2021年12月11日土曜日

IPO分析(Green Earth Institute )

 【事業内容】

  (1) 事業の特徴

 コリネ型細菌という微生物を活用した高効率な発酵技術(バイオプロセス)をコア技術とする技術開発型ベンチャーであります。

 現在石油を原料として生産されている化学品を、農業残渣や食品残渣等のバイオマス由来のものに転換、又は従来バイオマスより生産されている製品につき、より効率的な生産方法に代替していくことによる、持続可能な社会の実現を経営理念として掲げており、当社の技術により、石油を使わず、バイオマスから化学品を作る「バイオエコノミー」と資源の循環により持続的な社会を作る「サーキュラーエコノミー」の両方を同時に実現してまいります。

 自らは生産設備を保有せず、研究開発事業とライセンス・製品販売事業の2つのビジネスモデルを軸としております。新技術の商用化には、大別して4つの段階があり、技術開発の対象を選定するStage0、技術的及び市場的な可能性を実証するStage1、対象製品に対する需要を抱える企業等と最適な菌体及び生産プロセスを開発するStage2、そして事業化された技術のパイロットテストの実施、パイロットテスト後の商用化された技術をパートナー企業等にライセンス供与、又は当該技術を使用して自社販売(外部へ委託生産し、当社が販売)するStage3となります。

 各Stageにおける具体的な実施事項は次のとおりであり、Stage2(開発段階)においては、主として研究開発収入、Stage3(商用化段階)においては、主としてアドバイザリー収入、ライセンス一時金、ロイヤリティ収入又は製品販売収入を収益として計上しており、特許権等の活用による長期的かつ安定的な収益形態を目指しております。

 なお、自社販売においては、Stage2を自社開発、Stage3のパイロットテスト及び量産実証を委託先とともに自社で進める想定であり、得られる収入はパイプラインを通じて製品販売収入のみとなります。

① Stage0~1「研究段階」

・開発品候補の選定:市場の需要等より開発すべき化学品の候補を選定

・PoC(Proof of Concept):開発候補品の技術的な開発可能性、特許権の抵触の有無、市場規模、競合製品及び市場優位性等の確認


② Stage2「開発段階」

・菌体の設計及び開発:意図する化学品を効率的に生産する菌体の設計、開発

・生産プロセスの開発:意図する化学品を生産可能な菌体をラボレベルで増殖させるプロセスの開発

・生産プロセスのスケールアップ:実機レベルで菌体を増殖可能とするためのシミュレーション等の実施

③ Stage3「商用化段階」

・パイロットテストの実施:ライセンス候補先又は当社における、Stage2で得られた菌体及び生産プロセスにかかる知見を基にしたパイロットスケールで化学品を生産実証

・量産プラントの立上げ:ライセンス契約の締結後の、ライセンシーにおける商用化のための量産プラントでの試作とサンプル提供等(商用生産準備)

・製造販売:ライセンシーにおける商用生産又は当社における委託生産の開始及び製品(化学品)販売の実施


 当社においては、開発対象とする製品や提供するサービス等の区分とパートナー企業の組合せごとに、このような研究開発から商用化までの流れに沿って進められる案件をパイプラインと称しております。


(2) 技術の特徴

 当社が得意とするバイオリファイナリー技術は、次の4つの特徴を有します。これらの特徴的な技術の組合せによって、遺伝子操作により高度に機能が設計された微生物を活用した、高効率なバイオプロセスを実現しております。

① 増殖非依存型バイオプロセス

 従来の発酵法によるバイオマスからの化学品の生産は、微生物の生命活動(増殖)を利用し、その生命活動のための多段階の酵素反応(代謝)の過程で生成される物質を得るものであります。よって微生物の分裂増殖に依存して生産を行います。

 そのため、増殖のためのエネルギー、場所、時間を必要とし、石油等の非バイオマスからの化学反応による生産と比較して生産性が大幅に低く、経済的な障壁となっておりました。

 しかし、増殖非依存型バイオプロセスは、微生物(コリネ型細菌)が、増殖できない酸素抑制条件において、増殖をしないものの代謝活性を高く維持するという特徴に着目し、増殖をさせずに代謝のみを行わせることにより、低コストで高い生産性を発揮する独創的な発酵法であります。

 増殖非依存型バイオプロセスでは、大量に培養したコリネ型細菌を反応器に高密度に充填し、酸素抑制条件下で増殖を停止させてコリネ型細菌の活動を物質生産に集中させる手法により、従来の発酵法と比較して高い原料効率で小規模な設備で短時間に対象物質を多量に得ることができます。

 また、増殖に依存しないため、非可食バイオマスを原料とする代謝の過程で生じるフェノール類やアルデヒド類、有機酸類等の副生物による、発酵阻害(増殖阻害)の影響をあまり受けずに生産することができます。

 

② 微生物の改良

 より高効率な生産を実現するために、微生物自体についても、複数の遺伝子を破壊、もしくは導入する遺伝子組換えにより、副生物の生成を抑えて原料の利用効率を高める等の代謝経路の最適化や、酵素特性の改変、特定物質への耐性の付与等の開発を行っております。

 とうもろこしや小麦、サトウキビといった可食バイオマスは主として炭素数が6のグルコース、ガラクトース、マンノース等の糖類(以下、「C6糖」という。)から構成されます。一方、とうもろこしの葉、茎(コーンストーバー)や稲わら、サトウキビ搾汁後の残渣(バガス)、廃材といった非可食バイオマスは、C6糖に加えて、炭素数が5のキシロースやアラビノース等の糖類(以下、「C5糖」という。)も多く含まれます。

 バイオプロセスに利用される微生物の多くは代謝においてC6糖を原料とし、C5糖を利用することを苦手としていますが、コリネ型細菌は、遺伝子組換えにより、C6糖とC5糖の同時利用を可能とし、また生産性も向上されることから、これまで廃棄物として処理されていた非可食バイオマスを化学品の原料としてより有効に利用することができます。


③ CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)を使った効率的なスケールアップ

 モノづくりにおいて、ラボスケールで良いデータが得られても、商用スケールにした場合、同様の結果が得られるとは限りません。特に、バイオリファイナリーでは、菌体という生きものを扱っていることから、設備の種類や大きさ、生産規模等の環境によって菌体のパフォーマンスが大きく異なることから、これまで商用スケールにおける生産予測が難しく、少しずつスケールアップするというのが常道でありました。

 当社は、バイオ生産プロセスにおけるCFDに基づくコンピュータシミュレーションシステムを開発しており、本システムの活用により、精度良く各環境下における生産条件を予測し、短期間、低コストでスケールアップすることが可能となります。


④ リサイクルプロセス

 グラム陽性菌であるコリネ型細菌は、細胞壁が厚く丈夫であることから壊れにくく、バイオプロセスにより生産された化学品を含む溶液から濾過、分離されたコリネ型細菌は、繰り返し利用することが可能であります。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2019.9 202 -280 -275 -289

(単独実績)2020.9 334 -114 -113 -116

(単独実績)2021.9 502 -63 -63 -74

(単独予想)2022.9 842 3 -25 75


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2022.9 7.71 - 0

調達資金使途 設備投資、運転資金


上場時発行済み株数 10,063,000株 (別に潜在株式1,264,500株)

公開株数 4,416,200株(公募940,000株、売り出し2,900,200株、オーバーアロットメント576,000株)


 売出しを行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


PER:150.4

PSR:13.9

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:51.2億

公募時時価:117億

    

【株主構成】 

UTEC 2号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,857,000 17.88 90日・1.5倍

(公財)地球環境産業技術研究機構 特許権実施許諾など事業提携先 1,800,00 0 17.33 180日

伊原智人 代表取締役社長 600,000 5.78 180日

PNB-INSPiRE Ethical Fund 1投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 486,000 4.68 90日・1.5倍

ニッセイ・キャピタル5号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 459,000 4.42 90日・1.5倍

DIC(株) 取引先 417,000 4.01 180日

UMI 1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 402,000 3.87 90日・1.5倍

エア・ウォーター(株) 取引先 300,000 2.89

(株)新生銀行 金融商品取引業者等 279,000 2.69 90日・1.5倍

川嶋浩司 取締役COO 270,000 2.60 180日

(株)キャネット 特別利害関係者など 240,000 2.31

電源開発(株) 取引先 240,000 2.31


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、貸株人である公益財団法人地球環境産業技術研究機構並びに売出人である株式会社キャネット、サンポー食品株式会社及びインターウォーズ株式会社並びに当社株主である伊原智人、川嶋浩司、浦田隆治、DIC株式会社、電源開発株式会社、伊藤忠ケミカルフロンティア株式会社及び伊藤忠商事株式会社は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後180日目の2022年6月21日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社株式を貸し渡すこと等は除く。)等を行わない旨合意しております。

 また、売出人であるUTEC2号投資事業有限責任組合、PNB-INSPiRE Ethical Fund 1 投資事業有限責任組合、ニッセイ・キャピタル5号投資事業有限責任組合、UMI1号投資事業有限責任組合、株式会社新生銀行、SMBCベンチャーキャピタル産学連携1号投資事業有限責任組合、MSIVC2012V投資事業有限責任組合、DCIハイテク製造業成長支援投資事業有限責任組合、SC Ventures LLC、みずほ成長支援第2号投資事業有限責任組合、ひまわりG3号投資事業有限責任組合及び東京都ベンチャー企業成長支援投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む。)後90日目の2022年3月23日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、東京証券取引所における初値が形成された後に主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)等を行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 伊原 智人(上場時53歳8カ月)/1968年生

本店所在地 東京都文京区本郷

設立年 2011年

従業員数 30人 (10/31現在)(平均46.1歳、年収544.2万円)

株主数 27人 (目論見書より)

資本金 773,100,000円 (11/19現在)

代表者生年月日 1968年03月30日生まれ

代表者略歴

1990年04月 通商産業省(現 経済産業省) 入省

2005年07月 (株)リクルート 入社

2011年07月 内閣官房 国家戦略室 企画調整官 就任

2013年01月 当社 入社、6月 当社 取締役、10月 当社 代表取締役CEO(現任)


【幹事団】

主幹事証券 みずほ - -

引受証券 大和 - -

引受証券 SBI - -

引受証券 SMBC日興 - -

引受証券 ちばぎん - -


【参考類似企業】今期予想PER(12/2)

2802  味の素 26.8倍(連結予想 )

2929  ファーマフーズ 15.8倍(連結予想 )

2931  ユーグレナ -倍(連結予想 )

4531  有機薬 31.4倍(単独予想 )


【私見】

 地球環境産業技術研究機構発のバイオ化学ベンチャーで、経済産業省出身の代表者で注目したい銘柄です。業種としてはユーグレナなどに近く、未知数な部分は多いものの、8憶程度の売上で赤字は解消されつつあります。需給としては吸収金額は大きいものの、海外売出しがあり時価総額はそこまで大きくないのでどう評価されるか。将来性の判断が難しいのですが、業種妙味はあるので、VCのロックライン1.5倍までは初値段階で可能と予想します。


想定価額:1060円

仮条件上限:1160円

初値予想:1500円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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