2021年12月3日金曜日

IPO分析(True Data)

 【事業内容】

(1)   事業の概要

 当社は主たる事業として、スーパーマーケット及びドラッグストアなど全国の小売業の顧客ID付きPOSデータ(以下ID-POSデータという)を活用した分析及び開示支援ツールを提供するなど、データマーケティングに関わるサービス提供を行っております。

 当社のサービスは、メーカー向けソリューション、リテール向けソリューション、あらゆる産業向けソリューションに分かれております。メーカー向けソリューションにおいては「イーグルアイ」、「ドルフィンアイ」等のサービスを行っており、リテール向けソリューションにおいては「ショッピングスキャン」等のサービスを提供しております。あらゆる産業向けソリューションは、消費者購買に関わるデータや分析レポート、AI等の提供サービスであります。


(2)   当社の変遷

  当社はID-POSデータの将来性に着目して2000年に三菱商事株式会社の新規事業として立ち上げられた企業であります。設立後10余年は小売業のサポートを業務内容として事業を展開しており、2006年3月期を境に毎年の売上高の減少トレンドの中、コスト削減に注力することで黒字を維持する縮小均衡の経営状況にありましたが、小売業の消費財メーカーへのデータ外販支援まで広範なサポートを行っており、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉が生まれる前から、そのサービスの原型を志向していた企業に位置づけられます。

 2012年に現行の経営体制への変更とともに、当社のメイン事業は「消費財メーカー向けデータマーケティング事業であり、小売業はデータ基盤を構成する重要な事業パートナー」と定義し、連携するID-POSデータを拡大し、提供するソリューションの価値向上を図りながら持続的な売上成長を目指す成長路線へと経営方針を転換しました。

 取締役会の過半数以上を社外取締役に変更し、監査等委員会設置会社へ移行してコーポレート・ガバナンスを強化、第三者割当増資による資本増強を行い、データを管理・保管するシステムインフラや分析機能を刷新し、プライバシーマーク認証に基づくデータガバナンスを強化しました。また、人材を積極的に採用しながらデータ活用人材への育成を強化し、「データと知恵で未来をつくる」を企業理念(パーパス)に掲げて、小売業や消費財メーカーへのソリューション提供のみならず、あらゆる産業を対象とした消費者ビッグデータに基づくマーケティングソリューションの提供へ、ビジネスモデルも発展を遂げております。

  

(3)  サービスの具体的な内容

 「ショッピングスキャン」は、小売業の商品ごと、店舗ごとの購買行動を簡易に分析できる小売業向けのID-POSデータ分析ツールであります。

 小売業は、ポイントカードの利用に伴って日々蓄積される自社の購買データを分析することで、ファンが付いている商品や買い合わせ傾向などを分析し、売場や販促などマーケティングの改善に活用しております。

 また、「ショッピングスキャン」のデータ開示機能(注)により、小売業は堅牢なデータガバナンスを確保しながら消費財メーカーへのマーケティングデータの販売が可能となり、消費財メーカーは「ショッピングスキャン」にアクセスして小売業における顧客の購買データを分析し、小売業との商談資料に活用しております。このような製販が同じデータを分析して、アイデアを合わせて最適な販売施策を検討するデータ開示の取り組みは、大手小売業を中心に導入が進んでおります。

 当社は「ショッピングスキャン」の分析ツールを提供するだけでなく、小売業や開示先消費財メーカーへのデータ活用セミナーやサポートデスクの設置などデータ活用支援をあわせて提供することで、現場のデータマーケティングを活性化し、小売業から消費財メーカーへのデータ外販収益の最大化にも貢献しております。

 「ショッピングスキャン」のサービス提供形態は下記の通り、データ活用のセミナーやサポートデスク設置などデータ活用支援サービス(一部ケースにおいては入金管理を含む)と組み合わせて、年間契約にて小売業に提供しております。

 また、小売業が自社データで分析できる購買は、自社の店舗に来店された顧客の購買行動に限定されるため、「店舗の商圏内に居住しながら来店されない消費者を理解し、来店いただけるようにしたい」、「ターゲットとする消費者に効果的にアプローチしたい」、「自社の店舗では取り扱っていない商品でも、市場においてファンが付いて売れ行きが伸びている商品を把握して仕入を検討したい」というニーズは解決できません。

 仮に小売業のレシートデータを誰かが集めたとしても、データは企業により、同じ商品でも「タンサンインリョウ」「タンサン飲料」「炭酸飲料」というように多様な名称で作られており、分類についても「飲料分類」「炭酸分類」「炭酸水分類」など多様なため、小売業毎の分析は可能でありますが、小売業のデータを合算して全国や地域など市場全体で消費者分析を行うことは難しいのが現状です。

 このため当社では、全国の小売業から集信いただく「大量かつバラバラな仕様のデータ」を全体での分析を可能とする「標準化されたデータ」に精製し、全国、地域、商圏といった範囲で生活者の購買行動の実態や変化を分析できる消費者購買データベースを構築して、小売業、消費財メーカー、政府・自治体、メディアなど幅広いマーケティング用途に活用できるサービスに変えて提供しております。その主要なサービスが「イーグルアイ」であります。

 大量データを集めて分析する難しさ以外に、データの標準化など精製プロセスに多大な労力がかかることが当社ビジネスモデルの模倣困難性となっております。


 「イーグルアイ」は、全国および地域単位での消費者の購買動向を早期かつ精緻に把握することを目的とした分析ツールであります。データベースが購入者属性と紐づいたID-POSデータであり、データベースの規模が大きいことから、単なる商品の売れ行きに留まらず、顧客の購買行動に関わる様々な指標データを導き出せるほか、二日前の購買まで検出できる速報性を実現しております。

 また、消費者マーケティングに関わる定番の分析機能を搭載しており、調べたい情報を簡単な操作でスピーディーに手元で取り出せるので、資料作成時間の大幅削減も見込めるものであります。さらに、インターネット環境があれば低コストで導入できる利便性に加えて、サポートデスクも開設されているため導入後も安心して活用できる体制が整えられており、商品開発・顧客のターゲティング・販売促進・事業戦略など、消費財メーカーの様々なニーズに対応可能なソリューションであります。

 「イーグルアイ」のサービス提供形態は下記の通りであります。年間契約のSaaSとして消費財メーカーなどの企業に提供しており、2021年3月末時点で「イーグルアイ」導入企業数は116社となり、1企業で約500IDのユーザーが使用するなど活用が広がった事例もあります。


(4)   事業の構造

 かねてより、日本の消費財メーカーは様々な小売業から購買データを購入し、それらの分析に基づき、各小売業に対して販促提案を行っています。但し、入手する購買データの内容は商品名や店舗情報など情報の質が小売業毎に異なるため、消費財メーカーにとってその活用は各小売業への個別対応に留まっているのが現状であります。

 昨今のデジタル活用ニーズの高まりから、各消費財メーカーでは自社内に独自のデータ活用システムを構築しようとする動きが顕著となっていますが、購買データに関して商品・店舗などそれぞれの情報を整備し、各小売業から入手する情報の質と精度を、設定した範囲内に揃えていくことが絶対条件となります。日本市場では日々、多数の新製品が上市され、また製造中止となり、新店・閉店などの情報を反映していくことも必要であり、小売業各社から入手する購買データの整備に加えてこれらの情報管理作業は膨大となります。

 こうした作業を消費財メーカーが独自に行うことは困難を極めますが、たとえそれが可能となったとしても、消費財メーカー各社が個別に対応することは、多大な活動の重複を生み出すだけで、日本の産業界にとって極めて非効率な状況となります。POSデータ、ID-POSデータ、さらには他のビッグデータとの掛け合わせとデータの多面化が進むなかで、小売業と消費財メーカーとを結ぶ購買データプラットフォーム企業の存在の必然性はますます高まっております。

 そのような環境下で、当社事業については、データガバナンスとセキュリティを確立しながらデータを提供価値に変えて成長する仕組みを構築しました。当社は、以下のようなビジネスコアの確立を進めております。

① 小売業の購買データを競合他社に凌駕するレベルで集信し、

② データ精製機能、データガバナンスに基づく蓄積・管理機能、マーケティングに必要な分析機能とともに、当社を経由してSaaSなどで、小売業や消費財メーカーなど企業に一括供給し、

③ さらには、他の購買データやオープンデータと掛け合わせながら、『顧客の見える化』、『ロイヤル顧客や売上の伸びしろの分析』、『AI等を活用した多様なマイクロサービスの創出』、『オンライン・オフライン垣根のない(顧客への)さまざまな販促手段へのデータ連携』を、よりわかりやすく、具体的に提供できるビジネスプラットフォーム『ビジネスコアを確立することで、企業個々のデータおよびテクノロジーの整備、地域からグローバルまでのサービスの拡大、教育・研修ニーズへの対応まで深耕し、事業拡大を図る』こと、また 『消費財から自動車、外食等の新領域に横展開することで、成長の持続性と費用効率の向上を図る』ことが、当社が事業成長において目指す姿であります。



 【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2020.3 1,011 -94 -93 -96

(単独実績)2021.3 1,166 -64 -64 -60

(単独予想)2022.3 1,300 23 22 9

(単独中間実績)2022.3 622 -3 -2 -3


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2022.3 2.15 - 0

調達資金使途 新規採用費・人件費、システム開発、借入金の返済、研究開発費、広告宣伝費


上場時発行済み株数 4,609,400株 (別に潜在株式321,200株)

公開株数 1,418,400株(公募170,000株、売り出し1,063,400株、オーバーアロットメント185,000株)


PER:1032

PSR:7.8

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:31.5億

公募時時価:102億

    

【株主構成】 

(株)プラネット その他の関係会社 1,176,000 24.70 90日

(株)INCJ ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,063,400 22.34

(株)デジタルガレージ 資本業務提携先 320,000 6.72

AGBNielsenMediaResearchB.V. 特別利害関係者など 320,000 6.72

第一生命保険(株) 特別利害関係者など 300,000 6.30

米倉裕之 代表取締役社長 225,000 4.73 90日

(株)タケオホールディングス 帝国データバンクのグループ管理会社 170,000 3.57

(株)ドコモ・インサイトマーケティング 特別利害関係者など 170,000 3.57

(株)博報堂 特別利害関係者など 170,000 3.57

(株)博報堂プロダクツ 特別利害関係者など 170,000 3.57


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、当社株主であり貸株人である株式会社プラネット並びに当社株主であり当社取締役である壱岐浩一及び川崎清は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2022年3月15日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等は除く。)等は行わない旨合意しております。

 また、当社株主であり取締役かつ新株予約権を保有する米倉裕之及び結城義晴は、主幹事会社に対し、ロックアップ期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等並びに当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社株式の売却等は行わない旨合意しております。

 

【代表者】

代表者名 米倉 裕之(上場時55歳6カ月)/1966年生

本店所在地 東京都港区芝大門

設立年 2000年

従業員数 77人 (9/30現在)(平均38.6歳、年収555万円)

株主数 31人 (目論見書より)

資本金 1,160,510,000円 (11/11現在)

代表者生年月日 1966年06月14日生まれ

代表者略歴

1990年04月 東京海上火災保険(株) 入社

2007年02月 GEコンシューマー・ファイナンス(株) 入社

2008年09月 (株)ぐるなび 入社

2011年06月 当社 取締役

2012年12月 当社 代表取締役(現任)


【幹事団】

主幹事証券 いちよし - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 大和 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 SBI - -

引受証券 松井 - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 東洋 - -

引受証券 極東 - -

引受証券 水戸 - -

引受証券 岡三 - -


【参考類似企業】今期予想PER(11/24)

3655  ブレインP 196.9倍(連結予想 )

3680  ホットリンク 27.9倍(連結予想 )

3906  ALBERT 82.8倍(単独予想 )

3984  ユーザロカ 44.4倍(単独予想 )

4071  プラスアルファ 103.8倍(単独予想 )

4422  VALUENEX -倍(連結予想 )

7046  TDSE 40.2倍(単独予想 )


【私見】

 業種としてはPOSを使ったマーケティングサービスで、独自性はあり悪くありません。業績はやや物足りなく、売上の伸びや利益を見ると、成長性がもう少し欲しいです。規模的にも中規模で、ロック状況もVCにかかっておらず不安定です。業種の強みはあるものの、需給・規模・成長性から人気にならないと予想します。


想定価額:2220円

仮条件上限:2220円

初値予想:2500円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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