2023年3月20日月曜日

IPO分析(Fusic)

 【事業内容】

​ ​(1)事業の概要

①「クラウドインテグレーションサービス」:AWSによるサーバーインフラの構築・運用から、AWSのマネージドサービスを活かしたシステム開発を行うサービス。

②「データインテグレーションサービス」:センサーデバイスから得られる音声や画像などのデータのINPUT(IoT)、STORE(クラウドインフラ)、OUTPUT(AI/ビッグデータ解析)まで、データにまつわる様々な技術・解決策を一貫して提供するサービス。

③「その他サービス」:顧客の要望に合わせて開発したシステムから汎用性の高いものを「プロダクトサービス」化して提供するサービス。


 当社の強みは、クライアントが置かれているDXのステージに応じて幅広く支援できることです。日本が置かれている状況を鑑みると、多くの企業・組織は業務をシステム化しているものの、容易に変更や拡張することが困難なレガシーシステムが基盤になっていたり(DXレベル0)、「人が作業すること」を前提に設計されたりしているものであり、「IT技術に多くを任せること」を前提に業務を見直し、大幅な生産性向上や新たな価値創造に資するデータ蓄積が行われていないという現状があります(DXレベル1)。それを乗り越えた一部の企業・組織においても、次のレベルとしてデータを活用した企業価値の向上という新たな課題に直面しています(DXレベル2)。

 DXレベル0およびDXレベル1のステージにいるクライアントにおいては、広範なIT技術群を前提に業務を見直し、最適な技術を組み合わせ、既存のシステムを刷新することが重要と考えております。当社のクラウドインテグレーションサービスは、クラウドファーストの視点を維持しながらも、特定分野・技術に特化せず、ソフトウェア開発からUI/UXに至るまで幅広い技術群の中からクライアントにとって最適な組み合わせを提供できることが特徴です。

 DXレベル2のステージにいるクライアントについては、データ集積基盤が既に存在している前提で、データに基づく事業運営や価値創出を可能にする良質なデータ収集や活用ノウハウが重要となります。当社のデータインテグレーションサービスは、IoTベンダーとのアライアンスによる更なる良質なデータ収集ソリューションと、自社AI人材によるコンサルティング機能を有しており、データの収集から活用まで一貫して支援できることが特徴です。

 他方、当社でこれまで開発してきたシステムのうち、汎用性が高く多くの人の課題解決に貢献できるものをSaaS化しており、これを「プロダクトサービス」(サービス区分上は売上構成比が低いため「その他サービス」と表記しております)と位置づけております。様々な企業・組織に利用頂いている多面評価システム:360や、学校向けの保護者連絡ツール:sigfyは、それぞれ数万から十数万のエンドユーザーに利用頂いており、サービスの有用性はもちろんのこと、DX事業における知見向上にも大きな役割を果たしております。


各サービスの詳細は以下の通りです。

① クラウドインテグレーションサービス

 クラウドコンピューティングの様々な機能とソフトウェア開発技術を活用し、幅広いクライアントにクラウドインテグレーションサービスを提供しております。クラウドコンピューティングは、サーバー、ソフトウェアライセンス、ネットワーク機器などの初期投資を必要とせず、加えてそれらを含むコンピューティングリソースを柔軟かつ迅速に拡張・縮小することが可能です。近年ではその利便性の高さから、柔軟性と変化への対応スピードが要求される新規サービス領域での活用はもとより、障害や中断が許されない基幹業務系システムの領域においても主要な選択肢となっています。

 さらに、今後イノベーションのキーとなるビッグデータの格納先として、容量に柔軟性があるクラウド上のストレージは最適であることからも、クラウドをIT基盤の最初の選択肢に据えるクラウドファーストの考え方が主流となってきています。当社は、2012年からクラウドコンピューティング技術を取り入れ、クラウドネイティブなソフトウェア開発、クラウドインフラ構築など幅広い実績を有しております。また、単にシステムを提供することに留まらず、社内デザイナーの知見を活かしたUI/UXのノウハウによる優れた顧客体験の実現や、アジャイル開発等の手法による顧客ニーズへの柔軟な対応を実現しています。


a. クラウドネイティブインテグレーション

 AWSに関する豊富な知識や経験を基に、クラウドのメリットを最大限活用したクラウドネイティブなシステム開発を行なっています。クラウドネイティブな開発とは、クラウドの利点を徹底的に活用するシステムといった意味を持つ言葉です。最初からクラウド上で動くことを前提に、クラウドならではの機能や特性を活かせるよう設計されたシステムのことで、高速な開発や高度な運用自動化などを実現することが可能となります。当社においては、2012年6月に、AWSのグローバルパートナープログラム「APNコンサルティングパートナー」に認定されて以来、AWSがクラウドコンピューティング上で提供する数百に及ぶサービスとソフトウェア開発双方に精通したエンジニアが、システムの信頼性を最大限に高めるべく、サービスとソフトウェア開発のベストミックスを提案します。スタートアップから大企業、大学/研究機関まで規模・業種・システム内容を問わず、多くの実績を有しています。さらに、ゲノム等のビッグデータ解析に代表される高負荷処理をより高速・効率的に行えるシステム構築を行うハイパフォーマンスコンピューティング分野の実績も多く積んでおり、当社の強みの一つとなっています。


b. リセール

 上述したAWSの「APNコンサルティングパートナー」に認定されて以来、日本におけるAWSリセラーとしてAWSの再販売を行っております。当社は、AWS利用料の請求代行サービスを提供するのみならず、新たにAWSを導入することを検討されているクライアントに対し、豊富な導入実績を活かして移行の際の技術的なアドバイザリーを行っており、ご要望に最も合致するプランをご提示して環境構築まで支援しております。特に公共分野(パブリックセクター)への提供に強みを持ち、全国の大学・教育機関や研究開発法人・独立行政法人などへの支援実績を数多く有しております。商業分野(コマーシャルセクター)においては、地場である九州のクライアントはもとより、全国に規模を拡大しつつあります。またクライアントのDX実現には社内人材の高度化も不可欠です。当社が持つAWSの知見をクライアントに提供する教育サービスも実施しております。


c. MSP

 初期の構築に留まらず、その後の運用メンテナンスまで一貫して対応しております。ただシステムの保守・ 運用を行うだけでなく、日々更新される新たなAWSのサービスやクライアントのニーズを鑑みて、システムのアップグレードやコスト最適策を提案し、新たなビジネス機会の創出へと繋げております。


②データインテグレーションサービス

 様々な業界のクライアントに対し、IoT・AI・ビッグデータ解析によるデータインテグレーションサービスを展開しております。前述の「DXレベル」を上げるべく、データのINPUT (IoT)、STORE(クラウド)、OUTPUT(AI/ビッグデータ解析)まで一貫してクライアントのデータ活用を強力に推し進めます。また、PoC(概念実証)の設計、実施に留まらず、「クラウドインテグレーションサービス」と掛け合わせることで、データを中心とした新たな仕組みと既存システムとの連携課題を解決し、最終的なシステム運用に至るまでトータルでサポートします。


③その他サービス

a. 360(さんろくまる)

 多面評価(360度評価)に特化し、その煩雑な業務を効率化するサービスを提供しています。管理職の人材育成や研修の効果測定としても利用されています。PCのみならず、スマホ・タブレットからも登録可能で、リモートワークや外回りが多い企業でも便利に利用できます。評価項目は企業が独自に設定することが可能で、評価の実施から回収についても管理者は都度進捗を確認することができます。利用企業数が順調に伸びているだけでなく、高いリピート率を誇っており、企業の規模・業種に関わらず多くの企業に利用頂いています(2023年1月現在 累計1,000社以上)。


b. sigfy

 「学校連絡をもっと楽にシンプルに」というコンセプトのもと、学校と保護者を繋ぐ連絡サービスを提供しています。いち早くLINE連携を行う等、年間に約20機能のアップデートを行い、コロナ禍における学校と保護者の生命線として大きく貢献しています。サービス開始以来、私立学校を中心に順調に利用者を増やしています(2023年1月現在 約11万人)。連絡ツールとして学校と保護者を結ぶだけでなく、集金機能を備えるなどして、学校生活の様々なシーンでsigfyの活用機会が生まれています。


(2)サービス間の相関関係

 上述したサービスの内、主たる事業であるクラウドインテグレーションサービスとデータインテグレーションサービスは下図の通り、相互に様々な事業シナジーを持ってサービス展開を行っております。


(3)当社における先進技術の習得サイクルと社会への還元スキーム

 変化の激しいITの世界においては、先端技術をいち早く習得し、事業化することが肝要と考えております。そのため、当社は創業時から社員の自由な技術習得を奨励しており、技術探究を行う合宿の定期実施や研究費用支援など、社員の学習機会を支援する様々な制度を展開しております。そのような土壌で育まれた先進技術の知識を基に、学術研究機関や企業の先進技術分野の研究開発に高い専門性と提案力を武器に伴走し、そこで得た先進技術の実績と知見を、全国の大学・自治体や九州・福岡の地域企業を中心に展開する流れを推進しております。このサイクルをエコシステムとして確立することで、社会全体のDX推進に貢献していきます。


(4)当社のビジネスモデルについて

 当社のサービスは、「① a.クラウドネイティブインテグレーション」および「②データインテグレーションサービス」による売上を「フロー売上」(主に、顧客企業へのコンサルティング、システムや基盤の設計・構築を行うサービスであり、主として顧客企業の検収時に売上が計上される一過性の売上)として位置付け、クライアントを開拓することによりフロー売上を拡大させております。その後、システムの継続運用に伴う業務を蓄積することで、「ストック売上」(「① b.リセール」、「①c.MSP」)の拡大による安定収益化を図っております。 


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/06 単独中間実績 755 115 111 78

2023/06 単独会社予想 1,331 158 145 101

2022/06 単独実績 1,124 70 70 44

2021/06 単独実績 762 -38 -42 -25


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/06 単独会社予想 96.38 - 0.00


上場時発行済株数 1,200,000株(別に潜在株式64,200株)

公開株数 345,000株(公募200,000株、売り出し100,000株、オーバーアロットメント45,000株)

調達資金使途 人員体制強化費用、マーケティング費用、借入金返済


PER:20.8

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:6.9億

公募時時価:24億

​  

【株主構成】 

納富貞嘉 代表取締役社長 335,000 31.48%

浜崎陽一郎 取締役副社長 335,000 31.48%

NSMC(株) 役員らが議決権の過半数所有 140,000 13.16%

HSMC(株) 役員らが議決権の過半数所有 140,000 13.16%

(株)フィックスターズ パートナー契約先 20,000 1.88%

新田寛之 取引先代表 15,000 1.41%

江上喜朗 取引先代表 15,000 1.41%

小田晃司 執行役員 5,000 0.47%

桜川幸三 従業員 3,600 0.34%

杉本慎太郎 従業員 3,400 0.32%


本募集及び引受人の買取引受による売出しに関して、貸株人かつ売出人である納富貞嘉及び濱﨑陽一郎、当社役員かつ当社新株予約権者である安浦寛人、栗林絹江、柏木街史及び西原隆雅、当社新株予約権者である小田晃司、並びに当社株主であるNSMC株式会社、HSMC株式会社及び株式会社フィックスターズは、株式会社SBI証券(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日(当日を含む。)から起算して180日目の2023年9月26日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなしには、当社株式(当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式を含む。)の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、およびオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等は除く。)を行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 納富 貞嘉(上場時44歳7カ月)/1978年生

本店所在地 福岡県福岡市中央区天神

設立年 2003年

従業員数 84人 (2023/01/31現在)(平均32.3歳、年収562.5万円)

事業内容 クラウド環境を活用したシステム開発、IoT(モノのインターネット)・クラウド・AI(人工知能)を組み合わせてデータ活用を支援するデジタルトランスフォーメーション事業

URL https://fusic.co.jp/

株主数 7人 (目論見書より)

資本金 10,000,000円 (2023/02/24現在)

代表者生年月日 2003年10月10日生まれ

代表者略歴

2003年10月 株式会社Fusic設立 取締役副社長

2005年03月 当社 代表取締役社長(現任)

2018年02月 株式会社Fixstars Cloud Solutions 取締役

2018年10月 株式会社ホープ 社外取締役


【幹事団】

主幹事証券 SBI - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 大和 - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 FFG - -

引受証券 東海東京 - -

引受証券 東洋 - -

引受証券 西日本シティTT - -

引受証券 松井 - -

引受証券 丸三 - -

引受証券 極東 - -


【参考類似企業】今期予想PER(3/7)

3844 コムチュア 22.6倍 (連結予想)

3915 テラスカイ 163.2倍 (連結見込)

4178 Sイノベション 32.8倍 (連結予想)

4261 アジアクエスト 13.9倍 (連結予想)

4270 BeeX 26.4倍 (単独見込)

4396 システムサポ 18.7倍 (連結予想)

4414 フレクト 32.1倍 (単独予想)

4434 サーバワクス 48.1倍 (連結見込)

5029 サークレイス - (単独予想)

5036 日ビジシス 24.3倍 (単独予想)

5039 キットアライブ 10.6倍 (単独予想)

5129 FIXER 29.3倍 (単独予想)


【私見】

 DX関連で、業種は悪くはありませんが、大きな優位性はなさそうです、業績は現状は小規模で、成長性を加味すれば上値余地はありそうです。規模は小さく、売り要素はないので初値人気はありそうですが、高い位置ではリスクが伴うでしょう。


想定価額:1830円

仮条件上限:2000円

初値予想:4000円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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