2021年6月9日水曜日

IPO分析(セレンディップ・ホールディングス)

 【事業内容】

 我が国のモノづくり産業においては、中小企業が多数を占め、サプライチェーンを支えるとともに多くの雇用を創出しております。しかしながら、これらの中小企業オーナー経営者の高齢化に伴い、高い技術力・製品力がありながらも後継者不在により事業の継続が困難となり、多くの中小企業が廃業に至るという社会問題が顕在化しております。

 このような課題を抱えた中小企業に対し、当社は「すべてのステークホルダーに価値と成長をもたらす100年企業グループ」創出というグループビジョンを掲げ、M&Aによる事業承継、中小企業が直面する複雑で高度な経営課題に対応できるプロ経営者の派遣及び経営執行にコミットしたPMIの実行、顧客企業の企業価値の回復・向上を図る一連の経営コンサルティング等、「中小企業経営の近代化」に資する総合的なソリューションを提供しております。

 当社グループは「事業承継×モノづくり」を事業領域とし、事業承継を目的としたM&A(事業承継型M&A)によってモノづくり企業を中心とした中小・中堅企業を当社グループの傘下に収める「投資」と、近代経営の複雑化・高度化に対応した経営執行によって企業価値の回復・向上を図る「経営」を主軸とした事業を行っております。

 例えば、M&A仲介会社であれば、基本的に譲渡を希望する企業と買収を希望する企業の引き合わせ、提携条件の調整、取引の実行までに係るM&Aプロセスでのサービス提供を主たる事業とし、また経営コンサルティング専業会社であれば、基本的に顧客企業の自主独立による成長に対するソリューション提供を主たる事業としております。

 一方、当社グループは、経営権の譲渡を希望する中小企業の開拓、M&A戦略の立案、対象企業の選定・アプローチ、各種デューデリジェンス(調査・分析)、企業価値算定、ファイナンスアレンジ(資金調達等)、取引条件・契約交渉、クロージング(資金決済等)手続といったM&Aに関わる全般的な業務を当社グループ内で一気通貫して行なっております。

 また、当社はプロ経営者のチームでの派遣及び経営執行にコミットしたPMIにより現場・財務・経営を徹底的に見える化し、ムダ・ムリ・ムラの排除によって生産性を高め、また数値を集約することによって意思決定のスピードと精度を高める経営管理体制の構築を行います。さらには、長期的な企業価値向上を図るため、グローバル化への対応、新技術・新製品への成長投資を実行し、「中小企業経営の近代化」を推進しております。


(1)プロフェッショナル・ソリューション事業

 「プロフェッショナル・ソリューション事業」においては、事業承継等の経営課題を抱えた中小企業や技術力強化を推進するモノづくり企業へ、プロ経営者やエンジニアといった当社グループの各種プロフェッショナルを派遣し、経営課題や技術的課題に対するソリューションを提供しております。当該セグメントには、当社及びセレンディップ・テクノロジーズ株式会社が属しております。

 また当社グループにおいて、当社及びセレンディップ・テクノロジーズ株式会社はグループ各社の横断的機能を担っております。当社は、グループ各社の経営の近代化を推進する経営執行の役割を担い、プロ経営者派遣及びPMIを実行するとともに、バックオフィス業務強化のためのサポートやグループ各社の交流促進など、グループ全体の組織の活性化を図っております。セレンディップ・テクノロジーズ株式会社は、外部顧客のみならずグループ内へのエンジニア派遣を行い、技術交流及びR&D(新技術の研究開発活動)を促進する役割を担っております。

① プロ経営者派遣(当社)

 当社は、中小企業が直面する複雑で高度な経営課題に対応できる「プロ経営者」を派遣しております。中堅・中小企業や、事業承継を目的としたM&Aによって傘下に収めた連結子会社へ、当社よりプロ経営者を派遣し、経営執行にコミットしたPMIの実行、顧客企業の企業価値の回復・向上を図る一連の経営コンサルティング等の「中小企業経営の近代化」に資する総合的なソリューションを提供しております。


② エンジニア派遣

 エンジニアを自社の正社員として雇用し、専門性の高いプロフェッショナルのエンジニアを必要とするメーカーに派遣しております。また、ソフトウェアの受託開発も行っております。

 モノづくり産業においては技術力の高さが競争力となります。製品の設計や開発といった重要な業務を任せられる人材の不足を補い、自社の技術開発を推進するために、高い専門性を持った人材をエンジニア派遣という形で受け入れるメーカーが増加しております。近年の自動車業界では、自動運転や電動化に関連する激しい技術開発競争を背景に、既存の自動車開発・設計技術とは異なる分野の高度な技術を持ったエンジニアへのニーズが高まっております。


(2)インベストメント事業

 金融機関等と連携した共同投資やマイノリティ出資、ファイナンシャルアドバイザリーによって、多様化する事業承継問題に柔軟かつ機動的に対応しております。事業承継等に課題を抱えた企業へのファイナンシャルアドバイザリーの提供や、共同投資等により投資先企業への経営関与を高め、経営改革を促進し企業価値の向上をはかり売却を通じたキャピタルゲインによって収益を獲得しております。当該セグメントには、セレンディップ・フィナンシャルサービス株式会社が属しております。


(3)モノづくり事業

 当社が事業承継を目的としたM&Aによって傘下に収めたモノづくり企業が自動車部品製造及びFA装置製造を行っております。

 日本のモノづくり産業においては、自動車産業が基幹産業のひとつとなっております。そのため、自動車産業に関わる中小企業の事業承継促進や収益力の強化が日本経済の発展にとって重要な課題であり、当社はこれらの自動車産業に関連する製造企業を連結子会社として傘下に収め、中小企業経営の近代化によって企業価値の向上を図っております。


① 自動車内外装部品製造

 1947年創業の自動車内外装部品メーカーです。主力製品は、自動車のラゲージルーム内装部品とフェンダーライナー・リアホイルハウスライナーといった外装部品であり、トヨタ自動車株式会社を長年主要顧客としております。

 トヨタ自動車株式会社と直接取引を行うサプライヤーであるため、新車種の企画段階から開発に参画し、顧客ニーズの早期把握に留まらず要求性能そのものを顧客とともに作り込むことが可能であります。自動車メーカーから発注された部品を単に納めるのではなく、自社の技術力を最大限に活かした機能性部品を顧客とともに考案することができ、高付加価値部品の製造・販売が可能という強みがあります。


② 自動車精密部品製造

 高度な精密プレス加工技術を持つ自動車精密部品メーカーです。主力製品は、自動車のオートマチックトランスミッションの機能部品であるプレート・バルブボデーであり、アイシン・エィ・ダブリュ株式会社を主要顧客としております。

 順送プレス量産加工において板厚の半分以下(最小0.68mm)の穴を抜くという高度な精密プレス加工技術を持っております。極小の穴や楕円形など特殊な形を開けるためのパンチを金型から自社で設計・製造することによって、順送プレスでは難しいといわれていたこの精密プレス加工を可能としました。


③ FA装置製造

 1959年の創業以来一貫して工場の製造工程を自動化・省力化するための装置を開発・製造するFA装置メーカーです。主力製品は、個別受注生産品であるコネクタ自動組立機・電池関連自動組立機等と、量産品であるクリームはんだ印刷機をはじめとした実装関連設備であります。

 製品の設計や技術開発を担う設計部に、全従業員(2021年4月現在115名)の約三分の一の人員(37名)が所属しております。この豊富な設計陣容によって、多様な製品・製造法に合わせた軽量化・微細化・高速化等の高度な顧客ニーズに柔軟・迅速に対応し、顧客毎に最適な機械装置を提供することが可能となっております。

 2018年には、印刷条件フルデジタル設定のクリームはんだ印刷機を開発いたしました。時間の経過とともに状態が変化するクリームはんだの粘性特性(レオロジー)をレオロジーアナライザーという製品(2015年商品化)で解析し、その計測データをクリームはんだ印刷機に転送することにより、従来は熟練工の経験を基に手動で設定していた印刷条件が、高い印刷品質を維持したままフルデジタルで設定可能となりました。



【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(連結実績)2019.3 12,961 197 115 377

(連結実績)2020.3 15,196 290 215 91

(連結実績)2021.3 14,460 327 417 398

(連結予想)2022.3 15,010 331 249 175


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(連結予想)2022.3 44.78 938.94  - 

調達資金使途 人材の確保・育成、研究開発費、システム投資、運転資金


上場時発行済み株数 4,229,380株 (別に潜在株式458,700株)

公開株数 977,400株(公募850,000株、オーバーアロットメント127,400株)


PER:25.2

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:11.0億

公募時時価:48億

   

【株主構成】 

高村徳康 代表取締役会長など 722,850 19.39 180日

竹内在 代表取締役社長など 722,850 19.39 180日

諸戸グループマネジメント(株) 特別利害関係者など 450,000 12.07 180日

一徳(同) 役員らが議決権の過半数を所有する会社 300,000 8.05 180日

ネクストシークエンス(同) 役員らが議決権の過半数を所有する会社 300,000 8.05 180日

(株)カリン 特別利害関係者など 171,430 4.60 180日

アント・ブリッジ4号A投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 171,420 4.60 90日・1.5倍

従業員持ち株会 特別利害関係者など 141,390 3.79 180日

芦部喜一 特別利害関係者など 64,000 1.72 180日

(株)大垣共立銀行 特別利害関係者など 57,150 1.53 180日

東山(株) 特別利害関係者など 57,150 1.53 180日


 本募集に関連して、貸株人である髙村徳康及び竹内在、並びに当社株主である諸戸グループマネジメント株式会社、一徳合同会社、ネクストシークエンス合同会社、株式会社カリン、セレンディップグループ従業員持株会、芦部喜一、株式会社大垣共立銀行、東山株式会社、株式会社名南経営コンサルティング、芦部誠、吉野友美、川口美佐子、芦部奈菜、芦部さやか、小野賢一、植村達司、杉本一成、杉本哲也、株式会社東海電子ホールディングス、株式会社三十三銀行、小谷和央、株式会社十六銀行及び内藤由治は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2021年12月20日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等は除く。)等は行わない旨合意しております。

 また、当社株主であるアント・ブリッジ4号A投資事業有限責任組合、みずほ成長支援第2号投資事業有限責任組合、株式会社OKBキャピタル及び名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャー1号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後90日目の2021年9月21日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、その売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)等は行わない旨合意しております。

 さらに、当社の新株予約権を保有する西山一彦、村松高男及び清水哲太は、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2021年12月20日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却等を行わない旨合意しております。



【代表者】

代表者名 竹内 在(上場時50歳7カ月)/1970年生

本店所在地 愛知県名古屋市中区栄

設立年 2006年

従業員数 25人 (4/30現在)(平均39.4歳、年収726.5万円)、連結515人

株主数 30人 (目論見書より)

資本金 593,978,000円 (5/21現在)

代表者生年月日 1970年11月19日生まれ

代表者略歴

1994年12月 ニフティ(株)入社

1999年07月 (株)東海総合研究所(現 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))入社

2001年07月 SAPジャパン(株)入社

2006年07月 日本オラクル(株)入社

2014年03月 当社代表取締役社長就任(現任) 10月:天竜精機(株)取締役就任(現任)

2016年07月 エムジーホールディングス(株)社外取締役就任(監査等委員・現任)

2018年06月 佐藤工業(株)取締役就任(現任) 8月:三井屋工業(株)取締役就任(現任) 12月:(株)サンテクト(現 セレンディップ・テクノロジーズ(株))取締役就任(現任)

2020年07月 セレンディップ・フィナンシャルサービス(株)取締役就任(現任) 当社執行役員就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SBI 722,200 84.96

引受証券 野村 63,800 7.51

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー 17,000 2.00

引受証券 みずほ 8,500 1.00

引受証券 SMBC日興 8,500 1.00

引受証券 楽天 8,500 1.00

引受証券 東海東京 8,500 1.00

引受証券 岩井コスモ 4,300 0.51

引受証券 岡三 4,300 0.51

引受証券 東洋 1,700 0.20

引受証券 藍沢 900 0.11

引受証券 水戸 900 0.11

引受証券 エイチ・エス 900 0.11


【参考類似企業】今期予想PER(5/26)

2884  ヨシムラフード 52.4倍(連結予想 )

3116  トヨタ紡織 8.4倍(連結予想 )

6382  トリニ工 8.6倍(連結予想 )

6902  デンソー 18.0倍(連結予想 )

6995  東海理化 10.7倍(連結予想 )

7203  トヨタ 10.8倍(連結予想 )

7227  アスカ 7.3倍(連結予想 )

7241  フタバ 7.8倍(連結予想 )

7259  アイシン 8.2倍(連結予想 )

7282  豊田合 11.9倍(連結予想 )

7283  愛三工 8.1倍(連結予想 )


【私見】

 事業承継関連のコンサルかと思いましたが、基本はM&Aした企業の集合体で、製造業が主たる事業になることからも評価は下がります。業績も横ばいで、PERも製造業にしては高めで割安感を感じません。規模的には小規模でロックもほぼかかってことはプラス要因です。SBI主幹事ですが派手さはないので、あまり人気化しないと予想します。


想定価額:1130円

仮条件上限:1130円

初値予想:1700円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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