2021年12月7日火曜日

IPO分析(Finatextホールディングス)

 【事業内容】

(1)金融インフラストラクチャ事業

 金融サービスを運営するのに必要となる複雑な基幹システムを、クラウド上でSaaS型のシステムとして、顧客に提供するものであります。株式会社Finatext、株式会社スマートプラス及びスマートプラス少額短期保険株式会社が本事業を行っております。

 従来型のパッケージ型のシステムと比較し、当社グループの次世代クラウド基幹システムには4つの特徴があります。

1.安価な初期導入費

2.短い導入期間

3.エンドユーザーのニーズに沿ったサービスをテーラーメイドで開発可能

4.既存サービスとの接続によるシームレスなサービス体験


これらの特徴を活かして、以下のようなお客様に当社グループのサービスを導入いただいております。

1.BtoCサービスを運営しており、その既存ユーザー向けに金融サービスも提供したいと考える新規参入の事業者

2.デジタル特化の新サービスを立ち上げる際に、新しい基幹システムを採用したいと考える既存金融機関


現在は、金融インフラストラクチャを証券ビジネス及び保険ビジネス向けに展開しております。

① 証券インフラストラクチャビジネス

 本ビジネスは、第一種金融商品取引業者及び投資運用業者である株式会社スマートプラスが、証券インフラストラクチャ「BaaS」の運営及びパートナー企業への提供を行っており、初期導入時のシステム開発費、月次の定額利用料、証券売買取引に伴う従量課金収益を基本収益として受領しております。

 証券インフラストラクチャ「BaaS」は、証券サービスの構築に必要となる多様な外部連携を全てクラウド上で管理することで、パートナー企業は、独自開発時に比べ、初期投資額を最大80~90%削減することができ、企画からサービス開始までの期間も半分以下に短縮することが可能である点が特徴です(注1)。当社グループはクラウドサーバーや最新の開発言語及び開発手法を活用することで、複雑なシステムを低コストで効率的に開発することが可能な体制となっております。


  株式会社スマートプラスは、2017年11月より、株式会社大和証券グループ本社及び大和証券株式会社と資本業務提携を締結し、同社からノウハウや一部システムの提供を受けることで、金融機関として安定した運営の実現を図っております。 現在は、自社サービスである「STREAM」に加え、株式会社クレディセゾンをパートナーとする「セゾンポケット」やANA X株式会社をパートナーとする「Wealth Wing」が「BaaS」上で稼働しております。

以下の企業と当社グループのサービスにかかる基本合意契約または業務委託契約を締結しております。

株式会社Japan Asset Management、ニッセイアセットマネジメント株式会社、株式会社GCIキャピタル、トヨタファイナンシャルサービス株式会社、あかつき証券株式会社


② 保険インフラストラクチャビジネス

 本ビジネスは、株式会社Finatextが、保険インフラストラクチャ「Inspire」の開発及び保守を行い、初期導入時のシステム開発費用、月次の定額利用料、保険料収入に伴う従量課金収益を基本収益として受領しております。また、少額短期保険業者であるスマートプラス少額短期保険株式会社が、保険インフラストラクチャ「Inspire」を利用してパートナー企業とともに少額短期保険を提供し、保険料収入を受領しております。保険インフラストラクチャ「Inspire」は、新規保険商品の導入を短期間で実現できること、そして保険商品を購入から保険金支払いまでの全てのプロセスをオンライン上で行うことができるのが特徴です。

 現在は、スマートプラス少額短期保険株式会社以外にも、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社及び株式会社エポス少額短期保険が保険インフラストラクチャ「Inspire」を利用しております。

稼働中の上記3社に加えて、以下の企業と当社グループのサービスを導入いただく方針で合意しております。

ニッセイ少額短期設立準備株式会社、エムエスティ保険サービス株式会社


(2) フィンテックソリューション事業

 金融機関向けにデジタルトランスフォーメーション及びデジタルマーケティングの支援を行っております。「① ソリューションビジネス」と「② マーケティングビジネス」で構成されております。

 なお、当社グループは、PCやスマートフォンを通じて、顕在層ユーザーにアクセスしたい金融機関に対してオーダーを提供することで収益を獲得する「オーダーフローシェアビジネス」を展開しておりましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け取扱高が大幅に減少したため、2020年11月をもって本ビジネスから撤退しております。


 ① ソリューションビジネス

 金融機関に対して、デジタルトランスフォーメーションの支援を行うことで、主に開発委託費やサービス維持運営費を受領しております。モジュール化されたソリューションを用いてお客様の要件に迅速に対応するだけでなく、お客様のニーズに合わせて、ビジネス企画から開発、マーケティングまでEnd-to-Endのソリューションを提供しております。

 例えば、直近の案件事例として、株式会社三菱UFJ銀行による新しい金融デジタルサービスである「Money Canvas」のシステム開発支援を行っております。当該サービスでは、当社グループが保有するデジタル金融の統合基盤技術が採用されております。同技術を用いると、資産運用サービスや保険商品といった様々な金融サービスをラインナップに揃えたプラットフォーム上でアカウントを一元化でき、1つのアカウントで複数の金融機関のサービスを利用することが可能になります。


② マーケティングビジネス

 PCやスマートフォンを通じて、潜在層ユーザーにアクセスしたい金融機関の販促活動を支援することで、送客ユーザー数等に応じて広告掲載料を受領しております。様々な金融関連サービスに関心を有する潜在層ユーザー向けに、当社のウェブサイトやスマートフォンアプリを通じて、金融に関する学習、デモトレーディング等のゲーミフィケーションや金融商品サービスの比較を行うことができるサービスを提供し、潜在層ユーザーを集客しております。


当社グループで開発・運営するサービスは主に下記のとおりです。

あすかぶ!・・・株式投資のデモトレ及び学習コンテンツの提供

かるFX・・・FX投資のデモトレ及び学習コンテンツの提供

Money Freek・・・保険商品に関する情報の提供

トレダビ・・・株式投資のデモトレ及び学習コンテンツの提供


(3) ビッグデータ解析事業

 ビッグデータを保有する企業のデータ利活用の促進を支援しており、「① データライセンスビジネス」と「② データ解析支援ビジネス」で構成されております。

① データライセンスビジネス

 ビッグデータを保有する企業のデータを解析し、解析結果をライセンスとして外部に販売することでデータライセンス料を受領しております。現在はPOSデータやクレジットカードデータ等のデータを中心に、データホルダーとレベニューシェア契約を結び、解析されたデータを官公庁や国内外の機関投資家に提供しております。


データホルダー及び提供している企業は主に下記のとおりです。

 ・株式会社日本経済新聞社

・株式会社True Data

・KDDI株式会社

・CCCマーケティング株式会社

・株式会社BCN 

・株式会社ジェーシービー 等


 ② データ解析支援ビジネス

 金融機関や事業会社に対して、保有するビッグデータを活用したマーケティングやサービス改善、業務効率向上の支援を行い、開発委託費等を受領しております。

 当社グループは、3つのセグメントの事業提供を行う子会社が存在することで、金融インフラストラクチャの開発・運用のみならず、ウェブ・モバイルサービスの企画・開発及びデータ解析も組み合わせて提供することが可能な体制となっております。  


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(連結実績)2020.3 1,707 -721 -766 -1,566

(連結実績)2021.3 2,751 -633 -757 -1,012

(連結予想)2022.3 2,654 -780 -782 -1,000

(連結中間実績)2022.3 897 -481 -488 -474


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(連結予想)2022.3 -24.44 -  - 

調達資金使途 運転資金、子会社資本増強、借入金の返済、設備資金


上場時発行済み株数 48,754,628株 (別に潜在株式4,177,424株)

公開株数 17,796,900株(公募2,800,000株、売り出し12,675,700株、オーバーアロットメント2,321,200株)

シンジケート 公開株数15,475,700株 


売出しの売出株式を買取引受けした上で、引受人の買取引受による売出しに係る売出株式のうちの一部を当該引受人の関係会社等を通じて、欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)の海外投資家に対して販売します。


PER:

PSR:24

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:230億

公募時時価:629億

    

【株主構成】 以下180日

林良太 代表取締役社長CEOなど 19,109,330 38.12

auフィナンシャルホールディングス(株) 資本業務提携先 6,406,685 12.78

UTEC3号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 5,794,658 11.56

ジャフコSV5共有投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 5,003,482 9.98

伊藤祐一郎 取締役CFOなど 1,797,874 3.59

伊藤英佑 新株予約権信託の受託者 1,719,000 3.43

(株)GCIキャピタル 取引先 1,430,625 2.85

ジャフコSV5スター投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,250,000 2.49

渡辺努 特別利害関係者など 1,198,800 2.39

戸田真史 取締役など 1,122,220 2.24

(株)日本経済新聞社 特別利害関係者など 933,408 1.86

(株)SMBC信託銀行 特定金外信託口12100440 ベンチャーキャピタル(ファンド) 696,379 1.39


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、当社代表取締役かつ貸株人である林良太、売出人であるUTEC3号投資事業有限責任組合、ジャフコSV5共有投資事業有限責任組合、auフィナンシャルホールディングス株式会社、ジャフコSV5スター投資事業有限責任組合、渡辺広太、株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託口 契約番号12100440)、渡辺努、齋藤祐輝、株式会社GCIキャピタル、保田容之介、今井聡、高橋充、石橋淳志及び辻中仁士、当社取締役かつ当社の株主である伊藤祐一郎及び戸田真史、並びに当社の株主である株式会社日本経済新聞社、西村清彦、Finatext従業員持株会、染原友博及び赤井厚雄は、共同主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日(当日を含む)後180日目(2022年6月19日)までの期間(以下、「ロックアップ期間」という。)、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、本募集並びに引受人の買取引受による売出しにおけるオーバーアロットメントによる売出しのために大和証券株式会社に対して当社普通株式の貸付けを行うこと及びグリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を大和証券株式会社が取得することを除く。)を行わない旨を合意しております。

 さらに、当社の新株予約権を保有する林良太、伊藤祐一郎、伊藤英佑及び戸田真史は、共同主幹事会社に対し、ロックアップ期間中、共同主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式の売却等を行わない旨を合意しております。


【代表者】

代表者名 林 良太(上場時36歳0カ月)/1985年生

本店所在地 東京都千代田区九段北

設立年 2013年

従業員数 13人 (9/30現在)(平均45.5歳、年収640.4万円)、連結181人

株主数 22人 (目論見書より)

資本金 176,562,000円 (11/16現在)

代表者生年月日 1985年12月14日生まれ

代表者略歴

2008年03月 東京大学経済学部卒業

2009年09月 Deutsche Bank AG London入行

2012年12月 (株)GCIアセット・マネジメント入社

2013年12月 (株)Finatext(現 (株)Finatextホールディングス)創業 代表取締役(現任)

2016年02月 (株)Teqnological取締役(現任) 8月:(株)ナウキャスト代表取締役 9月:Finatext Taiwan Ltd.取締役 12月:Finatext UK Ltd.取締役(現任)

2017年02月 Finatext Malaysia Sdn.Bhd.取締役 3月:(株)スマートプラス取締役(現任) 8月:(株)LightStream Research取締役

2018年12月 (株)Finatext代表取締役

2019年02月 (株)Finatext取締役(現任)、(株)ナウキャスト取締役(現任) 4月:スマートプラス少額短期保険(株)取締役(現任) 8月:(株)K-ZONE 取締役(現任)


【幹事団】

主幹事証券 大和 - -

主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 松井 - -

引受証券 あかつき - -

引受証券 楽天 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 マネックス - -


【参考類似企業】今期予想PER(11/26)

2315  CAICAD 717.4倍(連結見込 )

3747  インタトレード 173.1倍(連結予想 )

3924  ランドコンピ 15.1倍(連結予想 )

3992  ニーズウェル 14.4倍(単独予想 )

3997  トレードワクス 21.0倍(単独予想 )

4284  ソルクシーズ 10.8倍(連結予想 )

4307  NRI 42.2倍(連結予想 )

4333  東邦システム 14.3倍(単独予想 )

4373  シンプレクスH 34.2倍(連結予想 )

4450  PSOL 15.0倍(連結予想 )

4687  TDCソフト 15.9倍(連結予想 )

4752  昭和システム 9.6倍(単独予想 )

9759  NSD 23.8倍(連結予想 )


【私見】

 業種としてはフィンテック関連で注目度は高いのですが、売上は大きく伸びてはおらず、赤字幅も大きく妙味はありません。海外配分はあるものの、吸収金額、時価総額共に大きく、PSRも20を超えていることからも上値は大きくないと予想します。仮条件が想定価額を上回らなかったことからも、機関投資家の評価は高くないのではと思います。


想定価額:1290円

仮条件上限:1290円

初値予想:1290円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3

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