2023年3月31日金曜日

IPO分析(ispace)

 【事業内容】

​ <ビジネスモデルについて>

 現在自社にて開発中のランダー及びローバーを用いて、1.ペイロードサービス、2.データサービス及び3.パートナーシップサービスを提供することを、ビジネスモデルとしております。

1.ペイロードサービス

 月に輸送する物資である顧客の荷物(以下、「ペイロード」という。)を当社グループのランダーやローバーに搭載し、月まで輸送するサービスを提供します。本サービスには、ロケットの打上げから月面へのペイロードの輸送は勿論のこと、打上げの約1~2年前頃を目途に開始される、顧客のペイロードをランダー及びローバーに搭載するための技術的なアドバイスと調整、更には月面到着後の実験や、これらに関連するデータ通信等に係るサービスの提供まで含まれます。当社グループでは、基本的に1機のランダーによる1回の月着陸及び月面探査のプロジェクトを「1ミッション」と定義し、ミッション単位で事業を運営しております。当社グループでは、初の月面着陸ミッションとなる2022年のミッション1及び、続く月面探査ミッションとなる2024年(予定)のミッション2を、技術実証ミッションとして位置付け、これら2ミッションを総括して「HAKUTO-R」プログラムと呼称しております。

  当社のランダーはSpaceX社のファルコン9ロケットにより打ち上げられ、成層圏を超えた宇宙の比較的地球に近いポイントまで運搬された後、ロケットから放出され、ランダー自身で燃料噴射による軌道制御等を繰り返した後、月遷移軌道と呼ばれる軌道へ入り、約4ヵ月の期間をかけて月の周回軌道へと入った後に月面着陸をします。着陸後はローバー(当社自身の開発ローバーはミッション2以降で輸送する計画)等の一部の稼働ペイロードはランダーから放出され、また一部のペイロードはランダー内部に搭載されたまま、月面での観測活動等を行い、データ収集等を行います。

 取得したデータは当社のランダーを経由して地球に伝送される計画であり、月面におけるミッション期間は現在のところ、太陽光エネルギーをランダー及びローバーが獲得可能な、月の日中時間(約14日間)をミッション1では計画しています。なお、ロケットから放出された後、ミッション完了まで当社が中央区日本橋に開設いたしましたミッション・コントロール・センターにおいて、人工衛星のミッション・オペレーションの知見を有する当社の従業員(ミッション・オペレーション・グループ)により制御されます。また、制御するために必要なミッション・コントロール・センターとランダー間の宇宙通信については、ESA傘下のEuropean Space Operation Centre(以下、「ESOC」という。)の協力の下、同機関が保有する専用の宇宙通信ネットワークを利用するため、同機関と当社のミッション・コントロール・センターを回線で繋いだ通信試験を事前に実施しております。

 本サービスは、ペイロード重量に応じて1kg当たりの価格を顧客に課金する料金体系であり、ロケット打上げの1~2年前の本契約時からロケット打上げまでの間に、その全額が一括若しくは複数回に分割されて入金されます。宇宙開発分野においては、ミッションのための開発コストを負担する場合等、支出がミッションの1~2年前から発生することが多いことから、この様な打上げの1~2年前から入金が発生する契約体系は、当該分野において比較的一般的な商慣行となっており、ミッション1及びミッション2の契約締結済み顧客だけでなく、今後契約締結を進めていくミッション3以降の顧客との間でも同様の契約体系を基本とする予定です。また、売上の計上方法につきましては、ロケット打上げの1~2年前からペイロードの仕様や当社ランダーとのインターフェースの調整等のエンジニアリング検討の提供が開始されることから、本契約以降、ランダーが月へ到着しミッションを完了させるまでの期間にわたって、履行義務充足に応じた売上計上がなされる想定となります。

 ミッション1では自社で開発したランダーを月面に着陸させ、顧客ペイロードの月面への輸送や、顧客の要望に応じた月面データの取得等のサービスを実現いたします。ミッション2では更に自社で開発したローバーを月面で走行させ、月の多様な情報を取得するための月面探査を行います。当社グループが開発するランダー及びローバーの外観は図2のとおりで、基本的に有人を想定しない、ロボティックス(無人)ミッションを想定しております。

 ミッション1及びミッション2で使用するシリーズⅠランダーは、最大30kgのペイロードを運搬可能な設計となります。一方、2025年(予定)のミッション3以降で使用するシリーズⅡランダーは、この設計を拡張させ、最大500kgのペイロードを運搬可能な設計へ変更する予定であり、既に開発に着手しております。また、現在ミッション6以降での利用を目指し、シリーズⅢランダーの設計コンセプトの検討を開始しております。シリーズⅢランダーは、シリーズⅡランダーと同様に最大500kgのペイロードを運搬可能な設計を想定しており、日本において開発し、米国のみならず世界中のサプライヤーからの柔軟な調達を可能とすることによる開発コストの低減を目指し、今後開発を進捗させてまいります。

 ミッション4以降は、原則として年間2回、さらに中長期的には年間3回のミッションを通じて、高頻度にランダーでの月面着陸とローバーでの月面探査を実施することで、顧客荷物の月輸送や、顧客の要望に応じた月面データの取得等のサービスを行う、安定的な商業プラットフォームを構築することを目指しております。特に2020年代の後半にかけては、ペイロードサービスによりもたらされる安定的な収益を基盤としながら、高頻度ミッションにより取得したデータを解析・高付加価値化したデータプラットフォームを構築し、顧客が必要とする情報にアクセス可能なサブスクリプションモデルのビジネスを展開することで当社事業の更なる成長を目指してまいります。また、データプラットフォーム構築のための先端開発投資として、データ取得のためのセンサー開発、データ解析、水資源探査、輸送サービス向上等を順次実施していく予定です。

 現在、当社初の実証ミッションとなる2022年のミッション1では、全体で約12.43kgのペイロードを輸送しますが、その内の10kgについてはアラブ首長国連邦のドバイの政府宇宙機関であるMohammed Bin Rashid Space Centre(以下、「MBRSC」という。)との間で月面探査ローバーの輸送を、日本特殊陶業株式会社との間では固体電池の輸送に関するペイロードサービス契約を締結しております。また、カナダ宇宙庁が推進する月面技術開発、宇宙空間での実証、科学ミッションを支援する月面探査加速プログラムであるLunar Exploration Accelerator Program(以下、「LEAP」という。)に採択されたカナダの民間企業であるMission Control Space Services(以下、「MCSS」という。)との間で人工知能のフライトコンピューター、同じくカナダの民間企業であるCanadensys Aerospace Corporation(以下、「Canadensys」という。)との間でカメラのペイロードサービス契約を締結しております。その他、宇宙航空研究開発機構(以下、「JAXA」という。)との間で変形型月面ロボットのペイロード輸送を合意し、2021年4月に本契約を締結しております。また、2024年(予定)のミッション2では全体で10.5kgのペイロード輸送を計画しており、高砂熱学工業株式会社の月面用水電解装置、台湾中央大学の深宇宙放射線プローブ及び株式会社ユーグレナの微細藻類培養装置を輸送するペイロードサービス契約を締結しております。さらには、2025年(予定)のミッション3ではアメリカ航空宇宙局(the National Aeronautics and Space Administration(以下、「NASA」という。))のペイロード約95kgを輸送する予定であるほか、法的拘束力のあるペイロードサービス契約は未締結であるものの、Helios Project, Ltd.との間で最大5kgのレゴリス融解酸素生成装置を、また、株式会社アークエッジ・スペースとの間で15kgの小型衛星、Aviv Labs, LLC,との間で小型温室実験装置、CesiumAstro, Inc.,との間で通信機器、AstronetX PBC,との間で月面カメラのペイロードを輸送することを想定したペイロードサービス中間契約を締結しています。


2.データサービス

 売上計上の開始には至っておりませんが、当社は将来的にデータサービスを主要サービスの1つとして提供する予定となります。顧客自身がペイロードを準備の上、当社に輸送を委託し、月面や月周回軌道から地球へ試験データをフィードバックする当社のペイロードサービスを活用した直接的なデータ収集に加えて、顧客が当社のペイロードを利用してデータ収集を行い、地球へその結果をデータとして送り返し、解析の上、次なるR&Dへ活用したいというニーズが確認されています。 当社ではこれをデータサービスとして定義しており、ミッション1では、LEAPに採択されたカナダの民間企業であるNGC Aerospace Ltd(以下、「NGC」という。)との間で、当社が開発するカメラを利用して月面画像データを取得するという契約を締結しております。


① 足許で需要が顕在化すると見込まれる、ミッションを通じたデータ取得サービス

 当面の間(足許から2025年頃まで)は、ミッションごとに、当社自らが開発・購入するデータ計測機器やカメラ機器等(インターナル・ペイロード)を輸送し、主に月のデータを取得し、時には顧客の特定のニーズに合わせて取得するデータも都度アレンジしつつ、取得したデータを顧客に対して提供する予定です。またデータ提供だけではなく、(1)データ取得前の取得に関する技術コンサルテーションや運用計画、(2)取得後にデータを地球にフィードバックするための運用(電力・通信の運用)等もサービスの一環として提供することを目指しており、当社が現時点で想定している主なデータは以下のとおりです。


マーケティングデータ: 宇宙空間・月面風景・月から見た地球に関する画像・映像等

サイエンスデータ:資源分布、土壌、気温、放射線等の環境情報等

R&Dデータ:特定顧客・特定産業の将来のR&Dに必要なデータ(例:建築業界や自動車業界の研究開発の検討に資する地形・地質・堆砂圧データ等)


② 将来的に顕在化することが見込まれる大規模データベースの利用サービス

 将来的(2026年以降を想定)には、当社の高頻度なミッションを通じて、当社のインターナル・ペイロードから取得・蓄積した情報に、地球上で入手可能な既存のデータも加え、加工、解析、統合することで、顧客にとって高付加価値な「大規模な月のデータベース」をクラウド上に構築し、顧客が自由にアクセスし、定額料金を課金の上、利用して頂く、SaaS(Software as a Service - サービスとしてのソフトウェア)型・サブスクリプションモデルのビジネスの展開を目指しています。地球上で、月面活動や試験等を簡易的にシミュレーションすることが可能となれば、より多くの企業が、より少ない負担で、月面事業への参画を検討することが可能となります。また、顧客はデータにアクセスするだけで、デジタル上でビジネスにおける潜在的なニーズを把握することが可能となり、これにより能動的な新事業開発の促進が期待され、将来の月面社会の創出へ大きく寄与することが想定されます。

  入金と売上の計上方法につきましては、前者はペイロードサービス同様、ロケット打上げの1~2年前の本契約時から打上げまでの間に、その全額が一括若しくは複数回に分割されて入金され、本契約以降月へ到着しミッションを完了させるまでの期間にわたり、履行義務の進捗度に応じて売上が計上される想定であり、後者は、サブスクリプションモデルによる月額課金及び月次での売上計上を想定しております。


3.パートナーシップサービス

 当社グループの活動を、コンテンツとして利用する権利や広告媒体上でのロゴマークの露出、データ利用権等をパッケージとして販売し、技術開発や事業開発で協業を行うパートナーシップ・プログラムの提供を行っております。過去にはGoogle Lunar XPRIZEに伴う当社の活動に関するパートナーシップ・プログラムを実施し、累計約10億円の売上を計上いたしました。

 続く、史上初の民間による月面探査プログラムとなる「HAKUTO-R」においても、ミッション1及びミッション2の活動期間を対象とするパートナーシップサービスを提供しており、現在、複数の民間企業とパートナーシップ関係を構築しております。入金については、契約時からプログラム終了期間までの間に、総額一括若しくは複数回に分割して行われます。また売上の計上方法につきましては、パートナー各社から受領した協賛金総額を、契約時以降プログラム終了までの期間で分割して月々計上しております。

 本パートナーシップサービスを通じた対象企業との関係構築は、一過性の広告活動やブランディング活動に留まらず、当社グループのペイロードサービス及びデータサービスに係る将来の潜在的な顧客ニーズを創出し、当社の中長期的なビジョンである「Moon Valley 2040」の実現に向けて、月面での経済圏の創出に多様な産業から民間企業の参入を実現する上での重要な布石と位置付けております。ペイロードサービス及びデータサービスからの収入に対して、パートナーシップサービスからの収益の割合は今後相対的に減少するものの、ミッション3以降も新たなプログラムを策定の上、継続して計上する予定です。なお、本パートナーシップサービスの展開に当たっては、当社は株式会社電通と業務提携契約を締結の上、販売窓口として当サービスを推進頂いております。


 <当社グループの開発及びミッション推進体制について>

 当社グループは現在、技術実証ミッションとして月面探査プログラム「HAKUTO-R」であるミッション1及びミッション2を成功させるべく、ランダー及びローバーを開発し、ミッション1の打上げを2022年12月11日に実施いたしました。ミッション1のランダーは打上げ後、当社ミッション・コントロール・センターからの運用を実施しており、2023年4月下旬頃の月面着陸を目指して現在月への航行中となります。ランダーとは天体の表面に着陸し、静止することができる宇宙機であり、ローバーとは地球外の天体の表面を移動し、観測するために使われる車両であります。なお、当社のランダー及びローバーにつきましては有人利用を想定せず、無人のロボティックスとして開発しております。

 ペイロード及びローバーは、ランダーの内部に格納され、更にそのランダーは打上ロケットの内部に格納され、打上ロケットによって宇宙空間における一定ポイントまで輸送されます。ランダーはロケットから分離された後、一定期間をかけて月に向けて自力で宇宙空間を推進し、月の周回軌道へと入り、月面に着陸をします。着陸後、ローバーはランダーから分離され、月面を自走しながら探査活動を行います。

 ランダー及びローバーの開発、ランダー又はローバーへのペイロードの搭載、打上ロケットから切り離された後の月までの航行と着陸、月面の探査活動はすべて当社グループが行う活動です(ランダー及びローバーはすべて、当社グループのミッション・コントロール・センターから、当社グループオペレーターにより遠隔操作されます)。一方で当社グループは、打上ロケットに関しては自身で開発等は行わず、既に市場でサービス提供を行っている打上プロバイダーと契約の上、打上サービスを購買しております。

 

<ランダー・ローバーのテクノロジー及びペイロード>

1.ローバーについて

 2010年の創業以来、一貫してローバー開発に取り組んでおり、その技術は当社の取締役兼テクノロジー・アドバイザーであった吉田和哉氏が教授を務める東北大学大学院工学研究科において研究開発されたロボティクス・ローバー技術がベースとなっております。当社は米国のGoogle社がスポンサーとなりXPRIZE財団が運営する世界初の月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に参戦しておりましたが、そこで使用するローバーのプロトタイプを2011年8月に発表し、2015年1月にはローバーのエンジニアリングモデルが宇宙空間でも機能する性能を持つことが評価され、Google Lunar XPRIZEの中間賞を受賞し50万米ドルの賞金を獲得しました。その後もフライトモデルの製造まで当社は完了させ、相乗り先である他社のランダーの打上げを待つ状態に有りましたが、月面探査レースは残念ながら2018年3月に勝者がいないまま終了となりました。当社のローバーは月面での実証を行うことができなかったものの、フライトモデルの製造まで完了させたことが一定の評価を受け、本ローバーは2019年に米ワシントンD.C.のスミソニアン航空宇宙博物館へ寄贈されました。

 当社がGoogle Lunar XPRIZEを通じて開発したローバーは、総重量約4.0kgであり、当社が認識する限り、世界でも最小・最軽量の四輪ローバーです。月面の不整地を走破できる4輪駆動、360度の視野を持つカメラで静止画と動画の撮影等、宇宙空間で月面探査ミッションを達成できる能力を維持しつつ、可能な限りCOTS品を活用し、小型軽量化とコスト削減を実現しました。


2.ランダーについて

 2016年よりランダーの自社開発を開始し、2017年以降実施している複数回の資金調達を原資として開発作業を進捗させております。ミッション1及びミッション2で利用するシリーズⅠランダーのサイズは、乾燥重量:約340kg(燃料含まず)、ミッション3以降で利用予定のシリーズⅡランダーのサイズは乾燥重量:約1,350kg(燃料含まず)となっております。

 ランダー開発と月面着陸の歴史は、1959年にソビエト連邦共和国によって開発され月面着陸を行った無人探査機のルナ2号から始まり(以降、1976年のルナ24号までに複数回の着陸を実現)、その後1961年から1972年にかけてNASAが実施したアポロ計画、2013年と2019年にそれぞれ月面着陸を果たした中国の嫦娥3号・4号等、過去にも様々な開発事例が存在しており、ランダー開発技術は原理的に既に確立されたものであります。特にアポロ計画で開発されたランダーは合計6回の有人月面着陸を成功させましたが、これを契機に、ランダーの様な大規模システムを高い品質を保ちながら確実に効率よく開発するための手法として、「段階的プロジェクト計画」(Phased Project Planning:PPP)がNASAによって生み出されました。以降、この手法をベースとして多数の民間企業による人工衛星の開発が行われており、JAXAもまた「段階的プロジェクト計画法におけるシステムエンジニアリング活動」として同様の手法を提唱しています。


3.外部の開発パートナーの積極的な活用

 経験豊富なエンジニア陣による「段階的プロジェクト計画法におけるシステムエンジニアリング活動」に万全を期すことで、確かな開発品質を実現させていく計画ですが、技術実証ミッションを遂行する上では外部パートナーの積極的な活用にも取り組んでおります。中でもランダー固有の開発点として、以下の二点については外部の専門プレーヤーの協力を積極的に活用しております。

 推進システムについては、宇宙空間における推進システムの開発における長年の実績を有する、欧州大手の航空宇宙企業であるエアバスから分離独立したAriane Group社から、推進系システムの設計協力(レビュー等)を得つつ、基幹部品であるスラスター・バルブ・配管等を調達し、推進系システムの組立も同グループの工場を賃借し行う等、緊密な協力関係を構築しております。なお、当社ミッション1及びミッション2については同様の協力関係を現時点で想定しておりますが、ミッション3については米国子会社をランダーの開発拠点とし、NASAによる月面への輸送サービス委託するプログラムであるCLPSへ採択されサービス提供を実行することから、CLPSの要求事項であるDomestic Source Requirements(US内製品の使用)の条件を満たす必要があり基本的に米国企業からの部材調達を実施いたします。

 着陸制御システムの開発については、1960年代から70年代にかけてのアポロ計画でランダーの同システムの開発を担当した米国のドレイパー研究所(本社:米国マサチューセッツ州)に委託をしております。同社との契約関係により、当社は2028年6月末までの期間、地球以外の惑星に500kg以下のペイロードを着陸させる能力を持つ宇宙機への利用に関して、同社が開発する着陸制御システムを独占的に使用する権利を保有しています。

 また、前述のとおり、当社グループは、打上ロケットの自社開発は行わず、既に市場でサービス提供を行っている打上プロバイダーと契約の上、打上サービスを購買してまいりますが、現時点でミッション1からミッション3までについて、SpaceX社との間で打上契約を締結しております。同社は、足許で年間20回超のロケット打上げを実施する打上プロバイダーであり、過去の打上げの成功確率としても約98%と極めて信頼性の高い実績を持つパートナーです。これらの外部の専門プレーヤーの協力を積極的に活用することで、当社はより着実なミッションの成功を目指してまいります。


<開発・営業におけるグローバルネットワーク>

 上述のとおり、当社グループでは、グローバルなエンジニア人材による「段階的プロジェクト計画法におけるシステムエンジニアリング活動」や海外の外部パートナーの積極的な活用により技術実証ミッションを遂行しております。これを実現する上では、世界中の優秀なエンジニアを獲得することが必要となります。当社グループでは、東京の本社にミッション1及びミッション2のランダーの開発拠点を置く他、米国デンバーの子会社ではミッション3で利用予定の大型化したランダーの開発拠点を、またルクセンブルク大公国の子会社ではローバーの開発拠点を置く等、グローバルに開発部隊を配置し、それぞれの拠点の強みを活用しております。またそれぞれの拠点は、日本のJAXAや米国NASA、欧州のESA等の重要な宇宙機関と物理的距離を近く取ることにより、各地での月面開発ニーズの吸い上げを行っております。

 また顧客開拓の観点においても、当社は世界各国において、宇宙機関や民間企業の顧客需要を開拓していく上でも、グローバルなネットワークを構築し、各拠点営業人員を配置しております。欧州においては子会社ispace EUROPE S.A.の従業員が、ESAが実施する月の水資源探査プロジェクトのサイエンスチームに選出される等、当社グループは、民間による月面開発の事業化に取り組むグローバル企業として、国内外から認知されております。


<長期ビジョン>

 当社グループが掲げる「Expand our planet. Expand our future.」には、月を人類が宇宙内で活動する上でのエネルギー補給基地として活用し、2040年を目途に「地球と月がひとつのエコシステムとなるエネルギー経済圏を創出する」というビジョンを実現させる意思が込められています。この経済圏を具現化した構想として、当社グループは2040年に1,000人が月に暮らし、年間1万人が地球との間を往来することを想定した月面上の都市「Moon Valley 2040」の構想を併せて掲げています。

 月を「エネルギー補給基地」として活用する上で鍵となるのが、月における水の存在です。近年の調査で月には水資源が存在することが明らかとなっており、そのサイズは数億~60億トンとも言われ、その分布状況や分量の確定に更なる調査と分析が必要とされています。また月には水資源だけでなく、鉱物資源やヘリウム3も存在する可能性があり、これらの資源の利用可能性にも注目が集まっています。

 水から電気分解された水素と酸素は、液体水素・液体酸素として、近年の宇宙開発におけるロケット推進燃料の1つとして利用されています。将来的に月の水資源を有効活用し、エネルギー源の生成からロケットの推進燃料としての利用までを、一気通貫して月で行うことができれば、地球の1/6ともされる微小重力下の月から抜け出し宇宙空間を移動する燃料輸送コストは、地球の重力から抜け出すことが所与となっていた従来の燃料輸送コストに比べて、大幅に引下げることが可能になると考えられております。これが現在、世界中の注目が月に集まる最大の背景と考えられます。

 小惑星・火星等の深宇宙探査は、科学的観点から人類に大きな利益をもたらすと考えられており、将来的にもより高頻度で実施されることが期待されています。また、現在地球の周回にはGPS(全地球測位システム)・気象観測衛星等、数千機もの人工衛星が存在し、近い将来にはメガ・コンステレーション(大規模な人工衛星群)によるインターネット接続も計画されている等、これらの衛星が地球上の人類の生活を維持する上で必要不可欠なインフラになっており、長期的な維持利用を見据えて燃料補給等のメンテナンスをいかに行うかが課題です。

 将来的に更に増大することが見込まれる深宇宙探査のための移動燃料、また人工衛星の活動維持のための燃料を、すべて地球上から賄うことは、特に地球の重力から抜け出す際に膨大なエネルギーコストが必要になることを考えれば、深刻な課題と言えます。本課題を解消するために月を人類が宇宙内で活動する上でのエネルギー補給基地として活用し、2040年を目途に「地球と月がひとつのエコシステムとなるエネルギー経済圏を創出する」ことを目指す当社のビジョンは、長期的に人類の地球上の生活を持続させることに繋がる世界的に重要な施策の1つと言えます。

 フェーズ1では、当社グループは月の水資源やその他資源の商業的価値に着目し、低価格・高頻度な月面輸送を行うプラットフォームを構築するとともに、月面資源のデータマッピングを行い、月ビジネスに参入するすべての顧客(政府宇宙機関・研究機関・民間企業等)に有益な月のデータ(画像データ・環境データ・資源情報等)を提供することを計画しております。続くフェーズ2では、月面資源探査/開発プラットフォームを構築するために、月の水資源からロケット推進燃料を生成する事業パートナー企業とのアライアンス構築に取り組む計画です。

 

【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2024/03 連結会社予想 6,196 -7,118 -7,885 -7,889

2023/03 連結会社予想 984 -10,852 -11,287 -11,293

2022/03 連結実績 674 -4,056 -4,039 -4,059

2021/03 連結実績 506 -2,624 -2,609 -2,614


決算期 種別 EPS BPS 配当

2024/03 連結会社予想 -101.34 -66.47 0.00


上場時発行済株数 80,420,620株(別に潜在株式8,848,583株)

公開株数 27,762,400株(公募26,519,500株、オーバーアロットメント1,242,900株)


PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:71億

公募時時価:204億

​   

【株主構成】 以下180日

袴田武史 代表取締役CEOなど 12,000,000 19.12%

(株)INCJ 投資業(ファンド) 6,117,800 9.75%

インキュベイトファンド3号投組 投資業(ファンド) 5,992,580 9.55%

小沼美和 新株予約権信託の受託者 4,904,000 7.82%

(株)日本政策投資銀行 特別利害関係者など 3,495,880 5.57%

IF Growth OpportunityFI,L.P. 投資業(ファンド) 2,135,720 3.40%

中村貴裕 元取締役 2,000,000 3.19%

(株)TBSホールディングス 特別利害関係者など 1,747,940 2.79%

IF SPV 1号投資事業組合 投資業(ファンド) 1,174,880 1.87%

SMBC信託(金外信 宇宙フロンティアF) 投資業(ファンド) 1,174,660 1.87%

吉田和哉 元取締役 1,000,000 1.59%

ICJ1号ファンド投組 投資業(ファンド) 1,000,000 1.59%


 グローバル・オファリングに関連して、貸株人である袴田武史並びに当社株主又は新株予約権者である株式会社INCJ、インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合、小沼美和、株式会社日本政策投資銀行、IF Growth Opportunity FundⅠ, L.P.、中村貴裕、株式会社TBSホールディングス、IF SPV 1号投資事業組合、株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託口  宇宙フロンティア・ファンド)、吉田和哉、ICJ1号ファンド投資事業有限責任組合、株式会社日ノ樹、清水建設株式会社、株式会社電通グループ、コニカミノルタ株式会社、スズキ株式会社、スパークス・グループ株式会社、金田政太、清水敏郎、10K3D Limited、野﨑順平、高砂熱学工業株式会社、三井住友海上火災保険株式会社、SMBC日興証券株式会社、KDDI株式会社、日本航空株式会社、ispaceファンド投資事業有限責任組合、リアルテックファンド1号投資事業有限責任組合、大島智洋、石田真康、凸版印刷株式会社、THVP-1号投資事業有限責任組合、ブルー・マーリン・パートナーズ株式会社、株式会社三井住友銀行、リアルテックファンド2号投資事業有限責任組合、Julien-Alexandre Lamamy及び氏家亮については、元引受契約締結日から上場日(当日を含む。)後180日目(2023年10月8日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、グローバル・コーディネーターの事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨を約束する書面をグローバル・コーディネーターに対して差し入れる予定であります。

 さらに、親引け先であるIFSPV2号投資事業組合、三井住友信託銀行株式会社、リアルテックグロースファンド1号投資事業有限責任組合及びCYG Fund投資事業有限責任組合並びに親引け先であるファンドの運用を行うアセットマネジメントOne株式会社は、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の日(2023年10月8日)(当日を含む。)までの期間中、グローバル・コーディネーターの事前の書面による同意なしには、当該親引けにより取得した当社普通株式を含む当社普通株式の譲渡又は処分等を行わない旨を約束する書面をグローバル・コーディネーターに対して差し入れる予定であります。

【代表者】

代表者名 袴田 武史(上場時43歳7カ月)/1979年生

本店所在地 東京都中央区日本橋浜町

設立年 2010年

従業員数 142人 (2023/01/31現在)(平均41.4歳、年収865.9万円)、連結220人

事業内容 月への物資輸送サービスをはじめとした月面開発事業

URL https://ispace-inc.com/jpn/

株主数 49人 (目論見書より)

資本金 93,022,000円 (2023/03/08現在)

社員数 142人(2023年01月31日現在)

代表者生年月日 1979年09月03日生まれ

代表者略歴

2006年09月 マサイ・ジャパン株式会社(現エイミングジャパン株式会社)入社

2010年09月 合同会社ホワイトレーベルスペース・ジャパン(現当社)設立、代表社員

2013年05月 当社代表取締役CEO(現任)

2015年03月 ispace technologies, inc. Director

2016年09月 ispace technologies U.S., inc. President(現任)

2017年03月 ispace EUROPE S.A. Director(現任)

2021年07月 株式会社ispace Japan 代表取締役(現任)



【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 松井 - -

引受証券 アイザワ - -

引受証券 あかつき - -


【参考類似企業】時価総額(3/17)

00001 米ヴァージンギャラクティク 1,537億円

00002 米ロケットラボ 2,443億円

00003 米モメンタス 68億円

00004 米プラネットラボ 1,388億円

00005 米ヴァージンオービット 287億円

7013 IHI 4,842億円

7779 サイバダイン 397億円

9232 パスコ 201億円

9412 スカパーJ 1,490億円

9600 アイネット 208億円

00000  米インテュイティブ 195億円

【私見】

 宇宙関連としては完全な初物銘柄で注目度が高い夢のある銘柄です。業績は当然赤字ですが、バイオ同様にあまり関係なく、黒字化することは考えない方が良い銘柄だと思います。吸収金額は大きめですが、親引き受けなとで実際の需給はタイトで、ロックもかかっているので売り要素は少なそうです。時価総額でサイバーダインの400億ほどが適正なのか、1000億を目指すのかは難しい判断ですが、短期的には低単価で四桁を目指す展開を予想します。


想定価額:244円

仮条件上限:254円

初値予想:650円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・やや強気

総合評価:4

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