2021年12月8日水曜日

IPO分析(ハイブリッドテクノロジーズ)

 【事業内容】

(1)事業コンセプト

 顧客のDXを推進するには、基盤となる開発力と、リソース、構想、設計、開発、検証のプロジェクトマネジメント力が必要となります。従来の分業型サービスが、サービス設計や開発要件の設定を日本の顧客に依存し、開発と実装のみをサービス会社が請け負う形態が一般的であったのに対して、当社グループのサービスは、当社が中心となり顧客のサービス設計、システム設計の上流工程を担い、ベトナム子会社の擁するエンジニアリソースと連携することで、上流工程から下流工程にいたる一連のサービスを提供する「ハイブリッド型サービス」を用いて、これを実現することを目指しております。

  

(2)サービスラインアップ

 顧客が上述の定義を達成し、「競争上の優位性を確立する」ためには、「課題の早期具体化」を行い、効果的なPDCAサイクルによって「市場および事業のニーズ」を素早くプロダクトに反映し、収益の早期化と拡大、機会損失の最小化を求められていると考えております。そして、これを遂行するため、日本とベトナムを融合し、「開発力」「リソース力」「一気通貫体制」「品質管理体制」を柱に、「ハイブリッド型サービス」の中から、市場および顧客ニーズに合わせて、『ストックサービス』と『フローサービス』のラインアップを用いて、顧客のプロダクト開発を行う事業を展開しております。

  

a.ストックサービス

 アジャイルスクラム型開発手法を用いて、市場環境の変化に合わせた顧客からのシステム要件に柔軟に対応するために、準委任契約でサービスを提供しております。

 顧客の開発要件に適したPMやSE等の開発リソースを顧客専属のチームとして提供し、顧客のプロダクト開発を『顧客の市場のニーズ』と『予算』に合わせ流動的に進めるサービス形態であります。

 このストックサービスは、『長期型』と『短期型』の2つに分類されており、顧客のニーズに合わせて提供しております。当社グループにおけるストックサービスの売上比率は、2020年9月期で94%、2021年9月期で89%となっております。

 『長期型』は、安定的にビジネスやプロダクトを成長させるために開発リソースを必要とする顧客向けのサービスです。プロダクトの開発や運用保守などのノウハウ継承が必要な顧客に適した運用形態で、原則として1年契約となります。

 『短期型』は、特定の案件でのリソースの確保が必要な顧客や、『長期型』を活用する前のトライアルを希望する顧客向けのサービス形態です。『長期型』に比べ、特定案件の開発期間に合わせた契約期間となり、3ヶ月程度の期間となります。また、『短期型』終了後はプロダクト公開後の保守等を主目的に『長期型』への移行を提案しております。


b.フローサービス

 顧客プロジェクトの明確な要件のもと、あらかじめ決められた予算と期間で受注する請負契約形態で、設計から実装までの仕様変更が少ないウォーターフォール型開発手法を主軸に開発を進めるサービス形態です。


 (4)当社グループの特徴・強み

 当社グループは、ハイブリッド型サービスの特徴・強みを、以下のように定義しております。

1. 顧客の挑戦を支え、DXを成功に導く開発とリソース体制

 当社グループは、顧客のDXを推進するために必要な要素をハイブリッド型サービス体制の中に持ち合わせている点が強みであり、具体的には以下の4点であります。

 

a.開発力(過去の実績の中で培われた開発基盤)

 当社グループは創業以来、アジャイルスクラム開発、リーンスタートアップマネジメント、デザインシンキングなどの最新のフレームワークを活用して、累計290社のプロダクト開発の知見を保有しています。

 顧客ビジネスにおける新たなシステムの設計から開発の新規開発、追加機能の開発、改善保守などの開発業務など顧客の要望を踏まえて、サービス提供の範囲を決めています。

 ビジネスコンサルティングでは顧客のプロダクトのサービス設計、システム設計を担っております。アジャイルスクラム開発にて、顧客の短期間での成果を最大化するために、プロダクトの顧客戦略および市場ニーズに合わせ優先機能単位で開発リリースを行っております。また、サービス設計段階、実装前にリーンスタートアップマネジメント手法を用い、最小コストにて最低限の製品・サービス・機能を持った試作品を短期間で作り、顧客の反応を的確に把握し、顧客がより満足できる製品・サービスの開発を行っております。設計開発段階において、発生する様々な課題に関しては、「観察・共感」「定義」「概念化」「試作」「テスト」の5つの段階を経て、“ユーザーの視点に立った”課題の本質を発見し、課題の解決策を導くためにデザインシンキング手法を用いております。


b.リソース力(開発人材の質と量、採用・育成体制)

 日本とベトナムの連携体制を基盤とする事業モデルを担う優秀な人材を確保するため、当社グループは日本とベトナムで、以下のような採用、育成の体制を築いております。

i )日本における施策

 当社は日本国内において、ベトナムの優秀な人材にアクセスできる体制を確保しております。具体的には、ベトナムから日本への留学生ネットワークから、日本の文化やビジネスに深い理解を持つ日本での就業経験のあるベトナム人PM、SEや、日本人PMの、社内推薦・紹介経由での採用を促進しております。

 日本に配属されているベトナム人PM、SEは日本語能力だけでなく、日本の市場や商習慣の理解を持つ必要があり、入社後の言語教育やプロジェクト単位でのスキル向上を図るとともに、全社でノウハウ共有の場を設け、組織力向上に努めております。

 ii)ベトナムにおける施策

 ベトナムにおいて当社グループの認知度は高く、株式会社マイナビが運営するベトナムのITエンジニア専門求人サイト「ITviec」が、給与‧教育‧マネジメント‧企業文化‧オフィス環境等の観点から選定するBest Companyにおいて、当社のベトナム子会社Hybrid Technologies Vietnam Co., Ltd.は、2019年と2020年に、日系企業で最高位に選出されております。

 当社は、上述の認知度の高さ、ホーチミン、ハノイ、ダナンの大都市3拠点、合計5校との産学連携体制、同3都市で事業を展開していることによる幅広い採用網によって、過去に当社へ応募頂いた開発者を中心に約20,000人の採用候補者リストを有しており、顧客ニーズに合わせた柔軟な採用が可能となっております。

 更に、採用したエンジニアには、入社後に自社内の組織「Talent Academy」にて体系的な教育を施しており、採用と育成の両側面から優秀な人材の提供を努めております。


c.一気通貫体制

 『ハイブリッド型サービス』では、当社が中心となり顧客のサービス設計、システム設計の上流を担い、それをベトナム子会社の擁するエンジニアリソースと連携することで、顧客サービスの上流工程から下流工程に至る一連のサービスを提供しております。

 顧客と近い距離でプロジェクト全体の推進とビジネス機能要件を担う日本拠点のPM、SEと、設計・開発を担うベトナム拠点のPM、SEのそれぞれに日本人、ベトナム人の両方の人員をプロジェクトに参画させることによって、顧客要件の分析から開発工程までのコミュニケーションロスや齟齬を抑制し、開発スピードの加速を図っております。

 プロジェクトへの配属の選定においては社内に蓄積された20,000人分を超える候補者人材のデータベースを元に独自開発した『HRマッチングAIシステム』を用いており、候補者の実績、人間力、技術力等の総合的な評価とプロジェクトの情報をマッチングさせて、プロジェクトへ配属する人員を選定する判断に利用しています。本システムは配属後の評価も蓄えることにより、日々マッチング精度の向上を図っております。


d.品質管理体制(情報セキュリティと品質担保の為の体制)

 当社グループはベトナム拠点において、開発を担うチームとは独立して各プロジェクトの品質管理に特化した「Quality Assurance部」を設置しております。Quality Assurance部が行う品質管理は、ISO9001:2015、ISMS、ISTQB/Platinum Partner Program資格認定を受け、準拠した独自の管理体制に基づき、人材教育と、社内システムの両面から品質の保証、向上に取り組んでおります。

 人材教育においては、Project Management Professional、Professional Scrum Master、Amazon Web Service認定(AWS認定)等の多様な資格取得を推奨し、そのための教育計画を作成、実施しております。

 社内システムの側面からは、独自開発した以下2つのシステムを用いて、プロダクト開発から納品までをモニタリングしています。


i )自動化テスト「Hybrid Automation Testing 」

 HATはプロダクトテストの自動化、標準化を主眼に作成したツールです。スクリプト作成を簡略化し、他のツールと連携する拡張性を持たせることで、担当者個人の能力に依存しない自動テストと、発見した課題を迅速に報告、続くCATと連動してタスク化することができ、開発全体の効率化ができる点が特徴です。


 ii)ビジュアルSQA(CAT)

 CATはオンラインで作業進捗やテスト結果等をリアルタイムに分析、可視化する管理ツールで、進捗状況の遅延や、不備等が発覚した場合に、その状況をチームに共有し、対応を円滑化することができます。分析結果を基にその後の進捗予測が可能である点、顧客の環境や要望に応じて併用する他の開発管理ツールと連携が可能な点、HATと連携してテストモデルケースの自動生成が可能である点が特徴であり、案件の管理、テストの円滑化の両面から開発の生産性と品質向上に寄与しております。

 世界的標準規格に則った品質管理手法と上記の蓄積された知識と知見の体制構築は、当社グループ事業の柱であり強みと定義しています。


2.安定的な収益モデル

 当社グループのハイブリッド型サービスは、ストックとフローの両軸によって安定的な収益モデルを構築しております。特に、ストックサービスは、当社グループ売上収益の、2020年9月期で94%、2021年9月期で89%を占めております。長期型は契約期間が1年、短期型は3ヶ月程度となっており、短期型も契約期間終了後は、長期型への契約変更提案を実施します。長期型、短期型ともに、顧客の情報システム部門の補完的な立ち位置になり、顧客事業や顧客サービスが継続する限り、永続的に当社サービスが続くケースが多いため、安定した収益の拡大を図るモデルとなっております。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上収益 営業利益 税引き前利益 純利益

(連結実績)2019.9 1,520 113 97 89

(連結実績)2020.9 1,735 101 63 44

(連結実績)2021.9 1,702 111 105 75

(連結予想)2022.9 2,225 201 190 167


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(連結予想)2022.9 16.45 - 0

調達資金使途 人件費、採用費、マーケティング投資


上場時発行済み株数 10,758,148株 (別に潜在株式1,109,200株)

公開株数 2,868,700株(公募2,600,000株、売り出し68,700株、オーバーアロットメント200,000株)


PER:30.3

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:14.3億

公募時時価:54億

    

【株主構成】 

Soltec Investments Pte. Ltd. 親会社 3,952,993 42.66 180日

(株)エアトリ その他の関係会社 3,115,155 33.61 180日

チャンバンミン 代表取締役社長 835,700 9.02 180日

Evolable Asia Co., Ltd. その他の関係会社の子会社 350,000 3.78

平川和真 取締役CFO 234,900 2.53 180日

窪田陽介 取締役 168,250 1.82 180日 

陳忠誠 事業共同考案者 97,450 1.05 180日

Phan Van Trung 従業員 64,200 0.69

Nguyen Huu Binh 従業員 64,200 0.69

NiceGuys Vision(株) 特別利害関係者など 56,500 0.61


 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人である陳忠誠及びチャン バン ミン、当社株主かつ貸株人であるSoltec Investments Pte. Ltd.並びに当社株主である株式会社エアトリ、平川和真及び窪田陽介は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後180日目の2022年6月20日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式(当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式を含む)の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すことは除く。)等は行わない旨合意しております。

 また、株主であるNiceGuys Vision株式会社は、主幹事会社に対し、ロックアップ期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式(当社新株予約権及び新株予約権の行使により取得した当社普通株式を含む)の売却(ただし、売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、東京証券取引所における初値が形成された後に主幹事証券を通して行う東京証券取引所における売却等は除く。)等は行わない旨合意しております。

 

【代表者】

代表者名 チャン バン ミン(上場時35歳6カ月)/1986年生

本店所在地 東京都中央区新川

設立年 2016年

従業員数 59人 (10/31現在)(平均35.4歳、年収574.6万円)、連結518人

株主数 8人 (目論見書より)

資本金 247,193,000円 (11/18現在)

代表者生年月日 1986年05月26日生まれ

代表者略歴

2010年03月 (有)アルファユニバーサル 入社

2012年04月 (株)マニュファクチャリング 入社

2014年09月 FPT INFORMATION SYSTEM CORPORATION 入社

2016年04月 当社設立 代表取締役社長に就任(現任)

2017年10月 Evolable Asia Solutions Vietnam Co., Ltd.(現Hybrid Technologies Vietnam Co., Ltd.) General Director (現任)

2020年03月 Hybrid Techno Camp Co., Ltd. General Director(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SBI 2,268,400 85.00

引受証券 SMBC日興 106,700 4.00

引受証券 みずほ 106,700 4.00

引受証券 岡三 53,400 2.00

引受証券 東海東京 26,700 1.00

引受証券 岩井コスモ 26,700 1.00

引受証券 水戸 26,700 1.00

引受証券 極東 26,700 1.00

引受証券 松井 26,700 1.00


【参考類似企業】今期予想PER(11/30)

3937  Ubicom 41.6倍(連結予想 )

4053  サンアスタリスク 90.0倍(連結予想 )

4481  ベース 18.6倍(連結予想 )


【私見】

 ベトナムを中心としたDX銘柄で、ベトナム人が代表者という観点からは、ある意味初物銘柄なので注目は集まります。経済発展の著しいベトナムで成長性はありそうですが、コロナの影響もあり不透明でもあります。低単価でマネーゲームの可能性もありますが、総合的に考えて買いにくいかと思います。


想定価額:460円

仮条件上限:500円

初値予想:800円

ブック申し込み度・・・やや強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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