2021年12月4日土曜日

IPO分析(HYUGA PRIMARY CARE)

 【事業内容】

 当社は、「患者さんが24時間365日、自宅で『安心』して療養できる社会インフラを創る」の経営理念のもと、在宅訪問薬局事業、きらりプライム事業、ケアプラン事業及びタイサポ事業を主たる事業としており、それぞれの事業が地域医療機関・介護事業者と連携することでシナジーを生み出す事業モデルを構築しています。

 当社の在宅訪問薬局事業は医療機関及び介護事業者との連携が不可欠ですが、在宅患者に対してケアプランを提供するケアプラン事業、医療機関から介護施設等の住居を紹介するタイサポ事業というように、一人の在宅患者に対して複数のサービス及び商品を提供できる事業構成であります。

 また、きらりプライム加盟先店舗は、在宅訪問薬局の運営ノウハウを享受するとともに、当社を含む地域包括ケアシステムと繋がり、加盟店先が展開する地域でそれぞれの地域包括ケアシステムを形成することでより大きなネットワークとなり、全国の在宅患者をサポートできると考えております。

 今後、地域包括ケアの確立のため、在宅患者へのサービスだけでなく、医療、介護領域の事業者が抱える課題に向けて、IOT・ICTを利用したソリューションサービス及び商品を提供し、幅広いプライマリーケアのプラットフォーム企業を目指しております。


(1)在宅訪問薬局事業

 在宅医療実施医療機関及び門前医療機関の発行する処方箋に基づき患者に医薬品の調剤を行う在宅訪問薬局事業を営んでおり、「きらり薬局」の屋号のもと、主要出店エリアである福岡市近郊を中心にした西日本で23店舗、横浜市近郊及び千葉市近郊を中心とした東日本で12店舗を展開しております。

 在宅訪問薬局事業の特徴として、一般的である外来患者自身が薬局を訪問する門前型薬局の機能を一部残しつつも、厚生労働省から提示された、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるというコンセプトである「地域包括ケアシステム」の拡大及び在宅医療の推進に着目し、老人ホーム型介護施設の出店地域において「在宅訪問型」の出店に注力しており、特に特定施設、住宅型老人ホーム、サービス付き高齢者住宅及びグループホームとの連携を重視した店舗展開を推進しております。

 当社の在宅訪問薬局における売上構成は、売上の大半が外来調剤収入である従来の門前薬局と異なり、外来調剤収入が40%であるのに対し、在宅訪問収入の比率が売上全体の約60%を占めており、1店舗当たり平均200人以上の在宅患者様に月間400回を超える居宅療養管理指導を行い、通院困難な在宅患者に対して緊急時には24時間体制で薬剤師が訪問するサービスを行います。当社がサービスを行う在宅患者は87%が高齢者施設に入居しており、97%が要介護認定者となっております。厚生労働省は2014年9月から地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会を行い、病院のベッド数の減少及び在宅施設の増加施策を進めており、厚生労働省が発表するデータを参照しても居宅療養管理指導の算定回数が年々増加していることからも政府の施策が浸透していることがわかります。しかし、全国の調剤薬局約60,000店舗のうち居宅療養管理指導を行う薬局数は25,569店舗で、1店舗の居宅療養管理指導回数の平均は月間34回程度となっており、当社の在宅訪問薬局事業は一般的である外来患者自身が薬局を訪問する門前薬局と違いユニークな事業形態と言えます。

 また、2018年7月には全国初となる保険診療内でのオンライン服薬指導を国家戦略特区(福岡市)で実施しました。これは、いままで在宅訪問服薬指導を受けることができなかった地域の患者様にも、24時間365日在宅訪問薬局のサービスを提供できるようになる先端的な取り組みであります。

 加えて、通常は調剤薬局としては出席しない介護認定者のサービス担当者会議や、地域ケア会議にも年間1,000回を超える出席をしており、積極的に多職種(医師、看護師、ヘルパー、ケアマネージャー、福祉用具事業者等)と連携し、地域包括ケアシステムの構築に貢献しております。


(2)きらりプライム事業

 当社の経営理念である「患者さんが24時間365日、自宅で『安心』して療養できる社会インフラを創る」を実現するため自社の店舗展開だけでなく広く運営ノウハウを提供し、増加する在宅患者に対応するため2019年2月より開始しました。主な事業内容は中小薬局事業者に対して在宅訪問薬局運営ノウハウの提供、自社開発の在宅訪問支援情報システムの貸与、人材・営業(個人患者、介護施設の開拓)の支援及び実地による教育をおこなうものです。2021年9月末時点では、全国34都道府県で803店舗の事業者に加盟していただいており、加盟解約は事業開始から2021年9月末まで6店舗となっております。

 当事業の特徴は、当社が創業から培ったノウハウを外部サービスとし、在宅訪問を行っている、又は行おうとする事業者の困りごとへのソリューションを提供します。さらに、仲間(加盟店)を集めることで急増する在宅患者に対応するだけでなく、中小薬局事業者の薬価改定や政府の施策への対応等の経営課題に共に取り組みます。特に当社が2017年6月に自社開発した在宅訪問支援情報システム(ファムケア)は、在宅訪問業務特有の報告書作成機能やお薬の配達先でも患者様の薬歴等を確認でき、在宅訪問業務に関わるコスト増加を抑制することができます。10年を超える在宅訪問業務の経験から薬剤師が直接関わって開発したシステムは、当社ならではの細かなユーザビリティを実現しており、当事業のサービスの大きな特徴と言えます。

 この在宅訪問支援情報システム(ファムケア)や医薬品卸からの医薬品購入を支援する医薬品購入交渉代行サービスは、きらりプライム加盟先の在宅患者の処方箋枚数や、仕入れた医薬品の金額に応じて利用料が変動するサブスクリプション型リカーリングレベニューモデル(注)となっており、加盟先の増加と当社の支援による在宅患者増加が事業拡大のカギとなります。その他、定額基本料金(サブスクリプションモデル)として、定期セミナーの開催や過去のセミナー資料の配信、在宅型薬局に関する問合せ対応等のサービスを提供しております。


その他サービスとしては次のとおりであります。

a オンコール体制の支援

 地域支援体制加算の要件である「24時間365日体制」を構築するための人員の確保が困難である場合に、当社の薬剤師が加盟店薬局の営業時間外及び休日夜間に、医療機関及び介護施設等から来る緊急連絡に対応するオンコール補助を行う支援をしております。

b 在宅緩和ケアの指導

 当社の緩和薬物療法認定薬剤師がPCAポンプ(モルヒネ持続皮下注射)や特定保険医療材料の実務指導を随時行い、加盟店のがん末期患者への在宅ケアを推進しております。なお、日本緩和医療薬学会に認定されている緩和薬物療法認定薬剤師は2021年3月時点で全国の医療機関に759名、うち保険調剤薬局勤務者は54名であり、当社所属は3名であります。


(3)ケアプラン事業

 ケアプラン事業は、当社の介護支援専門員(ケアマネージャー)が、利用者の心身の状況、家族の希望等を勘案して居宅サービス計画(ケアプラン)を作成すること及び同計画に基づくサービスの提供が確保されるようサービス事業者との連絡調整を行う事業で、「ケアプランサービスひゅうが」の名称で、福岡県、神奈川県、千葉県を主要拠点として展開しております。

 このケアプランサービスと当社の持つ「在宅訪問」「在宅重視型開業医とのネットワーク」を連携することにより、情報共有を密に行い、より利用者のニーズに沿った医療介護サービスを提供しております。当社のケアプランサービスを受ける方の約8割は当社の在宅訪問薬局サービスを受けていただいております。ケアプラン事業を行うことにより、介護事業者とのネットワークを強化することができるため、間接的に在宅訪問薬局事業へのシナジーが生まれると認識しております。


 (4)タイサポ事業

 タイサポ事業は、当社が運営する介護施設検索サイト等を通じて、退院患者に介護施設等の施設を紹介するサービスを提供する事業で、退院患者を受入れた介護施設から紹介料を受領しております。

 一般的に退院患者が入居施設を選定するに当たっては、医療機関で退院調整支援を担当する医療ソーシャルワーカーもしくはケアマネージャーのアドバイスによって入居施設を決めますが、当社の在宅訪問薬局事業やケアプラン事業では、日常的に医療ソーシャルワーカーやケアマネージャー、介護施設と連絡を取り合える状況にあり、双方のニーズを適時把握できる利点を有しています。

 当社では、医療ソーシャルワーカー及びケアマネージャーをターゲットとした検索サイトを構築しており、退院患者のニーズに合致した有益な施設情報を積極的に提供し、医療ソーシャルワーカー及びケアマネージャーと情報連携することで、入居成約率を高めております。


(5)その他新たな事業(ICT事業)の開発

 当社が属する医療介護業界は一般的に労働集約型産業であり、高齢化が進む社会で労働人口が縮小する中でより効率的な運営が求められます。

 そこで当社は介護事業者との関わりの中で得られた人材不足に起因する事業運営上の課題を解決するため、DXの取り組みの一環として「Primary Care Robot」(介護施設向けウェアラブル機器等)を開発し、実際の介護施設で導入試験をしております。今後、当社の新たな事業として当社のネットワークを生かし2021年9月よりテスト販売を開始しました。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2020.3 4,331 122 122 32

(単独実績)2021.3 5,086 228 250 97

(単独予想)2022.3 5,784 503 474 330

(単独中間実績)2022.3 2,767 226 223 145


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2022.3 96.52 - 0

調達資金使途 システム開発費、人材の採用費


上場時発行済み株数 3,460,700株 (別に潜在株式333,300株)

公開株数 351,200株(公募50,000株、売り出し255,500株、オーバーアロットメント45,700株)

 

PER:26.9

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:9.1億

公募時時価:90億

    


【株主構成】 

黒木哲史 代表取締役社長 729,300 19.48 180日

(一社)Hyuga 役員らが議決権の過半数を所有する会社 450,000 12.02 180日

(株)シーユーシー その他の関係会社の子会社 420,000 11.22 180日

エムスリー(株) その他の関係会社 349,800 9.34 180日

SMBCベンチャーキャピタル2号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 264,000 7.05 90日・1.5倍

エムスリーキャリア(株) その他の関係会社の子会社 250,200 6.68 180日

九州アントレプレナークラブ投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 195,000 5.21 90日・1.5倍

コタエル信託(株) 新株予約権信託の受託者 140,700 3.76

山崎武夫 取締役 108,000 2.88 180日

城尾浩平 取締役 100,200 2.68 180日

別府鵬飛 特別利害関係者など 90,000 2.40

(株)オフィスエム 特別利害関係者など 72,000 1.92


本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である黒木哲史並びに当社株主かつ当社役員である城尾浩平、山﨑武夫、大西智明並びに当社株主である一般社団法人Hyuga、株式会社シーユーシー、エムスリー株式会社、エムスリーキャリア株式会社、HYUGA PRIMARY CARE従業員持株会、黒木勢津子は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2022年6月17日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等は除く。)等を行わない旨合意しております。

 また、売出人であるSMBCベンチャーキャピタル2号投資事業有限責任組合、九州アントレプレナークラブ投資事業有限責任組合及びみやざき未来応援ファンド投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後90日目の2022年3月19日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集事項」における発行価格の1.5倍以上であって、東京証券取引所における初値が形成された後に主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)等を行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 黒木 哲史(上場時43歳9カ月)/1978年生

本店所在地 福岡県春日市春日原北町

設立年 2007年

従業員数 333人 (10/31現在)(平均36.1歳、年収418.3万円)

株主数 45人 (目論見書より)

資本金 104,742,000円 (11/15現在)

代表者生年月日 1978年03月15日生まれ

代表者略歴

2001年04月 アイワ調剤(株)入社

2002年04月 (株)コクミン入社

2003年04月 沢井製薬(株)入社

2007年11月 Hyuga Pharmacy(株)(現HYUGA PRIMARY CARE(株))設立代表取締役社長(現任)

2012年07月 (株)WILL取締役

2016年03月 (株)くらし計画社外取締役

2017年04月 社会福祉法人ひのき会評議員(現任)

2019年06月 社会福祉法人彩幸会理事(現任)


【幹事団】

主幹事証券 みずほ - -

引受証券 野村 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 いちよし - -

引受証券 FFG - -


【参考類似企業】今期予想PER(11/25)

2796  ファマライズ 15.7倍(連結予想 )

3034  クオールHD 10.7倍(連結予想 )

3341  日本調剤 10.4倍(連結予想 )

3353  メディ一光 10.3倍(連結予想 )

4350  メディカルシス 10.5倍(連結予想 )

7129  ミアヘルサHD 7.4倍(連結予想 )

9627  アインHD 26.9倍(連結予想 )

9776  札臨 8.0倍(連結予想 )


【私見】

 業種としては、在宅訪問薬局ということとエムスリーの持ち分会社ということで優位性はあります。福岡を中心として、全国展開していけば成長余地は充分あるかと思います。ただし、PERは他の薬局に比べやや高めの設定で、初値で上がってしまえば成長性を折り込んだ価額になってしまいます。エムスリーの影響力を買うか、普通の薬局と捉えるかがポイントになりそうです。


想定価額:2510円

仮条件上限:2600円

初値予想:4500円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立~やや強気

総合評価3.5

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