2022年12月11日日曜日

IPO分析(BTM)

 【事業内容】

(1)事業概要、各サービスの特徴

 DX推進事業を行っております。具体的には、DXに係る人的リソースの提供に主眼を置いた「ITエンジニアリングサービス」、DX推進に向けたコンサルティングや開発成果そのものの提供に主眼を置いた「DXソリューションサービス」の2種類のサービスを提供しており、中でもITエンジニアリングサービスが主力(売上全体の約8割)となっています。


① ITエンジニアリングサービス

イ.概要

 顧客企業のシステム開発案件において人的リソース(エンジニア)が不足している場合に、最適な人材を見繕って提供しております。

 顧客企業は特定の業界に偏らず、また事業規模もベンチャーから大企業まで様々となっております。関与する案件の内容も業務システムからコンシューマー向けアプリに至るまで幅広く、必要とされる技術や知識も多岐に渡っております。加えて、契約形態、期間、予算等の制約も顧客毎に異なるため、エンジニア不足が慢性化する中で必要な条件を満たすエンジニアを顧客企業自身が見つけ出すことは容易ではありませんが、当社は自社エンジニアに加え、全国の外部協力企業やフリーランスのエンジニアをネットワーク化しており、幅広い顧客ニーズに対応可能な体制を整えております。

 契約形態は、準委任契約が多くを占めていますが、当社社員を提供する場合に顧客ニーズに合わせ派遣契約となる場合があります。


ロ.特徴

 当社ITエンジニアリングサービスの特徴は、エンジニア情報及び案件情報の量にあります。需要と供給の双方の情報が日々大量に当社に集まってくるため、双方にとって満足度の高いマッチングが行いやすくなっております。


(人材情報)

 当社で提供可能な人的リソースは、自社社員、外部協力企業(同規模以下の同業他社が中心)、フリーランスの3つに大別され、その9割以上を外部協力企業が占めています。当社が外部協力企業に重点を置く理由は、母数が多いこと(国内のフリーランスエンジニア数約13万人に対し開発会社所属のエンジニア数約101万人、それぞれ「フリーランス白書2020」より当社推計、DX白書2021、対企業取引であることから一定のクオリティが担保されることの2点です。フリーランスには利益率が高い、優秀なエンジニアが多い等の利点がありますが、当社は対企業取引の有する利点をより重要と考え、そのネットワークの強化に注力して参りました。

 当社が築き上げてきた外部協力企業を中心としたネットワークは、2022年3月現在において約5,200件の連絡先アカウント、1,500社以上との取引実績を有するまでに拡大しておりますが、これは創業時より顧客企業訪問等を持続的に積み重ねた営業活動の成果であります。具体的には、①当社は創業時から営業を重視し営業に秀でた専業メンバーによるオーソドックスな営業活動を継続してきましたが、当時はそのような同業者は希少で当社の入り込む余地が大きかったこと、②早期から大阪及び福岡に拠点を構え、信頼関係の構築に労力を要する地方の外部協力企業の囲い込みに努めてきたこと、③エンジニアの情報が多いと案件情報も集まりやすく、それを受けてさらにエンジニアの情報が集まってくるという好循環を生んでいること等が挙げられます。このような状況の下、当社にはエンジニアの売込情報が日々大量に配信されてきます。


(案件情報)

 当社のようにエンジニアの提供を生業とする企業は、目の前に案件があっても、要件を充たすエンジニアがいなかったり他の案件で埋まっていたりすると受注できないため、他社にその案件を紹介する(対価として紹介料を得る)ことが日常的に行われています。当社は前述の通り多くの外部協力企業を抱えており、当該協力企業がエンジニアの売込に加えて大量の案件情報を全国から配信してくる他、創業時より開拓してきた顧客企業、当社のエンジニア情報の豊富さを聞きつけた潜在顧客企業等からも多くの案件情報が日々寄せられてきます。


(マッチング等)

 これら情報のやり取りを日常的に行う先を「アカウント」と称し、その数は2022年3月末時点において約5,200件となっております。「アカウント」はエンジニア直接ではなくそのエンジニアを売り込む営業担当者に紐づいているため、反応が早い、エンジニアの情報が常に更新されている等の利点があり、マッチングの効率化や最適化に寄与しています。

 日々大量に送られてくるエンジニア情報と案件情報を当社がマッチングさせる方法は複数ありますが、最もマッチング件数が多いのは外部協力企業への一斉配信です。当社が入手した案件情報のうち、成約見込みの高い案件を厳選して外部協力企業の「アカウント」に向けて一斉配信し、先方から返ってくる提案の中から最適なエンジニアを選ぶというもので、顧客から要件を充たすエンジニアを迅速に手当てできるとの評価を得ております。なお、要件を充たす自社エンジニアが待機状態の場合には、当然に優先してマッチングします。

 上記の通り双方の情報が多いと当然に双方にとって満足度の高いマッチングとなりやすく、各取引先の平均取引期間は16.4ヵ月に及んでおります。


② DXソリューションサービス

イ.概要

 顧客企業のシステム開発案件について、人的リソースの提供に留まらず「成果」までを期待される場合のサービスです。3~5名程度のチームでの対応が中心で所謂受託開発に近い形態ですが、顧客側で開発内容が確定していないケースや開発の途中で仕様変更の必要性が出るケース等にも柔軟に対応することを目的に、準委任契約の形態をとる場合が多くなっております。顧客の属性や案件の内容はITエンジニアリングサービス同様に幅広く、必要とされる技術や知識が多岐に渡る点も同様です。ただし自社エンジニアをメインとしたサービスなので、あらゆるニーズに応えるというよりはエンジニアの空き状況を勘案しながらより条件のよい案件を獲得していく形になります。また、当社が全国各地に開設しているラボ所属のエンジニアは、本サービスで受注した案件の開発に従事しています。


ロ.特徴

(Webアプリケーション部分からITインフラ部分まで)

 ITシステムは、一般的にシステムの基盤となるITインフラ領域及びその基盤で稼働するWebアプリケーション領域に大別されます。特にDX推進を謳うレベルの案件では両方の開発支援が必要な場合も多いですが、それぞれエンジニアに必要な知識や経験が異なるため、当社規模で両方手掛けることは非効率であり、どちらかに注力することが一般的です。

 当社も本サービスの開始時は、ゲームや業務システムを中心としたWebアプリケーション領域を中心に行っていましたが、どのようなシステムもインフラ基盤上に開発されますのでインフラ基盤のご依頼を頂くことも多く、長期的な成長にはITインフラ領域の強化が必須であると判断し、2016年に専門部署を立ち上げ現在に至っています。顧客企業にとっても両方の領域を1社に任せられるのはコストや効率の面で大きなメリットとなります。なお直近のインフラ専門部署においては、国内で主流となっているAWS及びAzureの構築に多くの実績を積んでおります。


(上流工程から下流工程まで)

 IT開発には上流から下流まで様々な工程があります。当社規模では一部の工程に特化する会社も多くありますが、当社では全ての工程を一気通貫で受託することが可能です。これは、当社がこれまで業種や企業規模を限定することなく様々な案件を受託し経験を積み重ねてきた結果であります。


③ 地方人材の活用

 全国に支社やラボを開設しており、これらを介しての地方人材の活用はITエンジニアリングサービス、DXソリューションサービスに共通する特徴となっています。


(支社)

 創業後比較的早い時期より大阪、福岡に支社を開設しました。両支社においては、地元や周辺地域の出身者を中心に採用された両サービスのエンジニア、ITエンジニアリングサービスの営業担当が在籍しています。また、営業担当は周辺地域の顧客開拓を行うのと並行して同地域の外部協力企業の開拓にも注力しております。特に地方の外部協力企業のネットワークは、ITエンジニアリングサービスにおける当社の人材調達能力を支える重要な要素の一つとなっています。


(ラボ)

 2019年より「ラボ」と称する小規模開発拠点を開設(現在8か所)してきました。より地元意識の強いエンジニアを中心に採用し、DXソリューションサービスの開発案件に従事しております。様々な地方での勤務が可能なこと、東京の案件が多く地方でも新しいトレンドに触れられること、複数ラボを横断してチーム編成するケースが多いこと(所謂ニアショアとは異なり東京も地方も同列)、短期の育成プログラムを有することで未・微経験者を積極的に採用できること等から、エンジニア獲得上の優位点となっております。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/03 単独中間実績 1,694 65 63 39

2023/03 単独会社予想 3,669 157 133 81

2022/03 単独実績 3,041 69 67 65

2021/03 単独実績 2,477 -80 -83 -81


2023/03 単独会社予想 66.95 296.63 0.00


上場時発行済株数 1,327,000株(別に潜在株式113,000株)

公開株数 346,600株(公募145,000株、売り出し156,400株、オーバーアロットメント45,200株)

調達資金使途 人材採用費、新規拠点開設、借入金返済


PER:22.4

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:5.2億

公募時時価:20億

​   

【株主構成】 

yoshida investment(株) 代表取締役会長の資産管理会社 550,000 42.47% 180日

吉田悟 代表取締役会長 183,500 14.17% 180日

K&Pパートナーズ2号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド)162,500 12.55% 90日・1.5倍

田口雅教 代表取締役社長兼CEO 145,500 11.24% 180日

MTインベストメント(株) 代表取締役社長の資産管理会社 112,500 8.69% 180日

懸川高幸 取締役兼CFO 48,000 3.71% 180日

小林愛子 執行役員 19,000 1.47%

播口暁 従業員 12,000 0.93%

青木学 従業員 10,500 0.81%

岡良一 従業員 10,500 0.81%


本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人及び貸株人である吉田悟、売出人である田口雅教、当社株主であるyoshida investment株式会社、MTインベストメント株式会社及び株式会社アンドビー、当社役員及び当社株主である懸川高幸、金子正一及び長井宏和は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2023年6月24日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等は除く。)は行わない旨合意しております。

 また、売出人であるK&Pパートナーズ2号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2023年3月26日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、及びその価格が「第1 募集要項」の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う売却等は除く。)は行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 田口 雅教(上場時41歳1カ月)/1981年生

本店所在地 東京都渋谷区渋谷

設立年 2011年

従業員数 173人 (2022/10/31現在)(平均34.3歳、年収444.2万円)

事業内容 地方人財を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)推進支援など

URL https://www.b-tm.co.jp/

株主数 9人 (目論見書より)

資本金 42,672,000円 (2022/11/25現在)

代表者生年月日 1981年11月26日生まれ

代表者略歴

2004年04月 衆議院議員津村啓介事務所 入所

2006年06月 レバレジーズ株式会社 入社

2012年01月 当社入社

2014年12月 当社取締役就任

2020年06月 当社代表取締役社長兼CEO就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 岡三 - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 東海東京 - -

引受証券 東洋 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 極東 - -

引受証券 Jトラストグローバル - -

引受証券 松井 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 水戸 - -

引受証券 楽天 - -


【参考類似企業】今期予想PER(12/2)

3916 DIT 19.0倍 (連結予想)

4491 Cマネジメント 10.0倍 (連結予想)

6199 セラク 16.4倍 (連結予想)

6554 エスユーエス 14.8倍 (連結予想)

7060 ギークス 34.2倍 (連結予想)

7352 Bエンジニア 94.3倍 (連結予想)

7361 HCH 11.1倍 (連結予想)

7379 サーキュ 36.2倍 (単独予想)

9246 プロジェクC 58.8倍 (連結予想)

9558 ジャパニアス21.5倍 (単独見込)

9702 アイエスビー 10.5倍 (連結予想)

9753 IXナレッジ 8.9倍 (単独予想)


【私見】

 地方人財を活用したDX推進支援ということで、業種としては面白さはあるものの、岡三主幹事でインパクトが弱い銘柄です。売上の伸びは良いものの、利益規模は物足りなさを感じ、PERも成長性がもう一段ないと上は狙えないかもしれません。規模は小さく、VCも1.5倍でロックが外れるVCは1社なので気になるほどではありませんが、上がるには物足りなさを感じます。


想定価額:1350円

仮条件上限:1500円

初値予想:2000円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

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