2023年3月8日水曜日

IPO分析(アイビス)

 【事業内容】

​ (1) モバイル事業

 「モバイル無双®で世界中に“ワォ!”を創り続ける」をミッションとしております。「作画工程を動画にして絵を描く楽しさを共有したい」というコンセプトから、当社が自社開発したiOS・Android用モバイルペイントアプリ『ibisPaint』の開発、サービス運営、さらには『ibisPaint』で制作された全世界のユーザコンテンツに発表の場を与える自社オンラインギャラリー「ibispaint.com」の運営を行う事業セグメントであります。


■ ビジネスモデル

 『ibisPaint』をモバイルアプリ提供プラットフォームである「Google Play」や「App Store」等を通じてユーザに提供しております。

 『ibisPaint』は無料で基本的な機能を使用することのできるアプリで、『ibisPaint』上にバナー広告や動画広告等が表示されるようになっており、当社はこの広告枠に複数のSSP事業者から提供される広告をアドネットワークを通じて表示することにより、SSP事業者ごとに最適化された広告収益を得ております。SSP事業者への広告枠の提供は本事業の広告ビジネスにおける主な収益源となっております。また、より快適に利用していただくために、2つの有料サービスを提供しております。1つは、広告非表示機能を含む追加機能や追加素材等の利用が可能となる定額課金型のプレミアム会員サービスの提供(サブスクリプション)であり、月額課金制と年額課金制の2種類の方法があります。もう1つは、アプリ上の広告が非表示となる売切型アプリの提供であり、初回インストール時に広告非表示機能付の有料版を購入する方法と無料版のインストール後に広告除去アドオンを購入する方法があります。両サービスは本事業のBtoCビジネスモデルにおける主な収益源となっております。

 上記、アプリ広告売上及びアプリ課金収入については、ユーザの獲得・維持が収益構造の源泉となっております。そのため広告投資(広告宣伝費)を計画的に行っております。また『ibisPaint』は、世界の19言語に対応したアプリであり、積極的な海外プロモーション投資(投資対象国は61ヶ国)を実施し、ユーザ数の増加及び収益の拡大に繋げております。


 ■ 事業の特徴

① 無料でほぼフル機能、全世界で2.9億ダウンロード超え

 『ibisPaint』は自社開発のモバイルペイントアプリであります。世界各国、趣味としてイラストを描く人、職業としてイラストを描く人、すき間時間にイラストを描く人が多く存在します。イラストを描く年齢層も幅広く、スマホを使い始めた子供からシニアまでほとんど網羅しています。このアプリの最大の特徴は「ほぼフル機能を無料で提供している」ことです。結果的に2021年日本企業発のアプリとして世界ダウンロード数No.1を記録しており、MAUにおいても2022年12月に全世界で4,000万人に達しております。『ibisPaint』は、世界のどこかで「1秒で2.7人にダウンロード」され拡がり続けています。


② 自社運営のオンラインギャラリー「ibispaint.com」

 『ibisPaint』で創り出されたイラストを投稿できるメディア「ibispaint.com」は、ユーザから投稿された作品がイラスト、マンガ等の種別に日別、月間、年間ランキング形式で閲覧できるようになっている他、投稿されている作品データをダウンロードすることができ、お絵かきのテクニックを学ぶこともできるようになっております。これらの特色により、作品へのコメント等を通じてユーザ同士のコラボレーションが活発に行われております。


③ 海外ユーザ数が日本国内ユーザ数を上回る

 当社アプリの最大の特徴は全世界で支持されていることです。2022年12月末現在『ibisPaint』の累計ダウンロード数において、海外のユーザ数は全体の92.5%に達しており、日本国内のユーザ数を上回っております。この理由としては、「言語を要しないイラスト制作」分野であること、主要な「19ヶ国語の言語対応」をしていること、有料版を購入しなくても「ほぼフル機能が無料で使える」ことが挙げられます。

 ユーザ獲得手法については、2016年9月期以降、世界61ヶ国のインターネット広告に出稿しており、広告出稿による効果に関するデータをモニタリングすることで、効果的な海外プロモーションを実施しております。国内人口は減少が見込まれるなかで、まだまだ増える世界人口を相手にすること、増え続ける「モバイル」ユーザを対象にしていることは大きなアドバンテージであります。


 ④ Z世代のユーザ割合が多い

 1990年代中盤以降に生まれた世代が、Z世代です。ニュースにも頻繁に取り上げられているZ世代は、SNS等の発信力もあり、これからの社会の消費行動や価値観の中心になり得る存在です。また顧客生涯価値を高めることにおいてZ世代を取り込むことは極めて重要であると考えております。

 『ibisPaint』のユーザ属性を年代別に分析したところ、『ibisPaint』のZ世代はすでに61.6%に達しています(2022年12月末時点の数値:data.ai調べ)。『ibisPaint』は全世界のZ世代を中心にユーザを拡大しております。


⑤ 無料版ユーザからの収益

 無料版でも「ほぼフル機能のアプリ」を提供、という部分に、当社の一番の強みがあります。通常、アプリビジネスは、サブスクリプション(継続課金)や購入(売切課金)をどれだけ獲得するかが鍵になると考えられています。当社の無料版アプリはユーザに配信される広告から収益を得ています。無料だから簡素なアプリでいい、無料だから縮小版でいい、という考えではなく、全世界中イラストを思い思いの場所・タイミングで描いてほしい、そんな気持ちから「ほぼフル機能」のアプリを無料で提供し続けています。また、無料版が充実していることから、高い水準の顧客満足度を実現しています。満足度が高いことで以下のユーザ行動につながっております。


 a. リテンション(顧客の囲い込み、流失防止)

 顧客満足度が低いアプリであれば、顧客は使用を停止し、競合アプリに乗り換えてしまいます。顧客満足度の高さはリテンションに直結しています。またイラストを描くという行動上、慣れたアプリから他のアプリにスイッチする、ということは時間が経てば経つほど難しくなります。


b. 顧客生涯価値への貢献

 無料版であっても顧客がアクティブであり続ける限り広告料収入をもたらします。


⑥ 差別化の源泉

 モバイル事業では、モバイル最適化、優秀なエンジニア、スピードへのこだわりが三位一体となって、『ibisPaint』の開発力・サービス運営において他社製品との差別化を図っております。


(2) ソリューション事業

 大きく分けて2つのサービスを展開しております。1つは労働者派遣法に基づくシステムエンジニア等のIT技術者派遣サービス、そしてもう1つはモバイルアプリやWebアプリ等の受託開発・運用保守及びクラウドコンピューティングサービスである「AWS」を用いたサーバ構築・移行・運用保守等の受託開発サービスであります。当社には20年以上培ってきた開発力があり、新技術・開発環境に対応可能な優秀なエンジニアも在籍しております。その技術力をIT技術者派遣・受託開発として企業向けに提供を行う事業セグメントであります。本事業のビジネスモデルは以下のとおりであります。


■ ビジネスモデル

 IT技術者派遣は、当社が無期雇用契約を締結したシステムエンジニア等の技術者を、労働者派遣契約に基づき、顧客である求人企業に派遣し、その人材派遣料を収益源とするビジネスモデルであります。

 受託開発は主に請負契約又は準委任契約によるもので、モバイルアプリの受託開発・運用保守を受託しております。受託開発に係る売上は、フロー型の収益モデルであり、運用保守に係る売上は受託開発したアプリの運用が継続する限りは安定的に収益が見込めるストック型の収益モデルであります。AWSを用いたサーバ構築・移行・運用保守については原則として当社内のみで行っており、収益モデルはアプリの受託開発・運用保守と同様であります。


■ 事業の特徴

① IT技術者派遣の特徴

 2001年12月に常時雇用される労働者(無期雇用者)だけを派遣の対象とする特定労働者派遣事業の届け出を行いました。以降、システムエンジニア等のIT技術者派遣に特化して事業を行っております。また、2018年3月には労働者派遣事業の許認可を取得し、有期雇用者の派遣も行えるようになりましたが、高い技術力や豊富な経験を有するシステムエンジニア等を自社で育て、派遣先企業との長期的な関係を構築するという方針の下、引き続き、無期雇用者の派遣のみ行っております。雇用者に対しては、能力や職位に応じた教育カリキュラムを構築し、当社の経験豊富なエンジニアが講師として研修を行う等、スキルアップの機会を多く設けるように努めております。

 『ibisPaint』の開発・運用実績やソリューション事業における様々なアプリ等の受託開発実績は本サービスの強みとなっており、ホームページを見た顧客からの直接受注獲得や受託開発の顧客からの紹介受注獲得に繋がっております。

 

② 受託開発の特徴

 有限会社アイビスとして設立以降、当社はNTTドコモ社フィーチャーフォンi-mode用サイト『NetIbis』のリリースを皮切りに、Eコマースシステム『Ibis Ecom System』、フィーチャーフォン用フルブラウザアプリ『ibisBrowser』、フィーチャーフォン用フルメーラアプリ『ibisMail』及びiPhone・iPad用メールアプリ『ibisMail for iPhone/iPad』といった様々なモバイルアプリを時代のニーズに合わせて開発し、提供してまいりました。モバイル事業で培ったこれらアプリの開発技術やリリース、運用ノウハウを有していることがソリューション事業としての強みにもなっており、企画段階やユーザインターフェース(UI)/ユーザエクスペリエンス(UX) に関するご相談にも対応することができる他、アプリと連携するバックエンドのWebシステム等も含めた設計から開発・運用までを自社においてワンストップで開発することが可能となっております。

 また、当社は「AWS認定正式パートナー」として、サーバ上で動作するアプリケーションに最適な設計を考慮したAWSでのサーバ構築や移行等から運用・保守及び新規事業への導入コンサルティング等も行っております。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/12 単独会社予想 3,590 300 292 202

2022/12 単独実績 3,397 219 238 168

2021/12 単独実績 2,744 60 107 72

2020/12 単独実績 1,618 -86 -68 -39


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/12 単独会社予想 60.82 298.78 10.00


上場時発行済株数 3,488,783株(別に潜在株式262,281株)

公開株数 977,500株(公募700,000株、売り出し150,000株、オーバーアロットメント127,500株)

調達資金使途 広告宣伝費、採用費・人件費


PER:12.0

PBR:

配当利回り:1.4%

公募時吸い上げ資金:7.1億

公募時時価:25億

​   

【株主構成】 

神谷栄治 代表取締役社長 2,036,243 66.74% 180日

村上和彦 常務取締役 619,680 20.31% 180日

渡辺秀行 特別利害関係者など 342,860 11.24% 180日

丸山拓也 取締役 8,909 0.29% 180日

井亦大典 従業員 8,816 0.29%

星倉隆一 従業員 5,877 0.19%

堀部拓也 従業員 5,877 0.19%

安井英和 取締役 5,800 0.19%

林田雄大 従業員 4,995 0.16%

嶋本博文 従業員 4,995 0.16%


本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人である神谷栄治、売出人である渡辺秀行、当社株主である村上和彦、並びに当社新株予約権者である丸山拓也は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2023年9月18日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すことは除く。)等を行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 神谷 栄治(上場時49歳9カ月)/1973年生

本店所在地 愛知県名古屋市中村区

設立年 2000年

従業員数 221人 (2022/12/31現在)(平均34.2歳、年収407.6万円)

事業内容 モバイル事業(モバイルペイントアプリ「ibisPaint」の開発、サービス運営)、ソリューション事業{IT(情報技術)技術者派遣サービス、アプリ開発およびサーバー構築・移行・運用保守などの受託開発サービス}

URL https://www.ibis.ne.jp/

株主数 3人 (目論見書より)

資本金 95,925,000円 (2023/02/17現在)

代表者生年月日 1973年05月30日生まれ

代表者略歴

1998年04月 (株)アルモニコス入社

2000年05月 (有)アイビス(現 当社)設立

2016年12月 (株)アイビスモバイル代表取締役社長


【幹事団】

主幹事証券 東海東京 722,500 85.00%

引受証券 みずほ 42,500 5.00%

引受証券 大和 34,000 4.00%

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー 17,000 2.00%

引受証券 SBI 17,000 2.00%

引受証券 楽天 8,500 1.00%

引受証券 松井 8,500 1.00%


【参考類似企業】今期予想PER(2/22)

3663 セルシス 20.7倍 (連結予想)

3824 メディア5 49.5倍 (連結予想)

6554 エスユーエス 13.3倍 (連結予想)

7361 HCH 10.3倍 (連結予想)

9558 ジャパニアス 25.4倍 (単独予想)


【私見】

 ペイントアプリという海外ユーザーが多いという優位性は非常に評価できますが、これ以上の成長性があるかといわれると微妙ではあります。PERも低めですが、売上・利益の伸びを考えると高PERが容認される業種ではないかと思います。VCなしでロックも大株主はかかっており、吸収金額・時価総額も小さいので初値は高騰するかもしれませんが、何かプラス材料がないともう一段上にはいかないと予想します。


想定価額:650円

仮条件上限:730円

初値予想:1500円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

0 件のコメント:

コメントを投稿