2023年6月8日木曜日

IPO分析(ARアドバンストテクノロジ)

 


【事業内容】

 主に顧客のDXを実現するためのシステムの受託開発、即ちデジタルソリューションの提供であり、当社グループではこれをDXソリューション事業としております。当社グループは、創業から培った仮想化及び自動化技術(クラウドの前提となるハードウェアの抽象化技術)への専門的技術知見をベースに、国内クラウド市場の拡大と平仄を合わせて成長してきており、「クラウド技術とデータ・AI活用によるビジネストランスフォーメーションデザイナーとして社会変革をリードする」を掲げ、DX化のためのデジタルシフト、クラウドシフト等、顧客の課題解決に向けたサービスを提供しております。

(1) サービスの内容

 サービスは主にシステムに関するプロフェッショナルサービスであります。上流工程であるコンサルティング及び要件定義からはじまり、基本設計、詳細設計、製造、単体テスト、結合テスト、総合テスト、運用テスト、システム移行、保守・運用、自社開発プロダクトの販売又は他社製品のライセンス販売まで総合的にサービス提供しております。

 具体的には、Amazon Web Services(以下「AWS」という。)やMicrosoft Azureに代表されるクラウドネイティブ技術を活用したシステムインテグレーション(以下「クラウドインテグレーション」という。)の提供から、自社開発プロダクト及び他社サービスの販売、保守運用の提供、DX人材の提供まで、先進技術をワンストップで提供する事業展開を行っております。


(2) 事業展開の特徴

①「BTCアプローチ」

 「BTC」の「B」は「コンサルティング(Businessノウハウ)」を表し、顧客のDX化に向けた基本構想・ロードマップ等の企画立案、アクションプランの策定などを支援するコンサルティング機能を意味しております。「DX」とは「デジタル技術を活用したビジネス構造の変革」であり、一般的なDXソリューション事業においてコンサルティング機能は必要不可欠な機能であると言われております。「T」は「技術(Technology)」を表し、クラウド技術を主軸としたソフトウエア、インフラ及びセキュリティ、AI・データサイエンスの各専門技術の機能の提供を意味します。「C」は「デザイン(Creative)」を表します。システムとデザインは密接な繋がりがあり、デザインはシステムの操作性に大きな影響を与えます。当社グループでは、システム開発における上流工程からUI/UX(※6)の専門チームが開発に参画し、利便性が高く手戻りの少ないシステムをスピーディーに開発する「デザイン先行開発」モデルを構築しております。

「B」「T」「C」を一体的且つ有機的に組み合わせて提供する目的は、顧客の満足度を最大化させることにあります。

 ワンストップサービス提供のための投資という観点から、これらの機能を揃え、かつ育成するのは容易ではないため、「BTCアプローチ」は付加価値創出の源であり、当社グループの差別化の淵源となっております。


②「ハイブリッドアプローチ」

 コンサルティングの提案や自社開発プロダクト等の提案を起点に、捕捉することができた顧客のDX上の課題に対して、課題解決のためのクラウドインテグレーションの提案・提供に繋げるという形をとって、所謂クロスセル、アップセル戦略を展開しております。これにより顧客の課題解決と、顧客満足度を高めることで得られる顧客LTVの最大化を同時に実践しております。所謂フロービジネスにあたるクラウドインテグレーションから得たノウハウを、所謂ストックビジネスである自社開発プロダクトに還元し、自社開発プロダクトの提案を起点にクラウドインテグレーションを拡大させていくという好循環のサイクルを回していくことが、当社グループのビジネス発展にとって重要なエンジンの一部となっていると同時に、他社との差別化にも繋がっております。なお、当社グループにおけるフロービジネスとはクラウドインテグレーション(DXコンサルティング、内製化支援、データ・AI活用など様々な要素から構成されます)のほかDX人材の提供などが含まれます。ストックビジネスには保守運用提供のほか、SaaS型で提供する自社開発プロダクトなどが含まれます。これらが相互に連環しながらビジネスを拡大させており、顧客毎にみたときには、取引関係の深化(作業支援からシステムの請負開発、周辺システムから基幹系システムの開発など)が進むことになります。これらを称して所謂クロスセル、アップセル戦略としております。

 なお、自社開発プロダクトは以下の3つとなります。

・LOOGUE (ローグ)

 業務自律化・可視化のためのAIマルチエンジンであります。社内の問い合わせを自動化するAIチャットボットや、作業マニュアルやガイドライン等のビジネスドキュメントを社内システムから最適抽出するAIドキュメント検索システムとして活用が可能であります。AIチャットボットの基本形である「LOOGUE FAQ」に加え、チャットボット作成時のFAQの生成を自動化した「LOOGUE NoQA」、大量のドキュメントファイルの分析及び検索に対応した「LOOGUEdeepdoc」等のシリーズをSaaS型にて提供しております。


・ZiDOMA(ジドーマ)

 「ZiDOMA」はビッグデータを適正に管理するためのファイルサーバ統合管理ソリューションです。ファイルサーバ上のデータ容量を分析・可視化し、ファイルデータ容量とともに上昇するクラウドコストの管理効率を向上させる「ZiDOMA data」のほか、オンプレミス及びクラウドストレージ間での高速データ転送とバックアップによりクラウドストレージへの移行を自動化し、クラウドストレージへのデータ移行の際の負荷を大幅に削減することができる「ZiDOMA sync」等のシリーズを、SaaS型及びオンプレミス型にて提供しております。


・Mieta(ミエタ)

 コンタクトセンターにおける様々なデータを一画面で分析・可視化を可能にしたクラウドコンタクトセンター分析管理サービスであります。AWSのクラウド型コンタクトセンター「Amazon Connect」と連携することにより、ロケーションフリーなコンタクトセンターの構築を実現することができ、SaaS型にて提供しております。


③技術力及びリソースの基盤

 クラウドにおけるグローバル基準のソリューションサービスを提供できる実績とノウハウを保有している事業者として、当社はAWSから、AWS Partner Network(以下「APN」という。)アドバンストティアサービスパートナーに認定されております。APNはAWSを活用して顧客向けのソリューションとサービスを構築しているテクノロジー及びコンサルティング企業向けのグローバルパートナープログラムであります。APNアドバンストティアサービスパートナーは、APNの中でもAWSに関する営業・技術体制が整っており、AWSでのクラウドインテグレーションの実績が非常に豊富なパートナーが取得できるものであります。加えて、当社はAWSの認定資格取得数が200を超える企業として「AWS 200 APN Certification Distinction」に認定されております(認定資格総数277個)。同じくAWSのコンタクトセンターソリューションであるAmazon Connectにおけるサービスデリバリープログラム認定及びAPNにおける「AWS Well-Architectedパートナープログラム」認定も取得しております。さらに、Microsoft社が提供するMicrosoft Azureの認定資格者(認定資格総数54個)も多数育成しており、マルチクラウドの技術基盤を整備しております。

 また、当社グループの強みの一つとしてビジネスパートナーの調達力があり、200社超との協力関係を構築しております。他方、当社グループにおける人材派遣・人材紹介サービスの中心であるエーティーエスは、DX人材獲得のためのマッチングプラットフォーム「テクパス」を主軸に、顧客が求める人材を集めて提供する仕組みを構築しており、親会社である当社に対してもDX人材を供給しております。


(3) 当社グループのサービス提供先

 当社グループのサービス提供先は、分野面では特段の偏りなく、製造業・流通業・サービス業・インターネットビジネス業・コンタクトセンター業・金融業など多岐にわたる事業会社及び官公庁となっております。


参考

ARアドバンストテクノロジ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:武内 寿憲、以下ARI)は、2023年5月18日よりChatGPTやAzure OpenAI Serviceをはじめとした生成AIを、導入・活用するための企業向け支援サービスを開始いたします。ARIがこれまで培った生成AIに関する技術情報や構築ノウハウを生かし、コンサルティングからPoC、実装・導入、運用・保守までご要望に合わせて支援することにより、企業は必要な支援を取捨選択し、生成AIの活用に関して自社に最適化された提案と情報、技術の提供を受けることが可能となります。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/08 連結中間実績 4,755 241 245 159

2023/08 連結会社予想 10,459 438 430 281

2022/08 連結実績 8,768 396 396 272

2021/08 連結実績 7,597 436 445 344


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/08 連結会社予想 92.21 506.69 0.00


上場時発行済株数 3,273,000株(別に潜在株式281,720株)

公開株数 843,500株(公募278,900株、売り出し454,600株、オーバーアロットメント110,000株)

調達資金使途 エンジニア労務費、採用に係る求人費


PER:13.7

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:10.6億

公募時時価:41億

​   

【株主構成】 

(株)エスエスアール 役員らが議決権の過半数所有 2,032,280 62.03% 180日

武内寿憲 代表取締役社長 330,000 10.07%

ARI社員持株会 特別利害関係者など 235,840 7.19% 180日

岡部吉純 子会社の取締役 170,160 5.19% 180日

石原憲之 社外取締役 72,800 2.22% 180日

(株)島津製作所 特別利害関係者など 64,000 1.95%

(株)電通グループ 特別利害関係者など 64,000 1.95%

山岡択哉 取締役執行役員 63,440 1.93% 180日

中野康雄 取締役専務執行役員 26,400 0.80% 180日

藤宮宏章 社外取締役 25,400 0.77% 180日

(株)電通イノベーションパートナーズ 投資業(ファンド) 24,000 0.73%

金子宏 子会社の取締役 20,480 0.62% 180日


本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である武内寿憲並びに貸株人である株式会社エスエスアール、売出人である岡部吉純、石原憲之、藤宮宏章、北村公一、小宮山宏、宮本正樹、金子宏及び新家剛、当社株主であるARI社員持株会、山岡択哉、中野康雄、高林徹、利根山勝彦及び富本忠睦は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2023年12月19日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得することを除く。)等を行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 武内 寿憲(上場時46歳10カ月)/1976年生

本店所在地 東京都渋谷区渋谷

設立年 2010年

従業員数 429人 (2023/03/31現在)(平均36.6歳、年収548.2万円)、連結483人

事業内容 クラウド技術とデータ・AI(人工知能)活用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューション事業

URL https://ari-jp.com/

株主数 19人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (2023/05/19現在)

代表者略歴

1999年04月 株式会社キャリアスタッフ(現アデコ株式会社) 入社

2007年08月 アリスタソリューション株式会社 代表取締役

2010年01月 当社 設立 代表取締役社長(現任)、11月:株式会社和びす(現株式会社エーテ ィーエス・当社連結子会社)取締役、12月:同社 代表取締役

2015年08月 株式会社エスエスアール設立 代表取締役 8月:同社 取締役

2020年10月 同社 代表取締役(現任)


【幹事団】

主幹事証券 みずほ - -

引受証券 大和 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 松井 - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 丸三 - -

引受証券 岩井コスモ - -


【参考類似企業】今期予想PER(5/24)

3844 コムチュア 21.9倍 (連結予想)

3915 テラスカイ 42.8倍 (連結予想)

4178 Sイノベション 28.8倍 (連結予想)

4270 BeeX 19.5倍 (単独予想)

4396 システムサポ 18.9倍 (連結予想)

4414 フレクト 23.7倍 (単独予想)

4434 サーバーワクス 56.7倍 (連結予想)

5029 サークレイス 19.0倍 (単独予想)

5036 日ビジシス 19.4倍 (連結予想)

5129 FIXER 23.2倍 (単独予想)

5256 Fusic 55.0倍 (連結予想)


【私見】

 DX銘柄で、チャットGPT銘柄としても評価される可能性もあり業種評価はできます。

業績は良く、PERは同業に比べても低めの設定で、割安感はあるので上値余地は大きそうです。吸収金額も大きくはなく、電通や島津製作所など大手企業も株主で、VCなしと売り要素も少なく初値高騰が見込まれます。他に目玉となるIPOがなさそうなので、チャットGPT関連としてセカンダリーも注目されるかもしれません。単独上場、即金日もプロ市場からの鞍替え2銘柄という日程も恵まれています。


想定価額:1080円

仮条件上限:1260円

初値予想:3500円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立~やや強気

総合評価:4

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