2021年12月11日土曜日

IPO分析(サスメド)

 【事業内容】

  (1)ビジネスモデルの概要

 「ICTの活用によって持続可能な医療サービスを社会に提供し続けること」をミッションに、医薬品、医療機器に次ぐ第三の治療法として注目されている「デジタル治療(Digital Therapeutics、以下「DTx」といいます。)」の開発を中心として事業展開を行っております。また、DTxの開発にあたって独自に構築した臨床試験システムを汎用化し、製薬企業、学術研究機関、医療機関、医薬品開発業務受託機関(Contract Research Organization、以下「CRO」といいます。)等の第三者へ提供することで業界全体での創薬プロセスの効率化を、加えて、世の中に膨大に蓄積されている医療データの利活用を目的として開発した機械学習による自動分析システムを製薬企業、学術研究機関等へ提供することで効果的・効率的な医療サービスの実現を目指しております。

 当社のセグメントは①自社の治療用アプリ開発で構成される「DTxプロダクト事業」、②汎用臨床試験システムと機械学習自動分析システム並びにこれらシステムを活用したDTx開発支援から構成される「DTxプラットフォーム事業」の2つとなります。

 なお、「DTxプロダクト事業」については現在、検証的試験を終了しておりますが、製品の販売には至っておりません。


 (2)医薬産業を取り巻く現状と課題

 慢性疾患への対応では、DTxと呼ばれる新しい治療法が、コストを抑えながら適切な医療を患者に提供する手段として注目されております。DTxは、スマートフォンのアプリケーションなどの形態をした、ソフトウェアによる治療手段で、規制当局の承認を得た科学的根拠に基づく医療機器である、という点で一般的なヘルスケアアプリケーションとは異なります。DTxでは、患者の医療へのアクセスが通常の医療と比べて容易になり、加えて医療機関外での活動データの蓄積が可能となることから、「治療中断率が高い」「適切/適時/適量の治療介入が行えず、結果として療養が長期にわたる」という慢性疾患特有の課題解決につながることが期待されておりますが、ようやく導入期に差し掛かった段階にあります。

 また、治療用アプリの開発では通常の医薬品や医療機器の開発プロセスで求められる非臨床試験が省略できたり、ソフトウェア自体が製品となるため、医療機器承認後の製造過程においても、製造設備が不要である、工程管理や品質管理が比較的容易であるなど、開発コスト、開発期間、販売後の収益性といった多くの面で大きくリスクが低減できます。

 

(3)具体的な製品又はサービスの特徴

 前項で述べてきた「医療に対する国家歳出の増大」という課題に対して、「治療用アプリ開発」による新しい治療法の提案、「汎用臨床試験システム」の提供による創薬プロセスの効率化による開発コストの適正化、「機械学習自動分析システム」の提供による医療データの活用による医薬産業のバリューチェーン全体の効率化という大きく3つの方向性から課題を解消すべく事業活動を行っております。

① 「DTxプロダクト事業」セグメント

〔治療用アプリ開発〕

 アンメットメディカルニーズへの解決策の提案を目指して、慢性疾患や認知行動療法、運動療法が有効とされる疾病に対する複数のDTxの開発を行っております。本書提出日現在における開発中のパイプラインは以下のようになっており、中でも不眠症治療用アプリのyukumi(仮)の開発が最も進捗しております。

 ICTを活用した治療用アプリで不眠症に対する認知行動療法を確立することを目指しております。不眠症に対する認知行動療法は、治療中の改善効果、治療後の改善効果の持続性の両面で、睡眠薬を使用した薬物療法よりも優れていることが実証されておりますが、上記のとおり、保険診療が適用されていないこと、人的リソースに限りのある医療現場にとっては負担が大きいことが医療機関での治療法の採用に際して阻害要因となっております。当社は、医療現場での人的リソースの不足を解決するために、普及が進んでいるスマートフォンのアプリケーションを活用し、薬物療法から認知行動療法へのシフトを推進することで、睡眠薬の処方量の削減及び適正使用につなげ、社会的課題を解決するサービスを展開してまいります。事業推進上、対処すべき課題としては、治験による医療機器承認と、保険収載及び収益確保が可能となる保険点数の実現が挙げられます。


 (治療用アプリでの認知行動療法の提供)

 2016年9月より、当社が開発を行っている不眠症治療用アプリの治験を開始しました。治験の実施によって本アプリによる不眠症治療効果並びに安全性を確認することができ、その結果をもとにPMDAと今後の臨床開発の方針について議論した上で2021年の5月から11月まで検証的試験を実施いたしました。検証的試験の結果、主要エンドポイントを達成し、2022年2月には医療機器承認申請を行う予定となっております。

 上市後の販売戦略については、製薬企業等と、彼らが保有するMRを通じた販売ネットワークの活用を目的に業務提携の議論を進めております。また、医師向けには一般社団法人日本睡眠学会で臨床試験の成果に関する解説並びにアプリケーションを使用した認知行動療法の実施に関する啓蒙を代表の上野を中心に行い、潜在患者を含む一般消費者向けには睡眠薬を使用しない不眠症の治療に関する疾患啓発を提携先の製薬企業と共同で行っていくことを検討しております。

 yukumi(仮)以外のパイプラインとしては、乳がん患者向けの運動療法、「人生会議」という愛称でも知られるアドバンス・ケア・プランニング(以下、「ACP」といいます。)を提供する治療用アプリを国立研究開発法人国立がん研究センターと共同で開発しております。

 ACPは、人生の最終段階における治療や療養についてあらかじめ考え、患者やその家族と医療者の間で繰り返し話し合い共有する自発的な取り組みのことです。ACPの実施によって早期に緩和ケアに取り組んだ結果、予後の延長やQOLの改善といった効果が実証されており、アメリカや台湾では医療保険の適用対象としてACPが実施されています。日本でも、ACPによる早期緩和ケアと意思決定支援による患者の不安・抑うつ症状の改善、加えて死亡直前の抗がん剤投与の減少による医療費の適正化を目的として、国全体でACPの普及啓発に努めています。そのような環境の中、当社は、国立研究開発法人国立がん研究センターとの共同研究において、進行がん患者に対するACP用プログラム医療機器を開発しており、2020年に厚生労働科学研究費「進行がん患者に対する効果的かつ効率的な意思決定支援に向けた研究」に採択されました。ACP用プログラム医療機器の提供によって、不適切な治療の中止と患者自身の不安・抑うつ症状の改善を目指しております。


② 「DTxプラットフォーム事業」セグメント

〔汎用臨床試験システム〕

 前項で記載した不眠症治療用アプリの開発過程において獲得したノウハウをベースに、効率的な臨床試験を実施するためのシステム開発を行っております。リクルーティングの効率化やモニタリングコストの削減などを通じて医薬品・医療機器の開発コストの適正化が期待できる「リモート治験」が2017年頃から欧米を中心に広がってきていますが、日本では試験データの真正性の確保に課題を残しており、ごく限定的な範囲でのみ実施されている状況です。当社のシステムには、リモート治験における上記の課題を解決するために、被験者として適切な対象かどうかを判定する「適格性判定」、データ入力者の本人性を確認する「なりすまし防止」、ブロックチェーン技術(特許第6563615号、特許第6245782号、特許第6340494号、特許第6530578号、特許第6245783号、ほか)を用いた「データ改竄耐性」、臨床試験データの欠損を防ぐ「デジタル指導」など、リクルーティングから臨床試験データの解析まで、一貫してデータの真正性を確保するための幅広い機能に関する特許技術を実装しております。

 当社は、規制のサンドボックス制度の中で①ブロックチェーン技術の実装により当社が構築したシステムを使用して適切な改ざん防止措置が講じられ、②被験者や医療機関が入力した情報が直接的に報告データに反映される等の手法を用いることが「十分にモニタリングを実施することができる」場合に該当することを確認し、報告を行いました。この報告を受けて、内閣府が「治験データ等と原資料との一致性が確保できるようブロックチェーン技術を活用するときは、その一致性を確認するための実地でのSDVが求められないことが治験依頼者等にあらかじめ明らかとなるよう、解釈の明確化その他必要な措置を講じる」ことを成長戦略フォローアップの中で明示しました。サンドボックス制度の研究成果については、国際医学雑誌上で論文として発表しております。その後、グレーゾーン解消制度において、当社システムの利用によって実地での照合作業を省略したとしてもGCP省令第21条に違反するものではないこと、並びにこの解釈が医薬品のみではなく、医療機器や再生医療等製品の治験、特定臨床研究でも適用可能であることの確認を要請し、2020年12月には厚生労働省から、当該システムを利用することで実地での照合を省略することはGCP省令に違反するものではなく(ただし、データを直接連携・同期していない部分についての一致性の確認まで一概に不要とは言えず、データの一致性の確認以外の業務については引き続き適切に実施する必要がある)、また、医薬品以外にも本件の解釈が適用可能であるという回答を得ました。

 

(臨床試験における業務フローの比較)

 今後は、アカデミアに加えて製薬企業を中心とする事業会社とも本システムを活用した臨床試験に関する協議を進め、サービス利用ならびに共同開発といった事業展開を推進してまいります。


〔機械学習自動分析システム〕

 医療業界で求められているRWDの活用に向けて、Awesome Intelligenceという名称で分析基盤を開発し、クラウドサービスとしての提供を開始しております。

 既存のAIシステムでは、その判断基準がAI内で学習データと呼ばれる大量のデータに基づいて自律的に構築されるため、システムを操作する人間側には判断基準やその根拠が示されず、ブラックボックス型になってしまうことが医療分野での利用に際して課題となっております。一方で、当社が開発したAwesome Intelligenceでは、分析結果を導き出す際にシステムが注目した特徴量の寄与度を明示するようなホワイトボックス型の機械学習をコアアルゴリズムとすることで、医療分野で求められる判断理由の説明を可能としております。また、データサイエンス領域での経験が十分でない医療関係者でも柔軟に分析が行えるように、データの前処理の自動化や分析結果の出力などで利便性を高めた仕様としております。サービスリリース後、製薬企業や学術研究機関、医療機関を中心に導入が進んでおり、本システムを利用した共同研究での活用事例も増えつつあります。


〔DTx開発支援〕

 自社での治療用アプリ開発並びに治療用アプリを対象とした臨床試験実施の経験に基づいて、治療用アプリの開発を目指す企業を支援しております。

 治療用アプリを開発するためには、その制作段階において、臨床ニーズの特定から治療アルゴリズムの検討、及びアルゴリズムのアプリケーションへの実装が必要となり、加えて、治療用アプリの制作が完了した後も臨床試験のプロトコル検討、治療用アプリの管理システムの構築、実際の臨床試験の運用までが求められます。アプリケーション開発と臨床開発という異なる専門性をワンストップで提供することで、既にシーズを保有している企業の効率的な治療用アプリ開発を実現しております。

 

 【業績等】

業績動向(百万円) 事業収益 営業利益 経常利益 純利益

(単独実績)2020.6 34 -160 -88 -96

(単独実績)2021.6 115 -333 -271 -277

(単独予想)2022.6 95 -780 -724 -748

(単独1Q実績)2022.6 30 -128 -128 -129


1株当たりの数値(円) EPS BPS※ 配当

(単独予想)2022.6 -51.77 - 0

調達資金使途 研究開発資金、人材投資、オフィススペース拡張


上場時発行済み株数 15,547,600株 (別に潜在株式1,257,200株)

公開株数 2,981,900株(公募2,291,000株、売り出し302,000株、オーバーアロットメント388,900株)

 

募集を行う地域

欧州及びアジアを中心とする海外市場(ただし、米国及びカナダを除く。)


 PER:

PBR:

配当利回り:

公募時吸い上げ資金:42.0億

公募時時価:219億

    

【株主構成】 

上野太郎 代表取締役社長 7,000,000 48.20 180日

Beyond Next Ventures1号投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 2,275,000 15.70 90日・1.5倍

SBI AI&Blockchain投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,166,900 8.00 90日・1.5倍

(株)スズケン 資本業務提携先 700,000 4.80

第一生命保険(株) 特別利害関係者など 583,100 4.00 90日・1.5倍

市川太祐 取締役 409,500 2.80 180日

本橋智光 取締役CTO 301,700 2.10 180日

住友商事(株) 資本業務提携先 245,000 1.70

サワイグループホールディングス(株) 資本業務提携先 245,000 1.70

ソニーグループ(株) 特別利害関係者など 166,600 1.20 90日・1.5倍

東京センチュリー(株) 特別利害関係者など 166,600 1.20


 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、貸株人かつ売出人である上野太郎、売出人である市川太祐並びに当社新株予約権者である本橋智光及び矢島祐介は、共同主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しにかかる元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して180日目の2022年6月21日までの期間(以下「ロックアップ期間」という。)中は、共同主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。

 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、当社新株予約権者である平野友信、奥村恒介、加地潤二、田村眞一、高城健太郎、渡邉陽介、齊藤裕子、大村啓斗及び大泉徹は、共同主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しにかかる元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2022年3月23日までの期間中は、共同主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束しております。


 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、売出人であるBeyond Next Ventures1号投資事業有限責任組合及びSBI AI&Blockchain 投資事業有限責任組合並びに当社株主である第一生命保険株式会社及び東京センチュリー株式会社は、共同主幹事会社に対して、本募集及び引受人の買取引受による売出しにかかる元引受契約締結日に始まり、上場(売買開始)日から起算して90日目の2022年3月23日までの期間中は、共同主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等(ただし、その売却価格が募集における発行価格又は売出における売出価格の1.5倍以上であって、SMBC日興証券株式会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)を行わない旨を約束しております。

 本募集及び引受人の買取引受による売出しに関し、当社株主であるソニーグループ株式会社は、共同主幹事会社に対して、ロックアップ期間中は、共同主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社普通株式(潜在株式を含む。)及び当社普通株式を取得する権利を有する有価証券の発行、譲渡又は売却等を行わない旨を約束する書面を差し入れる予定であります。

 

【代表者】

代表者名 上野 太郎(上場時41歳0カ月)/1980年生

本店所在地 東京都中央区日本橋本町

設立年 2015年

従業員数 21人 (10/31現在)(平均36.9歳、年収696.5万円)

株主数 16人 (目論見書より)

資本金 100,000,000円 (11/19現在)

代表者生年月日 1980年12月21日生まれ

代表者略歴

2006年04月 都立広尾病院 研修医

2009年04月 日本学術振興会 特別研究員 DC1

2012年03月 熊本大学大学院医学系研究科博士課程修了

2013年04月 日本学術振興会 特別研究員 PD

2014年10月 公益財団法人神経研究所付属晴和病院 医師(現任)

2015年07月 サスメド合同会社 創業 代表社員

2016年02月 サスメド株式会社 設立 代表取締役社長(現任)、4月 公益財団法人東京都医学総合研究所 主席研究員 東邦大学 講師

2021年02月 XNef株式会社 社外取締役(現任)


【幹事団】

主幹事証券 SMBC日興 - -

主幹事証券 SBI - -

引受証券 東海東京 - -

引受証券 あかつき - -

引受証券 いちよし - -


【参考類似企業】今期予想PER(12/3)

4014  カラダノート 46.3倍(単独予想 )

4438  Welby -倍(連結予想 )

7363  ベビーカレン 24.9倍(単独予想 )


【私見】

 デジタル治療(DTx)ベンチャーということで注目度はありますが、売上規模を見ると赤字のバイオ銘柄のようです。売上がほとんどなく、時期尚早のような気はしますが、ソニーや他の一流企業が株主で長期では面白いのかもしれません。現状は規模も大きめなので、公募前後の動きと予想します。


想定価額:1310円

仮条件上限:1410円

初値予想:1410円

ブック申し込み度・・・中立

セカンダリー期待度・・・中立

総合評価3.5

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