2022年12月8日木曜日

IPO分析(note)

 【事業内容】

(1)事業の概要

 あらゆるクリエイターの創作活動やマーケティング活動・収益化の機会を提供する「note事業」、「note pro事業」、「法人向けサービス事業」、「その他事業」を展開しております。

1 「note事業」

「note」は、個人を中心としたあらゆるクリエイターが文章やマンガ、写真、音声、動画等のコンテンツを「note」のWebサイト上で自由に投稿・販売することができ、読者はそのコンテンツを楽しんで応援・購読することができる、CtoCのメディアプラットフォームです。

 初期費用・月額利用料なしで(月額有料のプレミアム会員登録を除く)、誰でも利用することができます。クリエイターは「note」に会員登録を行うことで無料または有料のコンテンツの投稿が可能となり、読者は会員登録をせずとも様々なコンテンツを自由に閲覧・購入することができます。個人のクリエイターが任意の価格を設定してコンテンツを販売できる「CtoC×課金」のビジネスモデルにより、ブログやネットメディア、電子新聞・電子書籍等他のメディアと比べ、ユニークなポジショニングを形成しております。

 当社は、「note」があらゆるクリエイターの本拠地になることを目指しており、「くらし」や「まなび」、「しごと」といった幅広い読者に閲覧されるようなコンテンツから、テクノロジー関連や株式投資等のニッチなファン層に支持されるコンテンツ、エッセイ・体験談や裏話といった独自コンテンツまで、有料・無料問わず、多種多様なオールカテゴリーのコンテンツが共存する、多様性に富んだプラットフォームになっております。

 加えて、「note」はランキングがない・広告がないといった特徴から、PV獲得目的の炎上行為が発生しづらく、クリエイターは自由に安心してコンテンツを投稿でき、読者はクリエイターの世界に没頭できる空気感が醸成されており、収益化を意識した良質なコンテンツが集まりやすい環境となっています。

 「CtoC×課金」のユニークなビジネスモデルにこのような創作しやすい環境づくりも相まって、数多くの芸能人、経営者、アスリート、政治家、作家、インフルエンサー等の知名度の高いクリエイターにも情報発信の場として「note」を選んでいただいており、2022年8月時点の日本人Twitterフォロワー数上位1万人のうち、1,000人を超える著名人が「note」とTwitterをアカウント連携し、利用しております。

 著名人だけでなく、様々な業種の法人や、教育機関・行政機関による利用も進んでおり、2022年8月時点で法人アカウントは16,000件超、学校の利用数は183件、自治体は105件、中央省庁/独立行政法人は22件に上っています。

 このように「note」は一般クリエイターから著名人・法人・行政機関など幅広いクリエイターが集まり、独自性の高いコンテンツが生み出され、読者やファンが集まる、現時点において唯一無二のメディアプラットフォームとなっており、2022年8月末時点で公開コンテンツ数は27,821千件、「note」のMAUは4,066万人、累計会員登録者数は5,501千人、累計ユニーククリエイター数は1,030千人、ARPPUは2,650円となり、多くの支持を集めております。

 また、2021年11月期では、クリエイターの上位1,000人の平均売上高が663万円となり、中にはnoteだけで生計を立てられるクリエイターもいるほか、多くの読者の目に留まり人気化したコンテンツは、書籍化・映像化されるケースも多く、当社が資本業務提携先などメディアパートナーと連携して発表するケースも含めこれまで累計186作品が書籍化されており、クリエイターエコノミーの促進に貢献しています。

 

「note」の特徴は、以下のとおりです。

① 5種類のコンテンツ

 テキストを中心として、テキスト、画像、つぶやき、音声、動画の5種類のコンテンツを簡単に作ることができます。エッセイ・ブログなどの文章コンテンツだけでなく、音声・動画配信や漫画・イラストの掲載など、幅広いコンテンツが投稿されており、様々なクリエイターの活動拠点となっています。


② 様々な課金機能

 クリエイターは、作成したコンテンツの価格を自由に設定して販売することができます。無料会員の場合には、100円から10,000円の範囲内で販売価格を設定することができます。月額500円のnoteプレミアムに会員登録した場合には、販売上限価格を5万円に設定することが可能となるほか、コンテンツ単位や複数のコンテンツをまとめたマガジン単位での販売以外に、月1回以上の記事更新により月額制で記事を販売できる定期購読マガジンの販売や、数量限定での販売等、様々な課金・販売形態でのコンテンツ販売が可能となります。


③ コミュニケーション

 お気に入りのクリエイターのアカウントをフォローすることや好きなコンテンツに読者が「スキ」やコメントを残してクリエイターと読者が交流することができ、コンテンツやファンを蓄積することができます。また、2022年7月には、月額会費制でコミュニティ運営ができる機能「サークル」を、創作活動の種類によらず、ファンとつながり継続的に応援を得て、創作活動に集中できるようになる機能「メンバーシップ」にリニューアルしました。「メンバーシップ」では、会員限定コンテンツの公開のほか、イベント・セミナー等への招待、会員限定で割引クーポンを配布するなど、リターン(会員限定特典)の設定を工夫することで、さまざまな創作活動の収益化が可能になります。掲示板での交流が中心であった「サークル」や、月1回以上の記事投稿が必要な「定期購読マガジン」に対し、クリエイターがリターンを自由に設定できるため、より幅広い創作活動に対してファンからの支援を受けることができるようになり、読者との長期的な関係構築を目指すことができます。


④ ランキングがない

 ランキング制度を設けると、刺激的な見出しのあるコンテンツなど読者の興味を惹き易く閲覧数が増えやすいコンテンツばかりがランキング上位に集約されていく傾向があり、また中長期的には投稿コンテンツの均一化を助長させてしまう可能性もあると考えております。そのため、「note」ではランキング制度を無くすことで、クリエイターの自由な創作活動を促し、コンテンツの多様性を保っております。


⑤ 広告がない

 「note」はクリエイターが広告で収益を稼ぐ場所ではないため、投稿コンテンツには広告が表示されません。そのため、読者がクリエイターの世界に没頭できる空間が形成されております。また、広告が表示されないことにより、PV偏重のコンテンツが生まれにくい、あるいはPV獲得目的の炎上行為を起こすインセンティブが生じづらい等の空気感の醸成、環境の構築が図られております。


⑥ 最適な読者に届く

 読者やnoteディレクターによるピックアップや、AIによるレコメンド機能により、コンテンツが最適な読者に届きます。いい作品が埋もれず、様々なクリエイターの才能を引き上げられる仕組みになっています。

 

⑦ 継続的な「カイゼン」

 クリエイターまたは読者からの要望を「フィードバック」として適時に吸い上げ、機能改善や拡充等に反映させる「カイゼン」に積極的に取り組んでおります。「フィードバック」に寄せられた要望等は、カイゼンチームがスピード感をもって対応しており、毎年数多くのカイゼンを行っております。


⑧ EC・HRとしての利用

 商品開発の背景、創業ストーリー、商品や会社の魅力も綴ることでファンを形成し、実際の商品販売や人材採用の応募へとつなげることができます。


⑨ メディアとの強固なネットワーク

 「note」上で話題となっているクリエイターを、株式会社テレビ東京ホールディングスや株式会社日本経済新聞社、株式会社文藝春秋、UUUM株式会社等の資本業務提携先をはじめとしたメディアパートナーに紹介する「クリエイター支援プログラム」を行っております。同プログラムを通じて、「note」に投稿されたコンテンツから、ドラマ化、映画化、書籍化につながった作品が多数誕生しており、またマネジメント契約やテレビ番組への出演等にもつながるなど、オンラインのみならず、オフラインの場でもクリエイターの創作活動を後押しする仕組みを構築しております。クリエイターにとっては「note」に投稿された作品がマルチチャネルでさらに拡がるため、活動機会の増加につながるとともに、既存メディアにとっても「note」を通じて新しいクリエイターの発掘を行うことができ、良好かつ強固な関係性の構築につながっています。


2 「note pro事業」

 「note」の基盤を活用しつつ、企業がオリジナルな自社サイトとして情報を発信できる機能を拡充したメディアSaaSです。「note pro」の利用企業は、「note」のシンプルなUIを用いて、初期費用をかけることなく、最短即日でオウンドメディアやホームページの構築・運用ができるほか、「note」プラットフォームから読者を呼び込むことができるため、自社独自での集客活動をせずとも、効率的なマーケティング活動や集客を行うことが可能となります。また、カスタマーサクセスによるサポート、システムのUI/UXのアップデートも実施しており、決済・ダッシュボード・コンテンツ管理等の機能を標準機能として利用可能となります。そのため、「note pro」の利用企業は、企業やサービスの想いを届けることに集中することが可能となり、従前からのファンのみならず、将来的に企業のファンになってくれる可能性のある潜在顧客層など、幅広い読者とつながって関係性を深めていくことができると考えています。

 活用した企業活動は「サブスクリプションメディア」、「ブランディング」、「HRマーケティング」、「販促/EC」、「ファンコミュニティ作り」など多様に拡大しており、読者との双方向コミュニケーションを通じて、エンゲージメントの向上に利用されております。

 2019年3月にリリースした後、2022年8月末時点で有料契約数は564社となり、大手企業から出版社、ベンチャー企業など様々な企業にご利用いただいています。


3 「法人向けサービス事業」

① コンテスト

 クリエイターの創作意欲を喚起するために、「note」上で定期的に企業協賛型のコンテストを開催しております。コンテストとは、企業とコラボしてテーマを決め、テーマに沿ったコンテンツをクリエイターから募集し、その後審査員により審査を行い、優れたコンテンツを表彰するものです。クリエイターは受賞特典として賞金・賞品や受賞作品のメディア掲載などがあるほか、活動の幅を広げるきっかけにもなっています。企業側としては、自社の取り組み等の発信に繋げることができます。


② イベント運営

 「note place」におけるイベント運営を行っております。当社が運営する「note place」において、当社主催イベントや当社とクリエイターの共催イベントを実施しているほか、クリエイター主催のイベント、オンラインイベントのスタジオ及び発表会等のためのレンタルスペースとして活用しています。


4 「その他事業」

 その他の事業として、「note」コンテンツの外部配信等副次利用による収入を計上しております。

 

【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2022/11 単独3Q累計実績 1,729 -514 -521 -523

2022/11 単独会社予想 2,281 -855 -869 -872

2021/11 単独実績 1,884 -456 -433 -436

2020/11 単独実績 1,523 -293 -270 -352


決算期 種別 EPS BPS 配当

2022/11 単独会社予想 -61.24 - -


上場時発行済株数 14,827,900株(別に潜在株式1,700,000株)

公開株数 1,471,100株(公募210,000株、売り出し1,069,300株、オーバーアロットメント191,800株)

調達資金使途 広告宣伝費、長期借入金の返済


PER:

PBR:

PSR:2.2

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:5.0億

公募時時価:50億

​   

【株主構成】 

加藤貞顕 代表取締役CEO 5,690,000 34.87% 180日

フェムトグロースキャピタル投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,820,000 11.15%

(株)日本経済新聞社 資本業務提携先 991,000 6.07% 180日

Image Frame Investment(HK)Ltd ベンチャーキャピタル(ファンド) 970,000 5.94%

ジャフコSV4共有投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 950,000 5.82% 90日・1.5倍

CA StartupsInternetFund1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 710,000 4.35%

UUUM(株) 資本業務提携先 410,000 2.51% 180日

(株)テレビ東京ホールディングス 資本業務提携先 410,000 2.51% 180日

SMBCベンチャーキャピタル4号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 330,400 2.02% 90日・1.5倍

(責)フェムト・スタートアップ ベンチャーキャピタル(ファンド) 320,000 1.96% 90日・1.5倍


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である加藤貞顕、並びに当社の株主である株式会社日本経済新聞社、UUUM株式会社、株式会社テレビ東京ホールディングス、株式会社マイナビ、株式会社イード、株式会社THE GUILD、株式会社パーティー、BASE株式会社、株式会社文藝春秋、株式会社Bloom&Co.、中村洋基、村島健介、長谷川晋、長南伸明、小松正和及び早川皓太郎は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2023年6月18日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨を合意しております。また、売出人であるフェムトグロースキャピタル投資事業有限責任組合、ジャフコSV4共有投資事業有限責任組合、CA Startups Internet Fund1号投資事業有限責任組合、有限責任事業組合フェムト・スタートアップ、原永淳、電通デジタル投資事業有限責任組合、TBSイノベーション・パートナーズ1号投資事業組合及び株式会社原宿ウェブ研究所、並びに当社の株主である、SMBCベンチャーキャピタル4号投資事業有限責任組合、NVCC8号投資事業有限責任組合、地方創生新潟1号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後90日目(2023年3月20日)までの期間、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること及び売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う株式会社東京証券取引所取引での売却等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 さらに、当社の新株予約権を保有する吉島彰宏、深津貴之、今雄一、鹿島幸裕、飯野正之、坂本洋史、沼田琴実、中䑓将貴、棚澤岳史、福井烈、榎本紗智、井上太志、北村学爾、玉置敬大、中田絵理香、永井里志、澤村花織及びその他6名は、主幹事会社に対し、ロックアップ期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した普通株式の売却を行わない旨を合意しております。

【代表者】

代表者名 加藤 貞顕(上場時49歳6カ月)/1973年生

本店所在地 東京都港区北青山

設立年 2011年

従業員数 179人 (2022/10/31現在)(平均35.4歳、年収678.7万円)

事業内容 CtoCメディアプラットフォーム「note」、メディアSaaS(Software as a Service)「notepro」の運営

URL https://note.com/

株主数 29人 (目論見書より)

資本金 1,100,070,000円 (2022/11/17現在)

代表者生年月日 1973年06月11日生まれ

代表者略歴

2000年04月 (株)アスキー 入社

2005年09月 (株)ダイヤモンド 入社

2011年12月 当社設立、代表取締役CEO 就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

引受証券 野村 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 岡三にいがた - -

引受証券 松井 - -

引受証券 マネックス - -


【参考類似企業】今期予想PER(11/29)

3930 はてな 36.9倍 (単独予想)

4059 まぐまぐ - (単独予想)

4387 ZUU 22.1倍 (連結予想)

6038 イード 9.3倍 (連結予想)


【私見】

 noteといえばSNSやネットを使っている人であれば知名度は高く、業種評価は出来ます。売上は伸びていますが、赤字は続いているので黒字見通しがどうなのかという不安要素は高いです。直近の第3者割当価額が2000円超えから、公募価額は相当割安で規模的にも小さいサイズとなりました。日経・UUUM・テレ東・マイナビと錚々たる株主が並ぶ一方で、ロックなしVCや1.5倍で外れるVCが多いので、需給は悪く上に抜けるのは簡単ではないかもしれません。低単価なので抜けてしまえば面白いかもしれません。


想定価額:300円

仮条件上限:340円

初値予想:450円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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