2022年12月13日火曜日

IPO分析(ELEMENTS)

 【事業内容】

​(1) 当社グループ概要・グループビジョン

 ビジネスモデルは、主に BtoBtoC になります。一般ユーザーに各種デジタルサービスを提供する事業者に対して、AIクラウド基盤(IoP Cloud)を導入しており、2018年から導入を開始しております。

 「IoP Cloud事業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりませんが、「個人認証」と「個人最適化」の2つのソリューションに区分されております。個人認証ソリューションで「あなたは誰か」を証明し、個人最適化ソリューションで衣食住における「あなただけの服」「あなただけの店舗」「あなただけの居場所」を実現する取り組みを続けております。各ソリューションが提供する事業は以下の通りであります。

 大きな特徴として、サービス提供の過程でユーザーから取得した「ヒト」に関するデータを、ユーザーにサービスを直接提供する事業者ではなく、当社グループが保管している点が、競合他社と異なっていると考えております。日々取得するヒトに関するデータを継続的に機械学習することで、サービス品質の維持・向上に繋げており、導入先サービスにおける離脱率(ユーザーが途中で離脱してしまう割合)の低さに高い評価を得ております。また、当社グループは、事業者の業種・規模を問わず汎用的なサービスを提供するため、導入事業者ごとに多額の開発費用が発生せず、高利益構造となっております。さらには、ユーザーの機微なデータを自社で保管している点から、情報漏洩を防ぐためにセキュリティに積極的な投資をしており、金融機関等が求める高いレベルのセキュリティ要件をクリアしております。以上の3点が、当社グループの競争優位性の源泉になっていると考えております。


(2) 個人認証ソリューション

 生体情報を用いた認証サービスを提供しております。サービスを導入する事業者がユーザーに提供するデジタルサービスの利用件数に応じた従量課金で、対価を受領します。一部の事業者には、パートナー事業者を通じてサービスを提供します。個人認証ソリューションの売上高がグループ全体の7割程度を占めます。具体的な提供サービスは以下の通りであります。


① LIQUID eKYC

 2019年から提供を開始したオンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」は、金融機関の口座開設や通信会社の回線契約時などに必要な「申込者が実在する本人であるかどうか」の確認を行うサービスであり、当社グループの主力サービスとして、個人認証ソリューションの売上高のうち、「LIQUID eKYC」が9割以上を占めます。スマートフォン等で顔写真付きの本人確認書類と自分の顔を撮影して、それらを照合することで、オンライン・非対面で完結する安全でスピーディーな本人確認を実現しております。eKYC は事業者側とユーザーの双方にメリットがある本人確認手段となります。事業者にとっては、本人確認作業を自動化・効率化し、本人確認書類の受領・確認・保管の一連の作業で発生するコストや人的ミスを防ぐことができます。ユーザーにとっては、窓口に足を運ぶ、または、書類をコピーして郵送する、といった手間をかけずに即時に口座開設等を行うことができます。

 2018年11月に犯罪収益移転防止法の改正により、従来窓口または郵送での対面で行っていた本人確認をオンラインで実施することが認められるようになりました。犯収法は犯罪によって得た金銭などを移動させることを防止する法律で、金融機関をはじめとした特定の事業者を対象に本人確認等を義務付けており、マネーロンダリング(資金洗浄)、反社会的勢力などへのテロ行為につながる資金提供を未然に防ぐことを目的としています。従来の窓口や郵送での対面による本人確認は、完了まで時間がかかるという利便性における課題や、成りすましによる不正アクセスや不正利用が発生するリスク面の課題があり、2018年11月に改正されました。また、2020年4月の改正において、郵送を利用する本人確認の要件がさらに厳格化したことから、eKYCの需要はさらに高まっております。

 金融機関においては、口座開設時だけでなく、住所や電話番号、振り込み限度額の変更などユーザーの重要情報変更時の手続きや、口座管理アプリの利用開始時の手続きも、eKYCによりオンライン化する動きが活発化しております。今後も利用シーンは拡大する見込みです。

 さらに、金融機関や通信会社など、犯収法により本人確認業務が求められている業種に留まらず、CtoCのシェアリングサービスやマッチングサービス等、日常生活に欠かせない幅広い業種において、成りすましによる不正を防止しユーザーからの信頼性を高めるニーズが高まっており、導入が進んでおります。

 「LIQUID eKYC」は、KDDI株式会社、株式会社NTTドコモ、株式会社ゆうちょ銀行、三菱UFJ信託銀行株式会社、LINE証券株式会社、株式会社bitFlyerなど業界のリーディングカンパニーとされる事業者に導入いただいております。これらをはじめとする幅広い事業者が運営する各種デジタルサービスを通じて、広くユーザーに提供され、eKYC市場で国内トップシェア となっております。2022年11月期は、140社以上の事業者において、月間100万回強、累計で1,700万回以上 の利用があり、成長が続いております。


② LIQUID Auth

 2022年から提供を開始したオンライン当人認証サービス「LIQUID Auth」は、ネットバンキング、ECサイト、オンライン試験などの幅広い場面において、導入事業者が運営するサービスのユーザーが「登録された本人であるか」を認証するサービスです。金融機関での利用シーンにおいては、「LIQUID eKYC」にて口座開設した際に本人確認済みのデータと、撮影した自分の顔画像を照合することで、継続的な当人認証を行い、成りすまし不正を防止することが可能となります。現在は、商用化フェーズとなっており、主力サービスである初回登録(LIQUID eKYC)から都度認証(LIQUID Auth)へ領域を広げ、利便性とセキュリティを両立させたサービスとして、拡大を目指します。


(3) 個人最適化ソリューション

 個人のデータを取得し、特徴を解析し、モノ・サービスを個人に最適化するためのサービスを提供しております。あらゆる商材におけるECサイト経由による販売量の増加、テレワークの普及、仮想空間における新たな事業化の取り組み等、暮らしのデジタル化が進む中、「衣食住」と密接に関係する事業者を対象にサービスを提供しております。提供先は、パートナー事業者から紹介を受けることもあります。個人最適化ソリューションの各事業における具体的な提供サービスは以下の通りであります。


① 行動解析事業

 オフィス・住宅における生活環境の個人最適化サービスを提供しております。事業者へ導入する際の初期費用とその後のサービス利用及び保守に関する月額費用として、対価を受領します。現在は、商用化フェーズとなっており、個人最適化ソリューションの売上高のうち、行動解析事業が9割程度を占めます。

 オフィス向けサービスは、専用アプリを事業者に提供し、ビル設備との連携や各種センサーを通じて、ユーザー個人の位置情報を取得します。同僚の所在や、会議室などの利用状況を自席にいながらリアルタイムに確認できることで、フリーアドレスのオフィスで働くユーザーにとって最適な働き方ができる環境を提供しています。この領域において、新たに合弁会社の設立を予定しております。

 住宅向けサービスは、マンションデベロッパーが提供する住宅機器の操作システムに機能を提供しております。空調、照明、給湯などの各機器とスマートフォンアプリを連携し、最寄り駅についたタイミングで冷房をいれる、お風呂を沸かすなど位置情報と連携した機器の自動操作により、ユーザー個人にとって最適な暮らしをサポートします。


② 体型解析事業

 婦人靴(パンプス)の個人最適化サービスを提供しております。現在は、実証実験フェーズとなっております。

 リコメンドサービスでは、足型の3Dデータまたはユーザーが履き慣れたパンプスの3Dデータを元に、個人の足に最適なパンプスを提案します。セミオーダーサービスでは、既製品では対応できない大きさや左右の足の違いの悩みを解決する、履き心地が最適なパンプスを提供しています。

 衣服においても同様に、ユーザー個人にとって最適なサイズを提供するサービスを、持分法適用関連会社である株式会社SYMBOLで行っております。


③ 購買解析事業

 食品小売の個人最適化サービスを提供しております。現在は、複数の事業者と実証実験フェーズとなっております。

 食品小売事業者(コンビニ・ドラッグストア・スーパーなど)が提供するスマホレジなどのデジタルサービス経由で取得するユーザーの購買データを解析し、ユーザー個人に向けて最適な商品をリコメンドできるサービスの提供を行っております。導入事業者にとっては、ユーザーの購買データから予測する効率的な在庫管理や物流システムの構築を可能にします。


【業績等】

決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益

2022/11 連結3Q累計実績 1,257 -446 -458 -436

2022/11 連結会社予想 1,634 -556 -566 -520

2021/11 連結実績 1,362 -706 -695 -568

2020/11 連結実績 949 -926 -935 -800


決算期 種別 EPS BPS 配当

2022/11 連結会社予想 -36.58 23.20 0.00


上場時発行済株数 20,096,700株(別に潜在株式2,620,700株)

公開株数 5,218,900株(公募50,000株、売り出し4,488,200株、オーバーアロットメント680,700株)

調達資金使途 人件費


PER:

PBR:

PSR:1.8

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:7.8億

公募時時価:30億

​   

【株主構成】 

久田康弘 代表取締役など 7,800,000 34.41% 180日

UTEC3号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 2,166,700 9.56%

(株)BOC 特別利害関係者など 1,560,000 6.88% 180日

加藤寛之 従業員 1,000,000 4.41% 180日

山谷明洋 取締役 1,000,000 4.41% 180日

伊藤忠商事(株) 金融商品取引業者等 833,300 3.68%

上田八木短資(株) 特別利害関係者など 735,300 3.24% 180日

コタエル信託(株) 新株予約権信託の受託者 666,600 2.94% 180日

鶴岡章 取締役 483,800 2.13% 180日

(株)電通国際情報サービス 特別利害関係者など 416,700 1.84%

(株)大和証券グループ本社 金融商品取引業者等 367,600 1.62%

長谷川敬起 従業員、関係会社取締役 329,800 1.45%

(株)セゾン・ベンチャーズ ベンチャーキャピタル(ファンド) 250,000 1.10% 90日・1.5倍

みずほFinTech投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 250,000 1.10% 90日・1.5倍

SMBCベンチャーキャピタル2号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 250,000 1.10% 90日・1.5倍

(株)イオン銀行 特別利害関係者など 250,000 1.10%


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人である久田康弘並びに当社株主(新株予約権者を含む。)である株式会社BOC、加藤寛之、山谷明洋、上田八木短資株式会社、コタエル信託株式会社、鶴岡章、長谷川敬起、KDDI株式会社、テックユニオン株式会社、株式会社タチカワ、大岩良行、保科秀之、梅木悠太、三菱地所株式会社、小島亮平、株式会社Ubicomホールディングス、株式会社ビーコス、沖田貴史及び小久保穂高は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2023年6月24日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)等を行わない旨合意しております。

 また、当社株主である株式会社大和証券グループ本社、みずほFinTech投資事業有限責任組合、SMBCベンチャーキャピタル2号投資事業有限責任組合、SBI Ventures Two株式会社、SBI AI & Blockchain投資事業有限責任組合、NREGイノベーション1号投資事業有限責任組合、SMBC事業開発2号投資事業有限責任組合、トレイダーズインベストメント株式会社、JA三井リース株式会社、株式会社百五銀行及び三菱UFJ信託銀行株式会社は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後90日目の2023年3月26日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、その売却価格が「第1 募集事項」における発行価格の1.5倍以上であって、東京証券取引所における初値が形成された後に行う東京証券取引所での売却等を除く。)等を行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 久田 康弘(上場時37歳8カ月)/1985年生

本店所在地 東京都千代田区大手町

設立年 2013年

従業員数 58人 (2022/10/31現在)(平均36.8歳、年収627.2万円)、連結61人

事業内容 生体認証・画像解析・機械学習技術を活用した、オンライン本人確認サービス「LIQUIDeKYC」などの個人認証ソリューションと、衣食住における個人最適化ソリューションの開発・提供

URL https://elementsinc.jp/

株主数 44人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (2022/11/22現在)

代表者生年月日 1985年04月20日生まれ

代表者略歴要

2008年04月 大和証券(株)(現 大和証券(株))入社

2014年07月 当社取締役及び代表取締役就任(現任)

2016年12月 (株)SYMBOL取締役就任

2017年03月 (株)MYCITY取締役就任(現任)

2019年03月 (株)sole(現 (株)IDEAL)取締役就任

2019年07月 同社代表取締役就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 みずほ - -

引受証券 SBI - -

引受証券 大和 - -


【参考類似企業】今期予想PER(12/1)

3626 TIS 23.6倍 (連結予想)

3782 DDS - (連結予想)

3788 GMOGSHD 52.4倍 (連結予想)

3909 ショーケース - (連結予想)

3925 DS 21.5倍 (連結予想)

4373 シンプレクスH 28.3倍 (連結予想)

4498 サイバトラスト 21.4倍 (連結予想)

4689 ZHD 31.0倍 (連結予想)

6701 NEC 11.4倍 (連結予想)

9417 スマートバリュ 100.6倍 (連結予想)

9613 NTTデータ 21.9倍 (連結予想)


【私見】

 個人認証ソリューションということでeKYC市場ではトップシェアで大手も導入していることは高く評価出来ます。売上は伸び、赤字が緩やかに縮小していることは評価できますが、黒字転換するのはいつなのかは最大の懸念材料です。株主も大和証券やイオンなど大手が連なる一方、ロックなしVCや1.5倍でロックが外れるVCも多いので需給面での不安材料は多いです。需給面でのリスクはあるものの、低単価で規模も小さいのでマネーゲームになる可能性もあるので注目はしたい銘柄です。


想定価額:150円

仮条件上限:160円

初値予想:300円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立~やや強気

総合評価:3.5

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