2021年3月14日日曜日

IPO分析(スパイダー)

 【事業内容】

・ サービスの概要

 当社は、熱絶縁工事を提供するエンジニアリング事業にて創業し、自社の生産性改善に真摯に向き合った結果、ITを活用する必要性を感じ、自社のみならず建設業全体の生産性改善に貢献すべくICT事業を開始いたしました。

(1)ICT事業

 建設業を主な対象とした建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」の開発・販売

(2)エンジニアリング事業

「アーマフレックス」等を使用した熱絶縁工事

 ICT事業では、建設業の現場業務をDX(デジタルトランスフォーメーション)によって生産性向上に寄与するSaaSを開発・販売しております。

 具体的には、主に総合建設業及び電気・空調設備業に対して、建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を中心としたサービスの提供を行っております。「SPIDERPLUS」は、タブレット/スマートフォンで建設現場の図面のペーパーレス化を図るとともに、検査機器と連携してアプリの中で計測値を取り込むことで業務の効率化ができるサービスです。

 その中で、当社の「SPIDERPLUS」は、現場のペーパーレス化と情報共有の促進を図っていくことから、労働時間の短縮化、ひいては年間出勤日数の短縮など、建設業界の生産性向上に一定の寄与ができると考えております。

 また、建設業の生産体制を将来にわたって維持していくためには、若年層の入職促進と定着による円滑な世代交代が不可欠であり、当社の「SPIDERPLUS」により、建設業のIT化を推し進めることで一定の貢献ができると考えております。

 ICT事業の各指標は、上記のような建設業界の環境下で、営業力及び開発力の強化を行った結果、以下のとおり順調に推移しております。


「SPIDERPLUS」は1ID毎に月額利用料をお支払いいただくサブスクリプションモデルとなっており、利用開始後は継続的な売上高となります。

 また、当社は、建設業出身だからこそ、充実したフォローアップが必要と考えております。営業が直接建設現場に赴いて現場説明会を実施、更に建設現場のニーズをヒアリングし、開発チームと連携して「SPIDERPLUS」の機能に反映するとともに、カスタマーサポートが顧客の困りごとをメール並びに電話で対応するなど、フォローアップ体制も強化しているため、契約社数に対する2020年12月期の月次平均解約率(注4)は0.6%と低い水準であるように、導入初期及び日々の問合せ対応について顧客満足度が高く、2020年12月期における既存顧客のNRR(注5)は145%となっております。

 今後も建設業界のプラットフォームとなるべく、IoT(様々な機器との連携)やAIの活用によって、音声入力や検査記録の自動入力といった新機能開発を行うことで、建設業界の業務効率最大化を図っていきます。


  SPIDERPLUSの特徴

当社が提供する「SPIDERPLUS」は、建設現場で「SPIDERPLUS」があれば完結できるオールインワンソリューションを目指したサービスを提供しており、下記の特徴がユーザーに支持されています。

① 図面管理機能

 これまで、紙ベースで行っていた図面を用いた施工管理並びに検査は、「SPIDERPLUS」の図面管理機能を使うことで、便利に、かつ効率的に行うことができるようになります。タブレットに図面を取り込み、「SPIDERPLUS」を用いて閲覧することで、今まで紙で持ち運んだり、ファイルで管理していた大量のデータがタブレット1つで持ち運びできるという最大のメリットがあります。更に、図面管理機能自体の特徴として図面の拡大、縮小が簡単に行え、図面自体に直接書き込みや、検査が必要な箇所にアイコンを設置し、設置したアイコンにメモや写真を貼り付けることで検査内容の記録ができます。


② 写真管理機能

 これまでは、現場管理者がデジタルカメラで各種検査箇所を撮影、保存し、作業完了後オフィスに戻り、写真の突き合わせや、検査場所への貼り付けなどを行い、作業時間としても非常に負担がかかり残業時間も増加しておりました。「SPIDERPLUS」を使うことで、タブレットに付属しているカメラから撮影した画像を直接図面に貼り付けることができます。更に、「SPIDERPLUS」は写真撮影時に黒板を添付する電子小黒板機能にも対応しており、国土交通省が推奨している電子納品の指定フォーマットにも対応しています。また、「SPIDERPLUS」は撮影した方向を矢印で表示できる点にも特徴があります。本機能により、どこから、どういう視点で撮られたのかが一目瞭然となります。写真管理機能は外部のカメラとも機能連携しており、高所での撮影や360度の写真を撮ることもできます。 


③ オプション機能

 「SPIDERPLUS」は、総合建設業及び電気・空調設備業の現場で検査を行う際のオプション機能が充実しています。標準機能で最低限必要な機能は網羅しておりますが、以下のオプション機能を追加することにより、更に現場の効率化、省力化が図られます。現時点では14種類のオプション機能があり、それぞれ個別での提供と各業種向けに機能をまとめたパッケージでの提供もしております。数あるオプション機能の中で、特徴的である総合建設業向けの「杭施工記録機能」「工事進捗管理機能」「指摘管理機能」を下記で紹介いたします。


ⅰ)杭施工記録機能

杭施工は、新しく建物を建築する際に、杭を地中に打ち込むことで、安定をさせる重要な工事です。「SPIDERPLUS」では杭施工の記録が残せるだけでなく、施工前、進行中、未完了などで検査項目の進捗によって色分けされて表示されます。更に各検査項目も未完了の項目が表示されることで、紙で行っていた際に頻繁にあった検査種目漏れ、検査漏れが未然に防げるようになりました。また、本機能もエクセルで簡単に出力できるため、労働時間の削減、業務効率化に貢献できます。


ⅱ) 工事進捗管理機能

工事進捗管理機能は、現状の工事進捗状況を記録することができ、工事進捗の見える化及びリアルタイムな情報共有が可能になり、現場管理者は、工種間の調整や次工程の計画、取引先への連絡や翌日の材料手配タイミング等のマネジメントをスムーズに行うことができ、管理業務の効率化による働き方改革に貢献できます。現場で記録した進捗情報は、情報共有だけでなく簡単に帳票出力ができるので、事務所に戻ってからの事務作業の時間削減につながります。また、現場で記録した指摘コメントや写真も出力ができるので、的確に指摘事項の共有、記録が行えます。


ⅲ) 指摘管理機能

指摘管理機能は、図面上の是正工事が必要な指摘箇所をタップ、指摘内容や業者を選択するだけで、指摘事項別や業者別に指摘事項一覧の書類出力が可能です。

 是正前・是正後の現場写真を複数登録できるので、是正進捗の確認や再指摘、再是正工事などの写真を指摘箇所毎に記録できます。また、是正後の現場写真撮影時に「是正前に撮影した写真」を「参考写真」として「是正後の工事写真」内に表示させて、是正前同様のアングルで写真が撮影できるので、指摘箇所の是正工事前・是正工事後の比較が容易にできます。


 その他、風量測定器、絶縁抵抗器など各種検査機器との連携を進めていくことで、更なる業務の効率化を図っています。また、「SPIDERPLUS」は、利用者数の増加に伴い、顧客内や現場内での情報共有が促進されるなど、より利用価値が高まっていく特徴もあります。


・エンジニアリング事業

 エンジニアリング事業では、当社創業期より熱絶縁工事を中心に運営しています。熱絶縁工事とは、熱を使うビルや工場などでエネルギー効率を高める(省エネルギー)ために装置や配管に断熱材を取付ける工事です。当社は、従来のガラス繊維でできたグラスウールなどの断熱材の他に、「アーマフレックス」も取り扱っております。「アーマフレックス」の特徴としましては、難燃性、耐湿性、圧縮クリープ特性(注1)が高い、フロンを使用していないので環境に優しいなどが挙げられます。当社はアーマセル社(注2)の日本認定工事店として、2002年より多くの「アーマフレックス」を使用した工事を施工しております。

 当社は、従来の熱絶縁工事では空調工事、配管工事を行っている企業様からの受注のみでしたが、「アーマフレックス」を使用した工事においては、17年間の施工実績から、同業他社様からの依頼も多くなっております。

 エンジニアリング事業により、建設現場で直接従事しているため、建設現場の情報をタイムリーに把握することができ、かつ建設現場での困りごと(ニーズ)の発掘に貢献しています。これをICT事業と密な情報共有を図ることで、「SPIDERPLUS」の実務への落とし込みを図っております。  


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2018.12 909 -117 -123 -124

(単独実績)2019.12 1,286 64 59 63

(単独実績)2020.12 1,973 112 106 103

(単独予想)2021.12 2,216 -540 -590 -593


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2021.12 -19.11 -  - 

調達資金使途 システムリニューアル費、運転資金、広告宣伝費、借入金返済、採用費および人件費、システム開発費


上場時発行済み株数 31,808,100株 (別に潜在株式4,300,000株)

公開株数 8,791,900株(公募3,220,000株、売り出し4,425,200株、オーバーアロットメント1,146,700株)


PER:

PSR:16.6

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:101億

公募時時価:369億

    


【株主構成】 

伊藤謙自 代表取締役社長 19,481,800 59.24 90日

(株)CHIYOMARU STUDIO 特別利害関係者など 2,024,800 6.16 90日

DCIベンチャー成長支援投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,818,100 5.53 90日・1.5倍

安藤龍平 新株予約権の受託者 1,500,000 4.56 90日

増田寛雄 執行役員 925,000 2.81 90日

大村幸寛 取締役 890,000 2.71 90日

野田隆正 執行役員 645,000 1.96 90日

吉田淳也 取締役 584,400 1.78 90日

鈴木雅人 取締役 502,500 1.53 90日

村商(株) 特別利害関係者など 416,600 1.27 90日

SMBCベンチャーキャピタル3号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 333,400 1.0190日 

酒寄直人 執行役員 332,500 1.01 90日


 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である伊藤謙自、売出人である株式会社CHIYOMARU STUDIO、増田寛雄、野田隆正、鈴木雅人、村商株式会社、酒寄直人、当社株主である大村幸寛、吉田淳也及び川合弘毅並びに当社新株予約権者である安藤龍平及び石戸祐輔は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2021年6月27日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨合意しております。

 売出人であるDCIベンチャー成長支援投資事業有限責任組合、SMBCベンチャーキャピタル3号投資事業有限責任組合、西武しんきんキャピタル企業投資3号投資事業有限責任組合、りそなキャピタル4号投資事業組合、三菱UFJキャピタル6号投資事業有限責任組合、あしかが企業育成ファンド三号投資事業有限責任組合及びみずほ成長支援第2号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2021年6月27日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う売却等を除く。)を行わない旨合意しております。 


 

【代表者】

代表者名 伊藤 謙自(上場時47歳7カ月)/1973年生

本店所在地 東京都豊島区東池袋

設立年 2000年

従業員数 95人 (1/31現在)(平均33.7歳、年収511万円)

株主数 28人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (2/24現在)

代表者生年月日 1973年08月04日生まれ

代表者略歴

年月 概要

1992年04月 (株)昭和コーポレーション入社

1995年07月 第一保温工業(株)入社

1996年10月 (有)橋本保温工業(現(有)日本エコライン)入社

1997年09月 伊藤工業創業

2000年02月 (有)ケイ・ファクトリー設立(現スパイダープラス(株))代表取締役就任(現任)

2005年09月 (株)9th設立 代表取締役就任

2010年09月 (株)ヴェイシス設立 代表取締役就任


【幹事団】

主幹事証券 野村 6,498,600 85.00

引受証券 大和 764,500 10.00

引受証券 SBI 152,900 2.00

引受証券 いちよし 38,200 0.50

引受証券 岩井コスモ 38,200 0.50

引受証券 SMBC日興 38,200 0.50

引受証券 岡三 38,200 0.50

引受証券 みずほ 38,200 0.50

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー 38,200 0.50


【参考類似企業】参考類似企業 今期予想PER(3/8)

3962  チェンジ 60.0倍(連結予想 )

3965  CAP 27.1倍(連結予想 )

4356  応用技術 16.0倍(単独予想 )

4667  アイサンテク 27.3倍(連結予想 )

4734  ビーイング 35.2倍(連結予想 )


【私見】

 建設業向けアプリということで、CMでも放映され初物業種で業種評価はできます。今期は赤字ですが、利益はでる体質にはなっているので問題はないでしょう。VCのロックが1.5倍で外れるのは気になり、規模も300億後半からのスタートなので500憶あたりが目先の上値ラインとなり、重い展開が予想されます。


想定価額:1010円

仮条件上限:1160円

初値予想:1700円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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