2021年6月16日水曜日

IPO分析( BlueMeme)

 【事業内容】

 (1) 事業コンセプト

 国内企業における情報システムの開発は、主にシステムインテグレーターと呼ばれるシステム開発を請け負う事業者に対して、開発業務を委託する受託開発型と呼ばれる方法で実施されています。AIやロボットによって様々な作業が自動化される中、この受託開発型においては、未だにゼロから手作業で情報システムを作り上げるスクラッチ開発が主流となっています。このスクラッチ開発を行うためには、長期間にわたって多くのIT人材を確保しなければならないため、多くの国内企業において、豊富なIT人材を抱える大手のシステムインテグレーターにシステム開発を任せることが一般的でした。

 しかしながら、昨今の新型コロナウイルス感染症等の急速な社会環境の変化や、ECサイトに代表されるデジタル経済の拡大に伴い、スピード重視のIT投資が求められています。これまでの受託開発型による大手システムインテグレーターを中心とした多重下請け構造や、外部の大手システムインテグレーターへの依存による過度なIT部門の空洞化は、IT人材の不足の問題とともに、国内企業のIT戦略における重要な経営課題として認識されつつあります。


(従来の受託開発型における問題)

 当社グループでは、最新技術を活用した当社独自のプロジェクト管理手法「AGILE-DX」を用いることで、低コストかつ短期間で品質の高いシステム開発を実現し、顧客と共にシステム開発のノウハウを蓄積することで、スピード重視のIT投資を可能にします。

 この当社独自のプロジェクト管理手法「AGILE-DX」を活用したシステム開発に関する事業を、DX事業として展開しております。なお、当社グループは、この「AGILE-DX」を活用した受託開発サービス及び技術者向けトレーニングを提供する「プロフェッショナルサービス」と、ローコード開発ツール(注6)等のソフトウェアを販売する「ソフトウェアライセンス販売」から構成されるDX事業の単一セグメントとなっております。


(3) 事業の特徴と強み

①  アジャイル手法とローコード技術に特化したユニークな受託開発サービス

 今日のデジタル経済の急速な発展により、様々な業界において、これまで作業効率化の手段であった情報システムが、重要な経営戦略の実現手段の一つとなりつつあります。これによりシステム開発は、コストパフォーマンスだけでなくタイムパフォーマンスも重要視されるようになり、少人数かつ短期間で情報システムを開発できるアジャイル手法や、手作業で行われているプログラミングを自動化できるローコード技術が注目されています。当社グループでは、このアジャイル手法とローコード技術を組み合わせ、それを当社独自のプロジェクト管理手法「AGILE-DX」で進捗管理を行うユニークな受託開発サービスを提供しております。

  

(2)サービス内容

 この当社独自のプロジェクト管理手法「AGILE-DX」を使用した受託開発サービスを中心に、そのサービス提供に関連したソフトウェアの販売と、顧客企業の技術者へのトレーニングサービスを提供しています。

①  プロフェッショナルサービス

 当社グループは、「AGILE-DX」を用いた受託開発サービスと、ローコード開発ツールを使用する顧客企業の技術者向けのトレーニングの2つのサービスを「プロフェッショナルサービス」として提供しています。受託開発サービスは、顧客企業のニーズに合わせて、主に3パターンのローコード・アジャイルチーム体制を構築して、システム開発を行っております。


②  ソフトウェアライセンス販売

 ローコード技術を中心とした情報システム開発の生産性を向上させるソフトウェアのライセンスを、年単位で使用権を販売するサブスクリプションライセンス契約で販売しております。主にプロフェッショナルサービスの提供とともにソフトウェアライセンスを販売しておりますが、顧客企業が自ら情報システムの開発を行う場合は、ソフトウェアライセンスのみの販売を行っております。


・ローコード開発プラットフォーム OutSystems®

当社グループでは、2009年の事業開始以来、ソフトウェアの設計情報を基に、ソフトウェアのソースコードを自動生成する技術の研究及び調査を行ってまいりました。2012年には、ソフトウェアの設計情報から正しく動作するソースコードを自動生成可能な、当時ポルトガルに本社を置いていたOutSystems社のローコード開発プラットフォーム「OutSystems®」の提供を開始しました。OutSystems®は、自動生成されるソフトウェアの品質の高さと、運用までサポートする機能充足度の高さ、また技術者の学習コストの低さが高く評価されております。実装フェーズにおける開発スピードは手作業と比較して約10倍を誇ります。


・クラウド型APIインテグレーションプラットフォーム Workato®

 インターネット上に存在する情報システムの多くは、他の情報システムと様々なデータの連携を行いながら動作しています。クラウドサービスの拡大とともに、これまで企業内に設置されていた情報システムは、インターネット上に配置され、それら情報システム間のデータ連携もインターネット上で行われるようになり、そのニーズは世界的なデジタル・トランスフォーメーションの流れによって急速に高まっています。インターネット上に存在する様々なサービスと、社内で使用している情報システムの間でデータ連携をリアルタイムに行うことによって、新たな情報システムを構築することなく、業務プロセスの自動化や効率化を実現することが可能となります。当社グループでは、数百種類以上の既存のクラウドサービスと情報システムとのデータ連携をローコード開発で実現する、クラウド型のAPIインテグレーション(注13)プラットフォーム Workato®を提供しております。


・マルチモデルデータベースプラットフォーム MarkLogic®

 情報システムの最も重要な役割は、「デジタル化された電子データ」を情報として処理及び保存することです。DXにおいて、どのようなデータをどのような方式で管理するかは、情報システムの価値を決定するための重要な要素となると考えております。今日の情報システムの多くは、リレーショナルデータベースと呼ばれるソフトウェアを使用して、データの保存や検索等を行っています。リレーショナルデータベースは、文字や数字を表形式で保存して管理するため、会計システムのような大量の伝票処理や集計等を中心に行う情報システムに適していますが、Googleのような全文検索や、画像や文書ファイル等の表形式で管理しにくいデータの管理には適していません。当社グループでは、あらゆる情報のデジタル化を実現するために、多種多様な電子データを管理することが可能なマルチモデル型のデータベース MarkLogic®を販売しております。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(連結実績)2019.3 1,496 86 86 61

(連結実績)2020.3 1,800 31 30 10

(連結実績)2021.3 2,101 175 174 130

(連結予想)2022.3 1,931 236 223 148


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(連結予想)2022.3 47.88 544.72  - 

調達資金使途 人件費、広告宣伝、研究開発、システム開発


上場時発行済み株数 3,199,946株 (別に潜在株式338,000株)

公開株数 984,400株(公募450,000株、売り出し406,000株、オーバーアロットメント128,400株)


PER:58.9

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:27.8億

公募時時価:90億

   

【株主構成】 

インテック・アイティ2号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 840,000 27.20 90日・1.5倍

松岡真功 代表取締役社長 460,000 14.90 180日

BMトラスト(株) 代表取締役社長の資産管理会社 365,000 11.82 180日

MICイノベーション4号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 297,618 9.64 90日・1.5倍

辻口真理子 取締役COO 175,000 5.67 180日

モバイルクリエイト(株) 特別利害関係者など 148,808 4.82 180日

朱未 取締役CTO 120,000 3.89 180日

市川玲 取締役CFO 98,000 3.17 180日

情報技術開発(株) 特別利害関係者など 89,284 2.89 180日

原田実 特別利害関係者など 59,522 1.93


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人であるBMトラスト株式会社、売出人である松岡真功、辻口真理子、朱未及び市川玲、並びに当社株主であるモバイルクリエイト株式会社、情報技術開発株式会社及び川根金栄は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2021年12月25日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等は除く。)等を行わない旨合意しております。

 また、売出人であるインテック・アイティ2号投資事業有限責任組合及びMICイノベーション4号投資事業有限責任組合は主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2021年9月26日までの期間中、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、東京証券取引所における初値が形成された後に主幹事会社を通して行う東京証券取引所における売却等は除く。)等を行わない旨合意しております。 

 

【代表者】

代表者名 松岡 真功(上場時46歳5カ月)/1975年生

本店所在地 東京都千代田区神田錦町

設立年 2006年

従業員数 66人 (4/30現在)(平均34.7歳、年収528.9万円)、連結67人

株主数 26人 (目論見書より)

資本金 206,187,000円 (5/25現在)

代表者生年月日 1975年01月24日生まれ

代表者略歴

1998年04月 (株)システム・クリニック入社

2000年08月 日本オンライン証券(株)(現 auカブコム証券(株)) 入社

2001年05月 SAPジャパン(株) 入社

2004年08月 ネットコンシャス(株) 入社

2006年06月 サン・マイクロシステムズ(株)(現 日本オラクル(株)) 入社

2009年08月 (株)インテック・アイティ・キャピタル(現 (株)SXキャピタル)入社、当社へ出向

2010年05月 当社 入社 代表取締役社長(現任)

2017年12月 (株)OPENMODELS 代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 東海東京 744,600 86.99

引受証券 野村 42,800 5.00

引受証券 大和 25,700 3.00

引受証券 みずほ 25,700 3.00

引受証券 SBI 8,600 1.00

引受証券 東洋 4,300 0.50

引受証券 水戸 4,300 0.50


【参考類似企業】今期予想PER(6/2)

2307  クロスキャット 20.4倍(連結予想 )

3771  システムリサーチ 14.3倍(連結予想 )

3784  ヴィンクス 13.4倍(連結予想 )

3920  アイビーシー 28.6倍(連結予想 )

3988  SYSHD 13.9倍(連結予想 )

4012  アクシス 29.5倍(連結予想 )

4055  ティアンドエス 65.3倍(単独予想 )

4396  システムサポ 23.6倍(連結予想 )

4450  PSOL 24.8倍(単独予想 )

4491  Cマネジメント 10.5倍(連結予想 )


【私見】

 業種としてはシステム開発とライセンス販売ということで大きな優位性は感じませんが、悪くはないと思います。業績は伸びてはいますが、来期予測を見ると高いPERが成長に追いつくのか不安点はあります。規模的には吸収金額がやや大きめで、筆頭株主がVCで、更に1.5倍でロックが外れることからも買いが入るかは微妙ではあります。


想定価額:2510円

仮条件上限:2820円

初値予想:4000円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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