2022年12月12日月曜日

IPO分析(アルファパーチェイス)

 【事業内容】

(1)MRO事業

 MROとは、本来、商品とサービスの双方を包含する概念ですが、日本では設備や機械の修理用備品、文具、オフィス用備品等のMRO商品の物販のことをMROと呼ぶことが多いため、当社グループでもMRO商品の物販事業をMRO事業と称しています。MRO事業は、インターネットを活用し、企業が日常的に購入する消耗品の発注から納入までを効率化する手法を活用した間接材の販売事業です。MRO商品は、その種類が極めて多い割に、購入量は少なく、単価も安い、典型的なロングテール(多品種・少量・少額)型の商品であり、当社グループは、主に上場企業を中心とした大企業の企業グループ全体を顧客とするべく、その購買に最適なITプラットフォームを提供し、①幅広い商品の選択肢から最適な商品を、②価格競争力のある単価で、③管理された顧客の社内決裁を経て購入が可能、という強みを生かして事業を行っております。顧客本体の事業所、営業所だけでなく、顧客の子会社や関係会社までを含む顧客の企業グループ全体と日本全国のMRO商品提供者(サプライヤー)をITシステムで結び、商品物流を基本的にサプライヤーからの直送とすることで、MRO商品調達に関し業界全体のDX(Digital Transformation)を進めております。なお、MRO事業の売上と粗利は主に物販活動によるものです。顧客からは若干のシステム利用料をいただく他、顧客システムとの連携接続や、顧客の特別な仕様要求がある場合、個別にシステム改訂料等を頂きますが、取引額全体に占める比率は小さく、システム提供により利益を得るビジネスモデルではありません。


①幅広い商品の選択肢から最適な商品

 顧客である大企業の企業グループには、多数かつ多様な事業所や関係会社が存在し、それぞれの拠点や関係会社が購入を希望する商品は多岐にわたります。当社グループでは、この多様なニーズに対し、現在取引のあるサプライヤー約1,500社(2021年1月より2022年9月30日の間で取引のあるサプライヤー)が提供する幅広い商品を電子購買システム経由で販売しております。また、顧客が、当社グループの電子カタログに登録されていない商品の購入を希望される場合には、顧客の具体的な要望に従って、適切なサプライヤーと商品を探し出し、複数のサプライヤーの相見積りの結果を顧客に提供する仕組みを運用しております。これらの方法により、顧客は、常に幅広い選択肢から最適な商品を購入することが可能となります。


②価格競争力のある単価で購入可能

 仕入、再販の契約を締結している多数のサプライヤーから供給可能な幅広い商品が、価格や納期の情報とともに顧客の電子購買システム上に表示されるため、結果的にサプライヤー間の自由で公正な競争が発生することとなり、当社グループは、顧客に、価格競争力のある単価で多様な商品の提供が可能となります。また、当社グループを一元窓口として、幅広い顧客への再販が行われることから、当社グループの製品あたりの購入額が増大し、当社グループの顧客も、自社グループのみの購買では実現できないボリュームディスカウント後の価格での購入が可能になります。


③管理された社内決裁(購買統制・購買管理)

 当社グループが提供するMRO商品群は非常に幅広いことから、そのMRO商品群の全てに関して独自に適切な管理、統制プロセスを経た購入を行う際に、相当な工数が必要となります。大企業グループにおいては、商品カテゴリーや商品の価格帯毎に、異なる購買主管部門や購買規程が存在する一方、あらゆる拠点や関係会社で多数の購買行為が発生するため、全体を統括する購買管理部門は、実効的な購買行動の管理統制に苦心されています。社員がBtoC(個人向け)の大手通販会社から個別に必要な商品をネットで購入し、会社が立て替え払いをするといったやり方は認め難いため、管理された社内決裁を経た適切な購買管理の重要性が強く認識されています。その購買を支援し、システム的に担保するのが、当社グループの電子購買システムです。


(2)FM事業

 FMとは「Facility Management」の略称で、施設・設備管理のことです。MROという言葉には”Repair &Maintenance”が含まれているため、広義のMROに含まれますが、日本では物販事業のみをMRO事業と呼ぶ事例が多く、またロングテール物販と施設・設備管理は物品の提供かもしくは役務の提供かといった点で事業特性が異なることから、当社グループでは後者をFM事業として区分管理しています。一般的な意味でのFacility Managementとは、土地、建物、構築物、設備等の事業用資産すべてをコスト最小、稼働率最大で運営、維持するための総合的な管理を指しますが、当社グループでは、商業施設の内外装のほか、設備機器の新築、改装、修繕、清掃および運営支援並びに工事用建材を各店舗の工事日程にあわせて提供する事業に限定しています。当社グループ内では、商業施設の開店や改装時に、仕様・数量・配送日程等のあらゆる面で店舗工事に最適化した建材提供を「材工分離」(資材支給と施工を別の業者が行う)形態で行う部分をCFM (Construction & Facility Management)、商業施設の維持管理や改装、修繕および各種法定点検対応などの予防保全を行う部分をFMと称し、事業部を分けて運営していますが、両者は商業施設の開店から閉店までのライフサイクルにあわせて、適宜、必要な物財やサービスを提供するという点で共通の事業特性を持ち、改装工事の際に建材支給と施工が分離されるか統合されるかは、顧客側都合によって決まる事項であるため、二部門を合わせてFM事業として管理しています。

 当社グループが手掛けるFM事業は、店舗数が多く、同型施設・設備が多数あり、建材や役務提供業務の定型化が容易なチェーンストア(コンビニエンスストア、ドラッグストア、ファストフード店、ビジネスホテル等)向けが中心です。大規模チェーンストアはチェーンストア全体の本部と全国の直営店、フランチャイズ店の組み合わせで運営されることが多く、当社グループはチェーン本部の管理業務の一部を受託する形で、全国の直営店、フランチャイズ店に対して均質なサービスを提供しています。店舗の建物と設備に関する資材やメンテナンスの代行発注、購買、受託、および品質の管理、店舗管理コストの可視化によるチェーン本部のコスト削減支援、全国約1,600拠点の修繕・保守・清掃のパートナーと連携した全国ネットワークによる24時間365日体制のメンテナンス、及び緊急対応などが、当社グループが顧客に提供しているサービスです。複数の業態のチェーンストアが顧客となっているため、例えばインバウンドで来日観光客が増加した際には、ホテルチェーンやドラッグストアの改装需要が好調であったのに対し、新型コロナウイルス感染症がまん延する環境下ではテイクアウトが可能なファストフード店や冷凍食品を扱うコンビニエンスストアの改装需要が増える等、顧客が属する業界の動向や環境の変化に応じて需要の増減が生じます。複数業態のセールスミックスにより、その増減の一部は吸収されて安定化しますが、個別業界の増減の幅が大きい場合には、FM事業全体の売上も変動する場合があります。


(3)その他事業

 その他に分類されているのは、当社グループのITシステムの開発および運用の部門を2014年1月に分社して設立したATC株式会社のITシステム開発運用部門です。この事業は、当社向けのITシステム開発、運用によって培った技術、ノウハウを外販するもので、他の事業と比較すると低リスクかつ高収益であることが特徴ですが、副産物としての事業の性格上、規模的には小さな金額にとどまります。


(4)サプライヤーおよびパートナー会社について

 顧客の社名入り商品等、一部の商品については当社自体が在庫を保有し、配送を行います。また、当社が複数サプライヤーからの納品を受けて一括納品を行う場合もありますが、当社グループのMRO事業における商品納入の大部分はサプライヤーから顧客への直接配送によって行われています。これらの物流機能については、当社グループは全面的にパートナー企業に委託をしております。また、当社グループが顧客に提供しているITシステムの開発、運用に関しても、その大部分をパートナー会社に委託しております。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2022/12 連結3Q累計実績 31,722 758 710 497

2022/12 連結会社予想 43,044 950 861 587

2021/12 連結実績 37,948 864 827 510

2020/12 連結実績 32,447 741 716 506


決算期 種別 EPS BPS 配当

2022/12 連結会社予想 71.74 463.66 13.00


上場時発行済株数 9,273,500株(別に潜在株式979,000株)

公開株数 2,300,000株(公募1,000,000株、売り出し1,000,000株、オーバーアロットメント300,000株)

調達資金使途 設備投資


PER:12.3

PBR:

配当利回り:1.5%

公募時吸い上げ資金:20.2億

公募時時価:82億


【株主構成】 

アスクル(株) 親会社 6,945,000 75.06% 360日

アズワン(株) 特別利害関係者など 824,500 8.91% 360日

多田雅之 代表取締役社長兼CEO 352,500 3.81% 180日

田辺孝夫 子会社の代表取締役、グループCTO 176,000 1.90% 180日

中川特殊鋼MROパートナーズ投組 ベンチャーキャピタル(ファンド)137,500 1.49% 180日

斎藤正弘 取締役CFO 100,000 1.08% 180日

新日本実業(株) 特別利害関係者など 69,000 0.75% 180日

佐藤徳久 執行役員 56,500 0.61% 180日

松木伸男 特別利害関係者など 47,000 0.51% 180日

土屋亙 執行役員 45,000 0.49% 180日

中井規雄 従業員 45,000 0.49% 180日


 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、貸株人かつ売出人であるアスクル株式会社、売出人であるアズワン株式会社は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しにかかる元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して360日目の2023年12月20日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

 当社株主である多田雅之、田邉孝夫、中川特殊鋼MROパートナーズ投資事業組合、新日本実業株式会社、松木伸男、園田真一、會田一郎、株式会社arcus、鏑木康宏、中瀬浩一、足立亜維子、遠藤英二、堀内正文、横尾宏、外川昌臣、田渕弥生及び他10名並びに当社新株予約権者である齋藤正弘、佐藤徳久、土屋亙、中井規雄、正木清氏、輿水結子、池増拓也、鐘築直人、松井一樹、馬場武、米増幸美、中里章子、星野光信、岩田彰一郎、北村哲也、香取寛子、井出政次、佐藤英治、北村篤史、清水亨師、村田裕樹、千坂有広、近藤公也、藤田薫明、天野正之、河井康彦、福田統武、喜友名忠、安藤梓、藤田幸代及び他4名は、主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しにかかる元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2023年6月23日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

【代表者】

代表者名 多田 雅之(上場時59歳10カ月)/1963年生

本店所在地 東京都港区三田

設立年 2010年

従業員数 240人 (2022/09/30現在)(平均40.9歳、年収562.6万円)、連結253人

事業内容 間接材の物販事業およびファシリティ-マネジメント事業

URL https://www.alphapurchase.co.jp/

株主数 29人 (目論見書より)

資本金 52,261,000円 (2022/11/21現在)

代表者生年月日 1963年02月18日生まれ

代表者略歴

1985年04月 日本鋼管株式会社入社

1995年07月 National Steel Corporation(現United States Steel Corporation)経営企画マネージャー(現地出向)

2002年01月 当社入社

2004年01月 当社 執行役員兼営業本部長

2006年02月 当社 執行役員兼副社長、3月:当社 代表取締役社長 兼 CEO(現任)

2012年04月 愛抜愜斯(上海)貿易有限公司 董事長

2018年03月 愛抜愜斯(上海)貿易有限公司 董事

2019年07月 愛富思(大連)科技有限公司 董事(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -


【参考類似企業】今期予想PER(12/6)

2678 アスクル 16.5倍 (連結予想)  経常150憶 時価1500憶

3064 MonotaRO 67.6倍 (連結予想)

7476 アズワン 31.2倍 (連結予想)

9830 Tナカヤマ 13.9倍 (連結予想)

9962 ミスミG 23.2倍 (連結予想)


【私見】

 業種としてMonotaROを連想しますが、単純にアスクルの子会社なのでアスクルとの比較で良いかと思います。売上・利益共に伸びており、ロックもしっかりして安定感はあります。アスクルとの比較で、PERを当てはめると1200円ほど、利益規模が15分の1から時価総額で100憶とすると1100円ほど。1200円ほどが妥当ラインで、IPOプレミアムを加味しても1500円が上限ラインなのかと思います。


想定価額:850円

仮条件上限:880円

初値予想:1000円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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