2020年12月9日水曜日

IPO分析(ENECHANGE)

 【事業内容】

 「Changing Energy for a Better World ~エネルギーの未来をつくる~」というミッションを掲げ、エネルギー革命の軸となる「エネルギーの4D」、すなわち自由化(Deregulation)、デジタル化(Digitalization)、脱炭素化(Decarbonization)、分散化(Decentralization)に資する分野を主な事業領域としております。これらの分野において、エネルギー分野特化型の「エネルギーテック」、すなわち発電や小売を直接行わず、エネルギーに関連するテクノロジーサービス提供を中立的に行う企業グループとして、エネルギーに関するデータの活用促進を通じ、相互シナジーを活かした事業展開を行うことで、「エネルギーの4D」におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、「エネルギー分野におけるデータプラットフォーマー」というユニークなポジショニングで、エネルギーテック領域におけるカテゴリーリーダーとなることを目指しております。

 (I)自由化領域において消費者向けに電力・ガス等の最適な選択をサポートするBtoC型ビジネスである「エネルギープラットフォーム事業」と、(II)デジタル化領域において電力・ガス会社向けにクラウド型DXサービスを提供するBtoB型ビジネスである「エネルギーデータ事業」を展開しております。

 「エネルギープラットフォーム事業」においては、消費者向けの電力・ガス切替サービスを通じて、「エネルギーを選ぶを常識に」することを目指しており、主に「エネチェンジ」(家庭向け電力・ガス切替プラットフォーム)及び「エネチェンジBiz」(法人向け電力・ガス切替プラットフォーム)の2サービスを展開しております。

 「エネルギーデータ事業」においては、電力・ガス会社向けのクラウド型DXサービスを通じて、「デジタル化でエネルギーをより効率的に」することを目指しており、主に電力・ガス会社向けにクラウド型で提供するデジタルマーケティング支援SaaS「EMAP(イーマップ = Energy Marketing Acceleration Platform)」、電力スマートメーターデータ解析SaaS「SMAP(スマップ = Smart Meter Analytics Platform)」、電力データ解析技術を活用した稼働中の再生可能エネルギー発電所の運営効率化・ファンド運営事務サービス「JEF(ジェフ)」の3サービスを展開しております。当社グループは、当該2事業の両輪経営による顧客基盤・ノウハウの相互活用を通じた事業展開を競争力の源泉とし、業界内におけるユニークなポジショニングを構築しているものと考えております。


(I)エネルギープラットフォーム事業

(事業の概況)

 エネルギープラットフォーム事業は、家庭向け顧客に対しては、電力・ガス切替プラットフォーム「エネチェンジ」、法人向け顧客に対しては、電力・ガス切替プラットフォーム「エネチェンジBiz」の2サービスを展開しております。「エネチェンジ」「エネチェンジBiz」はともに最適な電力・ガス会社等を選択するための比較・診断・切替申込機能を、インターネット上でワンストップにて提供する電力・ガス切替プラットフォームであり、当該サービスを電力の消費者である家庭や法人の顧客(以下、「ユーザー」)に対して無償で提供することで、電力・ガスの切替のデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。

 当社は、国内大手の電力・ガス会社との戦略的な業務提携を始めとして、2020年10月末時点において「エネチェンジ」と「エネチェンジBiz」合わせて52社(重複を除く)の電力・ガス会社と提携しております。それら電力・ガス会社とのネットワークにより、価格面での訴求だけではなく、電気・ガスセットでの提供や、「再生可能エネルギー100%の電力プラン」の取り扱いを開始しており、幅広いユーザーのニーズに合わせたサービス展開を行っています。

 集客面に関しては、自社メディアを経由したオンラインでの集客を基本とし、家庭から法人ユーザーまで幅広く集客を実施しております。加えて、パートナーの拡大にも努めており、オンライン・オフラインでのパートナー経由での集客も行なっております。これらにより、電力・ガス切替プラットフォームとして、ユーザーとの接点を拡大しております。これらの取組みにより、累計切替件数は、2020年9月末時点において、家庭ユーザーで約17万件、法人ユーザーで約4,400件(換算値約15万件(注9))となっております。


(各サービスの特徴)

<エネチェンジ>

 「エネチェンジ」は「電力会社を選ぶ」をサポートする家庭向け電力・ガス特化型メディア兼電力・ガス会社切替プラットフォームです。当社は2016年1月より本格的にサービスを開始し、2020年1月から10月までの平均で月間ユニークユーザー数が220万人を超える規模にまで成長しました。

 ユーザーは、オンライン上で居住地域の郵便番号や世帯人数、在宅状況や電気の使用量といった情報を簡易的に入力することで、地域ごとの気象条件やロードカーブを考慮したアルゴリズムの診断結果に基づいた最適な電力・ガス会社の比較情報を、様々なランキング形式で得ることができます。また、診断と比較だけではなく、オンライン上で電力・ガス会社の切替手続きまでを一気通貫で実施できるサービス設計となっているため、ユーザーにとっては利便性の高いサービスとなっています。加えて、不動産仲介業者等のパートナーを経由したオフラインでの切替申込にも対応しております。オンライン・オフラインともにパートナー数は拡大しており、過去の推移は次のとおりです。

 なお、家庭向け都市ガスの小売全面自由化が開始された2017年4月に先駆けて、2017年1月より都市ガス料金の比較診断サービスも提供しております。また、2019年11月より順次買取期間が終了する固定価格買取制度(FIT)にあわせた電気の買取や、蓄電池の紹介サービスも提供しております。


<エネチェンジBiz>

 「エネチェンジBiz」は、主に高圧と呼ばれる法人の電力・ガスユーザーを対象とした一括見積取得及び電力会社切替プラットフォームです。大手新電力を中心とした電力・ガス会社と提携し、法人ユーザーに対して無料で一括見積と申込手続きを代行するサービスを全国規模で提供しております。当社は2016年6月より本格的にサービスを開始し、2020年10月時点において、月間問い合わせ件数が300件を超える規模にまで成長しました。

 法人ユーザーは、無料診断登録を実施し、過去12か月分の電気使用量を記載した明細書を提出することで、複数の電力・ガス会社からの新しい電気料金単価での見積提案の取得から、電力会社の切替手続きまでのプロセスを、一括して当社に委託できます。そのため、初期費用が不要であり、かつ書類上の手続きのみで固定費の削減が可能となります。


(収益モデル)

 ユーザーが、当社の展開する切替プラットフォームサービス上で提携する電力・ガス契約の切替を実施すると、当社は、電力・ガス会社より一定の報酬を受領します。当該報酬は、当社の売上高として計上されます。


 報酬には下記の2つの種類があります。

(1) ストック型の切替報酬:プラットフォームサービス上で切替を実施したユーザーが電力・ガス会社に対して支払う毎月の電力代・ガス代に、あらかじめ定められた料率を乗じた金額を、切替以降、原則として電力・ガス小売供給契約が継続する限り、毎月継続的に受領する報酬となります。プラットフォームサービスを通じた申し込みが行われ、累積申込数が増大すると、契約数に比例して報酬が増大するストック型の報酬です。


(2) その他報酬:電力・ガス契約の切替時に、上記のストック型切替報酬に加えて、追加で電力・ガス会社から受領する切替の一時報酬や、メディアとしての「エネチェンジ」及び「エネチェンジBiz」における宣伝効果を期待する電力・ガス会社からの広告掲載依頼・配信活動に伴い受領する広告収入等があります。これらは申込数や広告件数に応じて売上高が増減します。


(II)エネルギーデータ事業

(エネルギー業界のITシステム市場の概況)

(事業の概況)

 エネルギーデータ事業は、電力・ガス自由化、スマートメーターのデータ解析、再生可能エネルギー発電所の運営効率化等、「エネルギーの4D」の進行に伴い必要となる新たなITシステムを、エネルギー事業者向けにクラウド型で提供しています。現在は、3サービス(EMAP、SMAP、JEF)を展開しております。これらのサービスは、独自データを活用した電力・ガス業界特化型のシステムを汎用的に展開することに特徴があり、デジタル化を軸としながらも、「エネチェンジ」「エネチェンジBiz」によって蓄積される大量のユーザーデータを活用した「EMAP」、スマートメーターデータの解析を軸とした「SMAP」、再生可能エネルギー発電所のデータ活用の「JEF」とそれぞれ異なる特徴を有しております。

 国内の電力・ガス会社との戦略的な業務提携を始めとして、国内外の電力・ガス会社に対してこれらのサービスを提供しております。これらのサービスはいずれもクラウドベースで行われることにより、サービス提供を通じて様々なデータの蓄積が可能であり、またそれらのデータを解析・活用することで更なるサービス品質や機能の強化に繋がるため、当該サービス提供を通じ競争力を高めていくことが可能であるものと認識しております。これらの取組みにより、サービス導入社数は2020年9月末時点で31社となっております。


(各サービスの特徴)

<EMAP>

 「EMAP」は、当社が提供するエネルギー事業者向けデジタルマーケティング支援SaaSのサービス名称です。「EMAP」サービスの特徴は、当社が電力・ガス切替プラットフォーム「エネチェンジ」を運営する中で得た知見・情報・技術資産を基にした、電力・ガス小売の現場へのデジタル化・効率化サービスをSaaS型で提供している点です。2016年1月より電力・ガス会社への提供を開始し、以降様々な改善・機能追加を施しながら運用実績を積み重ね、2020年10月末時点においては東京電力エナジーパートナー株式会社や、東京瓦斯株式会社、北陸電力株式会社をはじめとした電力・ガス会社にサービス提供をしております。「EMAP」を利用して蓄積された電力・ガス切替に関する契約情報は2020年10月末時点において100万件以上に上り、それら大量のデータ解析を軸としたサービス展開を行っております。

 「EMAP」サービスの導入にあたり、標準的なパッケージが用意されているため、速やかにセットアップを行うことが可能な形でサービス提供を行っております。また運用開始後も、システムの死活監視や、定期的な保守、燃料費調整額の定期更新といったメンテナンスまで、ワンストップで提供しております。

 

 <SMAP>

 「SMAP」は、当社グループが提供するエネルギー事業者向けスマートメータデータ解析SaaSのサービス名称です。当社子会社のSMAP ENERGY LIMITEDが、開発・運営を国内外で行っています。「SMAP」サービスの特徴としては、スマートメーターを経由して送られてくるユーザーの電力使用量(kWh:キロワットアワー)の30分値データを様々な観点で解析・予測するサービスをSaaS型で提供している点です。2017年6月にSMAP ENERGY LIMITEDを連結子会社化し、日本の電力会社向けに本格的にサービスを開始しました。現在、大手新電力をはじめとした電力・ガス会社にサービス提供をしております。「SMAP」において管理及び解析の対象としているスマートメーターの電力使用量データは2020年10月末時点において25億件以上となり、それらの大量のデータ解析を軸としたサービス展開を行っています。


 <JEF>

 「JEF」は、当社グループが提供する電力データ解析技術を活用した稼働中の再生可能エネルギー発電所の運営効率化及びファンドの運営事務業務のサービス名称です。2019年12月に株式会社Looop、大和エナジー・インフラ株式会社と共同で、海外特化型の脱炭素・エネルギーファンド「JAPAN ENERGY ファンド(正式名称:Japan Energy Capital 1 L.P.)」及び、そのファンドの運営を行うJapan Energy Capital合同会社を設立(2020年3月より本枠組みに北陸電力株式会社も加入)し、Japan Energy Capital合同会社より独占的に業務を受託することで、「JEF」サービスを開始しました。


(収益モデル)

 「EMAP」「SMAP」「JEF」は電力・ガス会社を中心とするサービス提供先の企業から、サービス提供の対価として一定の報酬を受領します。当該報酬は、当社グループの売上高として計上されます。エネルギー業界に特化したサービスのため、直接的なサービス対象顧客は電力・ガス会社が中心となりますが、利用者数に応じた従量課金体系を一部採用することで、電力・ガスを利用するエンドユーザーを間接的なサービス対象顧客としている点が特徴となります。

 


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(連結実績)2018.12 1,140 93 104 91

(連結実績)2019.12 1,268 -322 -304 -238

(連結予想)2020.12 1,666 30 -9 -31

(連結3Q累計実績)2020.12 1,252 82 59 37


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(連結予想)2020.12 -6.04 - 0

調達資金使途 人材採用費、人件費・人材育成費

 

上場時発行済み株数 5,750,000株 (別に潜在株式2,177,301株)

公開株数 437,000株(公募50,000株、売り出し330,000株、オーバーアロットメント57,000株)


PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:2.6億

公募時時価:35億

    


【株主構成】 

城口洋平 代表取締役CEOなど 1,879,725 23.86 180日

有田一平 代表取締役COO 794,379 10.08 180日

植野泰幸 時価発行新株予約権信託の受託者 630,000 8.00

B Dash Fund 2号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 600,000 7.62 90日・1.5倍

Energy Station Company LTD. 特別利害関係者など 599,850 7.61 90日

(株)大和証券グループ本社 特別利害関係者など 450,000 5.71

BIG 1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 360,000 4.57 90日・1.5倍

(株)エプコ 特別利害関係者など 300,000 3.81 90日

大和エナジー・インフラ(株) 特別利害関係者など 270,000 3.43 90日

SpiralCapitalJapanFund1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 240,000 3.05 90日・1.5倍

(株)日立製作所 特別利害関係者など 210,000 2.67

 

【代表者】

代表者名 城口 洋平(上場時33歳4カ月)/1987年生

本店所在地 東京都千代田区大手町

設立年 2015年

従業員数 77人 (10/31現在)(平均35.2歳、年収594.7万円)、連結90人

株主数 44人 (目論見書より)

資本金 890,255,000円 (11/18現在)

代表者生年月日 1987年08月05日生まれ

代表者略歴

年月 概要

2009年04月 (株)ミログ設立 代表取締役就任

2103年06月 Cambridge Energy Data Lab Limited設立 Director就任

2105年04月 当社 アドバイザー就任

2016年03月 SMAP ENERGY LIMITED設立 アドバイザー就任

2017年07月 当社 代表取締役就任(現任)

2017年07月 SMAP ENERGY LIMITED CEO就任(現任)

2019年08月 Japan Energy Capital(同) 職務執行者就任(現任)

2019年12月 JEC ENERJi YATIRIM ANONiM SiRKETi Director就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 みずほ - -

幹事証券 大和 - -

引受証券 野村 - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 いちよし - -

引受証券 SBI - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 松井 - -


【参考類似企業】今期予想PER(11/27)

2371  カカクコム 40.7倍(連結予想 )

3662  エイチーム 95.7倍(連結予想 )

3679  じげん 14.4倍(連結予想 )

3926  オープンドア 67.4倍(連結予想 )

3970  イノベーション 51.0倍(連結予想 )

6049  イトクロ 80.0倍(連結見込 )


【私見】

 電力ガスの比較サイトとファンドを含めたエネルギー事業の両建てで、悪くはありませんが市場は限定的で大きな成長性があるかと言われると微妙なのかもしれません。業績は今期に黒字化見通しで、今後の利益率がどのくらいになるかどうかは焦点でしょう。需給は吸収金額が小さく、時価総額も小さいので上値余地は充分あり、売り圧力もなさそうなので初値段階で上がる可能性は高そうです。


想定価額:520円

仮条件上限:600円

初値予想:2000円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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