2021年6月10日木曜日

IPO分析(ステムセル研究所)

 【事業内容】

(1)さい帯血バンクについて

 「さい帯血」は、お母さんと赤ちゃんをつないでいる、へその緒や胎盤の中に含まれている赤ちゃんの血液であります。さい帯血を保管する「さい帯血バンク」には、「公的さい帯血バンク」と「民間さい帯血バンク」があります。公的さい帯血バンクでは、造血幹細胞移植法に基づきお母さん達から「無償」でさい帯血の提供を受け、白血病等の病気で移植治療を必要とする患者さん(第三者)のために保管しております。2021年4月30日現在、厚生労働大臣の許可を受けた公的さい帯血バンクは全国に6ヵ所あります。

 民間さい帯血バンクでは、「本人や家族」が、将来何らかの治療(主に脳性麻痺や自閉症等への再生医療)に使うことができるようになる可能性を想定し、「有償」で、さい帯血の保管を行っております。

 民間さい帯血バンクは、公的さい帯血バンクと違い許可制ではありませんが、厚生労働省(健康局)へ「臍帯 血取扱事業の届出」の提出を要請されており、同届出を行っている民間さい帯血バンクは2021年4月30日現在、当社を含めて2社であり、当該2社のさい帯血保管総数は58,796件、当社の保管総数は58,069件(厚生労働省健康局「臍帯血の引渡し実績等に関する報告」より。)となっております。

 2021年4月30日現在、日本国内において、自己にさい帯血を投与(使用)するためには、対象疾患毎に、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(以下、「再生医療等安全性確保法」という)に基づき、「第2種再生医療等(体性幹細胞など中リスクのもの)」として、臨床研究提供計画を「特定認定再生医療等委員会」に提出し、審査を受け、承認された後、厚生労働大臣へ同提供計画を提出の上、実施する必要があり、一般のクリニック等で自由に投与する事は認められておりません。

 また、2021年4月30日現在、当社における顧客への再生医療等での利用目的(臨床研究における投与も含む)の引渡件数は16件、研究(モデルマウス等での治療効果の検討)目的の引き渡し件数は95件となっております。


 (2)当社の「細胞バンク事業」について

 当社は、顧客(妊婦等)と「さい帯血分離保管委託契約」を締結した上で、国内さい帯血採取協力病院(大学病院、産科クリニック等)において採取されたさい帯血を回収し、自社の細胞処理センター(東京都港区)に搬入、さい帯血に含まれる幹細胞を分離・抽出・調製する作業を行った後、自社の細胞保管センター(神奈川県横浜市緑区)において、超低温下にて長期保管しております。「さい帯血分離保管委託契約」に基づき、顧客よりさい帯血にかかる分離料、検査料、登録料及び細胞保管料を収受し、将来の使用に備え、保管する事をビジネスモデルとしております。

 さい帯血はその採取にあたっては、お母さん、赤ちゃんともに侵襲性が低く、また、通常は出産後に医療廃棄物として廃棄されるものである事から、倫理的にも扱いやすい点がメリットとして上げられます。一方、お産の状況によっては採取が困難である事、また、その採取量は同一ではなく、場合によっては十分な量が採取出来ない事が、デメリットとして上げられます。なお、さい帯血採取により、当社の定めた規定値以上の量を有し、保管基準を満たした場合に、国内さい帯血採取協力病院へ、採取技術料をお支払いしております。

 体内の幹細胞は、幼児期には多く存在しておりますが、年齢を経るに従い減少して行くといわれております。さい帯血には血液を造る「造血幹細胞」や、神経・軟骨・心筋細胞等さまざまな細胞に分化したり、各組織の修復に関与する「間葉系幹細胞」が含まれており、遺伝子を導入して作成するようなものではなく、もともと自分の身体の中にある細胞(体性幹細胞)であるため、がん化のリスクも少なく、比較的安全に使用出来ることから、現在十分な治療法のない小児の中枢神経系疾患や自閉症スペクトラム障害等に対する「再生医療・細胞治療」として、臨床研究が進められております。

 

 (3)さい帯血を用いた国内の臨床研究の状況

 さい帯血の臨床研究が進展していくことは、将来さい帯血がより広く利用できることを期待して保管されている当社顧客にとっても有益な情報であり、その動向は当社の業績に影響を与えるものであるとの観点から臨床研究の状況について記載します。

 2017年1月に高知大学医学部附属病院で開始された「自家臍帯血を用いた小児脳性麻痺などの脳障害に対する臨床研究(第Ⅰ相)」では、当社の保管細胞が用いられ、2018年4月に予定投与数(6例目の最終投与)を終え、最終投与から約3年かけて患者の経過観察等を行ったうえで、安全性に係る評価が行われる見込みであります。また、新たに「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血有核細胞輸血」及び「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血単核球細胞輸血」に係る臨床研究が、2020年10月5日付でjRCT(臨床研究実施計画・研究概要公開システム)に公表され、2021年6月に1例目の投与を想定した準備が進められております。

 AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の支援を受けながら、大阪市立大学医学部を中心としたグループが進めている、「低酸素性虚血性脳症(HIE)に対する自己臍帯血幹細胞治療」は、既に第Ⅰ相臨床研究(6例)が終了し、第Ⅱ相多施設共同臨床研究に係る開始・変更手続きが進められており、当該臨床研究の進捗については、今後、jRCTにおいて公表される見込みです。


  (4)細胞処理センターについて

①東京細胞処理センター

 再生医療等安全性確保法に基づき、厚生労働省(関東信越厚生局)より特定細胞加工物製造許可を受けた施設(東京都港区)で、さい帯血に含まれる幹細胞の分離・抽出・調製を行っております。またISO9001とAABBの認証を取得し、運営を行っております。

②横浜細胞処理センター

 近年のさい帯血保管のニーズの高まりに対応するため、2021年3月に厚生労働省(関東信越厚生局)より特定細胞加工物製造許可を得て、新たな細胞処理センターを横浜市緑区に開設致しました。これにより、さい帯血処理のキャパシティは約2倍になる予定です。この新施設は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律において再生医療等製品の製造に求められる基準を満たせるよう設計されており、保管した細胞の培養や製品化に加え、その他の様々な細胞・組織の受け入れにも対応可能な施設となっております。

 また、本施設にはさい帯組織を処理する専用のブースを設置しており、これを利用し2021年4月より「さい帯保管サービス」を開始しております。


 (5)細胞保管センターについて

 新耐震基準に基づいた設計で耐震性を有している細胞保管施設です。細胞処理センターで分離・抽出・調製した幹細胞は、同施設内にある液体窒素タンクで保管し、その後、細胞保管センターに移送し長期保管用の大型の超低温液体窒素タンクで保管しております。  


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2019.3 1,149 215 216 142

(単独実績)2020.3 1,676 382 382 277

(単独実績)2021.3 1,409 86 92 62

(単独予想)2022.3 1,706 200 196 136


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2022.3 26.96 405.90  - 

調達資金使途 細胞保管センターの拡充、顧客管理ITシステムの導入、 細胞処理・細胞保管センターの新設


上場時発行済み株数 5,123,300株

公開株数 955,400株(公募256,200株、売り出し574,600株、オーバーアロットメント124,600株)


PER:103

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:26.7億

公募時時価:143億

    


【株主構成】 

(株)トリムメディカルホールディングス 親会社 4,356,100 89.50 90日

山本邦松 特別利害関係者など 86,100 1.77

名古屋中小企業投資育成 ベンチャーキャピタル(ファンド) 84,000 1.73 90日

森雅徳 特別利害関係者など 62,300 1.28 90日

若松茂美 特別利害関係者など 51,800 1.06 90日

シノ セル テクノロジーズ インク 特別利害関係者など 35,000 0.72 90日

友清彰 特別利害関係者など 25,200 0.52 90日

浅井芳明 特別利害関係者など 24,500 0.50 90日

野上大介 特別利害関係者など 14,000 0.29 90日

森崎弘司 特別利害関係者など 14,000 0.29 90日

浦野晃義 特別利害関係者など 14,000 0.29 90日


本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である株式会社トリムメディカルホールディングス、売出人である若松茂美並びに当社株主である名古屋中小企業投資育成株式会社、森雅徳、シノ セル テクノロジーズ インク、友清彰、野上大介、森崎弘司、浦野晃義、桑原淑子、鈴木一哉、深田良治、志村洪三、山田一功、西原達郎、藤井良造、久保さやか、瀬川裕史、松峯寿美、菅原新博、岸宏吏、土山覚史及び森一正は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2021年9月22日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等は除く。)を行わない旨合意しております。 

 

【代表者】

代表者名 清水 崇文(上場時48歳3カ月)/1973年生

本店所在地 東京都港区新橋(最寄りの連絡所:東京都港区西新橋)

設立年 1999年

従業員数 80人 (4/30現在)(平均36.2歳、年収493.1万円)

株主数 26人 (目論見書より)

資本金 374,820,000円 (5/21現在)

代表者生年月日 1973年03月17日生まれ

代表者略歴

1998年09月 (株)日本トリム入社

2006年08月 PT.Super Wahana Tehno(インドネシア)副社長

2010年04月 (株)日本トリム経営企画部長

2013年04月 同社執行役員海外及び経営企画担当

2013年08月 (株)トリムメディカルホールディングス代表取締役

2013年09月 (株)日本トリム退社、当社取締役

2016年06月 当社代表取締役社長(現任)

2017年05月 ストレックス(株)取締役(非常勤)


【幹事団】

主幹事証券 野村 - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 東洋 - -

引受証券 いちよし - -

引受証券 エース - -

引受証券 SBI - -


【参考類似企業】今期予想PER(6/7)

00001 国際臍帯血庫 10.5倍(連結実績 )

00002 米クライオセル 19.2倍(連結実績 )

4880  セルソース 219.8倍(単独予想 )

6788  日本トリム 15.8倍(連結予想 )


【私見】

 再生医療で技術力も高く、注目度高い銘柄です。業績は赤字のバイオとは違い、黒字なので問題なく、時価総額でどこまで見るかが難しいところです。ロックもほぼかかっており需給面での不安はなく、時価総額200憶を最低ラインに、300憶の日本トリムを上限とするか、親子逆転現象が起きるか気にかけたいとは思います。


想定価額:2540円

仮条件上限:2800円

初値予想:6000円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価4

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