2021年12月11日土曜日

IPO分析(タカヨシ)

 (事業モデル)

 当社は「安心と笑顔が広がる世界をつくる」をビジョンに掲げ、地域の生産者・食品メーカー等に対して、自社での設備投資を必要としない新たな販路を提供する「シェアショップ事業」を全国100以上の「わくわく広場」の店舗を通じて展開しており、野菜・果実、パン、お弁当・お惣菜、加工食品(佃煮、豆腐等)、和洋菓子、日本各地の調味料、花などの商品を販売しております。

 そのうち約8割の店舗はショッピングモール内にテナント(モール店)として出店し、残りはロードサイド型の路面店として出店しております。また、一部の店舗では当社がフランチャイザーとなり、フランチャイジーからロイヤリティ収入を得ておりますが、直営での出店を基本としております。

 当社は、自社物件にて、または、ショッピングモールや物件オーナーから売場を賃借し、シェアショップ事業を体現する場としての「わくわく広場」を展開しております。

「わくわく広場」では、店舗周辺地域の農家やパン屋、和洋菓子屋、飲食店、惣菜店などといった生産者から登録を募り、登録した生産者(以下、生産者)に対して当社の売り場を販売場所として共有するシェアリングサービスを提供しております。当社は生産者のためのプラットフォーマーとしての役割に徹することを原則としており、生産者は、自らの商品を「わくわく広場」の店頭に直接納品・陳列し、当社は売り場管理やレジ業務をはじめとした店舗運営を行い、当社は店舗に出品された商品についての在庫リスクを負わない仕組みとなっております。

 当社では店頭に陳列された商品のうち、お客様にお買い上げいただいた商品について、お客様への販売価格を「流通総額」として集計し、当社事業の伸長を図る重要な経営指標として注視しております。

 また、当社は生産者自身で決定した消費者への販売価格に対して、当社が定める一定の料率をもとに算出した仕入金額で生産者から販売商品を仕入れる消化仕入方式を採用しており、当社は流通総額から当該仕入金額を差し引いた金額を財務諸表上の「営業収益」として計上しております。消化仕入方式に係る一定の料率については、当社の営業収益や利益に重要な影響を及ぼすものでありますので、社内で慎重な議論を重ね、生産者の利益、商品が納品される頻度や市場動向等を勘案して、野菜・果実、弁当・惣菜・パン類、加工品といった商品分類毎に50%から80%の範囲で当社が決定しております。


(事業の特徴)

 当社は「シェアショップ事業」を通じて、地域の中小規模の生産者に販売機会を提供するシェアリングサービスのプラットフォーム運営者として、生産者とお客様をつなぎ、①生産者の収入の極大化、②お客様にとって新鮮な地元の一次産品及び加工品の購入、③当社の収益の極大化、という3要素の鼎立を可能とする事業モデルを確立しております。


A 単なる小売業ではなく、プラットフォーム型の店舗スペースのシェアリングサービス

「わくわく広場」は、一見通常の小売店の外観を有しているものの、店頭に並ぶ商品は当社が発注・仕入を行った商品ではなく、原則として多数の生産者が自らの意思で出品している商品により構成されており、委託販売スタイルの食のプラットフォームとなっております。

 店舗を構えた小売業の場合、商品を仕入れて販売者が在庫として抱えた上で販売を行う形式が一般的ですが、当社のビジネスモデルは、インターネット上のフリーマーケットのようなプラットフォーム型のシェアリングサービスでありながら、実店舗でのリアルな販売スペース(平台やテーブルの一部)を地域の生産者と共有しているという特徴を有しております。生産者にとっては、在庫リスクは負うものの、販売力のある当社の売り場を自らの売り場として利用することが出来る仕組みとなっています。

 こうした特徴から、店頭商品の大部分は生産者が所有権を有したままの商品であり、当社の棚卸資産としては計上されないため在庫回転日数が短くなっている上、お客様のお買い上げ代金を一旦当社が預かり、翌月に生産者にお支払いしていることから、当社では資金流入が資金流出よりも先行するビジネスモデルとなっております。


B 生産者にとっての使い勝手が良い「第2の販路」

「わくわく広場」へ出品を希望する生産者は、「わくわく広場直売所会」への登録を条件としておりますが、登録に際しては、各種営業許可や免許等の審査はあるものの、登録料・保証金を徴収しておりません。また、出品にあたっては特段の設備投資や人材投資は必要なく、生産者自身で新たに店舗を構える場合と比較して低いコストで新店舗をオープンさせたり、新たな販路を開拓したりするのと同様の効果を得ることが可能となります。

 また、生産者は、自身の商品を「わくわく広場」の店頭に直接納品・陳列する以外にも、宅配便や一部地域では当社運営の物流センターを通しての出品ルートも活用することで、1店舗だけではなく、当社が運営する全ての店舗を自らの売り場として利用することが出来る仕組みとなっています。

 さらに、契約制ではなく登録制であることから、「いつ・何を・いくつ・いくらで」出品するかを生産者が自由に決定することが出来るため、出品の頻度や時間帯、出品商品の種類や量・値段を自らの都合でコントロールすることが可能であり、出品に伴うメリット・デメリットを検証しやすく、出品を継続するにあたっての負担も少なくなります。そのため、生産者自身の資本力、人員及び信用力だけでは出店・出品が難しいようなショッピングモールを中心とした集客力のある売り場での販売機会を得るための障壁が、生産者にとって低いものとなっております。


 C 「農産物直売所」ではなく、シェアショップ事業を通じた「地域を結ぶ直売広場」

 2000年に当社が直売事業を開始した当初、「わくわく広場」は、農産物を中心とした農産物直売所としてスタートしました。現在も農産物は依然として主力商品の一つではありますが、野菜・果実以外に店舗周辺地域のパン屋、和洋菓子屋、飲食店などの商品や、日本各地の中小規模の食品メーカー等が作る各種加工食品や調味料といった、農産物以外の商品を取り扱う生産者の出品もあり、2021年9月期の流通総額(店舗におけるレジ通過額のほか、値札シールの販売代金や不動産賃貸収入等を含む総額の全体売上高)における商品の種類別割合は野菜・果実が約30%、弁当・惣菜・パン類が約31%、加工品等が約23%、その他が約16%といった構成になっております。このように、現在では「わくわく広場」は、地元の新鮮な産地直送(産直)の野菜以外にも、様々な地域の商品をまとめて手に入れることが出来る「地域の食のセレクトショップ」となっております。

 当初は農産物直売所からスタートしたシェアショップ事業ですが、現在では「地域を結ぶ直売広場」をコンセプトに掲げ、地域にあるおいしい商品を集め、地域の生産者とお客様をマッチングさせ結びつけることにより、地域経済の活性化に貢献するという社会的使命を果たしております。


D ローカルサプライチェーンの漸次形成とローコストな店舗オペレーション

 「わくわく広場」では、商品供給網は地元の生産者を中心に形成しており、出品する生産者の増減を繰り返しながら、地元の生産者による地元の供給網(ローカルサプライチェーン)が徐々に形成されるという特徴があります。そのため、生産者の増加、お客様への認知、集客の向上というスパイラルを繰り返すことで、店舗の売上が逓増していく傾向があります。

 また、ローカルサプライチェーンを前提とすることで、流通コストの発生が抑えられるとともに、値付けや陳列などの通常の店舗業務の一部は生産者自らが行うほか、チラシを中心とした販促は商品の特性上難しく、店舗設備も平台、冷蔵ケース及びレジなどとなっており特別な販売設備が必要ではないため、店舗運営はシンプルかつローコストになっております。

 


【業績等】

業績動向(百万円) 営業収益 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2019.9 5,782 225 144 144

(単独実績)2020.9 5,165 414 391 284

(単独実績)2021.9 5,528 689 650 593

(単独予想)2022.9 6,366 801 774 429


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2022.9 85.88 -  - 

調達資金使途 店舗設備への投資、IT資産への投資


上場時発行済み株数 5,200,000株 (別に潜在株式430,000株)

公開株数 1,627,200株(公募900,000株、売り出し515,000株、オーバーアロットメント212,200株)


PER:18.2

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:25.3億

公募時時価:81億

    

【株主構成】 

(株)スプリング 役員らが議決権の過半数を所有する会社 2,673,000 56.51 90日

高品政明 代表取締役社長 728,000 15.39 90日

高品謙一 代表取締役社長の血族 212,000 4.48

高品佳代 代表取締役社長の配偶者 152,000 3.21 90日・1.5倍

(株)千葉銀行 特別利害関係者など 110,000 2.33 90日・1.5倍

剱持健 代表取締役専務 88,000 1.86 90日

大森広美 取締役 60,000 1.27 90日

曽根田博 取締役 60,000 1.27 90日

沢幡良和 特別利害関係者など 60,000 1.27 90日・1.5倍

佐藤美智子 代表取締役社長の血族 50,000 1.06 90日

(株)千葉興業銀行 特別利害関係者など 50,000 1.06 90日・1.5倍


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である株式会社スプリング、売出人である髙品政明並びに当社株主である剱持健、大森広美、曽根田博、和田照男、柴崎智洋、増山壽一及び黒田智也は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2022年3月23日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く。)を行わない旨合意しております。

 また、売出人である髙品佳代並びに当社株主である株式会社千葉銀行、澤幡良和、佐藤美智子、株式会社千葉興業銀行、在原博、山口佳代子、北見一幸、髙橋重夫、野城俊博、菅秀介、勅使河原徹、石井克典、浦邉恭行、大月浩二、木賣一彦、長妻栄一、野上泰志、渡部恭士、岩﨑功、剱持英子、白石一英、菅谷孝及び山﨑りさ子は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2022年3月23日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う売却等を除く。)を行わない旨合意しております。 


 

【代表者】

代表者名 髙品 政明(上場時75歳5カ月)/1946年生

本店所在地 千葉県千葉市美浜区中瀬

設立年 1970年

従業員数 91人 (9/30現在)(平均37.8歳、年収456.1万円)

株主数 34人 (目論見書より)

資本金 50,000,000円 (11/19現在)

代表者生年月日 1946年07月10日生まれ

代表者略歴

1967年12月 千葉トヨペット(株) 入社

1970年12月 (有)髙芳商事(現当社)設立 専務取締役

1979年11月 代表取締役社長(現任)

1980年11月 (株)髙芳商事(後に(株)イアケスへ社名変更)設立 同社代表取締役社長

2010年81月 同社破産のため代表取締役社長を退任


【幹事団】

主幹事証券 野村 1,231,100 87.00

引受証券 ちばぎん 99,000 7.00

引受証券 SBI 28,300 2.00

引受証券 マネックス 28,300 2.00

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー 28,300 2.00


【参考類似企業】今期予想PER(12/1)

3541  農総研 176.0倍(単独予想 )


【私見】

 農産物直売所などを運営し、初物銘柄として評価はできますが、市場規模からはそこまで高い評価はできそうもありません。売上は緩やかな伸びですが、利益の伸びは非常に良く、割高感もなく拡大余地はまだありそうです。吸収金額は適度な金額ですが、時価総額は大きくなく、VCなしでロックはされているので、そこそこは上がると予想します。


想定価額:1490円

仮条件上限:1560円

初値予想:2000円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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