2021年3月4日木曜日

IPO分析(T.S.I)

 【事業内容】

  当社は、日本の超高齢社会において、在宅独居高齢者の孤独死、要介護者の在宅生活の限界と特養の入所待機者の解消という社会課題を解決するため、「サービス付き高齢者向け住宅」の運営、「訪問介護/介護予防・日常生活支援」及び「居宅介護支援」を行っております。

 なお、当社グループの事業セグメントは、高齢者住まい法に基づくサービス付き高齢者向け住宅の運営、及び介護保険法に基づく訪問介護、居宅介護支援等を行う「介護事業」(当社)、並びに当社が運営するサービス付き高齢者向け住宅「アンジェス」の建築請負を行う「不動産事業」(株式会社北山住宅販売)で構成されており、当社グループは、自宅で看取られたいと望む高齢者が安心して住める住まいと介護サービスを提供することを目的に、サービス付き高齢者向け住宅を「設計・建築・運営」まで一気通貫して提供しております。

 また、拠点数・居室数の推移は下記のとおりであります。

         拠点数 居室数

2015年12月末   9   258

2016年12月末   14   418

2017年12月末   16   475

2018年12月末  19   561

2019年12月末  20   630

2020年12月末  24   746


(1)当社グループの各事業の内容

(介護事業)

① サービス付き高齢者向け住宅

 高齢者が暮らすための介護サービスは「施設系」と「住宅系」に大別されます。「施設系」の契約は利用権方式、「住宅系」の契約は賃貸借方式をとっており、サービス付き高齢者向け住宅は「住宅系」にあたります。

 サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者住まい法の第5条において「状況把握サービス」「生活相談サービス」を行うことが必須とされておりますが、その上に付加するサービスについては各事業者の任意となっております。

 サービス付き高齢者向け住宅は、医療体制がしっかりしており、重度の方を対象とする「医療特化型」、介護体制がしっかりしており、自立~重度の方までを対象とする「介護特化型」、入居時費用等が高額であり、高所得者層を対象とする「高級志向型」、自立度が高い方向けに最低限のサービスのみ提供する「高齢者一般向け」等の様々な形態がみられますが、当社は「介護特化型」にて事業を運営しております。当社は、後述するように、基本的にサービス付き高齢者向け住宅の1階事務所部分に訪問介護事業所、居宅介護支援事業所を併設させた形で、24時間施設に人員を配置し、看取りまで対応を行うなど、要介護2~3程度の介護が必要な方を主たる顧客層と想定した運営を行っております。

 利用者は、当社が運営するサービス付き高齢者向け住宅「アンジェス」に賃貸借契約を締結して入居します。サービス付き高齢者向け住宅は、様々なサービスを提供することが可能ですが、当社は現在、住まいの提供、生活支援サービス、食事の提供に加え、訪問介護事業、居宅介護支援事業によるサービス提供をしております。

 生活支援サービスでは、安否確認(毎日、主に食事時を利用した食堂での見守りなど)及び機能訓練も意識したレクリエーションを毎日実施しております。希望者や必要な方には、生活支援サービスのオプション対応として、有償での介護の提供も行っております。

 当社では、サービス付き高齢者向け住宅を建築されるオーナーから委託を受けて、サービス付き高齢者向け住宅の運営及び入居者に対するサービスの提供を行っております。

 当社の運営するサービス付き高齢者向け住宅の主な入居者は、要介護1以上の要介護認定を受けている高齢者です。高齢者住まい法で定められている、サービス付き高齢者向け住宅を運営する上での最低要件は「状況把握サービス(安否確認)」「生活相談サービス」の提供であり、居室部分の設備(浴室やキッチンの設置の有無)や介護サービス体制、料金設定等は事業者に委ねられておりますが、当社は特養入所待機者層をメイン顧客層としているため、全体的に介護向けの設備とし、人員配置やサービス内容を整備しております。また、介護保険の訪問介護だけを利用して在宅で生活を送ろうとした場合、介護保険の区分支給限度基準額を超えた部分は利用者の10割(全額)負担となり、生活費が高額となりますが、当社の運営するサービス付き高齢者向け住宅では、利用者が介護保険でまかないきれない部分について生活支援サービスのオプション(有償)を利用することで、介護保険で10割(全額)負担となる場合に比べて、同一サービスを低価格で受けることができるようにしております。

 

② 訪問介護/介護予防・日常生活支援

 訪問介護とは、65歳以上の第1号被保険者(第2号被保険者にあっては特定疾病等で認定を受けた40歳~64歳の方)で、要介護認定を受けた利用者に対して、介護福祉士(ケアワーカー)や訪問介護員(ホームヘルパー)が、自宅へ訪問し、食事・排泄・入浴など直接身体に触れる身体介助や掃除・洗濯などの家事面における生活援助を行うサービスです。介護支援専門員(以下、「ケアマネージャー」という。)が作成するケアプランに則り、食事・排泄・入浴の支援や、血圧測定、緊急時の通院補助等、日常生活の支援を実施しております。


③ 居宅介護支援

 居宅介護支援とは、在宅で介護を希望する利用者向けの介護サービスのひとつです。ケアマネージャーが、要介護・要支援認定された要介護者や要支援者、その家族の生活環境の状況を確認し、利用者やその家族に対して、介護や支援の内容について確認し、それに基づきケアプランを作成します。当社の居宅介護支援事業所「ケアプランセンターえんじゅ」では、「アンジェス」の入居者以外の外部の利用者にサービス提供するケースもあるものの、主として「アンジェス」の入居者を対象としております。

 

(不動産事業)

 不動産事業は、サービス付き高齢者向け住宅「アンジェス」の設計・建築を行っております。不動産事業では、株式会社北山住宅販売がオーナーと建築請負契約を締結し、サービス付き高齢者向け住宅の設計から建築までを行っております。同一モデルのサービス付き高齢者向け住宅を手掛けてきたノウハウの蓄積により、設計期間の短縮化・効率化と介護向けの建物としての質の向上を図っております。株式会社北山住宅販売では、当社で運営するサービス付き高齢者向け住宅だけでなく、外部運営業者が運営するサービス付き高齢者向け住宅の建築請負も行っております。また、株式会社北山住宅販売は、現在「アンジェス」を6棟保有しております。基本的に当社グループでの保有棟数は限定しており、外部オーナーが施主となり保有するスキームとして事業を行っております。


(2)事業の特徴

 当社は京都府、滋賀県を中心に岡山県、静岡県、兵庫県、愛知県、神奈川県にサービス付き高齢者向け住宅「アンジェス」を展開し、基本的に「アンジェス」に併設する形で、訪問介護事業所「ケアステーションあんじぇす」、居宅介護支援事業所「ケアプランセンターえんじゅ」を開設しております。

 当社のサービス、事業展開の主な特徴は、以下のとおりであります。

① 当社グループにおけるワンストップでのサービス提供

 当社は、連結子会社に株式会社北山住宅販売を保有しております。株式会社北山住宅販売はサービス付き高齢者向け住宅に特化した設計・建築を行っており、特に29室モデルについてのノウハウを蓄積しております。外部のオーナーからの建築請負だけでなく、株式会社北山住宅販売が土地を調達し、自社で設計・施工し、「アンジェス」のオーナーとなる場合もあります。現在、株式会社北山住宅販売はオーナーとして「アンジェス」を6棟保有しております。

 基本的な事業スキームとしては、土地オーナーが施主となり、株式会社北山住宅販売が建築請負契約を結び、建物完成後には当社又は一括借上業者が一括借り上げを行い、当社は賃貸テナントとして介護事業運営を行っております。

 

② 看取りから自宅復帰まで対応するサービス付き高齢者向け住宅

 サービス付き高齢者向け住宅の全国平均看取り率は22.4%に対し、当社の「アンジェス」シリーズの2019年12月期における看取り率は33.7%となっております。超高齢社会で独居高齢者が増え続ける我が国において、約5割強の方が「自宅で最期を迎えたい」と望んでいるにもかかわらず、自宅の環境と家族の受け入れ準備が整わず、結局7割近くが病院にて亡くなっているというデータもあります。そのような中、当社は利用者の第2の自宅として、最期まで生活できるような料金に設定しており、多くの利用者に看取りの場を提供しております。そのため、利用者の入居受入れ可能期間が長くなります。当社では、訪問診療の医師、訪問看護と連携することも可能です。当社では、まずは利用者に生活の場として「アンジェス」に住んでもらう中で、最終的に本人や家族に看取りの場として選んでもらえるよう長い目で見た関係性を作っております。

 

③ 各拠点に役割が異なる3つの事業部を配置

 当社の各拠点では、施設管理部、訪問介護部、居宅介護支援部の3事業部の各担当者を配置し、各々が専任でそれぞれの目標とする経営指標(KPI)をもち、3事業部が相互に連携しております。

 当社では、施設管理部には、収支・稼働率に責任をもつ経営者の視点と、利用者の家族の立場に立った視点を持つことを求めております。拠点経営を担う部門で、営業による入居者の確保、稼働率の維持・向上と円滑な施設運営に責任を持ちます。訪問介護部には、利用者の立場に立った介護を提供することを求めております。訪問介護部は、介護サービスの質・人件費率に責任を持ち、スタッフ教育や日々のサービス提供を担っております。居宅介護支援部には、専門職としてのケアマネージャーの視点に立ち、看取りに至るまでのケアプランの作成と、ケアプランの作成業務を通じて、入居者の生活の質の向上を図ることを求めております。これら3事業部が当社における同じ理念のもとに各々の業務を連携しながら実施していくことで、利用者へのサービス提供と経営の安定化を図っております。


④ 自社営業部隊の配置

 当社は、施設管理部という自社の営業部隊を保有しており、原則1拠点につき1名配置しております(同一地区の拠点は1名が兼務することもあります)。これにより、当社では利用者の獲得に際し、紹介会社等を使うことがなく、紹介手数料等の1利用者あたりの獲得コストがかからない運用となっております。また、自社営業部隊が直接営業を行い、地域で信頼を獲得していくことにより、中長期的な視点を見据えた事業運営を行っております。 当社の営業担当者は、ケアマネージャーや病院のソーシャルワーカーへの定期訪問により、入居者の生活情報をフィードバックする等の情報提供を行っております。要介護の高齢者が住宅・施設に入居する場合、どのようなブランド名の住宅・施設か、よりも、どのような施設長・スタッフに介護されるかが、入居検討者の大きな関心事となっており、人と人による関わりが重視される傾向にあります。当社では、自社の営業担当者を置き、直接、紹介元のケアマネージャー、病院のソーシャルワーカーに営業し、関係性を築くことで、その後も繰り返し入居者を紹介してもらいやすく稼働率が安定しております。


⑤ ドミナント戦略

 当社は、新たな都道府県にて事業進出後、その周辺に複数拠点を開設するドミナント戦略をとっております。


⑥ キャリアプランによる人材育成

 当社では、体系的なキャリアプランと部門横断的な異動の実現によってスタッフの能力に応じて育成・配置を行っております。大型の拠点ではなく29室の「アンジェス」を多店舗展開する当社の開設スタイルは、多くの人材に管理者ポジションを与えることを可能としており、従業員がキャリアプランを描きやすい事業運営を行っております。当社には、訪問介護部、居宅介護支援部で専門性を高めてスペシャリストを目指す「スペシャリストライン」と、施設管理部で、拠点経営者、エリアマネージャーと、経営を担っていく「経営者ライン」の2つのキャリアプランがあります。部門をまたいでの異動も多々あり、現在のエリアマネージャーのうち約50%、施設管理部の管理職のうち約42%が、訪問介護部から経営者ラインである施設管理部へ異動し活躍しており、人材発掘や、人材育成による内部昇格体制を構築しております。


⑦ 自社運営による直接的なブランド力の維持・強化

 当社は、介護業界で業務を運営していくうえでは、コンプライアンスと教育が経営の根幹であると考えており、1棟の事故で全「アンジェス」ブランドが傷つくリスクもあることから、介護のクオリティを担保するため、自社運営であることを重視しております。当社では、自社で雇用したスタッフに対して、入社時の理念研修と毎年行う理念研修、マネジメント研修を実施することで、当社の運営方針についてスタッフへ浸透を図っております。


⑧ 厚生年金受給額を考慮した料金設定

 令和2年度の厚生年金の平均受給額220,724円(厚生労働省が規定する、モデル世帯の年金受給額)に対して、「アンジェス」シリーズの毎月の生活費は1人89,000円(食費の月額45,000円を除いた金額)~と、ほぼ年金の範囲内で無理のない生活を送ることができることを目指しております。またこれは、大都市圏のサービス付き高齢者向け住宅の平均月額生活費である約124,000円(食費を除いた金額)を下回る価格帯に位置しております。


⑨ 介護保険に依存しない売上バランス

 当社の介護事業における売上は、第10期連結会計年度において、サービス付き高齢者向け住宅による家賃収入が22.7%、生活支援関連収入が22.0%、介護保険関連収入が55.3%と、相対的に介護保険収入の割合は高いものの、介護保険収入とその他収入の割合が約半分と均等な収入バランスとなっております。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(連結実績)2018.12 2,172 68 60 78

(連結実績)2019.12 2,385 111 107 76

(連結実績)2020.12 2,930 89 134 102

(連結予想)2021.12 3,324 179 163 124

1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(連結予想)2021.12 84.87 - 0

調達資金使途 新規拠点の土地取得、自社物件建築などの設備資金


上場時発行済み株数 1,528,000株

公開株数 460,000株(公募300,000株、売り出し100,000株、オーバーアロットメント60,000株)


PER:23.5

PSR:0.9

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:9.2億

公募時時価:31億

    

【株主構成】 

北山忠雄 代表取締役社長 658,000 53.58 90日

北山優吾 専務取締役、代表取締役社長の血族 128,000 10.42 90日

北山千賀子 代表取締役社長の配偶者 100,000 8.14 90日 

北山裕美 代表取締役社長の血族、従業員 100,000 8.14 90日

北山雄三 代表取締役社長の血族、従業員 100,000 8.14 90日

北田翔士 特別利害関係者など 30,000 2.44 90日・1.5倍

北山由紀子 特別利害関係者など 25,000 2.04 90日

吉国潤子 従業員 15,000 1.22 90日

中村真里 取締役 5,000 0.41 90日

高岡まり子 取締役 5,000 0.41 90日

平田勇介 従業員 5,000 0.41 90日・1.5倍

三宅裕介 取締役 5,000 0.41 90日

松嶋美智子 従業員 5,000 0.41 90日・1.5倍


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である北山忠雄、並びに当社株主である北山優吾、北山千賀子、北山裕美、北山雄三、北山由紀子、吉国潤子、中村眞里、髙岡まり子、三宅裕介、北山英一及び日原直人は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2021年6月16日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等は除く。)を行わない旨合意しております。

 当社株主である北田翔士、平田勇介、松嶋美智子、横田和恵、宇野亜沙美、福村高志、藤井清史、永島栄子、小林由佳、片山崇、横田裕之、井筒大輔、丹羽孝介、山下貴洋、清水美智代、梅原源文及び和田浩興は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2021年6月16日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、その売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う売却等は除く。)を行わない旨合意しております。 

 

【代表者】

代表者名 北山 忠雄(上場時66歳5カ月)/1954年生

本店所在地 京都府京都市西京区

設立年 2010年

従業員数 260人 (12/31現在)(平均45.8歳、年収367.6万円)、連結268人

株主数 29人 (目論見書より)

資本金 98,200,000円 (2/12現在)

代表者生年月日 1954年09月26日生まれ

代表者略歴 年月 概要

1982年01月 きたやま工芸(自営)

1985年04月 (株)デイム入社

1986年04月 同社取締役

1994年09月 (株)エルハウジング 代表取締役社長

1995年11月 (株)北山住宅販売設立 代表取締役社長(現任)

1997年12月 (株)北山コーポレーション設立 取締役

2007年03月 (株)智理積設立 取締役

2010年02月 当社設立 代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 野村 368,000 92.00

引受証券 大和 8,000 2.00

引受証券 SMBC日興 8,000 2.00

引受証券 SBI 8,000 2.00

引受証券 西村 4,000 1.00

引受証券 東海東京 4,000 1.00


【参考類似企業】今期予想PER(2/18)

2137  Hヴェラス 14.3倍(単独予想 )

2435  シダー 10.6倍(連結予想 )

4355  ロングライフ 56.8倍(連結予想 )

6062  チャームケア 31.5倍(連結予想 )

7091  LPF 23.0倍(連結予想 )

9707  ユニマットRC 73.1倍(連結予想 )


【私見】

 京都・滋賀を中心としたサ高住事業で、大きな優位性はなさそうですが、上場を機に全国展開すれば規模は時間に連れて大きくなる事業です。業績も毎期伸びていくでしょうが、急成長する事業ではないので、株価に限界はあります。VCなしで需給は良いので2倍前の初値になるとは思いますが、セカンダリーは長期向きでしょう。


想定価額:1550円

仮条件上限:2000円

初値予想:4600円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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