2020年12月13日日曜日

IPO分析(クリングルファーマ)

 【事業内容】

 難治性疾患、すなわち「症例数が少なく、原因不明で、治療法が確立しておらず、生活面への長期にわたる支障がある疾患」に対する治療薬の研究開発を目指す大学発バイオベンチャーとして設立されました。

 設立後、中村敏一氏の発見したHGF(Hepatocyte Growth Factor:肝細胞増殖因子)タンパク質を開発パイプラインとして導入し、組換えDNA技術を応用したタンパク質(以下、「組換えタンパク質」という)の製造法の確立、非臨床試験*の実施を経て、欧米及び日本における臨床試験を複数実施いたしました。

 その結果、組換えヒトHGFタンパク質の医薬品としての安全性を確認し、脊髄損傷急性期を対象とする臨床試験においては有効性を示唆する結果、すなわちPOC*(Proof Of Concept)を得ることができました。

 従来の創薬バイオベンチャーの戦略としては、ここまでの研究成果を導出して製薬企業に開発・製造販売を委ねるのが常ですが、当社は組換えヒトHGFタンパク質を医薬品として確実に社会に提供することを第一の使命と考え、自社で開発を続け、医薬品の製造販売承認を得る方針で事業を進めております。

 

(2) 事業モデル

 当社が想定している事業モデルを図2に示します。当社は対象疾患や提携先に応じてA、B、Cを組み合わせたハイブリッド型の事業モデルを志向しております。その中でも、臨床試験の成果をより確実に医薬品として社会実装するため、自社での医薬品製造販売承認申請を行うことを基本方針とします。当社の臨床段階のパイプラインについては、脊髄損傷急性期と声帯瘢痕はAとBのハイブリッド(自社開発と販売提携)、ALSと急性腎障害はBによる事業化を目指しております。また、クラリス・バイオセラピューティクス社への原薬供給はCに該当します。

 また、開発については一般的な新薬開発プロセスに従って実施する必要がありますが、難治性疾患に対する治療薬の開発を実現するために以下に示すようなプロセスを実施しております。


① 基礎研究*

 医薬品の候補となるシーズ*探索は長期の研究期間が必要である上に、この段階で候補が見つかっても医薬品として成功する確率は非常に低いことがわかっております。当社では、基礎研究として、組換えヒトHGFタンパク質の新規適応症の探索及び新規候補品の探索を行っておりますが、大学との共同研究において専門的な知識を活用することにより、成功確率を高めるよう基礎研究を進めております。


② 非臨床試験・製造

 非臨床試験や製造については、開発業務受託機関、製造受託機関等の専門技術を活用することにより、迅速に進めております。また、この開発段階では膨大な支出に対する収入が得られないため、公的資金(助成金、補助金)を活用することにより、自社負担を減らし、経済的なリスクを低減させております。


③ 臨床試験(第I相試験*、第Ⅱ相試験*、第Ⅲ相試験*)

 患者数の少ない難治性疾患では、疾患の原因も病態も明らかでないことがあり、臨床試験の評価項目の設定や症例の選定等が難しいとされております。当社では、大学との連携により、難治性疾患に対する専門的な知見を集積し、小規模で成功確度が高い評価項目を策定し臨床試験を実施しております。臨床試験の一部の業務については、開発業務受託機関に委託して品質・開発速度を確保するとともに、臨床評価や解析については、専門病院及び大学病院の医師と連携して科学的な質を高めております。また、大学病院等が公的資金を確保し、臨床試験(医師主導治験)の実施を希望する場合には、治験薬及び科学的な情報・知識を提供して治験推進に協力し、成果の独占的な利用許諾を得ます。


④ 承認申請・許可

 臨床試験の成果をより確実に医薬品として社会実装するため、自社での医薬品製造販売承認申請を行うことを基本方針とします。難治性疾患を対象として開発しているため、POCが得られた後には厚生労働省の「希少疾病用医薬品指定」を受け、開発費用の助成、優先審査の活用などにより申請までの業務を加速することが可能です。また、「条件付き早期承認制度」「先駆的医薬品指定制度(旧 先駆け審査指定制度)」等の制度を活用することにより申請・審査に係る時間を短縮し、早期承認を目指します。


⑤ 販売

 難治性疾患は高度医療機関において治療が行われるため、開発した医薬品の取り扱い施設の数が限定されます。したがいまして、通常の医薬品のような大規模な流通販売網の構築が不要となります。また、競合する医薬品が少ないことから営業活動に大きな費用をかける必要がありません。当社が医薬品製造販売業の許可を取得し、医薬品卸売販売業者と提携することで、必要な場所に必要な医薬品を届けるサプライチェーンの構築が可能です。その結果、販売に係るコストが削減され、売上総利益を高い割合で継続的に得られるメリットを享受することができます。

 なお、脊髄損傷急性期を対象とした製品のサプライチェーンについては、現時点で当社内に営業販売体制がないことから、下図に示すように丸石製薬株式会社と東邦ホールディングス株式会社との提携により構築されております。丸石製薬株式会社は救急領域のスペシャリティファーマ*として国内の救急病院をカバーする営業体制を有しているため、当該製品の販売及びプロモーションの提携をすることで、サプライチェーンを構築することが可能であると考えております。


⑥ 適応拡大

 個々の難治性疾患は患者数が限られますが、複数パイプラインの開発を進めること、海外へ販売を拡大すること、他領域の疾患についても開発を進めることにより、市場の拡大が可能であると考えております(図4)。例えば、脊髄損傷急性期及びALSにおいてHGFの神経保護作用が示された場合には、脳神経領域の疾患に対しても神経保護作用を示し、治療薬として開発される可能性が考えられます。また、声帯瘢痕においてHGFの抗線維化作用が示されると、声帯以外の線維化が原因となる疾患への応用が考えられます。さらに、急性腎障害において静脈内投与でのHGFの効果が確認された場合には、腎臓以外の臓器における難治性疾患への応用の可能性が考えられます。HGFは様々な作用を持っていることから、一つの作用についての効果が確認されると、他領域への応用の可能性があると考えております。将来的には、当社において適応拡大による市場の拡大を行いながら他の製薬企業から他領域での開発を希望する提案を受けた場合には、原薬を供給することにより、継続的な収益を得ることも可能であると想定しております。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2018.9 0 -223 -64 -64

(単独実績)2019.9 0 -371 -301 -302

(単独実績)2020.9 467 -171 -116 -117

(単独予想)2021.9 206 -1,037 -1,015 -1,017


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2021.9 -248.73 395.11 0

調達資金使途 研究開発費

 

上場時発行済み株数 4,227,700株 (別に潜在株式485,000株)

公開株数 667,000株(公募580,000株、オーバーアロットメント87,000株)


PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:6.7億

公募時時価:42億

    

【株主構成】 

日本全薬工業(株) 特別利害関係者など 500,840 12.12 90日・1.5倍

慶応イノベーション・イニシアティブ1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 470,460 11.38 90日・1.5倍

DBJキャピタル投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 319,800 7.74 90日・1.5倍

THVP-1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 226,600 5.48 90日・1.5倍

CYBERDYNE(株) 特別利害関係者など 200,000 4.84  90日・1.5倍

OUVC 1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 200,000 4.84

安達喜一 代表取締役社長 171,900 4.16 90日

岩谷邦夫 - 132,040 3.20 90日・1.5倍

丸石製薬(株) 資本業務提携先 100,000 2.42

(株)リプロセル 取引先 100,000 2.42

とうほう・ふるさと総活躍応援ファンド投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 100,000 2.42

バイオ・サイト・キャピタル(株) ベンチャーキャピタル(ファンド) 79,960 1.93


【代表者】

代表者名 安達 喜一(上場時53歳10カ月)/1967年生

本店所在地 大阪府茨木市彩都あさぎ

設立年 2001年

従業員数 10人 (10/31現在)(平均43歳、年収424.8万円)

株主数 73人 (目論見書より)

資本金 300,000,000円 (11/24現在)

代表者生年月日 1967年02月27日生まれ

代表者略歴

年月 概要

1996年05月 Postdoctoral Research Associate, Purdue University, IN, U.S.A.

1999年03月 Research Scientist, Paradigm Genetics, Inc., NC, U.S.A

2002年09月 (株)三井物産戦略研究所入社 バイオテクノロジーセンター主任研究員

2004年04月 当社入社、研究開発部長 12月:当社 取締役研究開発部長

2005年12月 当社 取締役副社長

2010年12月 当社 取締役事業開発部長

2011年04月 国立大学法人大阪大学招聘准教授

2016年12月 当社 代表取締役社長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 野村 464,000 80.00

引受証券 SBI 29,000 5.00

引受証券 SMBC日興 29,000 5.00

引受証券 楽天 17,400 3.00

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー 17,400 3.00

引受証券 いちよし 5,800 1.00

引受証券 東洋 5,800 1.00

引受証券 エース 5,800 1.00

引受証券 岡三 5,800 1.00


【参考類似企業】 参考類似企業 時価総額(12/4)

4582  シンバイオ 139億円

4592  サンバイオ 1,093億円


【私見】

 大阪大学発バイオベンチャーで、赤字のバイオ銘柄なので人気化するこは難しいと思います。売上もようやく計上されたほどで、買い材料を見つけることは難しそうです。VCにしては規模は小さいことはプラス材料ですが、買いは期待できないことが予想されます。


想定価額:950円

仮条件上限:1000円

初値予想:1000円

ブック申し込み度・・・やや弱気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価2.5

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