2022年12月10日土曜日

IPO分析(アソインターナショナル)

 【事業内容】

​(1)事業の特徴

①柔軟な製造キャパシティ

 2022年10月末時点において、グループ外部の協力パートナーとして51か所(内48か所は当社グループから独立した歯科技工士によって設立された歯科技工所)の歯科技工所と取引があり、内製と外注による製造のバランスを取っております。

 内製品については、2022年10月末現在、当社及び国内子会社において歯科技工士50名を抱えていることから、特殊品など高付加価値製品に特化して製造しております。また、当社グループの海外子会社であるASO INTERNATIONAL MANILA, INC.では汎用品を中心に製造しております。

 協力パートナーによる外注製造については、主として当社から独立した歯科技工士が立ち上げた48か所の外部の歯科技工所と継続的な取引関係を維持しており、主として汎用性の高い製品の製造を外注しております。協力パートナーを活用することにより、当社グループは外注量を受注状況に応じて柔軟に調整することができ、固定費の負担抑制と、柔軟な製造キャパシティの確保が可能になっております。加えて、協力パートナーは当社グループの案件獲得力を背景に安定した受注量を確保できるなど、相互にメリットを享受できる関係となっております。

 2022年6月期における当社グループ並びに協力パートナーにおける矯正歯科技工物の製造割合は、65%が協力パートナーによるもので、残り35%が当社グループの内製品となっております。また、75%が国内製造、25%が当社の海外子会社であるASO INTERNATIONAL MANILA, INC.及びASO INTERNATIONAL HAWAII, INC.での製造となっております。

②データ分析力

 直近10年で症例件数(歯型)のデジタル管理を加速させてまいりました。その結果、当社グループにおいてデジタル管理された症例件数は約262万件(2022年10月末現在)あり、創業以来蓄積した「歯を並べて動かす」ノウハウをはじめとするアナログ技術と融合させ、効率的な製造を行なっております。当社グループでは、積極的にデジタル活用を図ることで、多品種(100種類以上)の矯正歯科技工物の提供が可能となり、歯科医師の様々なニーズにも柔軟に対応することが可能となっております。


③強固な顧客関係

 a.歯科技工所と歯科医療機関の関係

 歯科技工所は基本的に歯科医療機関毎に依頼を受ける形になり、いかに多くの歯科医療機関とパイプを有しているかが案件獲得のため非常に重要となります。一方で、歯科技工所は、歯科技工士の従事者数の減少により、受注した矯正歯科技工物の納期が長期化傾向にある中で、技術の優れた歯科技工士を一定数確保することが、顧客である歯科医療機関の満足度を高める上で必要となります。

 当社グループ並びに協力パートナーにおいて100名を超える歯科技工士が矯正歯科技工物の製造に携わっており、歯科医療機関のニーズに応えられる体制を構築することに努めております。


  b.歯科医師の口コミによる顧客紹介

 歯科医師は出身歯科大学のコミュニティや歯科医師会等のグループに所属するケースが多く、歯科医師同士のネットワーク内での顧客紹介が行われることがあり、歯科医師間で当社グループに対する認知が浸透していることも一因と考えております。


  c.歯科医師との長期的な取引関係

 全国の歯科大学や大学の歯学部、大学附属病院と取引実績を有しております。

 当社グループが提供した矯正歯科技工物は、大学での実習に利用されたり、当該大学の卒業生が歯科医師免許取得後に実施される大学附属病院での研修等にも利用されるなど、用途・ニーズに合ったものを継続的に提供することで、長期的な取引関係が構築されております。また、これらの歯科医師には、大学附属病院での研修後や、独立開業するときにも、利用実績のある当社グループの矯正歯科技工物を引き続き利用いただける傾向にあり、このことが更なる長期的な取引関係を築くことに寄与し、安定的な取引歯科医療機関数の増加につながっております。


(2)主な製品

 歯科医療機関より矯正歯科技工物の発注を受け製造・販売しております。歯科医療機関は、新規患者に対して、口腔内の印象採得やレントゲン撮影等を行い、歯科医師は診査診断用の平行模型という矯正歯科技工物の発注を歯科技工所へ行います。これらの患者の口腔内の情報を歯科医師が確認後、矯正治療の方針を決定いたします。この治療方針を決定後、歯科医療機関は、患者治療用の矯正歯科技工物の発注を歯科技工所へ行うのが主な流れとなっております。

 矯正歯科技工物は、用途、目的によって様々な種類があり、それぞれ異なる役割、機能を有しております。例えば、診査診断用の平行模型、患者治療用としては歯の移動スペースを確保するため歯間を広げる矯正歯科技工物、歯に大きな矯正力を伝達する矯正歯科技工物や矯正後の歯の後戻りを防止する矯正装置等があり、診査診断から治療のプロセスによって矯正歯科技工物を使い分けるのが一般的であります。

 また矯正歯科技工物は大きく二つに分類することが可能です。1つは可撤式矯正歯科技工物といい、患者自身で矯正歯科技工物の着脱が可能で、食事や歯磨きの際に取り外しすることが可能となっております。

 もう1つは固定式矯正歯科技工物といい、患者自身で矯正歯科技工物の着脱が不可能なものがあります。これは、常に患者の口腔内に装着されているため、歯科医師の治療計画通りに治療が進む可能性が高くなります。

 歯科医師の様々な治療方針に対応するため、100種類以上の矯正歯科技工物を製造可能です。また、矯正歯科技工物で使用される材料は歯科技工士法に則って調達し、歯科医療機関から発注の際に受領する歯科技工指示書に記載されている設計指示を基に、患者ごとに適合する矯正歯科技工物を手作業及び機械化により製造・販売しております。

 以下は、当社グループで製造して主な矯正歯科技工物の3つのグループになります。

 ①矯正装置

 矯正治療の初期及び後期で使用される矯正歯科技工物を製造しております。例えば、矯正治療の初期の段階では、顎を頬側に拡大させ、歯の移動するスペースの確保を目的とする拡大床という矯正装置が使用されます。当社グループにおいて、20種類以上の拡大床を製造することが可能であります。

 また、矯正治療の後期の段階では、矯正後の歯の後戻りの防止を目的として使用されるリテーナーという矯正装置が使用されます。当社グループにおいては、10種類以上のリテーナーを製造することが可能であります。

 拡大床やリテーナーは、いずれも主に可撤式矯正歯科技工物のタイプを豊富に取り揃えております。


②マウスピース型矯正装置

 透明で薄いプラスチック(PET材)のマウスピースを口腔内に装着し、噛むことで歯に矯正力をかけ歯を移動させる装置でマウスピース型矯正装置と呼ばれており、可撤式矯正装置のタイプになります。これは主に歯を少しずつ動かしていく治療の段階において歯科医師の診断に基づき使用するものになります。代表的な治療例として、歯の移動するスペースが既に確保されている患者に対しては、治療の初期段階からマウスピース型矯正装置を用いて矯正治療を開始するケースもあれば、治療の初期段階で拡大床を使用し、歯間のスペースを確保してから、マウスピース型矯正装置を使用するケースがあります。また、マウスピース型矯正装置を使用する場合でも、後述するブラケットとワイヤーの矯正歯科技工物を患者の治療状況によって複合的に使用するケースもあります。

 マウスピース型矯正装置は当初の製品名「AsoAligner®」として、歯科技工士が手作業で歯列を並び替え製造する仕様でありましたが、2018年4月以降は、製品名を「AsoAligner DIGITAL」として、3DCAD及び3Dプリンターを使用してデジタル対応を図ることで製造工程の一部を自動化し、歯列の並び替えの精度及び製造スピードを向上させております。「AsoAligner DIGITAL」の特徴としては、患者の歯型情報が石膏模型や、特定のデータのファイル形式に限定せず、どのような形態でも受注可能となっております。またこの製品を歯科医師が発注するにあたり製品セミナーを事前受講していただくところにあります。製品のメリットだけではなく、デメリットや非適応になる症例についても事前に製品セミナーで学習してもらうことで治療トラブルを回避し、治療結果がより良くなると考えております。

体制を構築し全国への販売網を強化しております。

 

③イン・ダイレクト・ボンディング・システム(I.D.B.S)

 前述のマウスピース型矯正装置と同治療期間に使用される矯正歯科技工物として、ブラケットとワイヤーを使用した伝統的なタイプの矯正歯科技工物があります。マウスピース型矯正装置と同様に、歯科医師の診断により、代表的な治療例として、歯の移動するスペースが既に確保されている患者に対しては、ブラケットとワイヤーを使用して治療を開始するケースもあれば、拡大床を使用し、歯間のスペースを確保してからブラケットとワイヤーを使用するケース等もあります。また、ブラケットとワイヤーを使用する場合でも患者の治療状況によってはマウスピース型矯正装置を追加使用するケースもあります。

 ブラケットとワイヤーを利用した矯正歯科技工物は、歯科医師が患者の歯の表面に、手作業で直接ブラケットを接着し、ワイヤーを患者の歯列に合うように屈曲させブラケットに通し患者の口腔内に装着させる、いわゆる固定式矯正歯科技工物のタイプになります。このダイレクト・ボンディングは、矯正治療の高い技術と知識が必要であること、また歯科医師が患者の口腔内へブラケットを接着する時間及びワイヤーを屈曲させる時間が長時間になる傾向にあります。これは歯科医師及び患者にとって負担となる作業となっております。

 イン・ダイレクト・ボンディング・システムは、歯科医師が患者の歯の表面にブラケットを接着する際に使用するコアと患者の歯列用に既に当社グループで屈曲したワイヤーを1つのパッケージにして製造・販売している矯正歯科技工物になります。このI.D.B.Sを利用することにより、ブラケットの接着時間及びワイヤーの屈曲時間の短縮を図ることができ、歯科医師及び患者の負担を減らすことが可能となります。

 主なI.D.B.S製品としては、ブラケットとワイヤーを使用した治療において代表的な治療である「ラビアル矯正治療」用のI.D.B.S製品と「リンガル矯正治療」用のI.D.B.S製品があり、いずれも工程が手作業である製品に対して、工程の多くがデジタル化されたI.D.B.S製品(製品名「HARMONYリンガルシステム」)を分けて記載します。


 a.ラビアル矯正治療用I.D.B.S

 口腔内の頬側の歯の表面にブラケットを接着可能なコアと、患者の歯列に合うワイヤーをセットにした製品であり、歯科技工士が手作業で製造しております。


b.リンガル矯正治療用I.D.B.S

 口腔内の舌側の歯の表面にブラケットを接着可能なコアと、患者の歯列に合うワイヤーをセットにした製品であり、歯科技工士が手作業で製造しております。


 ラビアル矯正治療と比較して、リンガル矯正治療は、ブラケットを歯科医師の視認性の悪い舌側に貼り付けるため、治療難易度は更に高くなる傾向にあります。リンガル矯正治療は、歯科医師が直接ブラケットを貼り、ワイヤーを患者の治療経過に合わせて屈曲することが困難であるため、I.D.B.Sを利用することが一般的であります。こちらは歯の裏側に装着するタイプであるため、正面からみて装置が見えないため目立ちにくいものになります。

  前記b.リンガル矯正治療用I.D.B.Sは歯科技工士の手作業により製造を行っておりますが、HARMONYリンガルシステムは、3DCAD等を使用して歯列をスキャンし、ブラケットからワイヤーまで一貫して設計と製造が行われるシステムであり製造工程の多くをデジタル化・機械化しているところに特長があります。HARMONYリンガルシステムは本書提出日現在において、世界15以上の国と地域での販売実績があります。

 当社グループは、上記矯正歯科技工物の提供以外に、歯科医療機関自ら矯正歯科技工物を製造するために使用するワイヤーやブラケットなどの部品、器具等の材料の仕入れ販売を当社の子会社であるフォレスタデント・ジャパン株式会社を通じて提供しております。フォレスタデント・ジャパン株式会社はドイツのFORESTADENT Bernhard Förster GmbH の独占販売代理店であり、同社の矯正関連材料を仕入れて販売しております。また、納品済みの矯正歯科技工物の修理を行っております。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/06 連結1Q実績 837 147 139 94

2023/06 連結会社予想 3,262 528 486 335

2022/06 連結実績 3,115 512 518 351

2021/06 連結実績 3,062 625 628 411


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/06 連結会社予想 75.55 501.24 21.00


上場時発行済株数 4,850,000株(別に潜在株式193,000株)

公開株数 1,863,000株(公募850,000株、売り出し770,000株、オーバーアロットメント243,000株)

調達資金使途 設備資金、人材採用費・人件費、借入金返済、研究開発資金


PER:11.5

PBR:

配当利回り:2.4%

公募時吸い上げ資金:16.2億

公募時時価:43億​


【株主構成】以下180日 

(株)ASO 役員らが議決権の過半数を所有する会社 2,800,000 66.78%

阿曽敏正 代表取締役社長 1,200,000 28.62%

内山淳 取締役など 29,000 0.69%

詫麻礼久 取締役 28,000 0.67%

曽我雄作 従業員、子会社の監査役 24,600 0.59%

小林隆子 従業員 24,600 0.59%

加来裕一 従業員、子会社の代表取締役 22,800 0.54%

平野拓幹 従業員、子会社の取締役 22,800 0.54%

千葉実 従業員 18,400 0.44%

古川一也 従業員 6,800 0.16%


 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、売出人かつ貸株人である阿曽敏正、当社株主である株式会社ASO並びに当社新株予約権者である内山淳、詫麻礼久、曽我雄作、小林隆子、加来裕一、平野拓幹、千葉実、古川一也、松木沙織、村上悠平及び桑原勉は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しにかかる元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2023年6月20日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

【代表者】

代表者名 阿曽 敏正(上場時62歳4カ月)/1960年生

本店所在地 東京都中央区銀座

設立年 1988年

従業員数 65人 (2022/10/31現在)(平均34.2歳、年収380.8万円)、連結266人

事業内容 矯正用歯科技工物の製造・販売

URL https://www.aso-inter.co.jp/

株主数 2人 (目論見書より)

資本金 10,000,000円 (2022/11/18現在)

代表者生年月日 1960年07月25日生まれ

代表者略歴

1980年04月 日本歯科大学附属歯科技工士学校(現日本歯科大学附属東京短期大学)助手

1982年04月 歯科技工所ASO DENTALを開業 代表就任

1988年05月 株式会社アソ.デンタル(現当社)設立

2000年07月 株式会社ASOホールディングス設立 代表取締役就任

2004年06月 ASO INTERNATIONAL HAWAII, INC. Director,President就任

2009年02月 株式会社ASO INTERNATIONAL HITACHI 代表取締役就任

2015年05月 ASO INTERNATIONAL MANILA, INC. Chairman就任


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

引受証券 野村 - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 SBI - -

引受証券 東海東京 - -

引受証券 楽天 - -


【参考類似企業】今期予想PER(11/28)

7716 ナカニシ 19.8倍 (連結予想)

7730 マニー 45.5倍 (連結予想)

7979 松風 13.2倍 (連結予想)


【私見】

 矯正用歯科用品の売買としては初物ですが、市場シェアも高く、コアな部分ですが評価はできます。業績が物足りなく、売上の伸びも僅かで、円安要因もあって減益となるとIPO銘柄としては成長性から物足りません。小型でVCなしなので需給は心配はなく、PERからは割高感はなく、海外売上も伸ばしていくというスタンスからも個人的には嫌いな銘柄ではありません。来年の6月予想まで出ているので、直ぐには上がらず3か月~半年くらいは時間がかかるかと思います。

想定価額:835円

仮条件上限:870円

初値予想:1000円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立(長期ならやや強気)

総合評価:3.5

0 件のコメント:

コメントを投稿