2022年12月9日金曜日

IPO分析(エージェント・インシュアランス・グループ)

 【事業内容】

(1)国内事業について

①事業概要

 国内の個人及び法人に向けて損害保険・生命保険を販売する保険代理店事業です。保険会社はあらゆる保険商品を作るメーカーとしての役割を担う中、当社及び国内子会社は保険代理店として保険会社が作る数多くの商品から、お客様のニーズにあった商品を第三者の立場で選択し、販売する役割を担っております。子会社である株式会社保険ショップエージェントにおいても同様の役割を担っておりますが、九州エリアにおける当社グループのさらなる経営基盤の構築を目的に事業を行っております。

 合計37社(損害保険会社10社・生命保険会社27社)、国内子会社である株式会社保険ショップエージェントは合計13社(損害保険会社4社・生命保険会社9社)の保険会社と保険代理店契約を締結しており、個人のお客様に対しては、ライフスタイルやライフプランに応じた保険コンサルティングサービスを、法人のお客様に対しては、財務状況や法人リスクに応じた保険コンサルティングサービスを提供しております。

  また、当社は日本全国に19ヶ所の拠点を設置、国内子会社の保険ショップエージェントは1ヶ所に拠点を設置しており、ストック型ビジネスである損害保険を中心とした訪問営業を主軸としておりますが、近年ではオンラインを活用した提案機会も多くなってきております。

 

②保険代理店支援プラットフォーム

 保険募集人が「パートナー社員」もしくは「勤務型代理店」として合流する方式と、当該中小保険代理店が管理する保険契約に係る保険代理店としての地位を当社が一括で承継する方式があります。

 「パートナー社員」は当社との間で雇用関係にあり、当社のコア社員(正社員、嘱託社員、パートタイマー社員)と同様に当社が取扱う生命保険商品及び損害保険商品を取扱うことができます。一方、「勤務型代理店」は保険募集人1名の個人代理店としての登録であるため、生命保険については複数保険会社の取扱いはできず1社のみ、損害保険については保険会社と委託契約書を結ぶことで複数社の商品を取り扱うことができます(保険業法第282条により、原則生命保険募集人は他の生命保険会社から保険募集の委託を受けられないという制限があります。一方、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして政令で定める場合には例外として複数社取扱うことを保険業法第282条第3項にて認めており、当社はそれに準じています)。「勤務型代理店」は当社との間で雇用関係はないものの、当社が「統括代理店」として、従来は保険会社が担っていた「勤務型代理店」の教育・指導・管理を行います。

 「パートナー社員」に対しては、個別の雇用契約に基づいた固定給と、実績に応じた報酬割合に基づく変動給の2種類の報酬を支払います。一方、「勤務型代理店」に対しては、活動実績に応じて保険会社より当社がいただいた代理店手数料をもとに、委託契約書に基づいた報酬割合を支払います。

 なお、事業承継で受け入れた保険募集人の人数(パートナー社員・勤務型代理店の合計)は、2018年末で133名、2019年末で186名、2020年末で240名、2021年末で288名と増加しております。コア社員の約2倍の人数が事業承継を通じて当社に合流しています。

 

③収益構造

 損害保険中心のストック型ビジネスを基盤に、生命保険のクロスセルを行うことで事業規模を拡大しております。損害保険の多くは年間契約の1年更新型であることから、契約を獲得した後に更新率を維持することで、継続的で安定した保険料収入が見込めるストック型ビジネスに分類できます。加えて、当社は事業承継によりマーケットを拡大していくことで、継続的にお客様も増加しております。

  一般的に、生命保険は契約初年度手数料が最も大きく、新規の個人・法人向け販売の状況により保険料収入が上下するフロー型ビジネスであることから、新規契約を開拓することが営業の主軸となります。しかし、当社及び国内子会社は損害保険中心のストック型ビジネスの強みを活かし、既存のお客様の契約更新の機会や保全活動の際にお客様が抱えている潜在リスクを見つけ出し、お客様が必要とされるその他損害保険や生命保険のクロスセルも行うことで、安定して収益が伸びております。また、事業承継により合流した損害保険を主軸とした「パートナー社員」「勤務型代理店」のお客様や、既存のお客様からのご紹介により、これまで取扱保険料(年間にお客様から受け取る保険料)のみならず、お客様の数も右肩上がりに伸びております。

 また、保険に加入したら終了ではなく、その後もお客様のライフステージに応じた有益な情報の提供や保険金請求時のサポートまで、継続的なアフターフォローも行っております。


④事業の特徴

a.保険会社からの高い評価

 各保険会社との取引関係も良好であり、東京海上日動火災保険株式会社及び同グループ会社である東京海上日動あんしん生命株式会社からは「優績代理店」として認定を受けております。また、「優績代理店」という評価ではないものの、前年の実績、品質等を踏まえて、複数の保険会社(損害保険会社 6社・生命保険会社 4社)より最上位の手数料ランクに認定いただいております。とりわけ、保険契約者に対するきめ細かなアフターフォローが求められる損害保険においては、保険会社各社が事業承継案件を紹介する際に、受入先となる代理店のクオリティ(保険募集人に対する教育などの業務サポート力、契約継続率、事故対応力等)を重要視する傾向があり、損害保険会社各社から高評価を受けている点で他社よりも優位にあるものと考えております。特に、東京海上日動火災保険株式会社においては、2021年に「TOP QUALITY代理店」最上位ランクに位置する「ロイヤルエクセレント」の認定を受けております。「TOP QUALITY代理店」とは営業成績のみならず、経営理念、組織体制、コンサルティング力、経営の健全性、損害サービス対応力、体制整備、成長性など様々な選考基準をクリアした代理店のみが認定される制度であります。また、同社の「専業代理店年間優績表彰制度」には25年連続入賞を果たし、生命保険・長期第三分野の部(クロスセル部門)では「最優績」の認定を受けております。以上のとおり、当社グループが保険代理店として各保険会社から高い評価を受けていることにより、経営の存続が難しい中小保険代理店の事業承継案件や、事業会社や金融機関との提携案件を保険会社等より多数紹介いただいております。


b.ストック型の収益構造

 損害保険による販売手数料が国内事業全体収入のうち71.2%を占めております(2021年12月期実績)。損害保険は、生命保険と比較した場合、年間契約及び1年更新の契約が多いため、契約更新率を高く維持することにより継続的な手数料収入を見込むことができます。


c.支社展開によるローコストオペレーション

 全国に拠点を展開する上で支店の他に支社も展開しております。支店に付属する形式で支社を展開することで、母体である支店のサテライトオフィスとして、支店よりも少ない人員によるローコストでのオペレーションが可能となりました。2022年10月31日現在、国内20拠点のうち6拠点が支社であります。今後もマーケット規模や人員体制に応じて支社形式での拠点展開を行い、効率的、合理的なオペレーション体制を目指してまいります。


 d.人財育成への取組み

 お客様に最適な保険サービスを提供できる人財の採用・育成にも取り組んでおります。中途採用のみならず、毎年定期的な新卒採用も行い次世代の保険代理店事業を担う人財の確保に努めております。新入社員研修など、入社後の研修も充実しております。2022年度新入社員研修では、約2ヶ月にわたる研修期間にて、企業理念や保険商品、マナーなど幅広い知識の習得に加えて、実際の営業現場にオンライン上で同行するなどの実践研修も実施しました。

 事業承継で合流した「パートナー社員」「勤務型代理店」の育成も行っております。「パートナー社員」並びに「勤務型代理店」の方々に向けて、月1回の勉強会の開催のほか、E-Learningを活用した研修支援等で継続的にサポートしております。また、社内横断型プロジェクト「Project of Partner(PJP)」では、「パートナー社員」「勤務型代理店」の方を「業務品質」と「営業推進」の2軸で支援しており、当社の収益の多くを占める「パートナー社員」「勤務型代理店」のマーケットの深耕にも寄与しております。損害保険を中心に取り扱う「パートナー社員」「勤務型代理店」に生命保険のクロスセルを推進・サポートしてきたことで、当社の生命保険の売上全体に対する「パートナー社員」並びに「勤務型代理店」の売上合計の割合は、2018年には41.4%、2021年には50.3%まで成長しました。


(3)海外事業について

 世界最大の保険マーケットである米国に3つの拠点(カリフォルニア州に2拠点、テキサス州に1拠点)を構え、日系企業、米国駐在員のお客様を中心に保険代理店及び保険ブローカー事業を行っております(海外事業営業収益:149百万円、取扱保険料1,198百万円、社員数7名)。

 米国では、各州で固有の法律において、保険事業を行う上でもそれぞれライセンスを取得しなければならない中、Agent America, Inc.は50州中35州で保険商品を取り扱える強みがあります。そのため、州をまたぐビジネスを行うお客様のニーズにも対応することが可能です。

  なお、海外事業においても、損害保険による手数料収入が海外事業全体の収入のうち86.6%を占めております。国内事業と同様、海外事業においてもストック型ビジネスの収益構造であり、契約更新率を高く維持することによる継続的な手数料収入を見込むことができます。

 また、米国における日系保険代理店においても保険ブローカーの高齢化及び後継人不足が課題となっており、事業承継ビジネスモデルの展開を開始しております。具体的には、対象とする保険ブローカーと完全歩合制の独立請負人契約を結ぶことで(当社グループでは「External Producer」と称しています。2022年10月31日現在、該当者1名)、個人及び法人のお客様へ様々な保険コンサルティングサービスを提供・支援しております。


【業績等】

決算期 種別 営業収益 営業利益 経常利益 純利益

2022/12 連結3Q累計実績 2,447 149 150 88

2022/12 連結会社予想 3,305 228 213 135

2021/12 連結実績 2,905 208 219 155

2020/12 連結実績 2,431 184 183 123


決算期 種別 EPS BPS 配当

2022/12 連結会社予想 68.77 484.66 -


上場時発行済株数 2,316,000株

公開株数 402,500株(公募350,000株、オーバーアロットメント52,500株)

調達資金使途 採用費・人件費、広告宣伝費、支店開設・支店開設に係る活動費など


PER:9.3

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:2.6億

公募時時価:15億

​   

【株主構成】 

住友生命保険(相) その他の関係会社、資本提携先 881,500 44.84% 180日・1.5倍

(株)ザ・ファーストドア 役員らが議決権の過半数を所有する会社 415,600 21.14% 180日

東京海上日動火災保険(株) 資本提携先 196,000 9.97% 180日

川野潤子 特別利害関係者など 66,650 3.39% 180日

一戸敏 代表取締役社長など 44,400 2.26% 180日

高橋真喜子 専務上級執行役員 35,500 1.81% 180日

富野喜幸 特別利害関係者など 35,400 1.80% 180日

東京海上日動あんしん生命保険(株) 資本提携先 35,000 1.78% 180日

篠原敬一 特別利害関係者など 25,000 1.27%

樋口剛 特別利害関係者など 20,300 1.03%


 本募集に関連して、当社株主である住友生命保険相互会社は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2023年6月19日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、当社普通株式の売却価格が本募集における発行価格の1.5倍以上であって、住友生命保険相互会社が保有する当社普通株式数が、731,500株を下回らない範囲で、主幹事会社を通して行う株式会社名古屋証券取引所での売却等を除く。)等は行わない旨合意しております。

 また、貸株人である株式会社ザ・ファーストドア、当社役員及び当社株主である一戸敏及び森山潔並びに当社株主である東京海上日動火災保険株式会社、川野潤子、髙橋真喜子、富野喜幸、東京海上日動あんしん生命保険株式会社、矢田敏皓、中澤一郎、松浦直人及び川本正則は、ロックアップ期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等は除く。)等は行わない旨合意しております。

【代表者】

代表者名 一戸 敏(上場時54歳10カ月)/1968年生

本店所在地 東京都新宿区市谷本村町

設立年 2001年

従業員数 137人 (2022/10/31現在)(平均37.8歳、年収457万円)、連結146人

事業内容 個人および法人向けの保険代理業

URL https://a-gent.co.jp/

株主数 39人 (目論見書より)

資本金 231,264,000円 (2022/10/31現在)

代表者生年月日 1968年02月10日生まれ

代表者略歴

1988年10月 公認会計士渡辺二郎会計事務所入所

1990年07月 税理士大矢靖税務事務所入所

1993年09月 有限会社アドバンスサービスイチノヘ入社

1997年02月 有限会社サンインシュアランスデザイン設立  代表取締役社長就任

2001年06月 株式会社サンインシュアランスデザイン (現・株式会社エージェント・インシュアラン ス・グループ)設立  代表取締役社長就任(現任)

2015年02月 マハロキャピタル株式会社(現・株式会社ザ・フ ァーストドア)設立 代表取締役就任(現任)

2015年11月 Shinseiki Insurance Group,Inc.(現・Agent America, Inc.)Director就任(現任)

2021年04月 株式会社保険ショップエージェント  代表取締役会長就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SBI 297,600 85.03%

引受証券 東海東京 17,500 5.00%

引受証券 岡三 10,500 3.00%

引受証券 極東 7,000 2.00%

引受証券 松井 7,000 2.00%

引受証券 アイザワ 5,200 1.49%

引受証券 岩井コスモ 5,200 1.49%


【参考類似企業】今期予想PER(11/25)

7325 アイリック 34.7倍 (連結予想)

7343 ブロドマイン 9.7倍 (連結予想)

7388 FPパートナー 18.8倍 (単独予想)

8798 アドバンスク 11.9倍 (連結予想)


【私見】

 保険代理店業務で、直近のFPパートナーは上がりましたが、規模的にも名証であることからも通常の業績評価になるかと思います。安定性はあるものの、大きな成長性はなく、PER10倍前後が妥当な位置かと思います。1.5倍までは売り要素はないものの、買い手不在で公募前後の動きでしょう。


想定価額:640円

仮条件上限:640円

初値予想:700円

ブック申し込み度・・・やや弱気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価:2.5

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