなく中小企業向けにもデジタルサービスの提供が可能となっております。


(3)事業の特徴

(a)当社グループが得意とする「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションの領域は「業務システム」領域と大きく異なる、「アジャイル開発」「UXデザイン」と呼ばれる手法が必要なため、SIerや総合コンサルティングファームにとっては市場参入が難しい領域となっていました。そのため、当社グループとSIerや総合コンサルティングファームとで領域の棲み分けが起こることとなり、当社グループはデジタルトランスフォーメーションにおいて「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションに強いというユニークなポジョニングを獲得していると当社グループは考えております。実際、ビジネス変革や新規サービス開発と業務システムが関連した案件などは、これまで総合コンサルティングファームやSIerと協業をしてきた実績があります。

  新規事業やビジネス変革、顧客体験変革は、戦略→デザイン→開発→データ分析といった必要プロセスを、個別に、かつ順番に推進していくのではなく、これらの一連のプロセスを連携させ、迅速かつ包括的にPDCAサイクルを回しながら推進するアジャイル型アプローチが適しており、従来の総合コンサルティングファームやSIerに比べて当該アプローチに強みがある点が当社グループの競争優位性となっていると考えております。

  また、「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションには、アジャイル型プロセスの他に、イノベーションの共創という点が重要になっております。それは新規ビジネスの共創であり、AI、ARなどの最先端のテクノロジーが重要であると当社グループは考えており、これらのスキルセットは、スタートアップ企業やテック企業で求められてきたものになっております。そのため、売上向上型デジタルトランスフォーメーションサービスは、これまで大手コンサルティングファームやSIerではなく、世界各国の比較的小規模のファームが主なサービス提供者となっていました。これに対して、当社グループは、スタートアップやテック企業と同じようなスキルセットやプロセスを持ちながら、大規模プロジェクトへの対応が可能な大企業が必要とする規模、セキュリティ、品質を担保している稀有な企業となっていると考えております。

 なお、グローバル展開は、当社グループのケイパビリティ強化の観点からも大きな意味合いを持っております。世界のDXの進行状況は、地域及び業界によって大きく異なっており、ある地域の先進的なDX事例の知見を別の地域に展開することによって、グループ全体としての顧客提供価値の底上げが可能となります。特に、多くの世界的デジタルコンサルティングファームのホームマーケットである欧米市場では、競争激化により、業界特化型DXソリューションが多く生まれております。それらの知見を、当社グループのホームマーケットであるAPAC及び中東市場に展開することでそれら市場において大きな成長を目指すと共に、APAC及び中東での大規模プロジェクトの知見を欧米市場に還流することで、欧米市場でのプレゼンス強化を目指しております。特に中東では、サウジアラビアやUAE等で、現地政府と強いコネクションを持つコンサルティングファームやデザインファームを戦略的に買収することで、大規模な政府系案件の受注に成功しており、今後の成長に向けた基盤構築を着実に進めております。


(b)売上が継続拡大するビジネスモデル

 当社グループの行うデジタルトランスフォーメーションは、コンサルタント、デザイナー、エンジニア、そしてクライアントが一つのチームとなり、リサーチ及び事業戦略策定、MVPの作成、本開発、サービスや事業の改善及び拡大と、必要な人員が時間と共に増員していく仕組みとなっております。デジタルトランスフォーメーションはコア事業をサポートすることが多く、コア事業となると継続的に改善及び拡大が必要となる上、当社チームにナレッジがたまっていくためスイッチングコストが高く、ストック性の高いビジネスとなっております。実際に、デジタルコンサルティング事業の当年度売上のうち、前年度以前に獲得した顧客(既存顧客)と当年度に獲得した新規顧客からの売上の内訳は下図の通りとなっており、特に2022年における既存顧客売上は前年2021年の全体売上げ対比で110%超となっております。

 当社グループは、プロジェクトに従事する人員に対して月額で請求するモデルとなっており、人員が増加する毎に売上が上がっていくため、売上が拡大するビジネスとなっております。


 (c)顧客単価の高い顧客数の拡大余地

 コア事業のデジタルトランスフォーメーション案件が増加しており、実際当社グループにおいて、2020年から2022年にかけてデジタルコンサルティング事業の年間売上1億円以上の顧客数が増加しており、これらの顧客群からの売上が売上成長のドライバーになっております。そのため、クライアントのコア事業の売上を向上させるイノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションに注力することで顧客単価の高い顧客数を増加させることを目指しています。


(d)M&Aによる成長実績と成長余地

 大きなポテンシャルがあり、オーガニックでの成長や採用よりもM&Aの方が時間、コスト効率が良い場合は、次の3つの目的で10社を超えるM&Aを行ってきました。具体的には1.北米や欧州などの新たなマーケットへの進出、2.コンサルティングやデザイン等付加価値の高いケイパビリティの強化、3.ベトナムやフィリピンなどエンジニアを配置するデリバリーセンターの拡大、となります。

 2014年~2016年においては、アジアのデリバリーセンター拡大を目的としておりましたが、2017年~2019年においては、欧米市場への進出目的に変化し、2019年以降は進出済み拠点の事業プラットフォームを活かすことができることからより投資リスクが低い、ケイパビリティ強化を目的としたM&Aに移行してきております。

 また、これまで10社以上のM&Aを社内チームを中心に実行してきたため、案件のソーシングから買収交渉までの一連のプロセスと、M&A後の統合(PMI)及び成長を成功させるグローバル・オペレーションが確立されており、今後もM&Aを成長ドライバーとして活用できる基盤を構築しております。

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【業績等】

決算期 種別 売上収益 営業利益 税引き前利益 純利益

2023/12 連結会社予想 17,441 1,468 1,388 883

2022/12 連結見込 14,270 -389 -447 -674

2021/12 連結実績 9,346 -3,222 -3,089 -3,053

2020/12 連結実績 7,419 -1,502 -1,549 -1,274


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/12 連結会社予想 26.69 - 0.00


上場時発行済株数 33,501,950株(別に潜在株式3,658,750株)

公開株数 4,830,000株(公募1,800,000株、売り出し2,400,000株、オーバーアロットメント630,000株)

調達資金使途 運転資金、採用研修費、外注費


売出しを行う地域

 欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


PER:27.0

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:34.8億

公募時時価:241億

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【株主構成】 

JICベンチャー・グロース・ファンド1号投組 投資業(ファンド) 6,849,300 19.37% 90日・1.5倍

いな川 宏樹 代表取締役社長 5,529,950 15.64% 180日

(株)DGベンチャーズ 投資業(ファンド) 2,187,850 6.19% 90日・1.5倍

日本郵政キャピタル(株) 投資業(ファンド) 1,713,000 4.84% 90日・1.5倍

(株)パソナ 資本業務提携先 1,121,750 3.17% 90日・1.5倍

Nathanial Trienens 特別利害関係者など 815,400 2.31% 180日

(株)山陰合同銀行 特別利害関係者など 642,600 1.82% 90日・1.5倍

イーストベンチャーズ投組 投資業(ファンド) 561,000 1.59% 90日・1.5倍

Calvin Rodney Sylvinus Hart デザインプラクティスリード 559,800 1.58% 90日・1.5倍

鈴木澄人 グループ機能責任者(法務) 552,850 1.56% 180日


本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、当社株主かつ貸株人である鮄川宏樹、当社株主であるNathanial Trienens、Calvin Rodney Sylvinus Hart、鈴木澄人、鮄川啓子、Abdullah Ali Saleh AlDkheel、FAISAL MOHAMMED S ALAMRO、William Joseph Trienens、張立群、倉島陽一、辻隆征、Christopher Scot Abreu、Daniel Tony Murphy、泉清崇、Allan C. Tan、モンスターラボホールディングス従業員持株会、後藤文明、中原淳博、Ahmed Ibrahim Alghofaily、清水義憲、鮄川拓也、Roger Lakhani及び他141名は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2023年9月23日)までの期間、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 また、当社株主である、JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合、株式会社DGベンチャーズ、日本郵政キャピタル株式会社、株式会社パソナ、株式会社山陰合同銀行、イーストベンチャーズ投資事業有限責任組合、YJ2号投資事業組合、島根中央信用金庫、森トラスト株式会社、Fenox Venture Company XXIV, L.P. Fenox Venture Management XXIV,LLC、新生企業投資株式会社、SMBCベンチャーキャピタル1号投資事業有限責任組合、Fenox Venture Company XI, L.P. Fenox Venture Management XI,LLC、Fenox Venture Company IV, L.P. Fenox Venture Management IV,LLC、山陰中央テレビジョン放送株式会社、Fenox Venture Company XVII, L.P. Fenox Venture Management XVII,LLC、株式会社シグマクシス・インベストメント、タケウチホールディングス株式会社、Alpha Investment Company、SMBCベンチャーキャピタル3号投資事業有限責任組合、電通デジタル投資事業有限責任組合、Fenox Venture Company III, L.P. Fenox Venture Management III,LLC、INTLOOP株式会社、株式会社田部、りそなキャピタル3号投資事業組合、Fenox Venture Company VIII, L.P. Fenox Venture Management VIII,LLC、株式会社サーバーワークス、FFGベンチャー投資事業有限責任組合第1号、三菱UFJキャピタル4号投資事業有限責任組合、Md Anis Uzzaman及び他2名は主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後90日目(2023年6月25日)までの期間、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること及び売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、株式会社東京証券取引所取引で行う売却等を除く。)を行わない旨を合意しております。加えて、当社の新株予約権を保有するNathanial Trienens、泉清崇、中原淳博、Roger Lakhani及び他279名は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2023年9月23日)までの期間、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した株式の売却等を行わない旨を合意しております。

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【代表者】

代表者名 いな川 宏樹(上場時48歳0カ月)/1975年生

本店所在地 東京都渋谷区広尾

設立年 2006年

従業員数 40人 (2023/01/31現在)(平均39歳、年収858.8万円)、連結1433人

事業内容 DX(デジタルトランスフォーメーション)に係るデジタルコンサルティング事業およびプロダクト事業など

URL https://monstar-lab.com/jp/

株主数 195人 (目論見書より)

資本金 1,083,744,000円 (2023/02/24現在)

代表者生年月日 1975年03月06日生まれ

代表者略歴

1999年06月 プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(株)入社

2000年10月 (株)イーシー・ワン入社

2005年02月 モニターグループ(株)入社

2006年02月 当社創業 代表取締役社長 就任(現任)



【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

引受証券 アイザワ - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -


【参考類似企業】今期予想PER(2/28)

3937 Ubicom 25.2倍 (連結予想)

4053 サンアスタリスク 45.0倍 (連結予想)

4481 ベース 26.1倍 (連結予想)

5035 HOUSEI 22.3倍 (連結予想)

9240 デリバリコン 32.4倍 (連結予想)

9651 日プロセス 15.9倍 (連結予想)


【私見】 

 DX事業で、世界相手にしていることからもスケールは大きく優位性は高い会社です。業績も前期まで赤字でしたが、今期は大幅な増益で成長性は非常に高いです。次回の12月決算までは時間があるので、ここからの成長性が評価のポイントですが、割安度は判断しずらいところです。今の成長が続けば、時価総額500億超えは可能で、株価としてはサンアスタリスクのようなイメージを描けます。筆頭株主がVCで、ロックも1.5倍で外れるので、VCが安売りするか否かで需給は崩れますが、短期的には値動き荒く、安く寄れば中期では面白い銘柄かもしれません。


想定価額:620円

仮条件上限:720円

初値予想:1000円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立~やや強気

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