2023年6月7日水曜日

IPO分析(リアルゲイト)

 【事業内容】

​ (1) 事業の内容

<フレキシブルワークプレイス事業>

 スモールオフィスやシェアオフィスといったフレキシブルワークプレイスを提供することで、不動産に付加価値を付与し収益性を向上させる事業です。ビルオーナーから不動産の運営委託やそれらに付随する設計・施工請負の受託、自社で保有している物件を直接テナントに賃貸することも行っております。

 また、当社のフレキシブルワークプレイス事業は、対象プロジェクトがリノベーション案件か新築案件かによって、再生ソリューションと開発ソリューションという二つの建物ソリューションに分けられます。再生ソリューションは築古ビルを対象として、耐震補強や増築、用途変更などを通じて抜本的な資産価値の向上を図っております。築古ビルを扱うメリットは、イニシャルコストが安く済み、稼働までの期間が短く、新築プレミアムの影響を受けにくいことなどが挙げられます。開発ソリューションは新築ビルを対象として、スモールオフィスやシェアオフィスといったフレキシブルワークプレイスを組み込むことで、付加価値を付与しております。開発ソリューションは、レジデンスに店舗やオフィスを組み合わせるというコンプレックス型が多く、シェアオフィスやスモールオフィスが建物全体の価値をあげるアイテムとなることで、施設価値の向上に繋がっております。


 (不動産の運用形態)

 ①マスターリース(以下、MLと表記)契約、②プロパティマネジメント(以下、PMと表記)契約、③保有(自社保有物件における入居テナントとの賃貸借契約)となっています。物件の個別性や市況に応じて柔軟に運用形態を選択することで、不動産価値の最大化を図っております。また、リーシングマネジメントやイベント開催といった物件運営の附帯事業についても提供しております。

 ビジネスモデルは、ML・保有(賃貸)におけるテナントからの賃料収受及びPMにおけるオーナーからの運営委託フィー収受といった物件運営を通じて継続的に得られるストック型収入がメインであり、2022年9月期実績で売上全体の76%を占めております。ストック型収入の安定的な積み上げをベースとしながらも、物件運営に付随して発生する設計・施工請負契約の受託や保有物件の売却といったフロー型収入が積み上がります。


 ①ML契約

 ML契約は、競争力の低下した築古ビルを中心に一括借り上げし、運営・管理しております。不動産所有者に賃料を保証し借り上げたのちに、不動産価値を向上させ、その物件を転貸することによりテナントから受取る賃料を収益に計上しております。土地や建物を保有することなく管理物件を転貸にて運用することで資本効率を高め、資産価値下落のリスクを抑えることにより、収益を安定的に確保することが可能となっております。なお、ML契約に付随して、設計・施工請負契約を締結するケースもございます。


②PM契約

 PM契約は、テナント誘致、賃貸借契約代行、トラブル対処等のテナント窓口業務、テナント請求業務、建物や設備の点検代行等を行うことでビルオーナーから手数料を収受しております。施設運営の実績と知識を基に、不動産価値を最大化する運営と管理を提供しております。なお、PM契約に付随して、設計・施工請負契約を締結するケースもございます。


 設計・施工請負契約

a. 設計監理契約(2017年11月一級建築士事務所登録)

 物件の設計監理の請負契約についても対応しております。不動産は商品としての個別性が強くそれぞれに特有の事情を抱えております。従って、個別性の強い築古ビルの抜本的な資産価値向上のためには、経験に基づく高度な技術力が必要となります。また、設計変更の内製化など事業推進の迅速化にも繋がっております。


b. 工事請負契約(2020年2月特定建設業許可取得)

 リノベーション工事や新築工事だけでなく、運営物件における附帯工事の発生(補修、指定工事等)といった工事請負契約についても対応しております。特定建設業許可を取得したことによって、工事請負金額の制限が無くなっただけでなく、社内へのノウハウの蓄積や事業推進の迅速化にも繋がっております。


③物件保有(入居テナントとの定期建物賃貸借契約)

 自社で物件を保有した上で、入居テナントと定期建物賃貸借契約を締結することで賃料収入を得るケースもございます。自らが不動産所有者となることで賃料支払い負担がなくなることから、借入利息を勘案しても粗利では収益アップに繋がっております。また、保有物件の売却により、売却益を確保しながらも、資産入替による財務バランスの確保を行う場合もございます。この場合、保有物件売却後もML契約もしくはPM契約を締結することで、物件運営による安定的なストック収入を継続させております。


 (運営物件)

 2023年3月末時点において、累計プロジェクト(終了物件も含んだ累計プロジェクト数を指します)は90件、稼働中プロジェクト(テナント入居前物件も含めた運営中プロジェクトを指します、リーシングマネジメント契約等も含まれます)は69件、入居済物件(テナント入居後の運営中物件を指します、リーシングマネジメント契約等は含まれません)は55件となっております。

 

(東京都心部を中心としたエリア展開)

 築30年前後で延床面積300~600坪程度のコンパクトな築古ビルが主な仕入物件となっております。オフィス需要並びに収益性を鑑み、東京都心部を中心に展開しております。コンパクトな築古ビルを対象としているため、価格優位性の高い東京都心部での事業展開が可能となっております。事業展開の規模を大きくせずに東京都心部の得意エリア内での当社物件数を増やしていくというドミナント戦略を採用することで、他社との差別化を行っております。当社の得意とするエリアは、潜在性を秘めた築古ビルの供給ストックが豊富であり、テナント需要にも恵まれています。その上、当社がマーケットを熟知している地域であるからこそ、都心部で個性的なオフィスを適正価格で借りたいというエリア特有のニッチな需要に応えることが可能となっております。また、エリアを集中させることにより、管理面での人的資源の投下が効率化され、運営費の抑制に繋がることも大きなメリットです。なお、2023年3月末時点の稼働中プロジェクト69件のうち、渋谷区は27件、港区は15件、目黒区は11件です。


(入居テナント・契約内容)

 2023年4月1日時点の入居テナント数は、区画契約872件、フリーデスク契約355件となっております。区画契約872件のうち、事務所契約が743件と区画契約の85%を占めております。そして当社の入居テナントの多くを占めるのが区画専有面積50㎡未満のスモールオフィスであり、事務所契約の63%を占めております。また、入居テナントの業種は情報サービス業等がおよそ4分の1を占め、創立年数が10年以内の社歴の若い会社がおよそ6割を占めております。


(クライアントとしてのビルオーナー)

 2023年3月末時点において稼働中プロジェクト69件に対して、クライアント数は46となっております。狭域エリアでの展開ながら、特定のクライアントに大きく偏ることなく業務を受託しております。クライアントの属性も、不動産デベロッパーや鉄道会社などの大企業から個人ビルオーナーまで多種多様となっております。ビルオーナー向け物件内覧会の実施、ダイレクトメールでのアプローチ、講演会の実施・専門誌でのコラム等の発信、プロモーション活動による会社自体の認知度の向上などによりクライアントを獲得しています。


 (2) 事業の特色

 <当社の強み>

 確かなフレキシブルワークプレイス事業の運営実績により培われた、企画力・技術力・運営力だと考えております。企画・デザイン、設計・建設、リーシング、運営までワンチーム・ワンストップでプロジェクトを推進しております。プロジェクトが発足すると6名~10名程度のチームを編成し、各専門家がワンチーム・ワンストップでプロジェクトに取組むことで、事業推進の迅速化・効率化とノウハウの蓄積を実現しております。

 各専門家についてですが、各許認可・登録の下で有資格者が以下のとおり在籍しております。一級建築士事務所であり、2023年3月末時点で一級建築士が7名在籍しております。特定建設業許可を取得しており、2023年3月末時点で1級建築施工管理技士が6名在籍しております。宅地建物取引業者として、2023年3月末時点において、宅地建物取引士が45名在籍しております。


(企画・設計・デザイン)

 新規案件の検討において、設計図書や現地調査を行い改修方法の可能性や法的検証の上、マーケティングや資産価値向上に繫がる事業計画やスキームの立案を行い、また各業者やデザイナーの調整等を通じてクリエイティブな空間創りに注力しております。企画設計段階のみならず、確認申請や工事現場監理等を行い、竣工後は建物の品質を損なわないよう、テナントの内装監理や物件調査により修繕計画のサポートなども行っております。

 また、一定のインフラ設備は備えつつ、床・壁・天井等の内装を自由にリノベーションできる「オーダーメイドオフィス」サービスも提供しております。空調などのインフラ設備を設置したシンプルな空間を提供し、一定の条件をクリアした場合は退去時の原状回復義務を免除するなど、入退去時のコストを抑えながらも自由なオフィス空間創りを可能としております。


(建設)

 仕入段階における工事の積算や施工業者の調整、自社企画運営する建物の元請工事の安全品質管理、コスト管理及び工事監理補助、オーナーや施工業者等の様々な関係者との調整を行いながら安全な現場運営を行っております。また、築古ビルの再生に携わるため竣工時の図面や改修履歴などを確認しながら工事を行っております。


(リーシング)

 当社オフィスの魅力を的確に伝え、シェアオフィス特有の入退去の回転率の速さに対応できるリーシングツールと体制を整えております。リーシングツールとしては、オウンドメディアの機能も兼ね備えたメディア型オフィス検索サイトである「ORDERMADE TOKYO」を提供しています。その他、イベント企画による集客や、ビルオーナーリスト・入居テナントリスト・反響リスト等をもとに作成されたメーリングリストなどを駆使しております。例えば、2023年5月8日時点でメーリングリストに登録されている入居検討者は3,978名であり、潜在顧客に対してダイレクトに商品をアプローチすることが可能となっております。


(運営)

 常駐ではなく狭域でのこまめな巡回対応での物件運営を行っております。巡回対象の物件が狭域にまとまっていることで運営コストを削減しながらも、WEBカメラでの監視などを無人管理にプラスして定期的な巡回をすることで物件の質を担保しております。このように運営業務を取捨選択して効率化を進めながらも、入居テナントのニーズを的確に掴むためにコミュニケーションを重視しております。新規契約時において当社独自の基準で入居審査を実施していることでサービスクオリティーを維持し、また、入居テナントと担当者の距離が近く滞納などの兆候を事前に察知しやすいなどの利点が挙げられます。その他、クレーム対応等を通じて入居テナントのニーズを聴取し、次の企画に反映していきます。例えば、ラウンジでのWEB会議への騒音クレームに対してWEB会議ルームを新設する、インターネット通信速度の低下の苦情に対してはサーバー補強などの対策を実施する、床材の劣化などの指摘に対しては設計時の建材選定の参考にするなど、迅速に対応しながら次の企画へフィードバックしていきます。

 その他、福利厚生サービスを提供するなど、テナント入居者の満足度を高め、定着率アップの施策を実施しております。具体的には、福利厚生サービスを「JOINT HUB」と総称し、運営するワーケーション施設の利用機会の提供やスポーツジム施設であるゴールドジムの利用チケットの提供、入居者参加型イベントや経営者の交流会の実施などを提供しております。


 <参入障壁>

 フレキシブルワークプレイス市況における入居テナントのニーズを的確に掴む難しさこそが、参入障壁だと考えております。一般的なオフィスマーケットは立地や築年数である程度固定化されてはいるものの、フレキシブルワークプレイスにおいては相場が固定化されておりません。そのため、運営実績に基づく需要予測と賃料設定が必要であり、資金があったからといって過去の成功事例を模倣することは困難です。当社は創業以来累計90件のフレキシブルワークプレイス物件の運営実績により培われた企画力・技術力・運営力があり、フレキシブルワークプレイスを求める入居テナントのニッチな需要への対応を可能としています。

 また、フレキシブルワークプレイスは企画やデザイン次第で単価が大きく上下します。例えば、当社の「THE WORKS」は、運営延床面積2,753㎡、築45年のエレベーター無し旧倉庫兼事務所ビル一棟をシェアオフィスを中心とした複合施設にリノベーションし人気物件に再生した物件であり、2023年3月末時点においても、満室稼働しております。1階倉庫を店舗に用途変更したことや、エレベーターの新設、ラウンジやスカイテラスなどを設置し共有部などを充実した上で、スモールオフィスを配置しました。その結果、2022年9月期で年間支払賃料94百万円(延床面積あたりの売上単価が月額0.9万円/坪)の物件が、フレキシブルワークプレイス事業によって、年間売上高206百万円(延床面積あたりの売上単価が月額2.1万円/坪)と大幅に収益性が向上する物件となっております。これは、入居テナントのニッチな需要にマッチすれば、築古ビルであっても企画やデザイン次第で高収益をあげることができるという事例の一つです。

 「会社の財力といったステータスを示すわかりやすい高級な事務所」を求める会社は、新築ないし築浅の大型S級ビル(大型S級ビルは、好立地、延床2万坪以上、基準階500坪以上、築11年未満、ランドマーク性等を備えたビルを指します)を選択する傾向にあり、「最低限の執務スペースとしての事務所」を求める会社は、一般的なオフィスビルを選択する傾向にあると考えます。対して、「オフィスは会社のカルチャーを作り発信する場所」と考える会社は、一般的なオフィスビルを好まない傾向にあります。このようなニッチな需要に応えるために、品質担保のための社内会議体を設けることによる一定のクオリティの担保を行いながら、物件独自のセンスのある共用部や外観、専有空間に自由度のあるオフィスを提供しております。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/09 単独中間実績 3,894 413 393 249

2023/09 単独会社予想 6,900 510 435 292

2022/09 単独実績 5,843 429 387 36

2021/09 単独実績 3,810 281 264 53


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/09 単独会社予想 133.82 812.86 -


上場時発行済株数 2,670,000株(別に潜在株式269,300株)

公開株数 770,500株(公募670,000株、オーバーアロットメント100,500株)

調達資金使途 土地建物取得費用、改修工事費用


PER:13.3

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:13.8億

公募時時価:48億

​   

【株主構成】 

(株)サイバーエージェント 親会社 1,830,000 80.64% 180日

岩本裕 代表取締役 277,500 12.23% 180日

サッポロ不動産開発(株) 特別利害関係者など 40,000 1.76% 180日

渡辺学 取締役 34,500 1.52% 180日

横山和哉 取締役 21,500 0.95% 180日

黒川亮 従業員 11,500 0.51%

山崎誠一 従業員 9,600 0.42%

井上陽平 従業員 6,600 0.29%

菊池史哉 従業員 6,200 0.27%

菅原大輔 従業員 6,000 0.26%


 本募集に関連して、株主かつ貸株人である株式会社サイバーエージェント、並びに当社の株主である岩本裕及びサッポロ不動産開発株式会社は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2023年12月18日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 また、当社の新株予約権を保有する岩本裕、渡邊学、横山和哉及びその他33名は、主幹事会社に対し、ロックアップ期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却等を行わない旨を合意しております。


【代表者】

代表者名 岩本 裕(上場時49歳9カ月)/1973年生

本店所在地 東京都渋谷区千駄ヶ谷

設立年 2009年

従業員数 90人 (2023/03/31現在)(平均32.5歳、年収566.2万円)

事業内容 不動産に関するコンサルタント業務、不動産売買業務、不動産仲介業務、不動産賃貸業務、不動産管理運営業務、建築・設計監理業務、建築および内装工事請負業務、損害保険の代理店業務

URL https://realgate.jp

株主数 3人 (目論見書より)

資本金 30,000,000円 (2023/05/19現在)

代表者略歴

1996年04月 五洋建設株式会社入社

2001年07月 株式会社大京入社

2004年11月 株式会社プロパスト入社

2008年06月 同社 執行役員

2009年08月 当社創立 代表取締役就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 マネックス - -


【参考類似企業】今期予想PER(5/24)

3236 プロパスト 4.2倍 (単独予想)

3929 ソーシャルワイヤ 323.7倍 (連結予想)

5071 ヴィス 7.8倍 (連結予想)

8934 サンフロンティア 5.9倍 (連結予想)


【私見】

 サイバーエージェントの子会社で、新興企業向けという優位性はあるものの、不動銘柄で高い評価はできません。業績は良いですが、不動銘柄としては、優位性はあるものの割安感はありません。需給面では、VCなしでロックもあり、吸収金額も小さいので、下値不安はありませんが、上値も大きくはないと予想します。


想定価額:1790円

仮条件上限:1790円

初値予想:2200円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3

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