2021年12月10日金曜日

IPO分析(ZEALS)

 【事業内容】

  当社の提供するサービスは、チャットボット技術を用いることで、クライアントがユーザーに対してLINEやFacebook messengerなど身近なプラットフォームを通じ、従来は実店舗でしか受けられなかった接客体験を提供するサービスです。サービス提供に当たっては、商品購入・来店予約・会員登録など、クライアントそれぞれの目的に合わせた最適なコミュニケーションの流れを当社が設計しており、個々のユーザーに合わせた接客体験をチャットボットによって自動で提供することが可能となります。以下の文中において、当社がチャットボット技術を用いて提供する上記のサービスを、チャットコマースサービスと記載しております。


媒体としてのメディアやその上で展開される一般的な広告は、属性データに基づく画一的かつ一方的なマーケティングという印象に繋がりやすい一方で、当社のチャットボットを活用するサービスでは、会話データ等の動的データに基づきパーソナライズされた双方向のマーケティングが可能となり、ランディングページ等と比較して高い成果率を実現しています。


 当社サービスでは、チャットボットがユーザーの検討フェーズに応じて、ユーザーのニーズのヒアリングや診断、商品・サービスの説明や口コミ情報の提供、不安要素のヒアリング・不安要素の解消対応等を行います。また、プッシュ配信機能を用いて、商品購入までの間継続的に、かつ商品の購入以降も継続購入に向けて、新たな提案やメンテナンス等の連絡を行うことで、顧客との継続的かつ持続的なエンゲージメントの構築につなげることができます。


ECにおいては、実店舗で提供するような接客や提案が十分出来ていないことが課題として挙げられます。また、実店舗においては、来店時にしか接客体験を提供できなかったため、次回来店時までの間コミュニケーションが途切れ、顧客エンゲージメント消失に繋がり得るポイントが存在しておりましたが、当社サービスを利用することで、クライアントはオンライン・オフラインを問わずカスタマージャーニー全域においてコミュニケーションを取ることが可能となり、カスタマーの離脱防止を図ることができます。


・サービスの特徴

 当社サービスの主な特徴は以下の通りであり、コスメ、健康食品、エステ、人材、教育、金融等の業界を中心に、エンタープライズを含め幅広い企業にサービスを提供しております。2021年9月現在における契約アカウント数は245社となっております。

(1)成果報酬制

 競合他社では初期費用・月額利用料の課金体系とすることが多いと認識しておりますが、当社では成果報酬制を原則的な料金体系とし、初期費用やシステム利用料は原則として無料とするプランを主力としています。2021年3月期においては、売上高の8割超が成果報酬による売上となっております。成果報酬モデルでは、クライアントとの契約ごとに成果を定義して報酬単価を設定し、成果報酬売上を計上しております。成果の定義例としては、商品・サービス購入、予約受付、会員登録などが挙げられます。導入クライアント側の手間は当社が設計したシナリオのレビューのみであり、成果が見えない中で初期コストを負担することがないため、クライアントにとって導入しやすいサービス設計になっているものと考えております。


(2)大量の会話データを活かしたコミュニケーション・ノウハウ

 当社には、2021年9月末時点で累計約5.52億回分の会話データが蓄積されており、それらを元に、ユーザーの行動、ユーザー流入・CVを含めた活動時間帯、ブロックタイミング等、様々な角度から定量的・定性的分析を行っております。会話データを蓄積していくことで、チャットボットのメッセージに対するユーザーの行動傾向等の分析が精緻化し、その結果として重要なKPIであるCVRの向上に繋がると考えております。

 当社では、コミュニケーションデザイナーと呼ばれる、これらの分析データやナレッジを活かしてより高いCVを創出するプロセスの制作、運用改善を行うチームを組成しており、2021年9月末時点で65名体制としております。UXライターであるコミュニケーションデザイナーは、リサーチ、戦略策定、コンテンツ設計、ライティング・クリエイティブの作成等を行い、事業商品戦略の理解からユーザーニーズへの訴求まで、一気通貫のコミュニケーションデザインを提供しております。


(3)強固な代理店網

 チャットコマースサービスの実績・信頼性を背景に、2021年9月末現在、株式会社サイバーエージェント、株式会社電通、株式会社博報堂をはじめとする約80社の代理店と提携関係を結んでいます。2021年3月期においては売上の大半が代理店経由となっており、人件費の拡大を抑制しながら販売を拡大させることが可能となっています。


(4)エンゲージメント構築をサポートする充実した機能

 LINEの提供するAPIのほぼ全てに対応する幅広い機能を備えており、ユーザーによる商品・サービスの認知・興味関心、比較検討、購入から継続購入に至るまで、クライアントのマーケティングにかかわる全てのフェーズをサポートできるようになっております。また、世界各国から採用した76名(注1)のエンジニアにより常にプロダクトをアップデートしております。テクノロジーとUXの二軸で、ユーザーの接客体験をデザインし実装しています。


特に、特徴的な機能としては、主に以下が挙げられます。

①パーソナライズされたプッシュ通知

 チャットボット内の会話データの蓄積から得られる様々な情報(チャットボット内の回答や、流入タイミング、CV結果等)を活用し、ユーザーをセグメント化した上で、任意のタイミングでプッシュ配信を行います。ユーザーに継続的にアプローチできる効果に加え、ユニークな情報を元にユーザーをより深く理解し適した提案を行うことで、ブロック率を下げると同時に配信コストの効率化にも寄与しております。


②シームレスなコマース体験

 チャットボット内に表示される選択肢ボタンをタップすることでユーザーが簡単に質問に回答することができたり、チャットボット内で決済まで可能となるなど、シームレスなユーザー体験により、エンゲージメントを高めることが可能となっております。


・新規分野への事業展開について

 当社では2021年2月より、チャットボットを活用した自動車ディーラー向けの入庫予約サービスの提供を開始しております。

 自動車ディーラーの顧客であるユーザーは、ウェブサイトや店舗からLINE上のチャットボットに登録します。ユーザーはチャットボットにマイカーを登録することで、適切なタイミングで車検・点検の案内を受け、LINEで入庫予約までワンストップで完了させることができます。ユーザーにとって身近なプラットフォームで完結するため顧客エンゲージメントを高められるとともに、従来は自動車ディーラー側においては各顧客への電話対応等により膨大な業務時間が割かれておりましたが、業務効率化によってクライアントにおける従業員のエンゲージメント向上も図ることが可能なサービスとなっております。

 当該サービスも成果報酬制としており、成果を入庫予約と定義して報酬単価を設定し、成果報酬売上を計上しております。

このほか、様々な業界に対して、チャットボット技術を活用してデジタルエンゲージメントを提供する様々なサービスを開発しております。具体例は以下のとおりです。

・店舗接客DX

 旅行業界向けに、チャットボットと販売員とのビデオ会議を組み合わせた接客システムにより、スマホ上で旅行の予約が一気通貫で行える接客システムを提供しております。ユーザーはウェブサイトで旅行商品を閲覧した後にLINE上のチャットボットに登録し、チャットボット上で簡単な問い合わせを行ったりプッシュ配信等による継続提案を受けたりします。具体的な旅行に関する相談のフェーズでは、販売員がビデオ接客で対応します。オンライン上においても効率的に、店舗と変わらないきめ細やかな接客を受けることが可能となります。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2020.3 742 -327 -328 -328

(単独実績)2021.3 1,377 200 194 190

(単独予想)2022.3 1,859 -1,217 -1,227 -1,227

(単独中間実績)2022.3 871 -491 -497 -497


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2022.3 -91.51 - 0

調達資金使途 人件費、業務委託費・非正規社員人件費、採用費、地代家賃、サーバー代、広告宣伝費、研究開発費・海外展開費用、借入金返済


上場時発行済み株数 15,240,000株 (別に潜在株式1,085,200株)

公開株数 8,524,700株(公募2,500,000株、売り出し4,912,800株、オーバーアロットメント1,111,900株)


売出しを行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


PER:

PSR:11.6

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:121億

公募時時価:216億

    

【株主構成】 

清水正大 代表取締役 4,528,000 32.75 180日

(株)フリークアウト・ホールディングス その他の関係会社 3,107,200 22.47 180日

ジャフコSV5共有投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 2,714,000 19.63 180日

(株)サイバーエージェント 取引先 920,000 6.65 180日

ジャフコSV5スター投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 490,000 3.54 180日

YJ3号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 324,000 2.34

遠藤竜太 取締役COO 256,000 1.85 180日

FreakOut Shinsei Fund 1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 216,800 1.57 180日

(株)ウィルグループ 特別利害関係者など 212,000 1.53 180日

伊東秀男 取締役 80,000 0.58 180日

佐藤彗斗 従業員 80,000 0.58 180日

猪木俊宏 監査役 56,000 0.41 180日

 

本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である清水正大、売出人である株式会社フリークアウト・ホールディングス、ジャフコSV5共有投資事業有限責任組合、株式会社サイバーエージェント、ジャフコSV5スター投資事業有限責任組合、FreakOut Shinsei Fund 1号投資事業有限責任組合及び株式会社ウィルグループ、並びに当社の株主である遠藤竜太及び猪木俊宏は、共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2022年6月20日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨を合意しております。

 また、当社の新株予約権を保有する遠藤竜太、佐藤彗斗及びその他22名は、共同主幹事会社に対し、ロックアップ期間中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却等を行わない旨を合意しております。

 

【代表者】

代表者名 清水 正大(上場時29歳11カ月)/1992年生

本店所在地 東京都目黒区下目黒

設立年 2014年

従業員数 179人 (10/31現在)(平均31.4歳、年収624.1万円)

株主数 13人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (11/17現在)

代表者生年月日 1992年01月16日生まれ

代表者略歴

2010年04月 JFEメカニカル(株)(現JFEプラントエンジ(株))入社

2014年04月 当社設立 代表取締役就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

主幹事証券 クレディスイス - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 SBI - -

引受証券 松井 - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -


【参考類似企業】今期予想PER(12/2)

3627  JNS 27.3倍(連結予想 )

3923  ラクス 592.2倍(連結予想 )

4370  モビルス 25.5倍(単独予想 )

6562  ジーニー 22.1倍(連結予想 )


【私見】

 流行りのチャットボットで業種としては評価でき、サイバーエージェントが株主で海外売り出しがあることはプラス材料ですが、規模の大きい赤字銘柄で一気に評価は下がります。PSRは12ほどなので上値余地はありそうですが、吸収金額が大きく、海外配分があるとはいえ、こなせるか微妙です。評価が難しいのですが、仮条件上限が想定価額を下回ったことからも評価は高くなく、公募前後の動きと予想します。


想定価額:1530円

仮条件上限:1420円

初値予想:1420円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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