2022年12月8日木曜日

IPO分析(サンクゼール)

 【事業内容】

​ 「Country Comfort~田舎の豊かさ、心地よさ~」をコンセプトにワイン、ジャム、パスタソースなどの商品を取り扱う「サンクゼール」ブランドと「ザ・ジャパニーズ・グルメストア」をコンセプトに全国のうまいもの、こだわりの食材を取り扱う「久世福商店」、及び米国を中心としたグローバル展開を目的とする「Kuze Fuku & Sons」の3つの商品ブランドを持ち、日本全国に155店舗(2022年10月末時点)の自社店舗(直営54店舗、FC101店舗)を有する食のSPAを展開する食品製造販売事業を行っております。また、自社店舗(FC含む)以外にも、大手食品卸企業や小売企業に対する卸販売、自社サイト及び楽天サイトを通じたEC事業、地方の生産者と消費者をつなぐオンラインマーケットプレイス、そして米国を中心とする海外など、様々なチャネルを通じて製商品の販売を行っております。

 事業の特徴は、製商品の企画・開発、調達・製造、店舗設計、販売までのプロセスを自社グループで制御することができる点にあり、製品提供の重要なプロセスを企業として備えている点であります。重要なプロセスを一気通貫で手掛けることにより、ブランド、製商品、店舗内装、店舗スタッフなどの店舗運営に必要な要素全てを共通の世界観の元で構築することができ、当社グループ独自のグロッサリーストア(食料品店)を作り上げることができております。

 商品は、その約80%は当社グループの製商品開発部門が企画・開発した製商品であり、各ブランドのコンセプトを体現した独自性のある製商品となっております。また、各店舗に置かれる製商品点数は、小規模店舗で600アイテム以上、大型店舗で1,200アイテム以上に及び、そのどれもが中身のおいしさ、購買者の意欲をそそるネーミング、パッケージデザインにおいてオリジナリティ溢れる商品であります。多種にわたる製商品を1つの店舗に置くために、当社グループ工場及び協力メーカー工場では、多品種少量生産に適した生産体制を構築し、各店舗からのきめ細かな発注に応えられるようになっております。このようなきめ細かな生産体制をとることにより、消費者の需要に合わせたこまめな生産調整を可能とし、必要な製商品を必要な量だけ作ることで、1つの店舗に無駄なく大量の製商品点数を陳列することが実現でき、独自性のあるグロッサリーストアを作り上げることができております。


 当社グループ事業のバリューチェーンにおける特徴は以下の通りです。

1. オリジナリティ溢れるブランド

 「サンクゼール」、「久世福商店」及び「Kuze Fuku & Sons」の3つのブランドを展開しております。「サンクゼール」は、ジャム、パスタソース、ワインなどの洋食材を中心とするブランドであり、「久世福商店」は大正時代の商店をイメージした和食材のブランドであります。また、「Kuze Fuku & Sons」は、米国を中心とするグローバル展開を目的として開発された、米国メインストリームと和食のそれぞれの良さをハイブリッドした食材ブランドであります。取り扱う商品の特性に応じて、ブランドコンセプトを明確に分けており、和・洋両方の食品を異なるブランドで展開することにより、幅広い消費者に商品を提供することができております。


 各ブランドのコンセプトと特徴は以下の通りです。

サンクゼール

 創業者である久世良三がペンションを営んでいた頃に朝食のために作っていた手作りジャムが当ブランドの原点となっております。その後、創業者がフランスの田舎を訪れたときに感じたイメージを基に、「Country Comfort(田舎の豊かさ、心地よさ)」をコンセプトとして、長野県上水内郡飯綱町に製造工場とワイナリー、レストラン、売店を備えた「サンクゼールの丘」を作り上げ、現在の「サンクゼール」ブランドが形作られていきました。主要な取扱商品は、自社製造のワイン、ジャム、パスタソース、ドレッシングなどであり、豊かな食卓を彩る商品を取り揃えております。


久世福商店

 創業者の父であり、食品卸問屋を営んでいた久世福松氏がブランド名の語源であります。単に商品の魅力だけでなく、生産者の人柄まで掘り下げることによって、独自性の高い商品を開発しております。各地の食品メーカーによるOEM商品が多くを占めていますが、ほとんどの商品に久世福商店のオリジナルパッケージを付けております。各商品の素材選定や味付けを当社と各メーカーとの共同開発により行っており、高品質でおいしいと感じられる商品に仕上げることができております。

 米国子会社であるSt.Cousair,Inc.で作った商品を久世福商店のブランドとして、米国内及び日本国内で展開するために、米国発の第3の商品ブランドとして誕生いたしました。創業者の父、久世福松氏の名を冠した久世福商店に始まり、その息子たちが米国に進出し、日本人としてのアイデンティティを大切にしながら米国マーケットのみならず世界中に展開していくことをビジョンに掲げております。ブランド名にはこのような「親から子へ」脈々と受け継がれていく想いが込められております。主要な取扱商品は、St. Cousair, Inc.で作られるドリンクベース、飲む酢、ドレッシング、ジャムに加えて、日本から輸入する自社製品及び仕入商品であります。


2. 独自性の高い商品開発力

 「サンクゼール」、「久世福商品」及び「Kuze Fuku & Sons」の3つのブランドコンセプトに基づいて、自社グループ工場で製造した製品やOEMメーカーから仕入れた商品を独自性の高い商品に仕上げる商品の企画・開発力を有しております。当社グループは、「サンクゼール」、「久世福商店」及び「Kuze Fuku & Sons」のブランドごとに組織を分けており、各ブランドの商品開発チームが新商品の開発及び定番商品の改良の検討を行っております。商品の開発・改良に当たっては、当社グループが有する自社店舗を通じて、日々お客様と接する中で聞いているお客様の「声」を収集し、これを商品の開発・改良プロセスに反映することによって、お客様のニーズに合致した商品を開発することが可能となります。このように日本全国の自社店舗を通じてマーケティングを行い、その結果を商品開発に反映することで商品の成功可能性を高められることが当社の強みであります。


3. 日米の自社製造拠点

 長野県上水内郡飯綱町及び信濃町に有する国内工場の他、米国子会社であるSt.Cusair, Inc.が所在する米国オレゴン州の海外工場で製品を製造しております。


・国内工場(株式会社サンクゼール 長野県上水内郡飯綱町及び信濃町)

 飯綱町の製造工場では、主にジャム、パスタソース、ドレッシングなどの食品を製造しております。また、同一エリア内に設置された自社ワイナリーでは、国内外及び近隣の農家から仕入れた果実を原料とするワイン、シードルの製造を行っております。さらに、飯綱町との取り組みを通じて、飯綱町の特産品であるりんごを使用したブランデーの蒸留を行っております。飯綱町のりんごの特徴でもある豊かな風味と芳醇な甘みを感じることができるブランデーとして、「いいづなアップルブランデー」という商品名で2017年より製造を開始しております。なお、信濃町の製造工場では、ジェラートを製造しております。


・海外工場(St.Cousair, Inc.、米国オレゴン州)

 2017年4月に米国オレゴン州の食品加工工場を買収し、米国子会社St. Cousair Oregon Orchards, Inc.(現St.Cousair, Inc.)を設立いたしました。オレゴン州は大規模な災害が少なく、年間を通して寒暖差が大きいことから、世界有数のベリー系果実原料の産地となっております。米国オレゴン州に工場を設置することにより、新鮮で高品質な果実原料を安価に調達することができ、当社グループの商品の品質向上及びコストメリットを生み出すことができております。また、2017年の同工場取得時にUSDAによるオーガニック認証を取得しており、以降は毎年当該認証を更新しております。当該認証を保持することで、USDAオーガニックのロゴの使用許諾とともに、USDAオーガニックの基準に基づく商品の製造・販売を行うことができます。オーガニック原料を使用したオーガニック製品を製造することが可能な点も当社グループにおける強みの1つであります。


4. 日本全国の仕入商品メーカーとのネットワーク

 日本全国の500社を超える食品メーカーとのネットワークを有しております。各食品メーカーは、それぞれの地域に根差した独自性の高い商品を展開しており、それらの商品に当社グループが持つ「サンクゼール」及び「久世福商店」の両ブランドのエッセンスを加えることで、独自性の高い商品を開発することができております。当社グループにとっては、各食品メーカーの協力を得て、付加価値の高い商品を開発できる利点がある一方、地方に拠点を有する食品メーカーにとっては、当社グループの店舗を通じて、全国各地に商品を流通させることができるという利点があります。


5. 自社小売店舗での販売

 日本国内において直営及びフランチャイズ・チェーン(FC)での自社小売店舗を有しております。


・本店(直営)

 長野県飯綱町の本社エリアには、サンクゼール及び久世福商店の本店があります。エリア内には、レストランやイングリッシュガーデンが所在しており、長野県飯綱町を見渡せる小高い丘の頂上に位置していることから、「サンクゼールの丘」と親しみを込めて呼ばれており、毎年、近隣住民や観光客が多く訪れる場所になっております。


・直営店舗

 店舗設備投資を実施し、当社グループの従業員が店舗を運営する形態であります。なお、直営店舗の中には、店舗運営業務のみを外部に委託する「OFC」という形態の店舗も含まれております。


・フランチャイズ・チェーン(FC)店舗

 FC加盟企業と締結するパートナーシップ契約に基づき、店舗設備投資及び店舗スタッフの人件費を含む店舗運営に関わる全ての費用をFC加盟企業の負担により運営する形態であります。当社グループは、当社グループのブランド使用権及び本部サービス提供に対し、各FC加盟企業からロイヤリティ収入を収受しております。


6.EC

 自社公式ECサイト及び楽天市場サイトで販売するほか、全国各地の生産者及び食品メーカーと消費者を直接結び付けるオンラインマーケットプレイス「旅する久世福e商店」の運営を行っております。


 (自社公式ECサイト及び楽天市場サイトでの販売)

 自社で構築したオンラインショップに加え、楽天市場へ出店しております。EC事業のデジタルマーケティングチームは、メルマガ、SNS及びニュースリリースを活用したマーケティングを行い、オンラインショップへの流入客数の増加に取り組んでおります。また、直営店舗及びFC店舗のリアル店舗と連携し、サンクゼール・久世福商店公式アプリを利用した販売促進を行っております。アプリ会員に対してリアル店舗で実施する販促キャンペーン情報を定期配信し、リアル店舗への集客を高める取り組みを行っております。


(旅する久世福e商店)

 2020年10月より、全国各地の生産者及びメーカーと消費者が直接商品の売買を行えるオンラインマーケットプレイス「旅する久世福e商店」の運営を行っております。生産者及びメーカーは、それぞれが当社が開発したECサイトシステムにより自社ECサイトを構築し、同じく当社が開発したECプラットフォーム「旅する久世福e商店」に出店する形でオンラインマーケットに参加します。一方、消費者は、「旅する久世福e商店」に出店している生産者及びメーカーのそれぞれのECサイトを訪問し、好みの商品をマーケットプレイス上で購入すると、当該生産者及びメーカーから直接消費者の元へ購入した商品が届きます。その際、当社は、生産者及びメーカーの売上金額に対して販売手数料を収受いたします。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2023/03 連結中間実績 8,127 667 684 461

2023/03 連結会社予想 16,938 1,333 1,314 942

2022/03 連結実績 14,165 1,316 1,322 939

2021/03 連結実績 10,859 419 578 268


決算期 種別 EPS BPS 配当

2023/03 連結会社予想 118.16 - 33.00


上場時発行済株数 8,840,000株(別に潜在株式543,000株)

公開株数 3,001,500株(公募1,200,000株、売り出し1,410,000株、オーバーアロットメント391,500株)

調達資金使途 新規出店などの設備投資、新店開業敷金・運転資金、人件費、マーケティング関連、借入金の返済・社債の償還


 売出しを行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


PER:15.2

PBR:

配当利回り:1.8%


公募時吸い上げ資金:54.0億

公募時時価:159億

​   

【株主構成】 以下180日

久世良三 代表取締役会長など 2,400,000 29.33%

(株)Joseph’s Arrows Trust 役員らが議決権の過半数を所有する会社 1,340,400 16.38%

久世良太 代表取締役社長など 1,200,000 14.66%

久世直樹 代表取締役社長の血族、取締役など 1,000,000 12.22%

ABRAHAM’s WAY FOUNDATION,LLC 役員らが議決権の過半数を所有する会社 839,600 10.26%

久世まゆみ 代表取締役社長の血族 520,000 6.35%

サンクゼールパートナー持株会 特別利害関係者など 340,000 4.15%

山田保和 特別利害関係者など 24,000 0.29%

河原誠一 取締役など 20,000 0.24%

神田秀仁 取締役など 16,000 0.20%

山口幸枝 取締役など 16,000 0.20%

野村直生 従業員、関係会社の取締役 16,000 0.20%


本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、貸株人かつ売出人である久世良三、売出人である久世良太及び久世直樹、当社株主である株式会社Joseph’s Arrows Trust、ABRAHAM'S WAY FOUNDATION, LLC、久世まゆみ及びサンクゼールパートナー持株会並びに当社新株予約権者である河原誠一、神田秀仁、山口幸枝、野村直生、櫻井貴史、後藤祐次、今村英明、山本義博、阿久津正志、野村京平及びその他1名は、SMBC日興証券株式会社(以下「主幹事会社」という。)に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2023年6月18日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

 当社新株予約権者である山田保和、三浦秀一、尾島哲、リュウゲツ、株式会社イートスタイル、塩入寛之、橋口誠、内山貴史、早川修、田中美紀、森朝子、中村亮介、池田倫司、宮本卓治、関塚智恵、武井高、大槻尚輝、小林繁一、山川誠一、酒井祐美子、市川雄太、百瀬奈穂、酒井真央、Luu,Minh Thu、吉谷繁、小出祐資、久川裕加里、谷利千恵子、戸津英将、細谷貴之、東義浩、麻場大輔、遠山奈々、関良太、中山正男、冨岡伸一、小幡実希、宮野伸太朗、井上聡一郎、東幸生、角谷佳治、横澤悠太、株式会社ワイズ、株式会社アイズカンパニー、株式会社タカヤ、株式会社eatabell及びハマヤ株式会社は、主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しに係る元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2023年3月20日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。​


【代表者】

代表者名 久世 良太(上場時45歳9カ月)/1977年生

本店所在地 長野県上水内郡飯綱町大字芋川

設立年 1982年

従業員数 231人 (2022/09/30現在)(平均37.2歳、年収475.4万円)、連結258人

事業内容 久世福商店などの自社ブランドを中心とした加工食品を直営、FC(フランチャイズ)、ホールセール、EC(電子商取引)およびグローバルの複数の販売チャネルを通して販売する食品製造販売業

URL https://www.stcousair.co.jp

株主数 7人 (目論見書より)

資本金 126,299,000円 (2022/11/17現在)

代表者生年月日 1977年03月15日生まれ

2002年04月 セイコーエプソン株式会社 入社

2005年04月 株式会社斑尾高原農場(現当社) 入社

2008年08月 当社 取締役経営サポート本部 本部長

2011年08月 当社 専務取締役

2012年06月 当社 代表取締役専務

2013年06月 有限会社斑尾高原農場 代表取締役

2017年03月 St.Cousair Oregon Orchards, Inc.(現 St.Cousair,Inc.) 取締役、5月 株式会社斑尾高原農場 代表取締役社長 (現任)

2018年06月 当社 代表取締役社長(現任)、St.Cousair Oregon Orchards, Inc.(現 St.Cousair,Inc.) 非常勤取締役(現 任)


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

引受証券 野村 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 岡三 - -

引受証券 八十二 - -

引受証券 松井 - -

引受証券 楽天 - -


【参考類似企業】今期予想PER(11/25)

2294 柿安本店 11.1倍 (連結予想)

2804 ブルドック 41.6倍 (連結予想)

2805 エスビー 12.2倍 (連結予想)

2810 ハウス食G 24.8倍 (連結予想)

2818 ピエトロ - (連結予想)

2830 アヲハタ 80.4倍 (連結予想)

2910 ロックフィール 29.0倍 (連結予想)

9259 タカヨシ 16.8倍 (単独予想)

9869 加藤産業 12.3倍 (連結予想)


【私見】

 小売業で、そこそこの知名度はありますが誰もが知っているというほどではなく高い評価はできません、ただし、海外配分があり、海外での評価が高ければ穴的要素もありそうな銘柄です。前期からの売上の伸びは良く、原価高や円安もあり利益が横ばいなことは評価を下がりますが、為替が落ち着けば来期以降に増益になる可能性はあります。VCなしではあるものの吸収金額が大きいことは難点で、静かなスタートであればセカンダリー銘柄になる可能性もあるかと思います。


想定価額:1550円

仮条件上限:1800円

初値予想:2000円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立〜やや強気

総合評価:3.5

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