2021年6月11日金曜日

IPO分析(日本電解)

 【事業内容】

  硫酸銅を主成分とする電解液から電気分解により金属銅を薄膜状に析出生成させ、加工する電解銅箔製造事業を営んでおります。

 電解銅箔は、製品そのものを見かける機会はほぼありませんが、電子・電気機器には必ず使用されている重要な素材です。電子・電気機器を制御する電気信号を伝える回路基板の導体は、ほとんどが電解銅箔で形成されています。また、電気自動車に代表される電動機械で使用される電池は軽量化のためにリチウムイオン二次電池(LIB)が使用されています。LIBに用いられる負極集電体(負極活物質から電子を集める部品)にも主に電解銅箔が用いられており、電解銅箔は日常生活に欠かすことのできない様々な機器に使用されています。


(安定的に高品質な銅箔製造を提供する製箔工程)

 電解銅箔の製箔工程には、①ベース箔製造工程、②粗化・表面処理工程、③スリット・検査工程、④出荷工程に分かれます。

 このうち、①のベース箔製造工程では、資源リサイクルにより発生した銅材料を主原料とし、硫酸で溶解した硫酸銅溶液を電解槽内に設置した曲面状の陽極と、円筒状・金属製の陰極ドラムの間に通して、陰極ドラムを回転させた状態で陽極と陰極ドラムの間に通電しながら陰極ドラム表面に必要とする厚さになるまで電気めっきを施す方法により、ドラム表面に析出した薄膜状の銅を連続的に巻き取ることにより帯状の銅箔を製造し、用途に適した表面処理やサイズ調整等を行って製品化します。

 製品の長さは用途によって異なりますが、短い製品で500m程度、長い製品では1万m以上にも及びます。当社では規定通りの長さの製品を生産するため、24時間連続操業による生産を行います。なお、ベース箔製造工程における適切な製造条件を精度高く設定することにより、顧客の求める品質水準に適合した銅箔製品を安定的に製造します。

 ②の粗化・表面処理工程では、回路基板用銅箔で実施しており、銅箔の表面に、銅箔の用途や仕様に合わせた防錆・有機処理を行います。

 ③のスリット・検査工程では、銅箔製品の全数全量について自動検査機による検査を実施することにより、高品質で安定的な銅箔製品の供給につなげております。


 携帯端末やEV、HV(Hybrid Vehicle:内燃機関と電動機を動力源とするハイブリッド車)に搭載されるLIB用の銅箔では、厚さの均一性、異物混入の無いことなど高い信頼性が求められます。一方、回路基板用銅箔においては、電気信号の損失を抑制するため、表面粗さの低さが求められる一方で、樹脂基材との密着性を高めるため、一定の表面粗さも求められており、相反する特性を両立する高品質な銅箔が求められます。さらにフレキシブル配線板では高い屈曲性、折り曲げ特性が要求されます。これらの要求に対し、製品のベースとなる銅箔の製箔工程では、各種電解条件、添加剤等の濃度・組合せを調整することにより、銅箔の表面形状及び物理的物性(引張強さ、伸び率など)を制御して各種用途に適合した製品を提供しております。

 また当社で扱う製品の厚さは2~18㎛と非常に薄いため、マイクロメートル単位の品質管理が求められます。1mの幅方向、1万m以上の長さ方向で±5%以下の精度で管理しています。微細回路基板の場合、回路幅50㎛、回路間隔50㎛以下で回路が形成されます。このような微細回路で50㎛の異物が存在すると回路間のショートや回路の断線が発生する可能性があります。このため、銅箔表面にゴミ、ちり等の不純物及び導電性異物の付着を防止する防塵管理を実施しております。さらに、樹脂基材との密着性とロープロファイルを両立する微細粗面化や密着性、耐薬品性及び耐熱性を向上させる表面処理工程では、表面形状の最適化、銅以外の金属成分を用いた表面処理を組み合わせることにより、顧客ニーズに対応した製品を製造しております。


   当社の銅箔製品は、当社(本社工場)、米国子会社(Denkai America Inc.)の2拠点で製造しており、当社は車載電池用銅箔、高強度銅箔、微細回路基板用銅箔、キャリア付極薄銅箔を、米国子会社は汎用箔の製造販売を行っております。

 当社が製造販売する車載電池用銅箔は、日系大手車載用LIBメーカーを通じて、大手EV(電気自動車)メーカーへの販路を有しており、また当社の回路基板用銅箔製品(高強度銅箔、微細回路基板用銅箔、キャリア付極薄銅箔)は、前述の相反する特性を両立することで、5G関連製品のバリューチェーンの中で、高機能電解銅箔として位置づけられており、日米の大手銅張積層板メーカーを通じて、5Gスマートフォンや5G基地局の実装OEMメーカーへの販路を有しております。米国子会社が製造販売する汎用箔は、米国内の大手銅張積層板メーカー等への販路を有しております。

 


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(連結実績)2019.3 10,866 452 417 22

(連結実績)2020.3 12,480 911 842 1,988

(連結実績)2021.3 14,584 527 440 193

(連結予想)2022.3 18,860 1,304 1,226 873


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(連結予想)2022.3 120.55 815.96  - 

調達資金使途 車載電池用銅箔の生産設備新設


上場時発行済み株数 7,250,000株

公開株数 5,645,400株(公募50,000株、売り出し4,953,000株、オーバーアロットメント642,400株)


引受人の買取引受による売出しに係る売出株式のうちの一部が、SMBC日興証券株式会社の関係会社等を通じて、欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)の海外投資家に対して販売されることがあります。


PER:20.5

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:140億

公募時時価:180億

    

【株主構成】 

MSD第一投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 6,408,000 89.00 180日・1.5倍

日鉄ケミカル&マテリアル(株) 特別利害関係者など 720,000 10.00

徳岡工業(株) 特別利害関係者など 72,000 1.00 180日


 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、売出人かつ貸株人であるMSD第一号投資事業有限責任組合は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2021年12月21日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等(ただし、その売却価格が募集における発行価格又は売出しにおける売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)を行わない旨を約束しております。

 また、株主である徳岡工業株式会社は、主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2021年12月21日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

 

【代表者】

代表者名 中島 英雅(上場時67歳0カ月)/1954年生

本店所在地 茨城県筑西市下江連

設立年 2016年

従業員数 204人 (3/31現在)(平均42.2歳、年収483.6万円)、連結276人

株主数 3人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (5/21現在)

代表者生年月日 1954年06月03日生まれ

代表者略歴

1977年04月 住友金属工業(株)(現日本製鉄(株))入社

2012年07月 同社 常務執行役員 棒鋼・線材Co長 10月:新日鐵住金(株) 常務執行役員 小倉製鐵所長

2014年06月 日鉄住金エレクトロデバイス(株) 代表取締役社長

2015年01月 NGKエレクトロデバイス(株) 代表取締役社長

2017年04月 同社 相談役

2018年06月 日本電解(株)(旧日本電解) 代表取締役COO 10月:同社 代表取締役社長CEO

2019年10月 当社 代表取締役社長CEO(現任)

2020年03月 Denkai America Inc. CEO & President(現任)

役員名



【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

引受証券 野村 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 水戸 - -


【参考類似企業】

参考類似企業 今期予想PER(5/28)

5706  三井金 8.3倍(連結予想 )

5711  三菱マ 15.4倍(連結予想 )

5715  古河機 13.8倍(連結予想 )

5753  日伸銅 5.8倍(単独予想 )

5757  CKサンエツ 10.2倍(連結予想 )

5801  古河電 17.4倍(連結予想 )


【私見】

 車載電池や5Gスマートフォンなどにも使われ、業種的にはグローバルな銘柄で妙味はありますが、ファンドの売出し案件で人気になる可能性は低いかと思います。業績も非常に伸びていて言うことはないのですが、VCにとってはここがピークで出口としては最適なのかもしれません。時価総額もそこまで大きくなく、もう一回り大きくても良さそうで穴的要素もありますが、不透明ではあるので見送りでも良いかもしれません。


想定価額:2480円

仮条件上限:2480円

初値予想:2480円

ブック申し込み度・・・やや弱気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価2.5

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