2021年12月8日水曜日

IPO分析(網屋)

 【事業内容】

 革新性の高いDX化の実現には、情報漏洩やサイバー攻撃に対抗した高度なセキュリティ対応が不可欠です。また、企業の働き方は、テレワークなど場所を限定しないニューノーマルなワークスタイルへと変化しており、安全性と可用性を両立した新しいICTインフラの対応も欠かすことができません。当社は、このような社会環境変化の中、AIやクラウド環境を活用して、「通信」と「データ」を守るセキュリティソリューションプロバイダとして、お客様のDX活動を支援しております。

 当社の強みは、自社開発の製品/サービスが提供できるテクノロジーメーカーであることです。自社開発の推進による高い利益率が特長で、収益は保守やサービスなどによるストック構造によって安定したリカーリングモデルを実現しております。また、お客様は国内の上場企業が中心で、販売代理店も大手ITベンダーであるため、安定した債権回収体質をもちます。

 当社の事業は、“重要データの記録”に着目し、AIテクノロジーをログ分析に活用して、お客様のセキュリティレベルを向上する「データセキュリティ事業」と“ICTインフラのクラウド化”に着目し、SaaSネットワークでセキュリティを向上する「ネットワークセキュリティ事業」で構成しております。


<データセキュリティ事業>

 「ログ管理」は、監視ビデオと同じように事件後の追跡素材や証拠資料として重要な役割を担います。例えば、社内関係者によるデータの持ち出しの監視、外部からのサイバー攻撃検知、テレワーク下での労務管理など、あらゆる企業運営に関わる挙動に対してログが利用されております。

 当事業では、そのようなセキュリティに関するあらゆるログを管理できるソフトウェアを開発・販売しております。

① 『ALog ConVerter』(エーログ コンバータ)

 『ALog ConVerter』は、情報漏洩など内部不正の抑止のために使用されるログ管理製品です。重要データが格納されている大規模なファイルサーバやストレージサーバの操作を記録するものとして利用されます。誰がいつどこでファイルを編集したのか、削除したのか、持ち出したのか、を記録することで、社内からの情報漏洩を監視・抑制できるようになります。

 特長は、複雑なログを分かりやすく視認できるものに分析変換する加工技術です。他社製品の多くは大量かつ複雑なログをそのまま記録保管するのみですが、『ALog ConVerter』はそれを見える化できる解析処理技術を有しており、分かりやすいログとして表現できるため、有事の際の即時検知が実現します。

 同様のログ管理製品では、パソコンからログを取得するPCログ管理製品が御座います。PCログ管理製品の場合、PC全台にエージェントシステムを設置して全てを監視する必要があり、運用の手間が相当にかかります。また、PC台数分のライセンスを必要とするため、高額なコスト負担がお客様に発生します。

 『ALog ConVerter』は、重要データが保管されている『ファイル共有サーバ』に焦点をあて、PC全台の監視を要さず、導入の容易性と低価格化を実現しました。さらに、従業員を監視せずにデータのみを監視できるようになるため、プライバシーを保護した形でセキュリティ対策ができるようになります。


② 『ALog EVA』(エーログ エヴァ)

 『ALog ConVerter』がファイルサーバのログ管理に特化していたため、ファイルサーバ以外でもあらゆるログを広範囲に管理できる製品を提供するべく、『ALog EVA』を開発しました。『ALog EVA』はあらゆるサーバやネットワーク機器などのログを管理する製品で、統合ログと呼ばれるカテゴリの製品に属しております。複雑な設計を要さないように予め設計済みのテンプレートを標準提供しており、サイバー攻撃検知やテレワーク下での勤怠管理などが簡単にログから実装できます。

 従来のログ管理製品は、大量かつ複雑なログを効果的に活用出来ずにいました。当社では、ログの整理化、意味付け、活用方法を展開したテンプレートを標準付帯した「自動化パック」を提供しておりおります。

 ランサムウェアなどサイバー攻撃の即時検知に対応した「サイバー攻撃自動検知パック」、企業が導入を加速させているクラウドソリューションMicrosoft365の挙動監視ができる「Microsoft365対応パック」などは、今後も需要が高まる分野に適合したテンプレートです。

 また、いずれの製品にも最新版から『AI機能』が搭載され、いつもと違う不審/不穏な挙動を過去のログから自動判定する機能を提供しております。事後追跡としてのログの活用から、予兆検知による不正の未然防止として利用できるようになりました。

 「データセキュリティ事業」は、「ソフトウェアライセンス」「ソフトウェア保守」「導入作業」が主な収入です。初期に「ライセンス費/年間保守費/導入作業費」を一括で販売し、次年度以降、毎年ソフトウェア保守料を販売するリカーリングモデルです。


<ネットワークセキュリティ事業>

 当事業は、主に企業のLAN/WANなどのICT通信インフラネットワークを設計・構築する事業です。オフィスのサーバ/ネットワーク構築、拠点間接続、テレワーク用のリモートツールなど通信に関するテクノロジーの提供を行っております。

 提供形態は、お客様先へ出向いて設計・構築・工事を行うネットワークインテグレーションのモデルとお客様のインフラ環境をクラウドから運用代行するSaaSモデル『Network All Cloud』があります。

① ネットワークインテグレーション

 創業から一貫して提供してきた事業で、個別のニーズに合わせてオーダーメイドの企業LAN/WANネットワークを提供します。主に病院関連の実績が多く、院内LANの設計ノウハウを多く所有している点が特徴です。

② 『Network All Cloud』

 ICTネットワークの構築・運用をクラウド上から遠隔で行うことで、現場に人を行かせずに運用できるサービスです。企業ネットワークに必要となるVPNルータ、ファイアウォール、スイッチ、無線LANアクセスポイントなどを当社がクラウド上から遠隔で運用を行う仕組みで、お客様はSaaS上のWeb画面から状態を確認するだけで、ネットワークの運用が実現できます。

 遠隔対応ができるため、全国拠点を持つ小売/外食・営業所・教育機関・塾・医療機関などに利用されております。

  a 『Verona』

 クラウド上からインターネットVPNサービスを設計構築/運用するサービスです。拠点間VPNやソフトウェアVPN用に利用され、テレワーク業務などで必要となる「企業=自宅間」の遠隔秘匿通信にも適しております。

 従来のVPNでは、エンジニアが現地に訪問し、手動でVPN機器を設定しなければなりませんでした。Veronaはクラウド上から自動で設定情報の配布が行えることに加え、初期構築・設定変更・障害対応、更にはファームウェアのアップデートもクラウド上から一括で実施が可能なため、お客様の運用負荷を大幅に削減できます。なお、当サービスは、新型コロナウイルス感染症の影響による「テレワークの急激な増加」に伴って、需要が高まり、2020年12月期には、導入社数が前期比で84%増加しております。

  b 『Hypersonix』(ハイパーソニックス)

 無線LANをクラウド上から設計構築/運用するサービスです。オフィスや店舗/工場/教育機関/医療機関など多拠点環境下にあるWiFiを快適安全に運用します。主な特長は、複数の機器を用途/環境に合わせて柔軟に選択できる点です。一般的な無線LANクラウドサービス事業者では、自メーカーの単一機器だけを取り扱うケースが多く、機器の相性や環境依存などで導入が結実しないこともあり、柔軟性や拡張性に問題を抱えていました。当社のサービスは、希望の用途や規模に合わせて、複数のメーカー機器を選択・利用することができます。


<Ubiquiti UniFi(ユビキティ ユニファイ)>

 クラウドネットワークサービスを牽引する、グローバル販売実績上位の米国Ubiquiti社の「UniFiシリーズ」の国内販売代理契約を締結しました。価格競争力も高く、クラウドネットワークに適した機能を有していることから、当社では、サービス提供用の機器として利用しております。また、国内における機器の物販販売も開始しました。

  c 『Running Supporter』(ランニングサポーター)

 お客様の情報システム業務全般を代行/支援するサービスです。人材を派遣せず、低コストでお客様の情報システム担当の代理業務を行っております。ネットワーク・サーバ機器のメンテナンスや既存保守の取り纏め、他社からの提案に対する査定まで、機材の購入ルートや購入経緯に関わらず、お客様の情報システム担当に代わって対応します。

 「ネットワークセキュリティ事業」は、初期に機器を販売し、その機器を使ったクラウドネットワークシステムの使用料としてサービス利用料を毎年受領するリカーリングモデルです。

 

<データセキュリティ事業>

 当事業で販売する製品は、富士通株式会社、NetApp合同会社、デル・テクノロジーズ株式会社などのサーバハードに付帯するセキュリティソフトウェアであるため、そのようなハードベンダー、またはそれらを再販売するディストリビュータ(流通業者)などが、主な販売代理店です。いずれも大手企業のため、当社の債権回収リスク低減にもつながっております。2020年度の直間比率はそれぞれ「直接販売:間接販売=3%:97%」で、販売代理店を経由した間接販売が中心の事業となります。


<ネットワークセキュリティ事業>

 当事業では、機器販売売上とクラウドサービス売上があります。初期にネットワーク機器を販売し、その機器を含めた運用をクラウド上から行います。クラウドサービスはサブスクリプション型で毎年継続して契約を必要とします。販売系統は、直接お客様に販売する「直接販販」と販売代理店を経由した「間接販売」があり、2020年度の直間比率はそれぞれ「直接販売:間接販売=58%:42%」です。間接販売にはOEMもあり、名称を変更して大手ベンダー商品として販売されております。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2019.12 2,161 128 129 76

(単独実績)2020.12 2,314 186 185 125

(単独予想)2021.12 2,724 222 215 136

(単独3Q累計実績)2021.12 2,146 288 297 191


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2021.12 37.88 - 0

調達資金使途 広告宣伝費、人材採用費・教育費、研究開発費、借入金返済


上場時発行済み株数 4,000,000株 (別に潜在株式509,600株)

公開株数 1,184,000株(公募429,600株、売り出し600,000株、オーバーアロットメント154,400株)

 

PER:52.0

PSR:2.9

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:23.3億

公募時時価:79億

    

【株主構成】 

(株)チャクル 役員らが議決権の過半数を所有する会社 1,164,800 28.55 180日

石田晃太 代表取締役社長 727,200 17.82 180日

伊藤整一 代表取締役会長 454,400 11.14 180日

投資事業組合オリックス9号 ベンチャーキャピタル(ファンド) 400,000 9.80 90日・1.5倍

(株)セキュアヴェイル 特別利害関係者など 176,000 4.31

網屋従業員持株会 特別利害関係者など 149,900 3.67

柴崎正道 取締役CISO 116,800 2.86 180日

新納隆広 従業員 100,800 2.47 90日

加藤光栄 従業員 84,800 2.08 90日

山崎勝巳 従業員 70,400 1.73 90日


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人、新株予約権者かつ貸株人である伊藤整一、売出人かつ新株予約権者である石田晃太、当社株主かつ新株予約権者である柴﨑正道、寺園雄記、佐久間貴及び森行博並びに当社株主である株式会社チャクル及び田口信夫は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2022年6月19日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得することは除く。)等は行わない旨合意しております。

 また、当社株主かつ新株予約権者である新納隆広、加藤光栄及び山﨑勝巳は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2022年3月21日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等は行わない旨合意しております。

 加えて、売出人である投資事業組合オリックス9号は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2022年3月21日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその価格が「第1 募集要項」の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う売却は除く。)等は行わない旨合意しております。

 なお、ロックアップ対象株式は、上記株主が保有する当社株式のうち2,683,680株です。 

 

【代表者】

代表者名 伊藤 整一(上場時63歳4カ月)/1958年生

本店所在地 東京都中央区日本橋浜町

設立年 1996年

従業員数 128人 (11/18現在)(平均37.4歳、年収614.3万円)

株主数 59人 (目論見書より)

資本金 50,000,000円 (11/18現在)

代表者生年月日 1958年08月10日生まれ

代表者略歴

1982年04月 (株)ユニオス入社

1987年05月 (株)カルケット入社

1995年08月 加賀ソルネット(株)設立 常務取締役

1996年12月 当社設立 代表取締役

2011年09月 シースリー・マネージメント(株) 監査役

2012年06月 台湾網屋股份有限公司設立 董事就任

2017年05月 同社 董事長

2020年03月 当社 代表取締役会長(現任)


【幹事団】

主幹事証券 岡三 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 マネックス - -

引受証券 むさし - -

引受証券 水戸 - -

引受証券 香川 - -


【参考類似企業】今期予想PER

3692  FFRI 47.9倍(連結予想 )

4166  かっこ 49.2倍(単独予想 )

4493  サイバセキュリ 102.5倍(連結予想 )

4704  トレンド 26.9倍(連結予想 )

6199  セラク 18.8倍(連結予想 )

7518  ネットワン 18.4倍(連結予想 )

9450  ファイバーGT 18.8倍(連結予想 )

【私見】

 業種としてはセキュリティ関連で妙味はあるものの、同業も多く大きな優位性はなさそうな気はします。売上も1割増ペースで伸びていはいるものの、急拡大というほどの成長性ではなさそうです。時価総額は大きくはないですが、吸収金額はやや大きめでこの時期に買いはそこまで入らないと予想します。


想定価額:1970円

仮条件上限:1970円

初値予想:2500円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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