2021年12月14日火曜日

IPO分析(Institution for a Global Society)

 【事業内容】

 当社基幹システム「GROW」は、回答者自身の気質(性格)を潜在的な認知バイアスを除去して正確に測る技術(特許取得)や、他者による評価を補正し忖度などの評価におけるバイアスを除去するためのAIアルゴリズム(特許取得)に強みがあり、公平で一貫した評価を行えることから、ハーバード・ビジネス・スクールのPeople Analyticsに関する代表ケースとしても取り上げられています(2017年8月25日「GROW: Using Artificial Intelligence to Screen Human Intelligence」)。また、ケンブリッジ大学や慶應義塾大学などとの共同研究をベースにして産官学連携でサービス開発に取り組んでおり、国内の大手企業や先進的な取り組みを行う学校法人のみならず、国際機関や海外の政府機関などでの導入実績があります。

 

(1)HR事業

 企業の人材採用・育成・配置・組織開発を、人材評価システム、オンライン教材、コンサルティング、研修など、多岐にわたるサービスを組み合わせて支援しています。特に、AIによってバイアスを補正した人材評価データを取得、分析し、データに基づく人事を可能にする点に強みを持っています。

 当社がソリューションを提供している人事評価・育成市場の環境は引き続き良好で、拡大を見込んでおります。例えば、欧米企業では、ESGの情報開示強化に向けて人的資本に関する非財務情報の開示が先行して進んでおり、2020年11月には、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に人的資本情報の開示を求め、ISO30414といった世界基準も示されていることから、今後日本企業の追随が予想されます。また、コロナ禍のテレワークの推奨などを受けジョブ型への移行も加速しており、人材評価データの蓄積と活用シーンは今後も拡大が続くと見込んでおります。

 2017年のGROW360開発後は、主に新卒採用で企業の人事部を中心に展開をしてまいりました。2019年以降は大企業の事業戦略に直結するサービス(組織開発・人事戦略支援)も提供するようになり、人事部のみならず経営企画部、DX推進部との連携も進んでいます。これにより、2020年度当事業の実績では、年間1千万円超の案件が9件(うち、3千万円超2件)となり、顧客単価の上昇(前年同期比+50%強)をけん引し、リカーリングレベニューは85%となりました。なお、主要なサービスは以下の通りです。


① GROW360

 スマートフォンを用いて受検する人材評価システム(サービス)です。被評価者自身の自己評価に加えて、他者による360度コンピテンシー評価も行います。評価に費やした時間、評価の偏りなどをもとに、AIアルゴリズム(特許取得)が評価データのバイアスを是正するほか、IAT(Implicit Association Test*。特許取得)を用いて本人の潜在的な性格をBIG5による気質診断に基づき判定する人材分析システムであり、採用、人材育成、配置など企業の組織開発全般で活用されています。バイアス補正による公平で一貫した人材評価をシステムを通じて実施することで、1回1人あたり受検費用4,000円以下で提供しています。これにより、従来は特定の階層に限定して行われてきた360度評価を、大企業の全社員対象でも実施し、データ化を進めることが可能です。また、ダイバーシティ&インクルージョン推進において無意識のバイアスが障壁となっているとの認識が社会で広く共有される中で、評価バイアスを補正したうえで精緻に気質・行動特性を評価できる点で顧客企業のニーズを捉え、導入が増えています。「GROW360」のユーザー数は67万人、累計他者評価件数(25項目のコンピテンシーを84問で評価。1人の被評価者に対し最低3人が他者評価を実施)は5,550万件となっています。


② DxGROW

 企業のDX人材育成を、評価と教育の両面から支援するサービスです。当社が従来から提供してきた評価システムを応用したアセスメント(GROW360を用いたイノベーションスコア算定、IATを活用した潜在的なデジタルバイアス測定、経営シミュレーションを通じた意思決定の傾向やデータ分析に関する知識レベルの可視化)に加えて、当社独自のLMS(Learning Management System)をプラットフォームとした教育コンテンツ(DX推進に向けて最低限身に着けておくべき知識やマインドセットの習得が目的)で構成されています。2021年9月にはデジタル庁が発足し、国をあげてのDX推進が進められていますが、先行してDXに取り組んできた企業においても、経営と現場の意識のギャップや、専門人材を率いる管理職のデジタルへの潜在的な苦手意識などが課題として挙げられており、それらの暗黙知をアセスメントにより可視化し、必要な教育をピンポイントで実施できる点が顧客に評価され、2021年1月の提供開始以降、業態を拡大してまいりました。新型コロナウイルス感染症による影響で、今後も企業、学校、自治体、政府それぞれのDX化の需要は旺盛であると見込んでおり、業容の拡大に取り組んでまいります。


 (2)教育事業

 学校や教育機関向けに、生徒の能力と教育効果をAIで可視化する評価システム「Ai GROW」、Society5.0時代を切り拓く基礎となる非認知能力などを育むSTEAM教育動画コンテンツ「GROW Academy」、AIを搭載したオンライン英語学習ツール「e-Spire」を利用したサービスの提供を行い、日本の次世代を担う人材育成支援を行っています。GROW Academyおよびe-Spireは、2020年度に引き続き、2021年度も経済産業省の「EdTech導入補助金」対象サービスとして採択されています。

 文部科学省が実現を目指すGIGAスクール構想によって、公教育現場におけるICT(情報通信技術)環境が急速に整備され、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けた前倒し実施もあり、文部科学省初等中等教育局の調査によると既に全体の96.2%にあたる1,744自治体等で全ての児童生徒が学習者用端末を活用できる環境が整備され、タブレットで受検を行うAi GROWや、オンライン学習教材であるGROW Academyの活用シーンも大幅に拡大しました。また、教育現場での働き方改革という課題に対しても、日々相互評価でデータ蓄積するAi GROWにより、期末ごとの生徒の定性評価が自動生成され教員負担が大幅に低減されることから、採用が拡大しております(2021年10月末時点で、私立中高一貫、国公立中高、通信制高校、塾、小学校など含めて100校超がAi GROWを有償導入)。

 従来からの学校法人への直接のサービス提供に加えて、2020年以降は自治体や教育委員会などへのサービス提供も本格化しています。なお、主要なサービスは以下の通りです。


① Ai GROW

 GROW360と蓄積された人材評価をベースに、学校・教育機関向けに開発したシステムです。360度コンピテンシー評価と気質診断により、生徒・学生の能力と可能性に加え、さまざまな教育活動の教育効果を可視化することができます。カリキュラム・デザインやクラス・マネジメント、就職までを見据えた進路指導等、多面的な活用が可能です。GROW360と共通尺度で評価を行うことで、子どもから大人まで一貫した評価軸を実現しています。1年間いつでも利用可能なサブスクリプションモデルとして提供しており、Ai GROWのこれまでのユーザー数は7.3万人、累計他者評価件数は1,300万件となっています。2018年の文部科学省「学校教育総括」によると、当社が主なターゲットとしている全国の中高生の生徒数は670万人となります。


 ② GROW Academy

 生徒のコンピテンシーを伸ばすための動画コンテンツと学習指導案、ワークシートを、生徒の人数に関わらず、学校単位で提供しています。生徒のコンピテンシーを伸ばすためのフレームワークを、学校生活を舞台に設定したアニメ形式の動画で分かりやすい事例を交えて習得することができます。カリキュラムや生徒の習熟度に応じて自由に組み合わせて利用でき、指導案も完備しています。Ai GROWとの併用により、新学習指導要領でも求められているコンピテンシー・ベースの教育とその評価を実現できるコンテンツ構成です。


③ e-Spire

 TOEFL®テストの構造に沿って設計されたオンライン英語学習プラットフォームです。VOCABULARY、READING、LISTENING、WRITING(AIによる自動判定付き)の4つのユニットで構成されています。各ユニットには単語や表現を限定した入門・初級レベルから英語の母語話者に近い上級レベルまで幅広い難易度の問題を用意しています。生徒は各自の英語力や学習ペースに合わせて、豊富な演習問題とトレーニングに自由に取り組むことができます。


(3)新規事業

 ブロックチェーン技術を用いて個人が主体的かつ安全に自らの情報をコントロールするシステム(BCシステム)を構築し、慶應義塾大学経済学部経済研究所FinTEKセンターと共同で、学校、企業、自治体などでの個人情報の利活用を広げ、AIを活用することで教育・キャリア形成・人材育成支援を強化する実証事業「STARプロジェクト」を開始しており、12団体に参画頂き、学生の登録者数は4,000名を超えております。ブロックチェーン技術を活用するメリットとして、暗号化されたデータを複数のコンピュータに分散して管理するため、改ざんを阻止し、安全かつ公平な情報の保管・流通や管理を保証し、運用コストも低い点が挙げられます。本プロジェクトでは専用のWebアプリケーションを使い、学生が自身のGROWの結果や成績、証書、授業やサークル等での活動を記録すると、それらの情報がただちに暗号化されてブロックチェーンシステムに格納されます。企業は学生にプロフィール情報等の提供依頼を送りますが、学生は自分の意志で情報の提供先や提供範囲、開示期限などを選択し、コントロールすることが可能です。承諾した場合には、特殊な暗号方式を使い、各企業に情報を開示します。

 STARのブロックチェーンプラットフォーム上では既に個人が主体的にデータをコントロールする導線は確立済みですが、2021年8月以降、さらに学習履歴や情報開示によってclosed community内で利用・交換可能なトークンを発行・流通させる仕組みの実証もスタートしています。新たな実証では、情報開示におけるインセンティブ設計が実装され、参加学生は学修歴など自らのデータを企業に開示する見返りとしてトークンを受領し、それらを講義ノートを友人から借りる際に対価として支払うなど、学びや成長を継続できる仕組みを構築することが目的です。

 加えて、BCシステムは、2021年度経済産業省の「未来の教室実証事業」でも採用され、生徒およびその保護者を対象としたESG型広告モデル実証も開始しました。本実証では、STARで構築しているブロックチェーンプラットフォームを活用し、持続的社会を目指す協賛企業が、広告を通じて教育現場を支援する仕組みを実証し、その効果を検証します。

 主な販売先は経済産業省、ボストン・コンサルティング・グループ、日本郵便など。


【業績等】

業績動向(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2020.3 314 -107 -107 -249

(単独実績)2021.3 514 8 9 3

(単独予想)2022.3 739 30 15 14

(単独中間実績)2022.3 268 -29 -29 -29


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2022.3 3.46 217.66 0

調達資金使途 採用費・人件費、システム開発、広告宣伝費、弁護士費用


上場時発行済み株数 4,296,000株 (別に潜在株式356,500株)

公開株数 2,202,500株(公募320,000株、売り出し1,595,300株、オーバーアロットメント287,200株)


PER:497

PSR:21.6

配利回り:

公募時吸い上げ資金:37.9億

公募時時価:160億

    

【株主構成】 

UTEC3号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 762,000 17.59 90日・1.5倍

福原正大 代表取締役社長 625,000 14.43 90日

TUSキャピタル1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 571,000 13.18 90日・1.5倍

みやこ京大イノベーション投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 428,500 9.89 90日・1.5倍

慶応イノベーション・イニシアティブ1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 394,500 9.11 90日・1.5倍

岩永泰典 特別利害関係者など 325,000 7.50 90日

(株)ウィザス 特別利害関係者など 290,000 6.69 90日

船野智輝 新株予約権信託の受託者 232,500 5.37

(株)KEIアドバンス 特別利害関係者など 175,500 4.05 90日・1.5倍

(学)河合塾 特別利害関係者など 100,000 2.31 90日・1.5倍

谷家衛 特別利害関係者など 75,000 1.73 90日・1.5倍

 

 本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人及び貸株人である福原正大、売出人である川上祐介、当社株主である岩永泰典、株式会社ウィザス、株式会社KEIアドバンス、学校法人河合塾、谷家衛、安藤雅子、株式会社三菱総合研究所、深沢岳久、猿渡康文及び勝山友美並びに当社新株予約権者である黒川清、西脇義高、成田忍及び中原成美は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2022年3月28日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びオーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと等を除く。)を行わない旨合意しております。

 また、売出人であるUTEC3号投資事業有限責任組合、TUSキャピタル1号投資事業有限責任組合、みやこ京大イノベーション投資事業有限責任組合及び慶應イノベーション・イニシアティブ1号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の2022年3月28日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う売却等を除く。)を行わない旨合意しております。


【代表者】

代表者名 福原 正大(上場時51歳11カ月)/1970年生

本店所在地 東京都渋谷区恵比寿南

設立年 2010年

従業員数 41人 (10/31現在)(平均37.5歳、年収616.3万円)

株主数 18人 (目論見書より)

資本金 59,901,000円 (11/26現在)

代表者生年月日 1970年01月21日生まれ

代表者略歴

1992年04月 (株)東京銀行(現(株)三菱UFJ銀行) 入行

2000年09月 バークレーズ・グローバル・インベスターズ(株)(現ブラックロック・ジャパン(株)) 入社

2009年12月 同社 営業部門統括部長就任

2010年05月 当社設立 代表取締役社長就任(現任)

2018年08月 至善館大学院 特任教授就任(現任)

2019年10月 慶応義塾大学 特任教授就任(現任)

2020年04月 東京理科大学 客員教授就任(現任)

2021年04月 一橋大学 特任教授就任(現任)


【幹事団】

主幹事証券 野村 - -

引受証券 みずほ - -

引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー - -

引受証券 SBI - -

引受証券 いちよし - -

引受証券 丸三 - -

引受証券 岩井コスモ - -

引受証券 極東 - -



【参考類似企業】

参考類似企業 今期予想PER(12/6)

4071  プラスアルファ 83.6倍(単独予想 )

4194  ビジョナル 162.4倍(連結予想 )

4323  日シス技術 17.9倍(連結予想 )

4327  日本SHL 14.0倍(単独予想 )

4435  カオナビ 1,075.9倍(単独予想 )


【私見】

 AI人物評価システムというとで初物感はあり業種妙味はあります。売上は小規模ですが、伸びは良く、利益も出始めているので成長性は期待が持てます。吸収金額・時価総額も適度に大きく、PSRで20を超えてることから、短期では大きくは上がらないかもしれません。


想定価額:1660円

仮条件上限:1720円

初値予想:2500円

ブック申し込み度・・・強気

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5


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