2022年12月7日水曜日

IPO分析(コーチ・エィ)

 【事業内容】

​ 日本国内及び海外において、コーチング事業を展開しております。コーチング事業は、システミック・コーチングTMによる組織開発ビジネスとコーチング人材育成ビジネスから構成されており、法人クライアントをメインターゲットとしております。 

 従来のコーチングは、「コーチ」と「クライアント(コーチングを受ける人)」の二者の関係を通じて、クライアント個人の理想と言われる能力と、現状とのギャップを示し(「気づきを与える」等)、行動変容を促すことで、理想と現状のギャップを埋め、定めた目標の達成を支援します。また、その目標達成に向けて、行動変容を起こせるような能力開発を行います。具体的には、部門の生産性向上を目標と定めたリーダーに対してコーチングを行う場合、生産性向上に成功しているリーダーのデータをもとに、コーチング対象者に足りない能力は何かを明らかにしていきます。そこから、必要な能力取得に向けての意識や行動についてコーチングすることで、目標達成を目指していきます。

 一方で、当社グループはシステミック・コーチングTMを提供しています。システミックとは、全体を不可分な一体と捉えることを意味します。問題のある部分を見つけて修正するのではなく、全体に働きかけるのが、システミックなアプローチです。組織の中では、様々な領域、階層において、人々が異なる意見や価値観を持ち寄り、互いに影響しあうことによって、様々なアイディアが共創されます。そのため、ある特定の個人をどれだけ強固なリーダーとして能力開発しても、その能力が発揮されるか否かは、周囲との関わり次第です。当社では「リーダー開発」と「組織開発」は本来不可分なもので、両者は同時に開発されていくことが自然であると捉えています。個人の能力開発だけでなく、周囲と「どう関わっていくか」という関係性までを扱うコーチングとして、システミック・コーチングTMを提供しています。具体的には、部門の生産性向上を目標と定めたリーダーにコーチングを行う場合、従来のコーチングに加え、部下や部下間、他部門との関係などの関係性に関するテーマを多く扱うことで、コーチング対象者を起点に組織全体に新たな対話を起こします。その対話から生まれるアイディアや部門間のコラボレーションによって、リーダーとしての能力及び部門や組織のパフォーマンスが向上し、目標達成を目指します。

 システミック・コーチングTMは、組織開発に向けたコーチングであるため、組織内にヒエラルキーや部門間の隔たりが存在する事で生じる、コミュニケーションの減少や生産性の低下等の課題を潜在的に持つ企業が主なクライアント企業となります。


システミック・コーチングTMには4つの特徴があります。

 1つ目は、「リザルト・フォーカスト」です。

組織にどのような変化を起こすかを、具体的な目標として定め、それを達成する事を指します。システミック・コーチングTMでは、組織変革が起きた結果生まれるビジネスインパクトを重要視します。

 2つ目は、「プロセス・オリエンテッド」です。リーダーとその周囲のキーパーソンの間の対話をベースにした関係性を重要視する事を指します。システミック・コーチングTMでは、リーダーと周囲のキーパーソンに新たな対話を起こし、目標やビジネスインパクト、周囲との関係性を再構築させながら、組織変革を実現し、目標達成を目指します。

 3つ目は、「エビデンス・ベースト」です。

組織の変化を客観的なデータによって測定し明らかにすることを指します。専従のリサーチ・アナリストを擁するコーチング研究所と自社開発のリサーチツールにより、周囲との新たな関わりや目標に対する成果を測定・可視化します。そのデータに基づいて、システミック・コーチングTMのアプローチを更新・修正し、組織変革による目標達成を目指します。

 4つ目は「チームベースド・コーチング」です。

顧客企業ごとにプロジェクトチームを組成し、1人だけではなく複数人に同時にコーチングを提供することです。当社は、正社員として雇用したコーチを、国際コーチング連盟の認定資格や一般財団法人生涯学習開発財団の認定資格者になるよう育成し、「チームベースド・コーチング」を実現しています。一般的なコーチングとは異なり、チームで組織の課題や変化を共有し、コーチ同士のコミュニケーションによって顧客企業に最適化されたコーチングを提供します。


 システミック・コーチングTMによる組織開発ビジネスとコーチング人材育成ビジネスの2つのビジネスから構成され、エグゼクティブ・コーチング(EC)及びDriving Corporate Dynamism (DCD)を中心としたシステミック・コーチングTMによる組織開発ビジネスを主要事業ドメインとしており、上場企業が主な取引先となっております。主要なサービスは以下のとおりであり、企業の組織階層に合わせたサービスを提供しております。なお、全てのサービスはオンラインでの提供が可能となっております。


a.エグゼクティブ・コーチング (EC)

 ECとは、取締役、CXO等のトップマネジメント層を対象に、目指す組織変革や成長を促進するために、エグゼクティブ・コーチとの1対1のコーチングを提供するサービスです。エグゼクティブが起点となって組織変革を行うために、下図のとおりにエグゼクティブとコーチとの間に問いを置き、進行します。

  本サービスの特徴は、クライアント企業の組織の変革に最適化されたコンテンツとフィードバックです。当社は、システミック・コーチングTMに基づき、エグゼクティブのリーダーシップの洗練と組織全体の変革に向けて、当社のエグゼクティブ・コーチが培ってきた経験から、クライアント企業に最適化された問いやコンテンツを開発・アップデートし続けています。またフィードバックでは、コーチのフィードバックに加え、多様な独自のアセスメントやツールを用いて、システミック・コーチングTMをベースとしたフィードバックを提供しています。主なアセスメントとしては、エグゼクティブのリーダーシップを棚卸する「360度リーダーシップアセスメント」、コーチによるキーパーソンへのインタビュー「キーパーソンインタビュー」、エグゼクティブとコーチが協同で設問設計し、エグゼクティブのテーマをより明確化したオリジナルのアンケート「ブーメラン」等があります。


b.Dialogue Activation for Innovative Business Execution (DAIBE)

 DAIBEとは、経営チームを対象とした対話型ワークショップとアセスメントを用いて、トップの実現したい経営チームを創ることを支援するサービスです。本サービスは1対1のコーチングを提供するECとは異なり、経営チーム全体を対象としたワークショップです。下図のとおり、経営チームメンバーに向けた6回のワークショップ、トップとのワークショップ振り返り面談、当社独自のアセスメント「DAIBE Assessment」の3つの要素で構成されています。ワークショップでは、当社のコーチによるファシリテーションのもと、経営チーム全員でテーマに基づいた対話を行います。「DAIBE Assessment」では、経営チームメンバー間の関係性、リーダーシップ、コミュニケーションの現状を可視化します。

 本サービスの特徴は、システミック・コーチングTMに基づき、組織変革の鍵である経営チームの「関係性」にアプローチし、組織の全体に持続的な変革を実現することです。ワークショップとアセスメントを通じて、経営チームに対話を起こし、経営チームの一体感を醸成します。経営チーム内の関係性の変容を促進し、対話を活性化させる事で、未来を共創するコラボレイティブな経営チームを構築します。


c. Driving Corporate Dynamism (DCD)

 DCDとは、主に組織のミドルマネジメント層を対象に、1対1のコーチによるコーチングセッションと、クラスコーチと複数参加者によるオンラインクラス形式のコーチング学習を通じて、組織変革に向けリーダーとして周囲のパフォーマンスを向上させるためにコーチングを実践活用できるよう支援するサービスです。


上記に向けて、本サービスは下図のとおり進行します。

①「ステークホルダーへのコーチング」では、DCD受講者がステークホルダー(組織変革のキーパーソンとなる次世代リーダー)をリーダーとして開発するために、コーチングを実践します。②「当社コーチとのコーチング」では、DCD受講者が行うステークホルダーへのコーチングや関係性を主なテーマとして、当社のコーチがDCD受講者に対して1対1のコーチングを行います。そこで、コーチングの学びと実践について継続的にフィードバックを受けます。③「オンラインクラスへの参加」では、オンライン形式で、当社のコーチのファシリテーションのもと、組織変革やリーダー開発に関する重要なテーマや対話について、様々なバックグラウンドを持つ他社のリーダーと共に学習します。④「アセスメント」では、これら3つのプロセスから起こるDCD受講者とステークホルダーの変化を、当社独自のアセスメントで可視化し、フィードバックします。


  本サービスの特徴は、「体験学習」というアプローチです。「体験学習」とは、実践を繰り返す中で能力を開発していくアプローチです。DCDではこの手法を用いて、研修やトレーニングのように講師が技法を伝えるのではなく、学習者が実践を通じてコーチングを習得していくことを促します。

 これらのプロセスや特徴は、システミック・コーチングTMに基づき、DCD受講者とステークホルダーが組織の中で多くの人と対話を起こすように設計しており、サービスを通じて、組織変革を加速させることを実現します。


d. 3分間コーチ

 3分間コーチとは、全社員を対象に、「Webアンケート」、「ワークショップ」、「フォローアップ」の3つのプロセスを通じて、参加者がクライアント企業の組織内で対話を起こし、組織変革を加速させるサービスです。

 「Webアンケート」とは、コミュニケーションの特徴を可視化するアセスメントで、ワークショップで扱います。「ワークショップ」では、コーチのファシリテーションのもと、最大24名の参加者をランダムで2人から3人組に分け、すぐに実践できる3分間の様々なコーチング・エクササイズを行います。「フォローアップ」では、3ヵ月間、参加者にリーダーの行動促進に役立つ情報をメールで配信し、知識とスキルを定着させます。

 

e. コーチ・エィ アカデミア

 組織で働くコーチングを学びたい個人を主な対象として、1対1のコーチによるコーチングセッションと、クラスコーチと複数参加者によるオンラインクラス形式のコーチング学習を通じて、基本的なコーチングスキルだけではなく、コーチング型マネジメントがなぜ機能するのか(理論)、具体的かつ効果的な活用の仕方を継続的に学ぶ、実践的・体系的なプログラムです。

 本サービスは、下図のとおり、3つのプロセスで構成されております。「理解」では、オンライン形式のクラス・トレーニングで、職種や役職、世代を超えた様々な立場の受講者同士が、コーチングスキルについて共に学びます。海外からの受講者も交え、ダイバーシティを備えたクラスを実現しています。クラスでは、インプットのみによる一方通行の学習ではなく、ディスカッションやロールプレイ等アウトプットの機会を重視した「双方向」の学習アプローチを導入しています。「実践」では、オンラインクラスで学んだコーチングスキルなどを、アウトプットとして周囲にコーチングを実践します。実践を行うことで得た課題や学びを、オンラインクラスや1対1のコーチングで扱い、学習を促進していきます。「コーチングを受ける」では、アカデミア受講者一人ひとりにコーチがつき、受講者は目標達成と学習促進に向けたコーチングを受けます。コーチから継続的にコーチングやフィードバックを受けることで、目標達成やコーチ力の向上を実現します。なお、本サービスは「リーダー向けコース」と「プレミアムコース」に分かれており、「プレミアムコース」は「リーダー向けコース」に比べてオンラインクラスの内容、1対1コーチング回数が多くなっております。


 f. Core Essential Program (CEP)/ Core Essential Fast Track Program (CEFTP)

 プロのコーチを目指す個人を対象に、COACH U, INC.が提供するコーチング学習サービスです。使用するマテリアルやクラスは英語にて実施されており、クラス・トレーニングは、オンライン形式で行います。CEPでは、15か月間にわたりプロのコーチに必要なコーチングスキルを様々な地域の受講者と学びます。一方CEFTPは、6日間の実践型及び体験型のワークショップを中心に、短期集中型でコーチングを学びます。これらのサービスの特徴は、「最先端の情報とツール」、「指導するコーチの品質の高さ」です。COACH U, INC.では、25年にわたり、コーチングモデルやアセスメントツールを研究・開発しています。指導するコーチ陣は、国際コーチング連盟のコーチ資格を保有しており、豊富な経験と高いクオリティを備えています。世界で活躍するコーチ陣が、長い歴史の中で培ってきた最先端技術や研究を用いて指導する事で、実践的かつ効果的な学習サービスの提供を実現しています。またこれらのサービスは、世界各地で、英語で提供されており、国籍を越えて様々な文化や背景を持つ受講者とともに学ぶことができます。なお、これらのサービスも、国際コーチング連盟により、「ACTP 」と認定されたプログラムとなります。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2022/12 連結3Q累計実績 2,651 493 584 478

2022/12 連結会社予想 3,541 463 499 383

2021/12 連結実績 3,306 361 416 245

2020/12 連結実績 2,432 -381 -395 -299


決算期 種別 EPS BPS 配当

2022/12 連結会社予想 218.13 - 18.00


上場時発行済株数 2,192,400株

公開株数 839,500株(公募450,000株、売り出し280,000株、オーバーアロットメント109,500株)


PER:8.4

PBR:

配当利回り:0.98%

公募時吸い上げ資金:15.4億

公募時時価:40億

​   

【株主構成】 以下180日

(株)伊藤ホールディングス 役員らが議決権の過半数を所有する会社 1,436,000 82.42%

伊藤守 取締役 94,800 5.44%

伊藤光太郎 取締役の血族、従業員 63,200 3.63%

コーチ・エィ社員持株会 特別利害関係者など 52,400 3.01%

鈴木義幸 代表取締役社長執行役員 20,000 1.15%

栗本渉 取締役副社長執行役員など 10,000 0.57%

纐纈順史 取締役執行役員CFOなど 10,000 0.57%

片岡詳子 取締役(監査等委員) 10,000 0.57%

桜井一紀 執行役員 9,400 0.54%

エムアンドカンパニー(同) 特別利害関係者など 9,400 0.54%


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人及び売出人である株式会社伊藤ホールディングス、当社株主である伊藤守、伊藤光太郎、コーチ・エィ社員持株会、鈴木義幸、栗本渉、纐纈順史、片岡詳子、桜井一紀、市毛智雄、青木美知子、稲川由太郎、清水達也、片桐多佳子、戸田ちえ子、篠口恵美子、後藤淑子、石渡理恵子、平野圭子、丹羽陽子、森直子、内村創、望月寛及び長田祐典は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2023年6月19日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨合意しております。

 また、当社は主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2023年6月19日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の発行、当社普通株式に転換若しくは交換される有価証券の発行又は当社普通株式を取得若しくは受領する権利を付与された有価証券の発行等(ただし、本募集、株式分割、ストック・オプションとしての新株予約権の発行、譲渡制限付株式報酬にかかわる発行及びオーバーアロットメントによる売出しに関連し、2022年11月17日開催の当社取締役会において決議された主幹事会社を割当先とする第三者割当増資等を除く。)を行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 鈴木 義幸(上場時55歳1カ月)/1967年生

本店所在地 東京都千代田区九段南

設立年 2001年

従業員数 136人 (2022/10/31現在)(平均38.4歳、年収880.3万円)、連結148人

事業内容 コーチングによる組織開発事業およびコーチング人材育成事業

URL https://www.coacha.com/

株主数 31人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (2022/11/17現在)

代表者生年月日 1967年11月11日生まれ

代表者略歴

1991年04月 株式会社マッキャンエリクソン博報堂(現株式会社マッキャンエリクソン) 入社

1996年07月 株式会社アイ.ビー.ディー 入社

1997年10月 株式会社コーチ・トゥエンティワン 取締役副社長

2001年10月 当社 取締役副社長

2007年01月 当社 取締役社長

2018年01月 当社 代表取締役社長(現任)

2020年01月 当社 社長執行役員(現任)


【幹事団】

主幹事証券 野村 657,000 90.00%

引受証券 みずほ 21,900 3.00%

引受証券 楽天 21,900 3.00%

引受証券 SBI 7,300 1.00%

引受証券 岡三 7,300 1.00%

引受証券 丸三 7,300 1.00%

引受証券 松井 7,300 1.00%


【参考類似企業】今期予想PER(11/24)

2170 LINK&M 37.7倍 (連結予想) 時価700憶

2464 BBT 6.4倍 (連結予想)

6200 インソース 105.4倍 (連結予想)

7043 アルー 14.4倍 (連結予想)

7049 識学 - (連結予想)

7367 セルム 17.7倍 (連結予想)

9562 ビジコーチ 14.8倍 (単独予想)

9610 ウィルソンWLW - (連結予想)


【私見】

 コーチング事業ということで、類似業種の上場は今年は多く、大きな優位性はなさそうです。業績は伸びていて、PERも低めの業界の中でも低く割安感を感じます。VCなしで売り要素はないのですが、時価総額の割には吸収金額はあるので、静かなスタートになるかもしれません。


想定価額:1570円

仮条件上限:1840円

初値予想:2500円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:3.5

0 件のコメント:

コメントを投稿